とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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★25ページ目 虫野郎来訪~誰か助けろください

 

 

 

Ы月◎日 続き

 

 

 

 

 

 とりあえず家の前に居るのがセルだと認識した時点で逆方向にダッシュしようとしたら、気づいたら空龍が腕の中から消えていた。まさかと振り返れば、空龍が楽しそうな笑い声をあげてセルに向かって突撃していたという絶望。

 ちょ、おま、自ら!? と混乱した私だったが、そういえばこの子人間より化け物寄りの人たちが好きだったと思い出した。まさか幼いころからサイバイマンやらミイラ先輩方に慣れていた弊害がこんなところで出るとは……! 違う、空龍。そいつはいつもの愉快な遊び相手じゃない! しかも「みどりのごきぶりさん」とか言うのやめろ! セルさんは脱皮とか考えるとセミだろ! いやたしかに私もちょっと思った事あるけど失礼だろヤメロ!! 生きた心地がしなかった。

 

 しかし自ら腕に飛び込んできた空龍をセルさん(完全体)が離すわけもなく、私は彼の「少し話したいがいいかね?」という申し出を受けるしかなかった。だからちらちらと尻尾を空龍の近くにちらつかせるのをやめてほしい。

 そして渋々何故この場に居るのか分からないセルを家に入れると、奴は聞いてもいないのに朗々と自分の身の上話を得意げに話し始めた。

 

 

 

 まとめるとこんな感じだ。

 

 

・自分は未来から来た。

 聞いたところによると、培養器から目覚めた直後に大きな気を感じて本能に従ってそこへと赴いたらしい。そこには過去から戻り、人造人間を倒す前の最終調整をしていた空龍とトランクスが。

 敵う相手ではないと悟ったセルは隙をついて空龍を吸収、パワーアップした力でトランクスを殺害したとのこと。その後未だ健在だった17号と18号を吸収し完全体に。

 そして人類を恐怖に陥れながらも、張り合う相手が居ないことにだんだんと退屈し始めるセル。人類もほぼ殺しつくし、当面の目的もなくなってしまったセルは暇だった。そこで何か暇つぶしになるヒントは無いかと、吸収した者や過去のデータの中から記憶をあさる作業を始めたのだという。そして奴は吸収した空龍の記憶の中でひとつ引っかかるものを見つけた。それが私の日記である。空龍が私の形見としてもっていた日記……つまり空龍が以前来た時私も読ませてもらった未来の私の日記だ。セルは過去に戻った空龍と私がそれを読んでいる記憶を引っ張り出し、日記がなにかしらのデータ媒体であると気づいたらしい。

 

・幸い(私にとっては不幸なことに)日記は空龍と一緒に吸収されることなく、地下にあった空龍たちの潜伏場所に転がっていたらしい。わざわざ1年以上かけて探し出したと聞いた時はその執念に引いた。そんなに暇だったのか。

 日記のロックを解いたセル(やっかいなことにこいつ役に立ちそうだからとブルマまで吸収していた)は、その中にあった記録に興味を持った。「くだらない妄言ばかりで読むのに苦労した」とのたまう緑ゴキブリに若干の殺意を覚えながらも黙って聞いていた私偉い。いや、怒ったところで空龍が人質にとられているし強さではかなわないだろうし無駄だろうけど。

 その記録の中には、私のかきっ散らかした原作知識の数々。しかも死ぬ直前まで思い出せる限りの原作との違いまでご丁寧に書いてある始末。

 セルはそれをすぐに信じたわけではなかったようだが、その中でセルが居る未来より更に先に起こりうる可能性として書かれていた「魔人ブウ」や「破壊神ビルス」の記述に一気に興味がわいたようだ。

 自分より強い相手が現れる。日記の信ぴょう性よりも興味が勝った瞬間である。

 

・目的もないし暇! じゃあいっちょ過去に行ってみるかとタイムマシンで過去にログインした未来セル。まずは日記を書いた本人に会ってみようと私に会いに来た←イマココ

 

 

 

 以上である。マジか。ちょ、マジか。え、この日記そんな厄呼び込んだの? っていうか暇だからって時間旅行してくんなよ暇か! いやそうか暇だから来たんだったな……。

 

