逆行 マンモスマン   作:にゃもし。

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キン肉マン・チーム vs 飛翔チーム
マンモスマン再び


 

 

 

 

キン肉王家のお家騒動による王位争奪戦。

その決勝が行われている大阪城。

 

 

自分の名が書き記されている超人預言書のページ。

それが燃えると……どういった原理か、その名が記されている超人はこの世から消滅してしまう。

 

 

試合中にその預言書が松明の火で燃え、体が半ば消失しているにも関わらず……仮面の貴公子こと、ロビンマスクは仰向けになった状態の俺を首の後ろ、両肩に乗せて水平に跳び…

 

 

『 ロープワーク・タワー・ブリッジ――――ッ ! ! 』

 

 

俺を担いだままリングサイドのロープと激突。

 

 

二本のロープが体の前面、それぞれが喉元と太ももに思いっきり食い込んで圧迫、背後からはロビンマスクの兜が腰に突き刺さる。

 

 

「ぐはぁっ!?」

 

 

激痛のあまりに口から少量の血を吐き……ロビンマスク共々、マットの上を無様に転がる。

 

 

「「 ロビンマスク ! ? 」」

 

 

すぐさまロビンマスクの下に駆けつけるキン肉マンたち…

 

 

それに対して俺のところは誰も来ず、あるのは苦虫を潰したかのような元チームメイトの表情。

そこには労いの言葉は何もなく、あるのは侮蔑と嘲笑。

 

 

手足が消えかかった男が、リングの中央で一人寂しく天井のスポットライトを眺めているだけ……

 

 

慢心をしていたとはいえ、負けるとは思っていなかった。

だからこそ、自分の預言書が焼かれるとこの世から消失するデスマッチを受け入れた。

結果こそ敗れてしまったが、満足のいく試合だった。

 

 

それを抜きにしても目的のためならチームメイトをあっさりと切り捨てる奴らの性根が赦せない。

 

 

もっとも、預言書を焼かれて消滅を待つだけの俺ができることは殆どなく、アノアロの杖をキン肉マンに渡して…

 

 

「こんな物を懐にしまうとは……正義超人の甘さがうつっちまったかな?」

 

 

消え行く意識の中、深紅のマントと王冠を身につけたキン肉マンの幻が、王者の姿が見えた。

 

 

 

 

***  ***  ***  ***  ***

 

 

 

 

――――何処までも広がる真っ暗闇……そこに一条の光が差す。

 

 

光の眩しさに思わず体が反応、()()()()をゆっくりと開けていく。

 

 

そこには透明に近い白が視界一杯に広がっていて、同時にひんやりとした冷気を感じる。

その冷気は王位争奪戦に参加する以前、寝床にしていたアラスカの凍土の冷たさと同じで…

 

 

日本の大阪城にいた筈の俺はどういう訳か、氷の下で大の字で横たわっていた。

 

 

寝起き直後、意識が朦朧として頭が働かなかったが、時間が経つにつれて思い出す。

キン肉王家による王位争奪戦の記憶と、その結末を…

 

 

分厚い氷を砕きながら上半身を起こし、己の身を確認、次に辺りを窺う。

そこは見慣れた景色、よく知っている土地、日本から遠く離れたアラスカの凍土地帯だった。

 

 

「どうなってやがる?」

 

 

当然ながら、俺の疑問に答える者はいない。

預言書を焼かれると存在が消えてなくなるのは連中の嘘だったのか…?

氷の上で腕を組みながら胡座をかき思案にふけるが……明確な答えには辿り着けない。

 

 

「とりあえず今がどういう状況なのか、確かめる必要があるな…」

 

 

情報を得るには人間たちがいる場所に向かうのがいいだろう。

こんな極寒の地に来る物好きはいない。

いや一人、王位争奪戦のためのチームメイトを探していた知性の神ぐらいか…?

