スキル"ラッキースケベ"   作:アルティメットサンダー信雄

19 / 20
洗い物

 

俺は今までこんな奴と取っ組み合いの喧嘩をしてたのか、と思うほどベートは強かった。線しか見えないレベルの速度で敵を翻弄し、花の頭をバッコバッコ蹴り飛ばしている。

敵が硬いのか、ダメージが入ってるようには見えないが、どう見てもベートがボコボコにしている。

無論、俺も見てるだけではない。

 

「貧乳……ロキ退がって‼︎」

 

「お前ホント後で喧嘩したるからな」

 

花の突進を、俺は盾を構えてガードした。思っていたより重い威力、おそらくミノタウロスの突進よりも重い。この盾じゃなかったら死んでたな。

 

「だあークソッタレが‼︎」

 

俺は盾の角で花の頭を殴った。すると、バカみたいにあっさりと花はサックリ切断できた。俺の盾の角は鋭利な刃になっていて、切断も可能である。が、レベル5の打撃が効かないのに、レベル1の斬撃が効くのは明らかに不自然だ。

つまり、この花は斬撃が弱点なわけだ。

 

「ベートさん!こいつ斬撃に弱い‼︎」

 

「ああ⁉︎武器なんざ持って来てねえぞ‼︎」

 

「マジかよ……」

 

盾を渡せば俺はロキを守れなくなる。だが、このままじゃベートさんは敵を倒せない。なら、方法は一つだ。

 

「ベートさん、こっちに花を蹴って‼︎」

 

「ああ⁉︎」

 

「早く‼︎」

 

「ったく、何が出来るってんだよ……‼︎」

 

舌打ちしながらベートさんはこっちに花を蹴り飛ばした。俺はそれに盾の側面を向けた。ベートさんの蹴りによる加速が加わり、花は見事に俺の盾からスパァッと裂けた。

 

「よぉしッ‼︎」

 

「ほーう」

 

俺がガッツポーズするのと、ロキから感心したような声が出たのが同時だった。

 

「ウラァッ‼︎次行くぞ‼︎」

 

「バッチコイ‼︎」

 

そのまま、すべての花の頭を切断し、花を討伐した。

 

 

1

 

 

花からベートさんが魔石を採取し、地上に出た。なんか見たことない魔石だったけどあれなんだったんだろうな。

で、その後にディオニュソス様と会い、俺は「ここから先はいらない」と言わらて一足先に店に戻った。

で、

 

「オラ!早く皿洗えボケェッ‼︎」

 

「ベートは許可取って俺を連れ出したんじゃないのかよ⁉︎」

 

ミアのババァの監視の元、涙目になって洗い物を済ませています。あー、手が冷たいよー。

 

「サボったら、ほんとマジ殴るからね。リュー、監視を頼むよ」

 

「はい」

 

くっそー、誰か助けてくれー。まぁ嘆いてても仕方ないか。さっさと終わらせよう。

心のスイッチをオフして作業を進ませていると、ジーッと視線を感じた。リューさんの方から。

 

「……………」

 

「………あの、リューさん?」

 

「なんですか?」

 

「何見てるんですか?」

 

「いえ、随分と手際が良いものだなと思いまして」

 

「まぁ、慣れてますからね。こっちでもファミリアでも」

 

「あなたは私より後にこの店に来たのに、肝心の料理や洗い物などのスキルは私より高いです」

 

「そうですか?リューさんだってすごいじゃないですか。お使いは早いし、ゴミ捨ては尋常じゃないくらいの数をもたらし」

 

「とどのつまり、力仕事ですよね」

 

「いや、まぁ、端的に言えば」

 

「私も、あなたのように女性らしいスキルを身に付けたい」

 

「あの、俺男なんですけど」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「………あの、なんですかマジで」

 

「私に仕事のコツを教えてほしい」

 

「はぁ?」

 

「お願いします」

 

「え、なんで俺なんですか?それこそほら、他の店員に頼めば良いじゃないですか」

 

「………んです」

 

「は?」

 

「………アーニャとクロエに、『ウラと性別入れ替えたらwww』と笑われたのです」

 

察した。

 

「まぁ、今なら洗い物で良ければ教えますが」

 

「ホントですか⁉︎」

 

「はい。まぁ、コツといっても俺自身のやりやすい方法なんで、他に自分で効率的な方法があればそっちにするべきですよ」

 

「よろしくお願いします!」

 

「うん、話聞いてないな。まぁいいや」

 

俺の横に並ぶリューさん。あっ、ちょっと、ドキドキするぞ。なんか、女の人とこんな近くにいるのは初めてだ。普段は密着するほど近くなったと思ったら、遠くにすっ飛んでるからな。

 

「じ、じゃあまずは皿に水を浸けてですね……」

 

と、言いかけた所で皿が水を思いっきり跳ね返らせ、リューさんにビチャッと掛かった。

うわやっべ、と、思ったが、リューさんは意外にも冷静だった。

 

「あの、すみませ」

 

「いえ、わざとでは無いのは分かってます」

 

心の広い人だなぁ、と思ったら、リューさんの服が濡れてスケスケになっていた。思わず目を逸らすのと、リューさんがそれに気付くのが同時だった。

 

「………やっぱりわざとのようですね」

 

「え?いや、あの、違っ」

 

水の中に顔面から叩き込まれた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。