 あと、戦闘の達人のデータを集めたはずの自分の中に私と私の師である餃子師範の細胞データが無いからそれで興味がわいたのもあったんだと。それが何でかは私も知らないと答えたけど、ちょっと考えたら思い当たるふしが一つ。

 そういえばナメック星行くとき超能力で宇宙船狂いかけたような……もしかして、超能力に機械関係って弱い? スパイロボット、知らないうちに撃墜してた? だとしたらまさかのミラクル。今でさえヤバいセルに餃子師範の超能力まで加わったらなんて考えるとぞっとする。

 

 

 

 

 長々と身の上話を聞いた後だが、私が自分で何か話すまでもなく裏付けを取られてしまった。何されたって、最長老様と同化したピッコロさんの細胞を使って記憶を読まれたんだよ。最長老様の時と違って知りたい記憶がどれかはっきりしてるからか、セルが求める情報は全て暴かれた。

 まさかの原作知識暴露第一号がボスとか死ねる。

 

 

 そして更なる強敵が来る可能性がはっきりしてきてワクドキなセルさん。でも、それだと今の自分じゃ勝てないことも分かってしまったらしい。そこからセルさんによる現代ショタセルさんの光源氏計画が始まった。冗談めかして書いている場合じゃないが、こうでもしないと正気を保てそうになかった。なんだよそのクソゲーみたいなハードモード。馬鹿か。なんだよ、完璧な私を育てて取り込んで究極の私になるって。馬鹿か。え、そしたらお前消えるんとちゃう? 原型のお前いなくなるけど? え、分岐した世界は固定化されるみたいだから今の自分が居る分にはこの世界はもう別の世界だから問題ない? わっかんねーよ! 分かるように言えよ! こちとらタイムパラドックスやらなんやら頭痛いことまで考える余裕ねーんだよ!!

 要するにたとえばこの世界で以前空龍にお願いされたように私が空龍を産まなかったとしても、未来の空龍が消えるわけじゃないという理屈と同じことらしい。この辺本当に意味わからないが、セルが私に説明するのを途中放棄したためこれで納得するしかなかった。馬鹿で悪かったなクソッタレ!!

 

 

 記憶も取られたし、説明を聞いた後は殺されるかと身構えたが何故だか「しばらく付き合ってもらおうか」と拉致られそうになった。なので、どうせ軟禁されるならと私は「居心地のいい場所がいい! 子供もいるしこれは譲れない」と主張。セルだってどうせなら殺風景な荒野なんかより居心地のいい場所のが好きなはずだ。色んな人間の細胞を使ってるんだし、そういう気持ちが無いわけじゃないはず。最初本人否定してたけど、後々優雅にくつろいでいる姿を見ればまんざらでもなかったんだろう。

 そしてしつこく食い下がった結果了承を得ると、大枚はたいていつか泊まってみたいと憧れていた高級ホテルの最上階ワンフロアスイートをあらゆるコネをつかって確保した。ちなみに大金を使ったことがばれるとラディッツに申し訳ないのでついコネを使った相手に「私がここに居ることは黙っていてくれ」と言ってしまい後で後悔した。この時助けを求めていれば何か変わっただろうに……一時の保身に走った結果がこれだよ。いや、どっちにしろピッコロさん譲りの聞き耳立ててたセルがやりとり聞いてたから無理か……このハイスペック昆虫どうしてくれよう。

 

 

 そして私は今、セルの真正面で死んだ目で日記をぽちぽち打っている。セルは存外楽しそうに空龍をあやしながら優雅に足を組んでいる。けど私がちらっとでも見ると空龍のそばに吸収用の尻尾をちらつかせる。ガッテム。くそっ、この日記が未来から厄を呼び込んだと分かってはいるが、もうこれは私の心の安定剤と化している。書いて頭の中を整理するしか今の私に出来る事が無い。無事に帰還出来たら、ブルマに頼んで私が死んだら日記が自爆する機能でもつけてもらおうか。

 

 日記を書くだけでは建設的ではない。ついでだから「これからどうするのか、なんで私たちを捕まえたのか」とダメもとで聞いてみた。親切に教えてくれるセルさんマジ紳士だわー。はっはっはクソが。