 

 

その場で立ち上がり、地面に巨大な足跡を残しながら人間がいる集落へと足を運ぶ。

 

 

 

 

***  ***  ***  ***  ***

 

 

 

 

アラスカにある人間たちの集落の一つに辿り着いた俺は、無造作に捨てられていた新聞の一枚を手に取って、訝しげる。

その新聞が王位争奪戦以前に発行された物だからだ。

キン肉王家の御家騒動に関する記事は一切なく、代わりに日本で行われる『宇宙超人タッグトーナメント』に関することが記事に書かれていた。

 

 

「まさか、タイムスリップしたのか…?」

 

 

完璧超人のネプチューンとその師匠であるネプチューン・キングはマグネットパワーで地球の自転を逆回転させて時間を巻き戻したことがある。

面倒だろうが決して不可能ではないだろう。

 

 

「どっちみち、タッグトーナメントも王位争奪戦も日本で行われる。日本に着いてから考えるか…」

 

 

俺が去った後に知性の神が俺をチームメイトの一員に迎えるために寝床を訪れるだろうが、放っておくことにした。

俺が奴に従う義理はもはや無く、むしろ憎悪しか湧いてこない。

 

 

「ロビンマスクは超人たちの中で唯一、運命の5王子を倒した。ならば俺にも可能性はある」

 

 

時間が巻き戻ったのか、過去に跳躍したのか、判断がつかないが……知性チーム率いるフェニックスにいいように利用され、最後は見捨てられ裏切られた屈辱は忘れない。

 

 

「超人による “ 神殺し ” ってのも悪くないな…」

 

 

逸る気持ちを抑えきれずに思わず顔がにやける。

俺は日本へと向かうことにした。

 

 

 

 

***  ***  ***  ***  ***

 

 

 

 

トーナメントマウンテンがある富士山麓。

そこには人間だけではなく、俺みたいな超人も疎らにだが人間たちに混じっている。

中には素性の知れない奴も少なからずいて、その中でもとりわけ怪しい奴がいた。

 

 

「人気の無い所から見物しているテメェは何処のどなた様かな?」…とそいつの背後から声をかけた。

 

 

全身をフード付きのコートで隠した怪しい格好の男。

だが、俺は奴が振り向いた時に見えたその男の眼差しに心当たりがある。

 

 

「キン肉アタル。王家を出ていった元キン肉王家の者だ」

 

 

「なっ!?」

 

 

さすがに馬鹿正直に答えるとは思わず、後に続く言葉が出ず絶句する。

 

 

「そういうお前はどうなんだ? お前ほどの超人がタッグトーナメントに出場せず、ただ見物しに来ただけとは到底思えないんだが?」

 

 

「俺の実力に見合う超人がいなかったからだ。だが、キン肉アタル。テメェとならこのマンモスマンと組んでやってもいいがな?」

 

 

「もう既に出場する選手は決まっている。今から会場に乗り込んで名乗りを上げるような恥知らずな真似はできん」

 

 

「それは残念だ…」肩を竦めて同意するような仕草を見せる。

俺としても王位争奪戦のためにも是が非でもキン肉マンたちに勝ってもらわなければ困るから参加する意思など最初からないが…

 

 

そして、俺の知っている史実の通りに試合が進んでいく。

 

 

 

 

***  ***  ***  ***  ***

 

 

 

 

決勝で敗れたネプチューンが大空で自爆。

それを見た1000人の完璧超人たちが引き返していく。

 

 

「ネプチューン、敵ながら天晴れだ。だがこれでキン肉マン、キン肉スグルは105人の超人の神から新たなキン肉大王として認められるだろう」

 

 

キン肉マンとそのタッグパートナーであるテリーマンが山頂に半ば埋まっているトロフィーを二人の手で引き抜いていく。

その光景を見て感極まったのか、アタルは両目から涙を流す。

 

 

『――――だが、その前にやらなければならない仕事がある…』

 

 

俺たちではない第三者の声と二つの気配。

そこにはメガネをかけた人型の姿を取った知性の神と、身体が多数の透明な三角柱で構成された超人であり、チームメイトでもあったプリズマンが俺たち二人と対峙するように向かい合っていた。

 

 

『探していたぞマンモスマン。アラスカで眠っていた筈のお前がこんなとこに、それもキン肉王家の長男と仲良くなっていたとはな…』

 

 

「ああん? 誰だ? テメェは?」

 

 

