とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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赤き神

 結果だけ言うと、悟飯はスーパーサイヤ人ゴッドになれなかった。やはり人数が足りないのか、それとも未だスーパーサイヤ人になれない未熟者の俺が居るからか、そもそもやはり伝説は伝説だったのか…………とにかく、無理だったんだ。

 俺たちの力を分けることで一時的にパワーアップすることは出来た。だがそれでは到底セルには敵わなかったんだ。今も戦っているが、セルにいいようになぶられながら遊ばれているのが現実だ。

 

「期待しただけに残念だ。まあ、あとはせいぜい出来るだけ長く私を楽しませてくれたまえ」

「くッ!」

「だりゃあッ!!」

 

 悟飯と空龍が諦めずに飛びかかっていくが、すぐに受け流された。俺も残っている力を絞ってエネルギー波を撃つが焼け石に水だろう。自分の無力さが歯がゆい。ベジータの奴も消耗しているため、今は俺と似たり寄ったりだ。

 

「何もしないままやられるのはごめんだ……! 俺たちも戦うぞ!」

「うん、天さん!」

「ああ!」

「へっ、情けないことに震えが止まらんが……やってやる! 地球人の底力、見せてやろうぜ!」

「クッ、先に仙豆だ! 吸収されたセルが落とした奴があるだろう! 回収して悟飯たちに食わせるんだ!」

 

 今まで傍観していたクリリンたちも、無駄と知りつつ攻撃を始める。そしてピッコロの指示で、先ほどの戦いで吸収された方のセルに奪われていた仙豆を回収し、悟飯、空龍、ベジータに食わせることに成功した。といっても、セルの奴止めようともしないぜ……わざと見逃したな。

 

「ラディッツ! ほら、仙豆だ。食え!」

「す、すまん」

 

 俺もクリリンに仙豆をもらい回復し、体に力が満たされる。だが回復したところでまるで勝てるビジョンが見えん……! くそ、俺は相手の強さを計れるようになるために強くなったんじゃないというのに。

 

 だが今の俺には守るべきものがある。

 最後まで諦める気は毛頭ない! 最後まで、せいぜいしつこく抗ってやるぜ!!

 

 俺たちは油断なく構え、セルの前に立ちふさがった。

 

 

「ふっふっふ。いーい眺めだ……壮観だな。この地球で最も強い戦士達が並ぶ姿は」

「チッ、嫌味にしか聞こえないぜ」

「おっと、気に障ったかな? すまないね。ああ、そうそう……ちょっと試したいことがあるんだ」

「試したいことだと?」

「何、ちょっとした戦いを楽しむためのスパイスさ。さっきの孫悟飯のように怒りで覚醒する奴が居たら面白いと思ってな」

 

 セルはそう言うと、俺と空龍を交互に見た。

 

「君たちの家族だが、しばらく私が預かっていたんだ。今どうしているか聞きたいかね?」

「! き、貴様……! 空梨と空龍に、俺の妻と子に何をした!」

「お、お母さん……!」

 

 セルは両腕を広げると、もったいぶった口調で続けた。

 

「安心したまえ。子供の方には何もしていないし、彼女も殺してはいない……だが、逆に殺した方が親切だったかな? 死ぬ直前まで追い詰めて、あらゆる痛みを味わってもらった。きっと死んだほうがましだと思っただろうなぁ。いじましくも無言を貫いたが、きっと狂う寸前だったのだろう。今は虫の息ではいつくばってるだろうが、もしかしたら痛みに耐えかねて自殺してるかもなぁ」

「き、貴様……!」

 

 

「セルぅぅぅぅ!!!!」

 

 

「! お、お父さん!?」

「ラディッツ!?」

 

 

 

 空龍が飛びかかろうとしたが、先に動いたのは俺だった。

 頭の中が真っ赤に燃えている。この野郎、空梨に、空梨になんてことを……!

 

 もう敵わないだとか、そういったことは考えなかった。自分の体が黄金の光を放っているのも気にならなかった。とにかく思ったのは、こいつをぶっとばしたい! それだけだ!

 

「ハハハッ! 言ってみるものだな! だが、今さら普通のスーパーサイヤ人では私には勝てんぞ?」

「黙れ!!」

 

 渾身の力で拳をセルに叩き込んだ。だが、俺の怒りでのパワーアップなどたかが知れていた……受け流され、胸にセルの手のひらがあてられる。

 

「素晴らしい家族愛だった。では、さようなら」

 

 俺は今度こそ最後だと理解した。すまん、空梨、空龍……! 俺は夫と父親失格だ。お前たちを助けることが出来なかった……!

