とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

85 / 135
全員集合!勝つのはどっちだ?神の御前試合

 僕たちが目覚めた時には、すでにお父さんと魔人ブウの戦いは始まっていた。

 

 ブルマさん達に事情は聞いたけど、まさか魔人ブウを目の前にして僕らが助けに入れないなんて……! もしそれをすれば、破壊神ビルスという方の機嫌を損ねてしまうらしい。そうすれば、どちらにしろ僕らは敗北するのだ。

 

 

「だりゃああああ!!」

「甘いわよ!」

 

 

 

 どうやらお父さんがブウを追い詰め、そのすきにブルマさんが作った発明で僕らを助けた時のように再度ブウの体内に侵入しておばさんを助け出すことにしたらしい。ブウと戦う直前にブルマさんがこっそりお父さんに耳打ちした作戦らしいけど、でもあの接戦ではその隙が無い!

 スーパーサイヤ人3になって戦うお父さんだったが、魔人ブウは強かった。吸収した僕らを失ったから弱体化すると思いきや、パワーこそ下がったがその戦いのセンスと来たら馬鹿みたいに高い。

 

「あなた達、はじめ魔人ブウの何を恐れたのかしら? それは、学習能力では無かった!? あっははははは! パワーこそ全てなんて脳筋と一緒にしないでほしいわ! わたしは学習する。そして一度吸収した者たちの経験も全てものにした! 弱くなったんだと思っていたのならとんだ勘違いよ!」

「弱ぇなんて思っちゃいねぇ! おめぇは一人ぼっちでよく頑張ってるさ!」

「な、何よ。一人ぼっち? 同情しようっての? 馬鹿にして!」

「ちげぇよ! すげぇって言ってんだ。姉ちゃんには悪いけど、今ちょっとわくわくしてる。おめぇみたいな凄い奴と戦えるんだからな!」

「悟空さー! そんなこと言ってねぇで、空姉さまの事頼むだだぞー!」

「わ、わかってるよチチー!」

 

「は、はは……。お父さんはお父さんだなぁ……」

 

 ブウの奴も想定外だったろうな……。きっとおばさんが体内に居るから本気で攻撃できないと踏んでただろうに、お父さんときたら全力だ。それだけブウの実力を認めてるってことなんだろうな。簡単には死なないって。

 半分くらい呆れてるけど、試合を見守るみんなの顔からはいつの間にかさっきまでの暗い影が消えていた。……やっぱりお父さんは凄い。

 

 

「カカロットの野郎……こんな時に楽しみやがって」

「お、おい! あれは大丈夫なのか? 空梨は無事に済むんだろうな? あいつは救出出来たのか?」

「! ベジータさんにラディッツおじさん!? ど、どうしてここに……! っていうか、もしかして生き返ってます!?」

 

 聞き覚えのある声にばっと振り返れば、そこにはあの世に居るはずのベジータさんとラディッツおじさんが居た。驚く僕をよそに、ブルマさんとトランクスがベジータさんに、空龍とエシャロットと龍成がおじさんに突進していった。

 

「べ、ベジータの馬鹿ぁ! あ、あんたねぇ、どんだけ心配したと思ってんのよぉ!」

「ぱ、パパ! 生きてるんだよね!? パパ生きてるんだよね!?」

「く、くっつくな! …………心配をかけたな。今戻った」

「「「おどうざーーーーーーん!!うあ゛あ゛あ゛ああああああーーーー!!」」」

「こ、こら! 3人まとめて泣くな! エシャロットはともかく、空龍と龍成、お前たちは男の子だろう!」

「だ、だっで、ぼぐがぼっどづよがっだら、おどうざん、死んでながったがも……うええええええーーー!」

「お、おにいじゃんだって、ないでるも゛ん、ぼくだって、泣いていいんだも゛ん……!うあああああーーー!」

「お父さんお父さんお父さん! ひうううううう!」

 

 は、話しかける隙が無いな……。

 呆然と見守っていると、ふいに肩を叩かれた。

 

「家族の再会は見守ってやりたまえ、孫悟飯」

「! せ、セル!?」

「地球とブウが復活した日から死んだ者はパワーアップしたナメック星のドラゴンボールで蘇ったぞ。界王星に居た奴らは私が瞬間移動で連れて来てやったのだ。感謝したまえ」

「え、いや、何が何だか……! っていうか、羽!?」

「そうだよな。そこ、まず突っ込むよな……」

「クリリンさん!?」

 

