とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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復活のF:その二   からの

 ある日ブルマのもとに、昔の知人である宇宙パトロール隊員のジャコが訪れた。そして彼は一つの重大な情報をもたらす。その内容とは宇宙の帝王フリーザが復活し、千人の戦士と共に地球へ向かっている、というものだった。

 

 それを聞いたブルマは、テーブルの向かい側に座ってホットココアを飲んでいる友人へと声をかける。

 

「……らしいけど、どう思う?」

「ん~? ま、大丈夫じゃな~い? 悟飯ちゃん居るしぃ。……それにしてもまさかの大遅刻ね……」

「? 誰だそいつは。大遅刻?」

「あ、わたし? 初めまして! わたしのことはブウ子ちゃんって呼んでちょうだい」

「あ、ああ。初めましてブウ子ちゃん。わたしはジャコだ」

「ジャコちゃんね! よろしく!」

「ジャコちゃん!?」

 

 地球人にあるまじきピンク色のツルっとした肌に、髪の毛のように生えた触覚。あきらかに地球外の生命体であるブウ子にジャコは最初困惑するも、地球も何気に外宇宙との交流が増えたのだなぁと考え普通に握手をした。少々馴れ馴れしいが、相手のキャラクターに合っているからかさほど気にならない。というかちょっと可愛いな、と思ったジャコである。

 その相手が長らく宇宙の禁忌とされていた、封印されし魔人ブウであったことなどつゆ知らず。

 

 

 ちなみにこのブウ子と名乗る魔人ブウから派生した女魔人であるが、ちょっと前に空梨が「紹介したい子が居る」と言ってブルマ達のもとに連れてきたのだ。

 以前散々恐怖を味わわされた身としては、ブルマも最初は他のメンバー共々飛び上がって驚いた。しかし今はそれほど戦う力がない事や、それなりに平和に日々を過ごしている事を知ってからというもの。時々こうして一緒に遊ぶ、女子友となったのである。

 そんな風にブウ子を許容するブルマも大概神経が図太い。

 

 

 

「で、フリーザちゃんはいつくらいに地球に来るの?」

 

 ココアに息を吹きかけながら(ちなみにまったく熱くないのだが、可愛く見せるポーズである)言ったブウ子の問いに、ジャコは至極あっさりと答えた。

 

「そうだな……。だいたい一時間後くらいだ」

「ええ!? ちょっと、すぐじゃない! 知らせるならもっと早く知らせなさいよ!」

「あら! ホントに急ねぇ。えっと、悟空ちゃんとベジータちゃんと空梨ちゃんはビルス様の所に行ってるから無理でしょ? あとたしかブウちゃんは今日サタンちゃんのイベントがあるって言ってたから、こっちも無理ね。だったら、やっぱり声をかけるなら悟飯ちゃんとかクリリンちゃんかしら」

「え、あんたは戦わないの?」

「嫌よ。今のわたしってすっごく弱体化してるのよ? 初期のフリーザちゃんにだって勝てないわ」

「ふ、フリーザまでちゃん付けするのか……」

 

 ブウ子の呑気な態度に毒気を抜かれたのかジャコが気が抜けたようにつぶやくが、すぐにはっと我に返って首を振る。

 

「まあ、そういうわけだ。ちなみに私は逃げるぞ。何故ならまだ若いみそらで死にたくないからだ」

「ちょっと、薄情ね」

「知らせてやっただけありがたく思ってくれ」

 

 言うや否や、ジャコはさっさと自分の宇宙船に乗って飛び去っていった。ブウ子に最後「ではお嬢さん。また機会があったら会いましょう!」とだけ言い残して。

 

「あいつ、言うだけ言って本当にさっさと帰っていったわね……」

 

 眉をひくひく動かして眉間に皺を寄せるブルマだが、しかしすぐにぼうっとしている場合じゃないと思い至りケータイを取り出す。

 

「え~っと、とりあえずクリリンくんに連絡するでしょ? あと悟飯くんと……」

「あ、わたしがまとめて連絡するぅ? 戦闘力は低くなったけど、これでもバビディちゃんが使えた魔術くらい使えるのよん」

「本当? じゃあ、お願いしちゃおうかしら! ……そうだ、じゃあ私はウイスさんに連絡とっておこうかな。ベジータ達にも来てもらった方がいいわよね」

「ん~。まあ、その辺は好きにしてちょうだい! でも多分……」

 

 

 ブウ子はパチンッとひとつウインクをして、こう告げた。

 

 

 

