とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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26ページ目 セル編裏側実況24時その1~さらばナッパ!また逢う日まで

◇日Л日

 

 数日経ったがまるで状況が好転する気配はない。

 それどころかセルは一回だけ寝てる空龍を連れて所用だとかで外に出たが、その後は「セルゲーム終盤までここで様子を見守るぞ」などと言って私を絶望させた。つまり数日か数週間、私はこいつとホテルに缶詰めということだ。

 何その罰ゲーム。私ホテルのスイートでくつろぐ妙に顔の良いイケボの虫人間というシュールな光景をずっと見続けなくちゃいけないの? 気が狂うわ!

 

 でもって私はテレビ係だと。まったく、こんな時のためにババ様に占いを習ってきたんじゃないというのに……。

 罪悪感にかられながらも、言われるままに水晶玉に皆の様子を映しだした。仕方がない状況とはいえ、友人や家族を売っているようで非常に心苦しい。

 

 そして私はすぐに水晶玉を叩き割りたくなった。

 

 人造人間と戦う時、何を思ったかスーパーサイヤ人になれて浮かれちゃったのかベジータの奴が「スーパーキングベジータ」とか名乗り出したのだ。いや、いいんだよ? 血筋的に王を名乗っても全然いいんだよ? だけどなんで英語に訳してくっつけた貴様。お父様みたくベジータ王じゃいかんかったのか。いい年して親への反抗のつもりか、反骨精神か何かか。

 それに対して普段ならまず笑い転げて腹筋に重大なダメージを負うのだが、この時ばかりは違った。

 

 セルの憐れむような視線が痛い。

 

 何だ、何をそんなに憐れむ! あいつは弟ってだけで私には関係ないのに、そのネーミングセンスに酷いとばっちりをくらった気分だった。ちなみに空龍は「おじちゃ、かこいい!」と大興奮だった。息子の将来が少し心配になった。

 

 

 

 

 

◎月▲日

 

 

 今日も今日とて、水晶球で私たちを探し回って憔悴していくラディッツを見て凄く申し訳ない気分になった。ここ数日寝ていないしろくに食事もとっていないようだけど、大丈夫だろうか。心配だけどそれだけ私と空龍を大切に思ってくれているのは素直に嬉しい。もし無事に帰れたら(いや絶対無事に帰るけど)何でも我儘聞いてあげたいし世話焼いてあげたいと思った。

 今は不本意な理由で高級ホテルなんて泊まってるけど、今度南の国へ家族でバカンスにでも行こうかな。ブルマにおすすめのリゾート地を聞いておこう。

 

 ちなみに空龍だが、流石にずっとセルが抱えてる状態だとぐずりだした。

 しかもこの子はその身に伝説を宿すスーパー赤ちゃんなので、超化してぐずりだすとセルでも無傷でなだめるのは難しくなったようだ。かといって手を出されでもしたら、危険を冒してでも私が黙ってはいない。セルもそれは面倒だと思ったのか、すぐ近くに尻尾を待機されて脅されているもののやっと空龍を私の腕の中に返してくれた。未だ逃げる算段は整っていないが、凄く安心した。数日ぶりの息子の体温である。ちょっと涙ぐんだ。

 

 

 だけど私は怖い。今は戻ってきたとはいえ、ここ数日完璧に空龍の機嫌を取って手懐けていたセルが。

 

 あれ、このセルって一つの未来世界滅ぼしてきたんだよね? なんでこんな手慣れてるんだよ。逆に怖いわ!

 

 

 

 

 

▲月◎日

 

 

 今日はまさかのスーパーヒーロー登場であった。なんと、私を探してサイバイマンとナメックカエル達がここまでやって来てくれたのだ!

 

 こっそり私の日記に近づいて「私だ、ギニューだ」と文字を打ってきた時は驚いた。いや、うすうす感づいてはいたけど……ギニュー隊長でしたか、カエルの中身は。ちなみにもう一匹はなんとジースくんだった。え、何で?

