ジャック少年とアデルの二人がかりの説教から解放された私は、昼食を取る為にジャック少年が持ってきていたひよこ豆やウニ、飲料水を使い、三人分の調理に勤しんでいた。
あれ?お気付きですか?そうなんです、何とこの世界にはひよこ豆があったんです。
いやまぁ、ひよこ豆がある事自体は街を散策していた時に、普通に食材として売られていたから知ってはいたんですがね、実際に持ってみるとヤバい、何がヤバいって軽量感、というか単純大きさがヤバい、豆の舟が枝豆の二分の一しかないのだ。ありえない。
それでいて味は完全に枝豆らしいのだ。
更にはウニである。因みにこのウニは海にいるウニではない、陸地にいるウニである。とゆうか、ぶっちゃけ栗である。正しく言うなら、ウニという種類の栗らしいのだ。ややこしい。
ひよこ豆もウニもアトリエシリーズに出てくる素材ではあるが、ウニはシリーズ通してなのに対して、ひよこ豆は一部シリーズにのみ登場した素材アイテムだ。
この二つがある事やアデルの存在からグラムナート世界かとも思うが、そのくせ初期ベルさんとかもいるし、街を散策していた時にソフィーのアトリエの素材であるきまぐれイチゴとかもあったし。結局アトリエシリーズのアイテムと一部キャラが現実として存在している以外の事は、何も解らないのだ。
まぁそれはそれとして、今回私が作る料理はひよこ豆のスープ(擬き)である。
先ずはひよこ豆の舟から種を取り出して擂り潰した物を鍋に入れます。次にアデルに剥いて貰ったウニ(栗)を入れます。水を張って塩を入れます。ゆだつまでにケモノ肉を切っておいて、鍋に入れます。
塩を少々いれ、パナから分けて貰った牛乳を少量入れます。
後は煮込むだけです。肉が崩れてきたら完成、ひよこ豆シチュー。
さぁ、たーんとお食べ欠食童子ども!!
とゆー訳で実食しようかね。
「………何か、何だろ、色々足りない」
口の中がモソモソするとか肉が硬いとかひよこ豆の形が残ってるとか以前の問題で、そもそも調味料が圧倒的に足りてない。
「そうか?生肉よりはいけるだろ」
野生児か!?
いや、とゆうかジャック少年、君の普段の食生活が不安になるんだが。
まさか本当に生肉じゃないよね?塩は舐めるだけとか言わないよね?
「上手いよノミコ、二週間飲まず食わずに比べたら口に入れて苦しくならない料理は何でもね」
やめてよアデル、そんな切なくなる台詞を爽やかに言わないでよ、私の分も食べていいから!好きなだけ作ったげるから!
ダメだこいつら、文明から放れすぎてる。
そんな二人だからか、私的には微妙過ぎるものだったが残さず完食し、今は食休みに寛いでいる所だ。
三人で談笑していると、話題は私の錬金術の話に移っていった。
錬金術の方法として渦を作ると説明すると、ジャック少年は顎に指を添えて考え込んでしまった。
何か悩みでも有るのかと事情を聞いてみると、何でも現在必殺技を考案中にらしいのだ。
言葉にはしなかったが、大会での出来事はやはりかなりショックだったのだろう。悔しげな顔で「今度は見逃されるようなダサい事にはしたくねぇ」とぶっきらぼうに吐き捨てた。
そう言う事なら強力するのも吝かではない!!吝かではない……けど。
「ごめん……無理だわ」
申し訳なく思い顔を伏せると、ジャック少年が慌てたように言葉をかけてくれた。
「い、いや!こっちこそ悪ぃ!そうだよな、錬金術何てどうかんがえても秘伝の技術になりそうな物そう簡単にはみせらんないよな」
等とあからさまに落ち込んで頬をかくのだ。
まるで垂れ下がる犬耳尻尾が見えそうな落ち込みようであった。
「いや、秘伝の技術にとかはしないよ?」
むしろ技術が確立したら、世の中にジャンジャンと広めていくつもりだ。
いくら元ネタを知っていて、材料と出来上がる物を知っていても、結局はそれだけなのだ。
未知の組み合わせはあるし、錬金術を学んだ誰かがまったく新しいレシピを考え付くかもしれないではないか。
閉ざされた学問に発展は無いのだ。開示しない技術何て無様な自慰行為だ。少なくとも私は、錬金術は広く門戸を広げたいと考えている。
「まぁ、まだスタートラインにも立ってないんだけどね」
そこまで熱く語ってから、急に恥ずかしくなり頭を掻きながら言葉を付け足す。
