翌日、俺はいつものようにバイトしていた。そういえば、最近アイズさん来ないな。普段なら、特に用もないくせに来るのに。
そんな事を思いながら机を拭いてると、店の扉が開いた。
「あ、いらっしゃいませ。申しわけありませんが」
「お、いつぞやの罰当たりやん」
「…………?」
「なんや、覚えてへんの?」
「あの、申し訳ございませんが、当店はまだ準備中ですので……」
「話し逸らすなや。つーか、よくうちのこと忘れられるな。まぁええか、ベートおる?」
「あ、いますよ。おーい、犬!集合」
呼ぶと、店の奥で洗い物してたのか、エプロンしたベートさんが顔を出した。
「あん?……って、ロキ」
「ちょっとええか?調査したい事があるんや」
「………戦闘になんのか?」
「あり得ない話やない」
「………待ってろ」
ベートさんは店の奥に戻った。
「………ああ!ロキ様か!」
「今更かい。ほんと、罰当たりな奴やな」
「いやぁ、俺男の顔覚えるのは苦手で」
「誰が男や‼︎」
「え?だってその胸……」
「殺すよ?ほんま滅ぼすよ?」
「すみません、うちの神様はアホほど大きいので」
「ふん、あのどチビか。ていうか、うちはアイズたんとお前との交際なんて認めへんからな」
「は?なんでいきなりアイズさんの話ですか?」
「忠告したからな」
「つーか釣り合わないでしょう。ザクⅡとザクⅢ改くらい差がありますよ」
そんな話をしてると、ベートさんが着替えてやって来た。
「よし、行くぞ」
「いってらっさい」
「バカ、テメェも行くんだよ」
え?あ、あの、なんで?
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連れて来られたのは地下水路。なんかよう分からんけど、色々と調査したいことがあるらしい。
「しかし、ベートにも珍しいこともあるもんやなぁ」
「あ?何が」
「そこの、なんやっけ?ウラカゼくんやったか?ベート的に言うと雑魚、やろ?」
「それがなんだ」
「その子連れて来たのって、戦闘になった時のために少しでも経験値得られるようにやろ?やけに硬いって聞くし」
「バッ、ちげぇよ‼︎ただのテメェの盾代わりだボケ‼︎」
「おやおやベートさん。ツンデレ?ツンデレなのか?普段は俺のことボコボコにする癖にツンデレか?」
「そうや、ベートって『雑魚に構うな、キリッ』って言うくせに、実は一番自分が雑魚を気にかけてるんやで」
「うはぁ、ツンデレの鏡じゃないですかベートさん。犬なのにツンデレじゃないですかベートさん」
「普通ツンデレ言うたら猫やろ」
「「あっはっはっはつはっはっ」」
「黙ってろ」
「「はっはっはっゴフッ」」
殴られた。そんな一幕はともかく、地下水路を歩く。すると、途中で扉を見つけた。
「おっ、ここは旧式の水路みたいやな」
「なんかくっさくね。やっぱ帰ろうぜ。こんな事しても無駄なんだよ。そういう捜査はコナンなり金田一なりに任せとけばいいんだよ」
「確かに、怪しいな」
「いやそういう意味の臭いじゃなくて」
「いくで」
「話聞けよ貧乳」
扉を開けた。中は普通の水路だったが、床が完全に水浸しだった。
「ベート、おんぶして?」
「あ?」
「あ、じゃあ俺も」
「お靴を濡らしたくない!だからおんぶー!」
「ざけんな!大して深くもねぇんだから歩け‼︎」
「これ終わったら食品を扱うところに戻るんだぞ!おんぶ!」
「それは俺も同じだろうが‼︎」
で、結局ベートさんが俺をおんぶし、俺がロキをおんぶした。
「よし、いくんやベート!」
「出発進行!」
「テメェらあとで覚えてやがれ……‼︎」
「しかし、フィリア祭の後、ギルドはここまで調べたんかなー」
「人の匂いは残ってるな。水のせいで薄れちまってるから、上手く嗅ぎ分けられねぇが……」
何を調べてるのか、俺はイマイチ分からないが、ギルドが関わってることなのか。ま、いいか。それより俺そろそろ帰りたいんだけど。
しばらく歩き回ってると、壁が大きく破壊された場所があった。
「うおっ、なんだこれ……」
「待て。ウラ、降りろ」
「あ?」
「何かいる」
とりあえず従っておいた。多分、戦うつもりなんだろう。その穴の中に俺たちは入った。
「ここは、貯水槽か?」
水浸しの床から上がり、コンクリートの床へ。
「ロキ、出てくんじゃねぇぞ。ウラ、テメェはロキの護衛だ」
ベートさんの見据える先にはなんか蛇みたいなのが蠢いていた。先端の頭がズズッ……と動いたと思ったら、大きく口を開いて襲いかかって来た。
「⁉︎」
「臭ぇんだよテメェら‼︎」
花のような頭のモンスターが襲いかかって来た。それに全くビビることなくベートさんも突っ込んで行った。