「悟空ちゃん達が帰ってくる前に、決着がついちゃうかもしれないわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドラゴンボールで復活してから、約数か月。フリーザは生まれて初めてトレーニングというものをして、着実に強くなっていった。そしてついには今までの最終形態の上を行く姿を手に入れたのだ。その姿の名を、フリーザは「ゴールデンフリーザ」と名付けた。

 今まで自身の変身にこれと言って名称を付けなかったフリーザであるが、この変身はにっくきスーパーサイヤ人に復讐するために身に着けたもの。スーパーサイヤ人の名称に対抗するわけでは無いが、それなりに黄金の姿には思い入れがある。よって名づけた名前だ。

 

 

 しかし、フリーザは慎重だった。

 

 

 というのも実はフリーザは、以前ドラゴンボールで蘇る前に一回だけ起きたイレギュラーで地上に降り立ったことがあったのだ。慎重さを持たざるを得なくなった理由は、その時のことが原因である。

 

 どういう理由かは分からないが、フリーザは死者のままの状態で気づいたら地上に居た。

 フリーザはそれに気づくなり、真っ先に近くにあった大きな戦闘力のもとへ向かった。このスカウター無しで戦闘力を探る能力はもとは地球人たちが使用していたものだが、そういった技の存在がある、と知ったフリーザには自身でそれを再現するのはたやすい事だった。もしくは死んだことによって、第六感ともいえるものが開花した結果かもしれない。

 

 

 ともかく、フリーザは最も強く感じた戦闘力が自分を倒したスーパーサイヤ人のどちらかであることを疑いもしなかった。何故なら以前地球に父と共に降り立った時見た限りでは、孫悟空らの仲間は雑魚ばかり。自分に比肩しうる存在は孫悟空と、謎のもう一人のスーパーサイヤ人だけだと思っていたのだから。

 

 しかし向かった先でフリーザを出迎えたのは、見覚えのある女サイヤ人。

 

『おやおや、ハーベストさんじゃありませんか』

『ふ、フリーザ様!?』

『ホッホッホ。久しぶりの再会を喜びたいところですが、あなたは後回しです。居るんでしょう? この場所に、孫悟空か……あのスーパーサイヤ人が。死期を早めたくなかったら、素直に奴らを出し』

『復活のFにはまだ早いんで! 今復活のフュージョンなんで!!』

『ぐはぁ!?』

 

 目で捉えられぬほどのスピードで、フリーザは腹を打ち抜かれた。それがつかの間の復活においての、苦々しい記憶である。

 

 

(スーパーサイヤ人でもない、あのハーベストが……私を倒したのです。魔人ブウを倒したという孫悟空の実力も、予想よりも上に見積もっておいた方がいいでしょうね。それに昔からハーベストに何かと対抗していたあのベジータが、ハーベストに劣る実力に甘んじているとも考えにくい。……少なくとも孫悟空、謎のスーパーサイヤ人、ハーベスト、ベジータを同等の実力と見て、連戦もしくは複数を同時に相手をすることも考えなければいけません。そうなると、生半可なパワーアップではぬるい。圧倒的なパワーに加え、長時間戦える持久力を身につけなければ。チィッ! この私がこれほど慎重にならなければいけないなんて。…………忌々しい、サイヤ人どもめ……!)

 

 ぎりっと唇をかみしめながら、忌むべき記憶をリフレインする。

 

 

 

 

 このフリーザが。宇宙の帝王フリーザが!! あんな虫けらみたいに殺されたのだ!!

 

 地獄で受けた屈辱も相まって、その怒りの底は知れない。何処までも深く深く根深い、煮えたぎるマグマのような怒りだ。

 

 

 

 

「ふふっ。今度は油断しません。ナメック星でも随分邪魔をしてくれましたし、なんなら真っ先に殺してあげますよ。ハーベストさん」

 

 

 

 

 

 フリーザの修業期間は、実に一年に及んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶえっくし!!」

「うわ!? なんだよ姉ちゃん。きったねぇなー」

「う、うっさい! こちとらさっき湖に落とされて寒いったらないっつーの!」

 

 最初の訪問から数えてもう何度目かになるビルスの星にて、ハーベストこと空梨は今日も今日とて弟達の修業につきあわされていた。付き合わされるのは最初だけと思っていたら、なんとその後も継続的につきあわされているのだ。たまったものではない。

 

「ふう~む。やはりご姉弟ですねぇ。ハーベストさんも、ベジータさんと同じく頭で考え過ぎてしまいがち。ですが慎重かと思えば、いきなり大胆に突っ走る所もある……。臨機応変に対処できると言えば聞こえはいいですが、ようはムラがある、ということですね。長所が短所に、短所が長所に、コロコロ変わる。まずハーベストさんは、精神面を鍛えた方がいいかもしれません。それだけでずいぶん発揮できる実力が変わってくると思いますよ」