知ってはいるが、あえて惚ける。

前の世界で知り合ったのは日本ではなく、アラスカの永久凍土地帯。

当然、今回は向こうにとっては初対面……ボロは出さない方がいいだろう。

 

 

『私は知性の神だ。マンモスマン、お前を迎えに来た』

 

 

案の定、前回同様のスカウト……以前の俺なら喜んで付いていっただろうが、今は嫌悪感しか出てこない。

 

 

「こいつは運がいい」

 

 

肩を回して「コキコキ」鳴らしながら近づき…

 

 

「神の名を騙る不届き者を始末できるんだからなァ!」

 

 

くの字に曲げた腕を相手の喉元目掛けて突進。

舌打ちを打ちつつ、知性の神は両腕を上げて防御の姿勢を取るが……構えた両腕に腕をぶつけて撥ね飛ばす。

飛ばされた知性の神は茂みの奥へと消える。

 

 

「マンモスマン!? いきなり何を!?」

 

 

アタルが駆け足で近寄り詰問してくるが、答える代わりにアタルに体ごとぶつけ……直後、七色の虹のような光線が背中を掠める。

 

 

人間には無害だが、超人だと死に至らしめるプリズマンのレインボー・シャワー。

 

 

「キョ――――キョキョキョキョ! 実に惜しい! あのまま動かなければ纏めて始末することができたんだがな!」

 

 

「プリズマンと言ったな!? 何故こんなことを!?」

 

 

「なぁに、世間的に存在していない奴を後腐れなく文字通り消してやろうと思ってな?」

 

 

何が可笑しいのか腹を抱えて「キョキョキョ」と嘲笑う。

そこに頭部だけの知性の神が現る。

 

 

『プリズマンよ、もういい引き上げるぞ』

 

 

「何故です? こいつらなど俺様のレインボー・シャワーを浴びせればイチコロですよ? 王位継承の邪魔になりそうな奴は今のうちに消した方がいいんじゃありませんか?」

 

 

『それができれば苦労はせん。片やキン肉王家の長男、もう一方は超人強度7800万の化け物。そいつらを二人同時に倒せる自信がお前にはあるのか?』

 

 

言われて「げげっ!?」…と言葉に詰まるプリズマン。

 

 

『そういうことだ。こやつら相手ではこちらも只では済まない。それよりもマンモスマンの空いた穴を埋め合わせる超人を探した方がよい』

 

 

『行くぞ…』そう言う知性の神にプリズマンは渋々しながらも承諾。

両手を胸の前に合わせると一際強い閃光を一瞬放ち……光が収まった後には姿を消していた。

 

 

「知性の神は邪悪の神の一柱。奴がこのまま大人しく引き下がるとは思えん」

 

 

「それはそうだが、どうするつもりだ?」

 

 

「キン肉王家の継承は105人の神に委ねられる。当然、その場に知性の神も顕現する。そこに俺たちも乗り込む」

 

 

「おいおい、勝手に決めるなよ」

 

 

「マンモスマンよ、お前と知性の神の間に浅からぬ因縁を感じる。邪悪の神相手には一人よりも二人の方がいいだろう。これはお前にとっても悪い話ではあるまい?」

 

 

「ふん、気にくわないがその通りだな……いいだろう、手を貸してやる」

 

 

キン肉アタルの高潔さはよく知っている。

俺はキン肉アタル、のちのキン肉マン・ソルジャーと手を組むことにした。

 

 

キン肉マンのための王位継承の儀、その日が着々と近づく。

 

 

 

 




 

(´・ω・)にゃもし。

誰が喜ぶのか、わからねど『原作:キン肉マン』です。
とりあえず先ずは4話まで短編で投稿して様子見を…

8/4 脱字があったので修正。

参考にでも…

マンモスマン
身長279cm 体重400kg 超人強度7800万パワー

プリズマン
身長304cm 体重200kg 超人強度5200万パワー

因みにネプチューン・キングの超人強度が5000万パワー。
知性チームがどんだけ極悪なのかが物凄く理解できてしまう。

ついでに…

キン肉アタル
身長197cm 体重102kg 超人強度108万パワー

兄さんの超人強度見て驚いたよ。
これでフェニックスを圧倒させたんだから…

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