 幸い私が食い散らかしたケーキのアルミやらセロファンの山に隠れているうえにカエルの持つ気が小さいのでセルが気づいた様子は無かった。奴は向かいのソファーで横になってポテチをつまみながら水晶玉で悟空たちの様子を見ている。一回だけツッコミたいがいいか。昼下がりの主婦か夏休みの学生かお前コラ虫野郎。足組んでたお前は何処行ったよ。

 

 

 

 まさか本当に恩返し的な行いをしてくれるとは思わず、彼らの行動には感動した。だけど今の隊長達では私と空龍をここから連れ出すのは不可能だろう……そう思い、私はセル対策を手紙にしたためて隊長らに託すことにした。

 

 多分セルの計画が成功すれば、現時点の悟空たちではどんな手を使っても敵わないだろう。だが、ひとつだけ一発逆転の裏技があるのだ。

 

 正直私がこれを思い出したのは、セルが未来の私の日記からビルス様の記述を引っ張り出した時である。日記にはビルス様がいかに凄いかヤバいかだけは書いてあったのだが、物語上それに対になるはずの存在の記録が書かれていなかった。

 そう、あれだ……新作アニメと映画で新たに出現したサイヤ人の可能性、スーパーサイヤ人ゴッドだ。これについては言い訳しようもないのだが、完全に私が書くの忘れてた。幼い頃の私ときたらどこまで現在の私の期待を裏切ってくれるんだ……いや、今回に限ってはセルにゴッドを知られなくて助かったけど。

 多分昔はこんなに原作とお友達展開になってるとは思わなかったんだろうな……もしも昔の私と今の私が出会ったら、間違いなく「そおいッ!!」って投げ飛ばされるわ。何やってんだお前って。そして私も投げ飛ばすわ。好きでこうなったんじゃないって。

 今回思い出せたのは奇跡に近い。多分追い詰められて、記憶のふたが吹っ飛んだんだろう。

 

 で、とにかく急いでいたから箇条書きでささっと手紙を書いた。内容は「未来から来たセルがもう一体居て、現代のセルと合体狙ってんぞ! 今理由あって捕まってるがとりま命の危険は無し! 空龍も一緒、元気! 合体前にそっちの一匹の方を倒せ! もう一匹はそれからだ! いいな出来るなら絶対完全体にすんなよ! 特にベジータ見張っとけ! 絶対馬鹿やるから! 絶対だぞ! あと万が一合体した場合の対策だが、ほぼ無理ゲーだから裏技ひとつ教えるな! 私も昔惑星ベジータの古文書っぽい何かで読んだだけだけど、なんとサイヤ人には協力形態が存在する! 正しい心を持ったサイヤ人が5人、手をつないで1人のサイヤ人に力を注ぎ込むとサイヤ人の神が誕生するのだ! その名もスーパーサイヤ人ゴッド! 最終手段な上に正しい心の基準が分からないし人数必要だから注意な!」とかこんな感じだ。やっつけ仕事感が半端ないが、まあいいだろう。伝えるべきことは書いた。

 

 

 だが、ここでまさかの事態発生。

 

 陰に隠れていたドジっ子ラディッシュがこけて出てきやがった! らでぃっしゅぅぅぅぅっぅ! おま、ドジだと思ってはいたけど、まさかそこまで!?

 

 

 一気に部屋が緊迫感に包まれたよね。でもって止める間もなくセルが器用に部屋に被害が出ない程度の気弾でサイバイマンたちを攻撃し始めた。だが驚くべきことに、ラディッシュを庇ったナッパの防御力が凄まじかった。なんと手加減されていたとはいえ、セルの攻撃に耐えたのだ! こいつ、最早戦闘力2400どころじゃないな……いつの間に成長していたんだ。

 思わず呆然としたまま見守ってしまったが、なんとナッパが「自分はいいから逃げろ!」とばかりに仲間を背に庇いセルの前に両手を広げて立ちはだかったのだ。これには感動で体が震えた。セルすら「ほう」と感心していた。が、すぐに念力でナッパの後ろに居た仲間と私のもとに居たカエル2匹を窓の外にぶっとばしたあたり鬼畜の所業である。だが、とどめに放たれたエネルギー波は再びナッパにふせがれた。サイバイマンたちはホテルの最上階から落ちてしまったが……きっとそれくらいなら無事だろう。だが、ナッパは駄目だった。ベランダから続くプールに浮いていたが、すでに彼はこと切れていた……空龍は泣きわめき、私も悔しさに拳を握る。まさかサイバイマンを殺されてこんなに悔しい思いをするなんて……! ただ畑が好きで働き者な良い奴だったのに。

 

 だけど、これできっとギニュー隊長達が手紙を届けてくれるはずだ。これでどれくらい事態が好転するか分からないが、何もやらないよりはましだろう。

 ナッパはセル編が終わったらきっと生き返らせる。それまで天国で待っていてほしい。

 

 

 

 

 さて、明日からまた原作を水晶玉越しに追う日々だ。

 

 何もできない今、せめて日記に記録を残すくらいはしてみるか。未来空龍やラディッツも修業するみたいだが、果たしてどれくらい成長できるものか……。とにかく、殺されないことを祈ろう。

 

 

 

 

 

 

 


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