 

 修業を見ていたウイスの言葉に、空梨は「ここでもメンタル面のこと言われんのか……」と項垂れた。その体は共に修業している悟空、ベジータと同じように、今は珍妙な修行用のスーツに包まれている。しかしそのずんぐりむっくりとしたスーツは見た目の間抜けさとは裏腹に、数百倍の重力にも耐えうる悟空たちをもってしても簡単には動けないほどの負荷をかけてくる代物だ。それを着た状態で湖に落ちた空梨は、一瞬本気で死んだと思った。

 すぐにグラビティープレッシャーによって湖の水を押しのけたことで窒息死は免れたのだが、もしそんな事で死んでいたらアホである。しかもこのスーツのせいで、死にざまがとんでもなく間抜けな姿になるに違いない。

 

(うう……。早く帰りたい……!)

 

 しかしそんな空梨を、水にぬれて体が冷えたからだけではない、予兆のような寒気が襲う。ブルりと背筋が震えあがり、体中をぞわぞわと虫が這うような感覚に空梨は嫌な予感を抱いた。

 

(あ、あれ。ちょっと待って。もしかして時期的に今って……)

 

 一年ほど前、ビルスの地球訪問があった。そしてその数か月後に悟空たちのビルス星での修業に付き合わされ始め、またもや数か月。時々家には帰れたものの、また付き合わされて数か月。…………ちょっと時期的に遅すぎる気もするが、そういえば忘れちゃいけないイベントがあった気がする。

 そして空梨が何かを思い出しかけた、その時だ。

 

「おや? なにやらブルマさんから着信が入っていますね。もしかして、ま~た素敵な美味しいものを用意してくださったんでしょうか!」

 

 喜々とした声をあげたウイスが、杖先の光る玉をのぞき込む。しかしそれとほぼ同時にビルスが住まう星に、新たなる来訪者が訪れた。

 流星のように落ちてきた光、そして爆発音。そこからしばらくして、煤に汚れて汗だくな姿だというのにふんぞり返った態度で堂々と現れたのは、美しい女性を従えたビルスによく似た神。

 

 

 

「お~いビルス! オレだー! 俺、俺! 邪魔するぜー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、地球にて。

 

 北の都の海上付近に現れたフリーザ軍の大型宇宙船より姿を現したフリーザは、まずあいさつ代わりとでも言わんばかりに指先から都へ向けて光線を放つ。

 しかしその眼前に滑り込み、その光線を弾いた者が居た。…………孫悟飯である。

 

 悟飯はフリーザの赤い光線を片腕一振りで弾き飛ばすと、鋭い眼光でフリーザを睨んだ。

 

「フリーザ……!」

「おや? あなたは……」

「孫悟空の息子、孫悟飯だ!」

「ああ、なるほど。あの時のガキですか。ホッホッホ、大きくなりましたねぇ。ところで、あなたのお父さんは何処です?」

「父さんは今、外出中だ。お前の相手は僕がする」

「あなたが? ふむ……。まあ、鍛えてはいるようですが……」

 

 フリーザは以前の小さい姿から随分と逞しく成長した悟飯をまじましと眺めた。紫色の胴着をまとい構える姿は、なるほど父親によく似ている。しかしその眼光が、どこか孫悟空とは違って見えた。成長したから、という理由だけではないほど雰囲気が変わっている。

 そしてその内包する力が自身と戦うにふさわしいものであると見抜いたフリーザは、ひとつ頷く。そして遠方より次々と現れた地球人たちを見て、笑みを深めた。

 

「……いいでしょう。他のお仲間に比べたら、あなたはずいぶんとお強いようです。孫悟空と戦う前の前菜として認めて、お相手してさしあげましょうか」

「ご、悟飯。行けるか? なんかフリーザの奴、前に会った時よりずいぶん強くなった気がするけど……」

 

 フリーザの言葉にやや弱気な声で悟飯に問いかけたのはクリリンだ。ナメック星にてヤムチャと天津飯が殺された時の記憶は未だに脳裏に焼き付いており、フリーザの冷酷さは重々承知している。その相手が復活し、とてつもなく強くなって現れたとなれば、少々弱気にもなろうというもの。

 他にこの場にたどり着いた仲間はピッコロ、天津飯、餃子、ヤムチャ、亀仙人。ブウ子のテレパシーによって他の面々にも連絡は伝わっているはずだが、一番北の都近くに居たのがこの六人だったのだ。