 気づけばクリリンさん、天津飯さん、ヤムチャさん、タピオンさんまで居る。

 

「か、界王神界にまた人間が……」

「もう色々諦めろい。もう今さらじゃろ。それにしてもポタラの出番なさそうじゃのぅ。おぬし、見本のために合体したのに合体損じゃな」

「それは今言わなくても……」

「それにしても、ドラゴンボールじゃと? ぬぬぅ……まさかナメック星人が他の星のために願い玉を使うとは……」

 

 界王神様達が何か話してるけど、申し訳ないけど気にするほど今の僕に余裕はない。そんな僕の心中を察したのか、クリリンさんが説明をしてくれた。

 

「俺たちも色々あったんだけど、結果的にはなんとか無事にナメック星でドラゴンボールを集めたんだよ。そしたら界王様と界王星に居たベジータとラディッツから連絡があってさ……地球が無くなったなんて言うもんだから、さっそくポルンガに地球の再生と死者蘇生を願ったんだ。でも俺たちも色々聞きたいんだぜ? まず何でブウは女になってんだよ……」

「ええと……」

「わかった。説明しきれないんだな? 俺たちの方も似たようなもんだから気にしなくていいぞ」

「あ、はい」

 

 く、クリリンさんたちが何故かすすけて見える……。あと何か悟ってる……。きっと、何かとてつもない苦労をしたんだろうな……。

 

 

「しかし加勢に来たつもりだったが、あれはどういうことだ? 悟飯、お前よくわからんが凄まじいパワーアップをしているようだが……正直今のカカロットよりお前の方が強かろう? 何故カカロットは一人で戦っている。それにもう一度聞くが、姿は見えんが空梨は救出できたのか? 出来たんだよな。でなければカカロットが全力で戦うはずが無い……あいつは今何処に居る?」

 

 空龍と双子を体にぶら下げながらおじさんが聞いてくる。もっともな疑問に、僕は先ほどブルマさんからされた説明と同じことを話した。

 

「まさかとは思ったが、やはり空梨はまだあいつの中か! お、おい本当に大丈夫なんだろうな! あいつは一回死んだら生き返れんのだぞ!!」

「だ、だだだだだだだだ大丈夫ですよきっと! い、今はお父さんを信じましょう!?」

 

 がくがくと体をゆすぶられ脳が揺れる。お、おじさん! 気持ちはわかるけど落ち着いて……!

 

 なんとかおじさんをなだめて居ると、近くから大きな舌打ちが聞こえた。

 

 

「本当にムカツク野郎だぜ……。あいつ、戦いを楽しんでやがる」

「そ、それは……」

「そして、本気でブウを殺そうとしていない」

「え、それは空梨さんが人質になってるからじゃないのか?」

「違うな。……こんな時だが、なんとなくわかったぜ。あいつの強さの秘密が」

「ベジータ……?」

 

 ベジータさんは隣に居るブルマさんとトランクスくんを見た。

 

「守りたいものがあるからだと思っていた。その心が得体のしれない力を生み出しているんだと……だが、それは今の俺も同じことだ。では何故だ? いつも奴は俺の一歩先を行く。俺と何が違う? ……簡単だ。あいつは勝つために戦うんじゃない。絶対に負けないために、限界を極め続け戦うんだ」

「負けないために……」

「頭にくるぜ。戦いが大好きで優しいサイヤ人なんてよ……。あいつはこの状況でも、諦めていない。なんとなくわかるぜ。あいつ、ついには俺を殺さなかっただろう。まるで俺がほんの少しだけ人の心を持つようになるのが分かっていたみたいにな。それと同じで、ブウにもなにか期待めいたものを感じてやがる。見ろ、あの楽しそうな顔をよ! どう見ても追い詰められた奴の顔じゃないぜ」

 

 

 ベジータさんはちらっと戦いを見守るビルス様を見ると、深くため息をついた。

 

 

「どうやら、俺たちが手を出せる段階はとうに過ぎてしまったようだ。後は見守るほかあるまい。チッ、あいつの強さは理解したが俺だって負ける気は無いんだ。……今回は先を越されたがな」

 

 

 そう言うと、ベジータさんはにやりと笑って腕を組んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「頑張れカカロット。暫定ナンバーワンは貴様にくれてやる。……あの馬鹿を、どうにか助けてみやがれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




身の程知らずには後悔も限界も無いのです。

ついに原作で言えば最終巻半ばを越えました!あと少し見守っていただければ幸いです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。