僕とお父さんの前に立ちふさがったセルは、以前とは比べるべくもなく強くなっていた。
僕とお父さん両方がスーパーサイヤ人2になって応戦していたが、それに対してセルは余裕すら見せていた。
先ほどのダーブラって奴……過去のセルと同じくらいの強さだったけど、あいつなんかまだ可愛い方だったんだ。僕はそいつにすら苦戦していたのだから、それより強いセルに敵わないのは当然だろう。お父さんも一緒に戦ってくれてるっていうのに……数年間修行をまともにしていなかったことが今になって悔やまれる。かつて一回だけスーパーサイヤ人ゴッドになった時の凄まじい力は今でも覚えているけど、あれはみんなの力があったおかげだ。……いくらイメージしても、今の僕が自力であの域にたどり着ける気がしない。だから今は、今の僕が持てるだけの力をもってなんとか切り抜けるしかないんだ。が、頑張らないと……!
そういえばダーブラだけど、今はラディッツおじさんと空龍が応戦している。「昔のセルって奴、未来の僕が敵わなかった奴なんでしょ? 僕戦うの嫌いだけど、負けるのも好きじゃないんだよね。ってわけで、その昔のセルと同じくらいの強さの悪魔のおじさんは僕が倒してあげるよ!」と空龍がスーパーサイヤ人になって階下への道を破壊して飛び込んだ時は焦ったけど……ラディッツおじさんも後を追ったし、大丈夫だと今は信じよう。
うん……未来の空龍さんと比べると、自由奔放に育っている分空龍ってかなりフリーダムな性格なんだよな……。
「考え事とは余裕だな?」
「な!? くっ!」
気づけばセルが目の前に居て、打ち込まれた拳をなんとか腕をクロスして防いだ。しかしその威力に体が吹き飛ばされる。
「悟飯、おめぇは下がってろ! あとはオラがやる!」
「え、お父さん!?」
吹き飛ばされた先でお父さんに受け止められるが、その発言にぎょっとする。2人がかりでも厳しいのに何を言って……。
「心配すんな。実はオラにもまだ隠し玉が残っててな……そいつで一気に決着をつけてやる」
「隠し玉……ですか?」
「ああ。前にスーパーサイヤ人ゴッドなんてもん見ちまったからよ、なんとか自力であの域までたどり着けないかって姉ちゃんにバリア張ってもらってその中で色々やってたんだ。さ、おめぇは下に行け悟飯! 兄ちゃんたちを助けてやってくれ。空龍は天才だけど実戦経験が少ないし詰めがあめぇ、兄ちゃんは強ぇけど空龍に攻撃を集中されたらそれを守ろうとして危なくなるかもしれねぇ。お前が2人を助けてやるんだ」
お父さんの自信のある様子を見て、数秒迷ったけど結局は頷いた。お父さんがここまで言うんだ……きっと大丈夫だ。むしろ僕がいたのでは足手まといになるかもしれない。
「分かりました。お父さん、気を付けてくださいね!」
「おう、まかせとけ!」
言うなり、ちょうど飛んできていた気弾を左右に分かれて避けてお父さんはセルの方へ、僕は階下へ続く穴へ飛び込んだ。
階下の空間は再び魔法で変えられたのか、どこかの荒野へ変わっていた。その中心には脈打つ巨大な玉があり、おそらくあれが魔人ブウが封印されている玉なんだろう。その傍らにはバビディと、さっき僕たちに助けを求めてきたミノシアという少年、それとおそらく彼の兄だろうよく似た風貌の青年がその横に立っていた。少し離れた場所では界王神様とキビトさんが中央をハラハラした様子で見ている。
そして肝心のダーブラと空龍、ラディッツおじさんだけど……。
「ビリビリしちゃえ、サークルサンダー!」
「ぐう!? こんな小細工……!」
「お父さんそっちいったよー!」
「あ、ああ。サタデークラッシュ!」
「ぐああああ!?」
スーパーサイヤ人化した空龍が雷のようなエネルギー波でダーブラを筒状に囲んだかと思うと、そこから抜け出した先に待ち構えていた同じくスーパーサイヤ人化していたおじさんが技を放ちダーブラに大きなダメージを与えた。そして怯んでいたところにすかさず空龍が追撃をしかけ、ダーブラを地面に叩き付ける。
「き、貴様ぁ……!」
