「いや~、それにしてもおどれぇたぞ。ねーちゃんが餃子に弟子入りしてるとはなぁ」
「オレは空梨が悟空の姉だったことに驚いたぞ」
悟空たちと再会し、予選会場への道すがら話をしていると先ほど別れた人物が話題に上がった。
孫 空梨。オレの弟弟子である餃子に、ある日いきなり超能力の弟子入りを申し込んできた人物である。苗字は先ほど知ったが、初めから彼女が悟空の姉か武天老師様の知り合いだと分かっていればオレもあれほど警戒しなかったものを……。
断っても断ってもしつこく何日も食い下がってきて、いくら撒こうと追い付いてきてあれは修業の邪魔だった。半ば詐欺のように回る口で結果的に弟子入りさせてしまったが、餃子の超能力を悪用しようとたくらむ者かもしれないとしばらく無駄に神経を張り詰めてしまったぞ。
先ほど本人にも言ったのだが、あれは確実に右から左へ聞き流していた。格好ばかりは背伸びしようとしたのか化粧までして整えていたが、中身は相変わらずのようだ。少し何か言うと「はいはい」と生返事ばかりして……。
「エッヘン! ボク、空梨の超能力の師範!」
餃子が誇らしそうに胸を張って言う。
今まで末弟子だった餃子にとって自分の得意分野での弟子が出来たことは確かな自信につながったようだ。それについては、当初「弟子入りするといいことがこんなにある」とベラベラうさん臭く語ったあいつの言葉もけして嘘ではなかったのだろう。いや、今思い出してもあのこちらの気力をそぐ語り口は疲れるが……。
「しっかし、占いババ様に弟子入りしてたはずが超能力まで目覚めちゃったってのには驚いたよな~。昔からそういうことが得意だったのか?」
クリリンが悟空に尋ねるが、悟空は頬をぽりぽりかいて不思議そうに話す。
「いや、オラにとってねーちゃんって畑仕事してる姿しか思い出せねぇからなぁ……。なあなあ、天津飯。しばらく一緒に居たんだろ? オラのねーちゃんって強いんか?」
「悟空、修業と言っても占いと超能力のだぞ?」
「そうなんだけどよ、神さまんとこから帰ってきた今だと分かるんだ。ねーちゃん、何かとんでもない力を隠していそうだってな」
「何?」
神のもとで修業してきた悟空がそんなことを言うとは。
空梨も色々慌ただしいやつで、2年近く一緒に過ごしたと言っても1日中一緒に居たわけではない。餃子との超能力の修業とオレたちの食事の準備や洗濯などしてくれた以外は、忙しく移動し何処かで別の事をしていたようだ。聞けば「占いババ様のところで修業」と「畑の手入れ」と「生活費を稼ぐための仕事」だそうだ。オレ達の修業場所はそもそも結構人里から離れていたと思うのだが、飛行機でも持っていたのか? 身元が判明した今も変な奴という印象はぬぐえないが、まさか再会した実の弟にまで妙な感想を抱かれるとは。
しかしこの悟空の姉弟となれば、何か力を隠していてもおかしくないか。
「それは本当だとしたら、一緒に居てそれが見抜けないオレもまだまだということだな」
「はははっ、でもオラにもはっきりとは分かんねーぞ」
「うへぇ、そうだとしたら姉弟そろって強いのかー」
「いや、だからはっきりとは分かんないけどな」
そんなことを話していたらいつの間にか予選会場だ。雑談はほどほどにして、気を引き締めなければ。
「ところでさ、悟空とお姉さんって何歳くらい離れてるんだ?」
会話の締めとしてか、今まで聞いているだけだったヤムチャが無難な話題で終わらせることにしたようだ。悟空とはそんなに離れているように見えないし、オレと同い年くらいか? それにしては子供っぽいところが目立つが。
「え~と、ひいふうみい……う~んと」
「お前……姉ちゃんとの年くらい覚えとけよ」
「たはは」
指折り数えるも途中で数えるのをやめたことから、そもそも覚えていなさそうだ。おい、姉弟だというのにそれでいいのか?
「天さん、ボク弟との年の差聞いたことあるよ!」
そこで、俺よりずっと空梨と話す機会が多かった餃子が手をあげた。弟子の事を話せるのが嬉しいのか張り切っている。
「弟より、7歳年上だって!」
「馬鹿な! 俺より年上だと!?」
短いですがちょこっと天津飯視点でした。
最後の言葉が言葉足らずだったので修正。天津飯「馬鹿な!(俺より)年上だと!?」の()内を追加しました。