 

「ええ。フリーザが以前と比べて別人みたいに強くなっているのは分かります。ですが、僕だって不本意ですがセルと日常的に戦って鍛えてるんですよ! そう簡単には負けませんよ。いえ、勝ってみせます」

「へへっ、すっかり頼もしくなっちまったなぁ悟飯の奴。……悔しいが、俺たちじゃフリーザの相手はつとまりそうにない。せいぜい都に危害が及ばないように、その他大勢をやっつけてやるか!」

「ああ! 奴らの好きなようにはさせんさ!」

「ボクも頑張る!」

 

 悟飯の言葉を受けて、ヤムチャ、天津飯、餃子もそれぞれやる気を出す。クリリンもそれを見て一人だけ弱気になっているわけにもいかないと、頬を張って気合いを入れ直した。妻である18号に格好をつけて出てきたのだし、このままでは情けなさ過ぎる。

 

「ふむ。では、わしらもつゆ払いに努めようかの。……ピッコロ。おぬしはフリーザと戦わんのか?」

「フンッ。俺もナメック星で不完全に終わった一対一の戦いに決着をつけたい気はあるがな。だが、悟飯がやる気を出しているんだ。無粋な真似はせんさ」

「ほっほ。そうか」

 

 亀仙人の言葉に、ピッコロが口の端をニヤリともちあげつつ答える。そしてフリーザの周囲を群がるように飛んでいるフリーザ軍の兵士たちを睨みつけた。その眼光は鋭く、その視線をうけた兵士は思わず震えあがる。

 一方その様子をサングラスの奥で目を細めて見ながら笑った亀仙人は、自分もまた戦闘態勢に入る。今自分たちがするべきことは、悟飯が周囲を気にせず戦えるようにすることだ。

 

「では、ゆこうか!」

 

 

 

 

 

 

 戦闘の火ぶたが、切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 かと思われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待て孫悟飯! フリーザの相手は私に譲ってもらおうか! まったく、大遅刻もいい所だぞフリーザよ! 復活してから四か月どころか一年経ってしまったぞ! うっかりまた除け者にされるところだったじゃあないか!」

 

「いや待て! フリーザの相手は俺がする! なんといったって親父の仇だからな! この機会逃してたまるか! そのために仕込みをいつもの倍の速度で終わらせてきたんだ!」

 

「フリーザ様!? 本当にフリーザ様なのですか!! な、なんというお懐かしいお姿……!」

 

 

 フリーザと悟飯の間に割り込むようにして現れたのは、珍しく焦った表情のセル。居酒屋の厨房服に前掛けをつけ、包丁を握ったままのラディッツ。趣味に興じている途中だったのか、和服を身にまとい茶せんを手にしたギニューだった。これにはフリーザも少々面食らう。

 

「…………おやおや、見慣れない方に加えて、懐かしい顔がいくつかあるようですねぇ。ラディッツさんに、ギニュー隊長ですか」

「ほお、俺の顔を覚えていたか」

「再びまみえることが出来ましょうとは……!」

「感動してくれているようですが、あなた前に私が蘇った時ハーベストさん達となんだか仲良さそうにしてましたよね?」

「そ、それは……!」

 

 フリーザの言葉に言い淀むギニューだったが、遅れてやってきたジースと共にキッと表情を引き締める。

 

「わけあって我々は地球で生きていくことを決めましたが、フリーザ様が蘇ったとあらば我らの忠誠は貴方様のもの! そうだな? ジースよ!」

「ええ! 減刑が叶わずとも、リクームたちもきっと分かってくれるでしょう。たとえ悪の道であっても、フリーザ様を裏切ってはギニュー特戦隊の恥! ……ナッパたちを裏切るのは心苦しいですが、これもまた我らの宿命!! ですね? 隊長!!」

「ああ、そうだとも!」

「ぎ、ギニューさん!?」

 

 ギニューとジースの発言にぎょっとする悟飯をはじめとした地球サイドの面々。だがしかし、それはすぐに問題ではなくなった。

 

「はいはい忠誠乙忠誠乙。ちょ~っと大人しくしててね~ん」

 

 何処からか桃色の光線が飛来しギニューとジースに直撃したかと思えば、彼らはミルクチョコレートとチーズサンドクッキーに姿を変えた。そしてそれを壊さないように器用にキャッチしたのは、桃色の女魔人……ブウ子である。その隣にはジャコの宇宙船に乗ったブルマも居る。

 