「へへんっ、怖くないもんねー。追い込み漁って知ってる? 予想がつかない動きをされるなら、最初から制限しちゃえばいいのさ。僕とお父さんのコンビネーションから逃げられるかなぁ?」
空龍はそう言うなり、今度は突然バビディに向けてかめはめ波を放った。これにはダーブラも焦り、バビディの前に飛び出て攻撃を防ぐ。しかしそれが大きな隙となり、横からラディッツおじさんが放ったエネルギー波をまともに受けてしまった。しかもその攻撃が終わる前に上空に移動していた空龍が「雷どっかーん!」とか言いながら特大のエネルギー波で追撃を加える。はっきり言って鬼のように容赦がない。
「は、はは……」
思わず変な笑いがもれた。そして僕に気づいたのか、空龍が元気に手を振ってくる。
「あ、悟飯お兄ちゃーん!」
「お、おーい!」
とりあえず手を振り返した。
「こっちは何とかなりそうだから、悟飯お兄ちゃんは今のうちにあの悪い魔法使いをやっつけちゃって!」
「鬼か!!」
バビディの叫びに思わず一瞬だけ同情した。うん、一瞬だけだよ一瞬だけ。
それにしても空龍、戦況把握に余念がないな。来たばかりの僕を作戦に組み込むのが早い。そういえば関係あるのか分からないけど、コンピューターゲームの対戦では一度も空龍に勝てたことなかったっけ。いつもハメ技でやられるんだよね。
ともかく、そういうことなら話が早い! バビディさえやっつけてしまえば、魔人は復活せずにすむんだ!
しかし来たばかりの僕が動くよりも早く、バビディの隣にいた青年が背負っていた剣を引き抜きバビディに切りかかっていた。バビディは既の所でバリアらしきものを張って防いだようだが、彼らが決起したとなると奴を守る者は完全に居なくなった。チャンスだ!
「わぁ!? な、何するんだよお前!」
「もはやお前を守る者はいない! ならば、俺が貴様を殺すまでだ。貴様さえいなくなればセルも正気に戻る!」
「へ、へぇ~。そんなこと言っちゃっていいのかな? 君たちの体の魔人ヒルデガーンは、いったい誰の魔術で封印されてると思ってるの?」
「くっ、はあ!」
青年は悔しそうに顔を歪めたが、すぐに気を取り直して剣をバビディに振り下ろした。しかし奴のバリアが強力なのか、それは再度はじき返される。僕も急いで参戦しなければ!
だけどその前にバビディの奴はなにやらブツブツと呪文を唱え始めた。それと同時に兄弟2人がもだえ苦しみ始める。
「ブウが復活してからゆっくりコントロールする方法を編み出そうと思ってたけど、やむを得ないね! さあ現れろ魔人ヒルデガーン! 魔人ブウ復活を邪魔する奴らをみんな殺してしまえー!!」
「やめろ! く、ぐぁ、クソッ、うう、ぐあああああああああああああ!!」
「兄さん、もう、ボクも……わあああああああああああ!!」
「何だって!?」
兄弟2人の体から何か靄のようなものがあふれ出したと思ったら、それがひとところに収束する。そして、山のような巨体をもった怪物が出現した! これにはダーブラを追い詰めていた空龍とおじさんも驚いて動きを止める。
「か、怪獣だ……」
さっきまであんなに威勢が良かった空龍が、顔を真っ青にしてラディッツおじさんの背に隠れるけど無理もない。な、何てことだ……! これが魔人ブウだと言われても驚かないくらいだ。凄まじい気を感じる……! それも、とびきり邪悪な。
「そう簡単にはいかないか……」
僕はそうつぶやくと気合いを入れなおす。
どんなに無茶でも、僕がやらねば誰がやる!今、地球の危機に気づいて対処できるのは僕達だけなんだ。絶対に地球を好きになんてさせないぞ!
主人公の日記視点が挟めなくて絶賛タイトル詐欺中(今さら
いつも感想をくださり本当にありがとうございます!返信したり出来なかったりで申し訳ありません;ですが全部大事に読ませていただき、執筆の糧にしています。
最初飽き性の自分がここまで書けるとは思っていなかったのですが、感想をもらったら嬉しくてつい続き続きと書いていたら気づけばこんな話数に。
原作コミックで言うならもう残すこと4巻を切りました。あと少し、完結まで頑張りますので見守っていただけたら幸いです。