 

 

 

「かめはめ波ぁぁーーーー!!!!」

「!?」

 

 

 

 死んだと思ったその時だ。どこからか青白い光が迫り、俺の目の前にいたセルを吹き飛ばした。奴はすぐにそれから抜け出したが、光が来た方向を見ると驚愕に目を見開いた。

 俺もそちらを見て、まさかと口を開く。

 

 

「待たせたな、みんな!」

「悟空!」

「お父さん!」

「カカロット!?」

 

「孫悟空だと!? 馬鹿な。貴様はプロトセルの自爆で死んだはず!」

「へへっ、ちょっとした裏技ってやつさ」

 

 そこに居たのは死んだはずのカカロットだった。頭の上に妙な光のわっかを乗せているが、たしかにそこに存在している。そしてその肩に非常に危ういバランスで乗せられているのは……。

 

「この体勢で撃つ!? ちょ、おま、落ちる落ちる!! こちとら両手両足の骨折れてんだぞ馬鹿!」

「わ、悪ぃ姉ちゃん。でもさっきより元気じゃねぇか?」

「うっさい! とにかくちゃんと抱えるなら抱えててよ!」

 

「空梨!」

「お母さん!」

 

 ずいぶんとボロボロだったが、カカロットに抱えられていたのは紛れもなく空梨だった。

 柄にもなく目に涙が溜まるのが分かる。空龍など、先ほどまでの凛々しい顔をぐしゃぐしゃに崩して涙と鼻水を盛大に垂れ流していた。

 

 

 カカロットはセルを見ると、にやりと笑った。

 

 

「さあセル、またせたなぁ……。今度こそ、スーパーサイヤ人ゴッドの誕生だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○○◎◎◎○○○○○○○○◎◎◎○○○○○○○○◎◎◎○○○○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえちゃん、姉ちゃん!」

 

 オラが体を揺すると、ねえちゃんは苦しそうに唸ると目を開けた。

 

「馬鹿者! 怪我人を雑に扱うでない!」

「わ、悪ぃ。姉ちゃん、でぇじょうぶか?」

 

 占いババのばあちゃんに注意されて、思わず触っていた手をぱっと放した。倒れてる姉ちゃんを見てつい駆け寄ったけど、よく見なくてもひでぇ怪我だ。くっそぉ……セルの奴め! 姉ちゃんにひっでぇことしやがって!

 

「ご……くう……? うぐっ、あッ! ……ッ、それに、ババ様も? な、なんでここに……!」

「無理に話さなくていい。えっと、話せば短いんだけどよ。オラ、セルとの戦いで死んじまって……でも地上ではてぇへんなことになってるし、いてもたってもいられなくてよ。どうにかならねぇかって思って、界王様と急いで閻魔様んとこ行ったんだ。そしたら……」

「わしが待っておったというわけじゃ。お互い一日だけ地上に戻れる権利を使って、この世に舞い戻ってきたというわけじゃよ」

「え、お互いって…………。!? な、なんでババ様にまで天使の輪が!? まさかついに寿みょ「馬鹿者! まだ死ぬには早すぎるわい! あいつじゃ。あのセルって奴に殺されたんじゃ」!?」

 

 ばあちゃんの話を聞くと、それを知らなかったのか姉ちゃんが凄く驚いた顔をした。

 

「くっそ、あの野郎! ごめん、ババ様……多分、私を探させないためにあの昆虫……」

「謝らんでもいいわい。全部終われば、どうせおぬしらがドラゴンボールで生き返らせてくれるじゃろ」

「ああ、もちろんだ! でさ、姉ちゃん。地上に戻ったはいいんだけど、どうやったってオラにもあのセルは勝てそうにねぇんだ」

「究極体になったか……」

「そうだ。それで、姉ちゃんが前に手紙で教えてくれたスーパーサイヤ人ゴッドっちゅーやつしかねえと思って姉ちゃんを迎えに来たんだ。悟飯たちが人数足りなくてもなんとかやってみようとしたみてぇなんだが、結局出来なくて今も戦ってる」

 

 この世に戻ってくる前、界王様と地上の様子を見ていた。

 悟飯とかめはめ波をした時と違って、もうあの世にいるオラ達に出来る事は無い……悔しい思いをしながら見ていたら、なんと悟飯たちがスーパーサイヤ人ゴッドになろうとしたんだ!