「ぶ、ブルマさん! なんで来ちゃったんですか!? それに、ブウ子まで!」

「そりゃあ、フリーザの顔をおがんでやるためよ。結局ベジータ達には連絡つかなかったけど、このメンツなら負ける事ないでしょ? だったらフリーザがやられちゃう前に、しっかり顔を見ときたいじゃない。前地球にフリーザが来た時はトランクスがすぐやっつけちゃったから、結局見れなかったし。天界に現れた時も空梨が一瞬で倒しちゃったしさ!」

「そ、そんな見物気分で……」

 

 ブルマの言葉にクリリンががっくり項垂れるが、その様子もなんのその。ブルマはフリーザの顔を確認すると、隣に乗っていたジャコの背中をバンバンと叩いた。その手にはヘタウマと言われそうな、絶妙に特徴をとらえてはいるがバランスが微妙なフリーザの似顔絵が握られている。

 

「それにしても、あんた結構絵心あるじゃない! 似てるわよ、フリーザの似顔絵!」

「こ、コラ! なんでよりにもよってこんな目の前に割り込むんだ! ブウ子ちゃんがテレパシーでどうしてもって頼むから送って来たのに……! というか、ブウ子ちゃんは飛べるんじゃないか!」

「いやん、だってジャコちゃんが居た方が楽しいかなって。……駄目だった?」

「え、いや。駄目って事は無いが……」

「よかった! ねえジャコちゃん。このお菓子、ちょっと預かっててくれる? 壊しちゃ嫌よ?」

「は? あ、ああ。わかった。でもこれってさっきまで人じゃ……」

「お・ね・が・い♡」

 

 宇宙船のそばにより、手を組み上目遣いでウインクをキメるブウ子。ジャコはすぐに頷いた。

 

 

 

 

 そしてその横では、フリーザそっちのけで悟飯、セル、ラディッツが誰がフリーザと戦うかでもめていた。

 

 

「私はこれでも結構楽しみにこの日を待っていたんだぞ! いいから黙って私に譲れ! お前たちは雑魚共を相手にしていればいいだろう!」

「セル、もしかしてこの事を知っていたな!? まあ、それはもういいけど。でもお父さんが居ない今、地球を守るのは僕の役目だ。僕がフリーザと戦う!」

「いや、俺が戦う! ベジータじゃないが、俺にだってサイヤ人としてのプライドがある。惑星ベジータを破壊してお袋や親父を殺したフリーザを前に簡単に引けるか! 普段は家事に育児に仕事にと忙しいが、トレーニングを怠った事は無い! どうせカカロットやベジータが居れば真っ先に戦おうとして俺の出番は無いんだ。あいつらが留守にしている今がチャンス! 今まで鍛えてきた成果を見せてやる!」

「いいや戦うのは私だ! ……いやラディッツ程度なら前座で収まるだろうから先に戦わせてやってもかまわんが、孫悟飯お前は駄目だ。ここはお前がなまらないように修業につきあってやっていた私に恩を返すつもりで譲りたまえ」

「勝手に押しかけて来ておいて恩だって!? 図々しいにもほどがある!」

「待てそれよりセル貴様俺が前座だと!? 聞き捨てならんな!!」

「事実を言って何が悪い! 悪いが君では今のフリーザの相手はつとまらんよ! それより私だ! やあフリーザ初めまして! 私は君の兄弟だ!! この究極神セルがお相手をしよう!!」

「どさくさに紛れて戦おうとするな! 行くのは俺だ!」

「いや僕です!」

「私だ!」

 

 

 

 フリーザを置き去りに、言い争いは続く。

 

 

 

「……あの~……。フリーザ様」

「…………。なんですか、ソルベさん」

「攻撃、始めてしまってもよろしいでしょうか?」

 

 揉み手を作りながら、恐る恐るとこめかみをピクピクさせているフリーザに問いかける現フリーザ軍参謀ソルベ。しかしフリーザはそれに否と答えると、乗っていた浮遊ポットから下りて宙に浮くと、すうっと息を吸い込んだ。

 

 そして腹の底からの大音量でもって叫ぶ。

 

 

 

 

 

「舐めるのもいい加減にしろ、貴様らぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 空に暗雲が立ち込め、禍々しい黄金の光が世界を満たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+++++++++++++

 

 

 

 

 

 

 

●月□日

 

 

 なんかフリーザ様が第六宇宙の試合に強制参加させられることになった。初めてフリーザ様に仲間意識が芽生えた。

 

 

 

 

 

 




時間的にフリーザ様がちょっと来るの遅れると、こんな可能性もあるかなって。

というわけで力の大会前にフライングフリーザ様からの第六宇宙試合編、スタートです(自分の首をしめつつ

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