「……つまり、お前はサポーターとして雇われたいと?」
俺の確認に【ソーマ・ファミリア】のリリルカ・アーデと名乗った少女は頷いた。
「はいっ。どうですか?」
「だってよ、ベル」
「うーん……」
「………どうした?」
「いや……ねぇ、君。リリルカさん、だっけ?」
「はい」
ベルはリリに声を掛けた。
「僕達、本当に会ったことがない?」
「リリはお兄さんと初対面のはずなんですが……見間違えだったりしませんか?」
「……もしよければ、そのフードを取ってくれないかな?」
わかりました、とぽつりと呟くと、リリはフードを取った。出て来たのは犬の耳だ。
「へっ?じ、獣人?」
「は、はい。リリは犬人です」
可愛い。いや、恋愛対象的な意味じゃなくて、ペット感覚で可愛い。
リリはフードを被り、再び微笑みながら言った。
「それで、お兄さん。どうでしょうか?リリを雇ってもらえませんか?」
聞かれて、ベルは俺を見た。確認を取るためだろう。
「いいんじゃね?俺も今日はダンジョン久し振りだし、正直いてくれた方がいい」
「……じゃあ、とりあえず今日一日、よろしくお願いします」
「ありがとうございます!」
と、いうわけでリリを仲間に加えた。
1
ダンジョンの中。
キラーアントの群れを相手に、俺とベルは立ち向かった。
俺はいつも通り戦おうと思ったのだが、俺の前にベルが駆け出し、モンスターの群れの中に入り込むと、攻撃を回避し、腹をナイフでかっ捌いた。
続いて次のキラーアントに向かった。
………はっ、はははっ、
「どんだけ強くなってんだお前ええええ⁉︎」
「うえっ⁉︎」
隣のリリがビクッとするのを無視した。
「何お前!この前のシルバーバックの時より輪をかけて強くなったんじゃん‼︎もう盾役の俺とかいらねーじゃん‼︎」
「え?そ、そうかな……」
「そうだよ!」
何、こいつどこまで一人で頑張ってたの今まで?俺もうホント本格的に豊穣の女主人で働いた方がファミリアのためになる気がしてきたぞ。
「って、ウラ後ろ!」
「あ?」
後ろからキラーアントが飛び掛かってきていた。俺の頭に思いっきりかぶりついた。
激痛が全身に走る、かと思ったら痛みはなかった。いやマジでカケラも痛くない。蚊に刺された程度の痛み。つーかかゆい。
「………ありっ?」
「だ、大丈夫⁉︎ウラ!」
「おう。痛くない。カケラも」
「えっ?い、痛くないの?」
「おう。オラお前も離せ」
頭を噛んでるキラーアントを離させた。その俺の腕を噛み付くキラーアント、それも痛くない。
「ははっ、おいおいなんだよ。甘噛みか?モンスターならちゃんと攻撃しろよオイ」
必死にかじってくるキラーアント。俺はさっき拾った木の実を前に差し出した。
「おら、物食うならこういうのにしろよ」
『………?』
差し出すと、それを食べるキラーアント。
直後、目を輝かせて俺の腕に頭をすり寄せてきた。
「………ベル様、あれ」
「うん、懐いてる。懐いてるね」
俺はそのキラーアントの頭を掴んだ。
「虫が俺に懐くな」
盾で叩き潰した。
直後、俺の事を睨み付けるベルとリリ。
「………なんだよ」
「最低」
「思いの外、外道ですね。ウラカゼ様」
「ああ⁉︎モンスターの腹を掻っ捌いてたお前に言われたくねーよ‼︎」
「いや……でも懐かせてから殺すとかそれは……」
「クズ」
「酷くない⁉︎」
な、なんだよ……お前らだってモンスター殺してるじゃないかよう。
「でも、最初のキラーアントの攻撃は本気で殺しにかかってきてましたよ」
「マジで?でも痛みがなかったんだけどなぁ」
「もしかして、ウラも一人で鍛錬してたの?」
「いや?女性店員とかアイズさんにボコボコにされてただけだよ」
ああ、そういうことか。そのスキルのせいで俺は硬くなってしまったのか……。
「まぁ、とにかくお昼にしようか」
「そだね」
昼飯にすることにした。