結局、9匹全員倒してしまった。まぁ、その間俺は引き摺り回されたわけだが。
アイズさんが手枷の鎖を剣で切った。
「はい。これで……どうしたの?ボロボロだけど……」
「いや、何でもないっす」
お前に引き摺られたからだよ、と思ったが、これで目の前でお尻フリフリが見えたなら安い代償だろう。本当に目の前でエロかったなぁ、今日は寝る前に1発抜けるかもしれん。
「……………」
「………えっ、なんですか?」
ジト目でアイズさんに睨まれていた。そして、赤らめた表情で聞いてきた。
「………今、えっちなこと考えてた」
「⁉︎」
エスパー⁉︎この人エスパー⁉︎
「い、いやいや!考えてません!ほんと考えてませんよ⁉︎」
「………女の子は、そういうの敏感」
「ムッツリなんですね、意外と」
「………叩くよ?」
「勘弁してください」
この人の叩くは威力が尋常ではない。なるべく殴られたくはない。
「でもですね、アイズさん。男というのはみんなエロいものなんです。どんな状況下でも目の前に女のパンツがほうられるだけでエロい妄想をすることが可能なんです。おたくの団長や【凶狼】だって、きっとそうですよ?」
「フィンが?」
「はい。気になるなら、本人に聞いてみたらどうですか?『エロ本持ってる?』って。健全な男子なら持ってるはずです」
「…………ウラカゼは持ってるの?」
「俺?そりゃもちろん……」
「………ちなみに、そのジャンルは?」
「は?」
気が付けば、アイズさんの表情はかなり真面目になっていた。
その時だ。遠くで轟音が響いた。
「「⁉︎」」
慌ててそっちを見ると、煙が上がっていて、建物の屋根の上から蛇のようなモンスターの姿が見える。
「⁉︎ まだ、モンスターがいたのか……⁉︎」
「ウラカゼはここにいて」
「へ?」
「あのモンスターは私とティオナ達が始末する」
「あの人達来てるんですか?」
「うん。だから、ウラカゼは避難してて」
「………わかりました」
まぁ、これ以上の戦闘はこっちからも願い下げだ。……いや、俺が戦ってたのはアイズさんの左腕と純白のパンツだけど。
「気をつけてくださいね」
「うん」
アイズさんはそのモンスターに向かって行った。
ひとっ飛びで屋根の上に上がって、ピョンピョンと跳ねてモンスターに向かっていく。途中で、アマゾネス二人とエルフが一人加わった。
ほんとに他の【ロキ・ファミリア】も来てたんだな。
さて、俺はそろそろシルさんを探しに戻らないと。
そう思って、怪物祭りに再び参加しようとした時だ。
「モンスターはもう全部死んだのか?」
「多分な」
「いや、さっき巨乳の小さい女の子と白髪の男が追いかけられてたぜ」
そんな声が聞こえた。
その特徴は、まず間違いなくベルとヘスティア様だ。逃げ出したモンスターはすべて中層以上のモンスターで間違いない。
俺はその噂をしていた男達の胸ぐらをつかんだ。
「おい、それどこだ⁉︎」
「な、なんだよ。つか誰だよお前……!」
「いいから教えろ!それどこだ!」
「………えっと、ダイダロス通りの方だ」
「すまん。サンキュー」
俺は走ってダイダロス通りに向かった。
1
ダイダロス通りはかなり道が入り組んでて、まるで迷路みたいになっている。
そのためか、一度入ったら出れないとまで言われているが、モンスターから逃げるのなら、これ以上上はないだろう。ベルの判断は正しいのかもしれない。
だが、こちらからしたら探すのがかなり面倒くさい。こういう時は音に頼るのが一番か。ベルたちを追いかけているのは、中層以上のモンスター。それだけ強いということだ。だから、その分暴れた音がこちらまで響いて来やすいはずだ。
俺の狙い通り、遠くからモンスターの鳴き声が聞こえた。
道のりに進んでも、モンスターに追いつくのはいつになるのか分からないので、建物の屋根に登って屋根を跳ねながら向かうことにした。
「あっちか……!」
大丈夫、今回は逃げ切ればいいだけだ。俺がここまで来れたということは、他の冒険者がここに来るのも時間の問題だ。それまで俺とベルの二人がかりで神様と住人を守りつつ引きつけて逃げ切ればいい。
………いや、ハードル高すぎだろ。やれんのか?俺で。いや、怖気付くな。ヘスティア様もベルも、俺が路頭に迷ってる所を拾ってくれた恩人だ。助けるしかない。おいそこ、前にミノタウロスの前で見捨てようとしたとか言うな。
「見つけた……!」
白いゴリラみたいなのにベルとヘスティア様が襲われていた。
一瞬、躊躇ったが、俺は大きく踏み込んでベルとヘスティアの前に飛び降りた。