スキル"ラッキースケベ"   作:アルティメットサンダー信雄

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武器

 

 

「「「ああああああああ‼︎」」」

 

三人揃って絶叫しながらシルバーバックから逃げる。死ぬ、死んでしまう!

 

「ふおおお!死ぬうううう!ベル、オメーがさっさと仕留めねぇから‼︎」

 

「僕の所為⁉︎ていうか盾あるんなら足止めしててよ!」

 

「格上相手にいつまでも足止めしてられるか!俺は死ねねぇんだよ、オッパイの為に!」

 

「いや、死んだほうがいいよそれ」

 

「僕もそう思う」

 

「酷くない⁉︎」

 

こいつら……!オッパイにむしゃぶりつきたくなるのは男の宿命だろうが!

 

「それよりどうするんだ⁉︎あいつ倒すにも武器がないとどうしようもないぞ!」

 

「とにかく、今は逃げよう!助けが来るまで!」

 

「その助けが期待できないから倒すって言ったんだろうが!他にもモンスターは逃げてんだぞ!」

 

俺が見た逃げ出したモンスターは10匹、残り1匹がシルバーバックのはずだが、他の場所に何故かもう一体現れた。そっちにアイズさん達は行ってしまったため、彼女達もこっちに来るとは考えにくい。

 

「ああああああ‼︎もう終わりだ!俺死ぬんだああああああ‼︎」

 

「あ、諦めないでウラ!なんとか生き残ろう!」

 

「いやいやいやいや、だって武器ないもの。戦いにすらならないもの」

 

「………………」

 

「武器があればなんとかなるのかい?」

 

俺たちの前を走るヘスティア様が言った。

 

「あるんすか?武器なんて」

 

「ああ、ベルくん専用の、とっておきのものがね」

 

「………⁉︎」

 

「だけど、その性能を発揮するには少し時間が必要だ」

 

「……………」

 

なるほど、な。この中でそれが終わるまでの足止めができるのは一人しかいない。

 

「俺が止めます。二人は、なるべく遠くの付近でその準備をさっさと終わらせてください」

 

「………遠くの付近?」

 

「いいから行けよ!流せよその辺のニュアンスは!」

 

「神様、急ぎましょう」

 

「う、うん!」

 

ベルとヘスティア様は隠れに行った。さて、俺も仕事はしないとな。

盾を前に構えて、シルバーバックを睨みつける。

俺はここで倒れるわけにはいかない。ヘスティア様が用意してくれたのはベルの武器だけだ。俺が倒れたら、その後に続かない。敵の攻撃を受けるのは最低限にし、なるべく回避に徹しなければダメだ。

………やることは決まった。さぁ、来いシルバーバック。俺は絶対死なねえぞ、おっぱいのために!

 

「フンヌッ!」

 

シルバーバックの一撃を横に転がって回避すると、すぐに起き上がって次の一撃を躱す体勢に入った。

盾を前に構え、いつでも反応できる姿勢をとった。

すると、シルバーバックは両手に繋がっている鎖を、鞭のようにしならせながらこっちに振り回してきた。

 

「⁉︎」

 

ヤバイ……!動きが読めない。

辛うじて目で追えているので、なんとか盾でガードするが、不規則な動きにいつまでも対応することは出来なかった。

右斜め上と左側から同時に鎖が飛んで来た。

 

「うおっ……⁉︎」

 

右斜め上は盾で防げたものの、左側からの攻撃はモロに腹に入った。

 

「ぶっは‼︎」

 

血を吐き出しながら壁に突っ込んだ。壁側に盾を向けて、衝撃によるダメージは減らしたものの、痛みですぐには動けなかった。

そんな俺の事を知る由もなく、シルバーバックは追撃して来る。鞭での攻撃が上手くいったと本能的に悟ったのか、ガンガン振り回して来る。

 

「やろっ……!」

 

俺が叩きつけられた事によって出来た瓦礫の一つを思いっきり投げつけた。それが上手い具合にシルバーバックの目に直撃する。

 

『グォオウッ⁉︎』

 

怯んだ隙に、ベル達とは反対側に走って少しでも距離を取った。

すぐにシルバーバックは後ろから追いかけて来た。

クソッ、ベル達はまだかよ!

 

「ナメンなよこの野郎……!」

 

未だ鎖を振り回しているシルバーバックに、俺は盾を投げつけた。シルバーバックの左腕の手枷に盾は直撃して壊し、跳ね返って右腕の手枷を壊して俺の手元に戻ってきた。

この盾、防ぐだけじゃなく殺傷力もあるのか。

半ば感心しつつ、俺は武器を奪われたシルバーバックが、次はどう動くかを見た。

予想通りというかなんというか、正面から飛びかかってきた。

 

『グオォオオオオオオオ‼︎』

 

「ああああああ‼︎」

 

俺は気合を入れながら、シルバーバックの下を前転して回避した。前に勢い余ってすっ転ぶシルバーバックを見ながら、受け身をとって立ち上がった。

盾を持ったまま、再びシルバーバックを睨む。すると、俺の横にザッと誰かが立つ音がした。

 

「お待たせ、ウラ」

 

「………やっと来たか、遅ぇよ」

 

ベルが、新しいナイフを握って俺の横に立った。

随分とベルが落ち着いて見えた。何をしたか分からないが、相当信頼できる武器をもらったようで何よりだ。

 

「ベル。慎重に、といきたいところだが、大分手間取って俺はもうほとんど動けん。次の一手で決めるぞ」

 

「分かった」

 

「おし、A-1作戦な」

 

「うん、それは覚えてるよ」

 

「なら、良かった」

 

A-1作戦。それは、俺のベルが初めて使ったことのある作戦だ。 早い話が、俺の盾とベルのナイフの同時突きだ。

シルバーバックを向かい合い、俺とベルはそれぞれ盾とナイフを構える。

シルバーバックがこっちに駆け出して来るのが見えると、俺とベルも駆け出した。狙うは、魔石のある胸。

シルバーバックが両手を俺とベルに伸ばし、俺は盾を前に、ベルはナイフを前に突き出した。

 

「「ウオォオオオオオオオオ‼︎」」

 

『グオオオオオオオオオオオオ‼︎』

 

だが、ベルは俺の倍くらい速く走っていた。

 

「えっ」

 

「ああああああああ‼︎」

 

そのままベルはシルバーバックより速く走り、胸にナイフを突き刺した。

それが上手いこと魔石に突き刺さり、シルバーバックはジュワッと消え失せた。

 

「………ありっ?」

 

…………結局、ベルが一人でトドメを刺し、俺は何もできなかった。

 

 


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