照れ隠しの意味も込めて、話題を軌道修正して、何故ジャック少年の頼みを聞けないのかを説明する。
「秘伝の技術とか門外不出とかじゃなくて単なる素材不足、何せ現状何が原因で失敗したのかも解んないし、失敗したらさっき話したように鍋がまるまる駄目になるからね」
両手を肩の高さにやり、やれやれと首を振る。
調合自体は出来ているのだから、魔力を留めるというアプローチは間違いないのだ。
つまり原因はやり方、時間か素材か手順か………それとも
「素材があれば良いのかい?」
考察に移ろうとしていた私の思考を、アデルの一言が引き上げた。
声のした方を振り向くと、アデルが樽を抱えて湖に入っていこうとしていた。
「素材……素材ねぇ……俺も手伝うぜ」
そう言うやいなや、ジャック少年まで荷車から樽を抱え湖に歩き出す。
「待って、特にアデルは待って………そうだけど、失敗の原因が解らない以上不純物は入れられないのよ?砂も土も藻屑も駄目って事は、湖の沖まで泳いでいかなきゃならない」
私は今回の採取の注意点をジャック少年に説明した。
とゆうかこれはアデルには事前に話していた筈なんだが、何でアイツは鎧を着たまま湖に向かったんだ。溺れて死ぬぞ。
「成る程な、解った、沖まで汲みに行くぜ」
ジャック少年は私の説明に頷き、湖に一歩を踏み出した。
すると何と、膝上まで沈ませながらだが、ジャック少年は湖を歩き出したのだ。
「うわっ流石ファンタジー……これならアデル……も……」
ジャック少年の技に感心し、少なくとも青山氏レベルに強いアデルならもっと綺麗に立って歩くだろうと思っていたら、あろう事か湖に飛び込み、空の樽をビート板のように使い普通に泳ぎはじめたのだ。
「あ、アホー!あんたそれじゃ戻ってこれないでしょうが!!」
何せこの男が着ている鎧はフルプレートだ。
そんな物を着込んだまま中身を満杯にした樽を持って泳げる筈が無いだろう。常識的に考えて。
「平気だよ、冒険者生活が長いとフル装備でお宝抱えて泳ぐくらいは出来るようになるしね」
そんな私の心配等何処吹く風と言わんばかりに、バッシャバッシャと沖の方に泳いでいってしまった。
ジャック少年よりも絶対に強いだろうに、途中で足をつったり、巨大な水生モンスターに襲われたりしそうで不安にしかならない。
しばらくすると、樽を満杯にしたジャック少年が珠のような汗をかきながらもヨタヨタと戻ってきた。
「ゼハァ!………はぁ、ふぅ……ら、楽勝………」
明らかに満身創痍で大の字に寝転んでおきながらそんな強がりを口にする。
調合に使う分は充分確保出来たが、未だアデルが戻ってこないので、ジャック少年の介抱をしながら待つ事にし、その間の時間潰しに先程までジャック少年が行っていた、何処かのファイアーな国のリーフな里で渦を巻いてる頭装備品の方々がやっていそうな水上歩行について聞いてみた。
ジャック少年曰く、気の放出と反発の応用で出来る技術らしく、しゅんどーだとかいう技の流用何だとか、どうやら渦を巻いてる方々ではなく、波紋の方々らしい。
まだまだ修行不足で、脚が半ば沈んでしまっているが、熟練の戦士なら呼吸をするように容易く水の上に立てるという。
ジャック少年は気の総量はあるのに細かいコントロールや放出が苦手らしく、それを克服する為にもこの技術を納めたいのだとか。
何というか、やはりジャック少年は直向きだ。目標の為にここまで努力出来る人を、私は元の世界を含めても知らないぞ。
そんなジャック少年だからこそ、私は応援したくなるし、その先を見たくなる。
「あー、疲れたぁ……」
ジャック少年の在り方に感心していると、もう一人、不幸に抗う直向きな男が戻ってきた。
「おかえりー……さて、二人の働きに報いる為にも頑張りますか!」
私は勢い良く立ち上がり、二人が戻ってくるまでに用意していた炊き出し鍋の前に移動した。
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次回考察回あんど調合回です
後々、活動報告に今後の活動に見せかけたアンケートのように見える泣き言書いてます
これが良いよーあれが見たいよー等があれば活動報告の方によろしくお願いいたします