 だけどやっぱり必要な人数が足りなかったのか、いい線まで行ったんだがゴッドにはなれなかった。セルの奴はそれを残念そうに見ると、まるで遊ぶみてぇに悟飯たちをなぶり出した。そこまで見てオラ悔しくて悔しくて、瞬間移動で界王様と閻魔様んとこまで行ったんだ。前にじいちゃんが地上に戻った時みてぇに、どうにかこの世に戻ってこれねぇかって。

 

 だけど閻魔様は案内役になる占いババが居ないと無理だと言った。

 もう出来る事はねえんかと諦めかけたら、閻魔様がにやりと笑ったんだ。すると、占いババのばあちゃんが閻魔様のでっけぇ机の陰から出てきたんだ! 閻魔様もこんな時に性格悪ぃよな。実はばあちゃんが死んだとき、本人の希望で天国に送らず閻魔様んとこに留めておいたんだと。「古い付き合いじゃから、閻魔様がわしの我儘をきいてくれてのぉ。地上の戦いが終わるまで、何かあったらいかんと待っておったんじゃ。そしたら、まあ情けない。まんまと死んできおって。ホレ、さっさと地上に戻るぞい!」と、ばあちゃんはそう言ってオラを連れて地上に戻ってくれた。

 

 だけど、悔しいけど今のオラじゃ行ったところで役に立てねぇ……。だから、ゴッドに必要な人数をそろえてからみんなの所に行こうと思った。

 そこでセルに捕まった姉ちゃんを探そうとして、ちょうど目の前には困った時の占いババ! っちゅうことでばあちゃんの占いで姉ちゃんを見つけて瞬間移動でやってきたんだ。でも大怪我してるのにはおどれぇたぞ。

 

「姉ちゃん、怪我がつれぇかもしれないけど、一緒に来てくれっか?」

「いいよ、大丈夫だよ。行くよ。じゃないと、大変だもんね」

「すまねぇ……」

「ふっ、しおらしいじゃん。らしくないね。お前はもっと堂々と構えてなよ。それがみんなを安心させてくれるんだから」

 

 怪我が痛むだろうにそう言って笑った姉ちゃんを見て、気力がわいてくる。

 よし! 絶対セルを倒してみせっぞ!

 

「今居るサイヤ人は? 他に誰か死んでない?」

「トランクスがやられちまった……。だから今は悟飯、ベジータ、兄ちゃん、空龍だ。オラ達を入れて6人になる」

「人数はクリアか。でもベジータと私が正しい心的に微妙だな……嫌だけど、保険に空龍も連れてった方がいい?」

「? でえじょうぶだ! 姉ちゃんは正しい心もってっぞ! 何度助けられたかわかんねぇ。それにベジータの奴もトランクスを殺されて、ちょっと変わった気がすんだ。多分今のあいつならでぇじょうぶだと思う」

 

 オラがそう言うと、姉ちゃんは顔を真っ赤にして眉間にしわを寄せた。ははっ、なんだ姉ちゃん。照れてんのか?

 

「ッ、っ! ほ、ほら。それじゃあ早く行くよ! ババ様はここで空龍を見ていてくれますか?」

「ああ、わかった。わしに出来るのはここまでだからの」

「十分助けてもらいました!」

「ああ、サンキューばあちゃん! 必ず勝ってくる!」

 

 姉ちゃんは何処を支えても痛そうだったけど、なんとか抱える。そしてオラたちは戦いの地に再び舞い戻ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○○◎◎◎○○○○○○○○◎◎◎○○○○○○○○◎◎◎○○○○

 

 

 

 

 

 

 

 正直もう駄目だと思ってた。だけど、お父さんと空梨おばさんが来てくれた!

 もう怖い物なんてない。不思議と心は落ち着いていた。

 

「いくぞ、悟飯!」

「はい!」

「チッ、今度失敗したらただじゃおかんぞ!」

「少し黙れベジータ!」

「そうですよおじさん、悟飯さんが集中できませんよ!」

「何ィ!?」

「外野は気にしないでいいからね悟飯ちゃん」

「は、はい」

 

 こんな場面だけど、思わず笑ってしまった。

 

 セルの奴は「まだか」と言いたそうに見てるけど、今度こそ出来るという確信があった。

 みんなの気が、5人のサイヤ人の気が僕に流れ込んでくる。

 

 不思議だ。高揚していた気分が、波のない水面のように静まっていく。けど、体中に力が満たされていくのが分かった。

 

 力が僕の周りで赤いオーラとなって渦巻き、そして最後静かに収束した。

 驚くほどに満たされていて、驚くほどに頭が澄んでいる。これが、これが……!

 

 

 

「それがスーパーサイヤ人ゴッド……か」

 

「ああ、そうだ。さあセル。決着をつけよう」

 

 

 

 

 

 

 

○○○○◎◎◎○○○○○○○○◎◎◎○○○○○○○○◎◎◎○○○○

 

 

 

 

 

 

 そのころ、宇宙のどこか。

 

 

「……むにゃ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




終わらなかったorz

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