 

 

 

 なんでも、セルが推測するところによれば私はいわゆる「特異点化」しているのでは、とのこと。

 なんぞそれ、マンガかアニメでしか聞いたことないから分かりやすい説明はよと、すでに恥も外聞もなく訊ねれば呆れながらもセルは答えてくれた。意外に律儀である。

 簡単に言うと正しい歴史の流れが存在するが、そこに私という異物が放り込まれたことでそれがねじ曲がり予測不可能な流れへ変わってゆくらしい。例としては、今まで大きく変わることがなかった悟空の冒険や戦いが私が介入したことでナメック星で大きな違いを産んだことが挙げられる。自分がそんなたいそうなものであるとは思えないが、今までの数々のバタフライエフェクトを思い出すと否定も出来ない。

 いや、いらねーよそんな特異体質。そもそも何をもって正しい歴史とするのかもわからないんだけど。やっぱりこの場合原作のことだろうか?

 

 しかしもしそうだとすれば、私が知る原作知識のようにこの時代のセルが完全体になるか分からないらしい。私を殺したら殺したでそれがどんな影響をもたらすかも分からないし、安全策としてこの時代のセルが完全体になるまで私を生かしたまま原作から完全に排除してしまおう、というのがセルの目論見らしいのだ。言おうか言うまいか迷ったが、そんなまどろっこしいことしなくてもお前が今すぐ17号と18号を現代セルに吸収させて完全体作ってしまえばいいんじゃん? と聞けば、それではつまらないというまさかの答えが返ってきた。

 

 このセル、原作の流れと私の記憶の整合性を確かめるためもあってか完全に物見気分で傍観する気満々である。どこまで暇つぶしに全力なんだコイツ。そんなに戦う相手が居なくなった未来は暇だったか。私の息子と甥っ子を殺してつかみ取った世界にずいぶん失礼じゃないかこの虫野郎。

 

 

 

 あと、占いで遠見が出来る事も知られたから原作を追うテレビ代わりにされるっぽい。おい……おい……私の存在っていったい……。

 

 空龍が人質の今、下手に動けないし都合よく誰か助けに来てくれないものか。行方不明になったらきっとラディッツが真っ先に探してくれるだろうけど、でもラディッツじゃセルに勝てないしな……。どうしよう、現状詰んだかもしれない。

 せめて占いババ様が私を占いで見つけて状況を把握してくれればワンチャンあるか? とにかく、今は他力本願するしか無いのか……ツライ。

 

 

 

 疲れた……今日はもう寝よう。もう全部明日考えよう。きっと明日、よく寝て起きてからホテルのルームサービスでスイーツ全部頼んで食べれば脳がもっと働いてくれるはず。糖分、糖分が必要なのだ今の私には。

 

 

 

 ああ、そうそう。ずっと空龍人質にとってるんだったら責任もってトイレ行かせてお風呂入れてご飯食べさせろよな虫野郎と投げやりに言ったら、変なものでも飲み込んだ顔されてから「……まあいいだろう」と了承された。チッ、ここで面倒がって空龍を返してくれればまだ逃げるチャンスもあったものを。

 

 でもちゃんと空龍の面倒を見るセルを見て、虫野郎は案外いいやつかもしれないと一瞬でも思った私の脳みそはそろそろ駄目だと思った。

 

 疲れた。

 

 

 

 

 

 

(日記は翌日に続いている)

 




セル編まとめ終わらなかった……!続きます。


またまた頂いた素敵イラストの数々に、脳汁出過ぎてそろそろ一回死ぬかもしれない。良い人生だった……。


【挿絵表示】
renDKさんから再び主人公のイメージイラストを頂きました!スーパーサイヤ人ver全身とノーマルverアップになっております。本編での参戦と言えば壁にしかなっていないというのに、主人公が超強そう。そして亀仙人様と18号さん、マーロンちゃんまで居るという豪華っぷりに至福の一言。本編ではあまり亀仙人様と接点ないけど、こんなシーンがあってもおかしくないかもしれません。


だつりょくさんから主人公の幼少期2枚、二十日大根春の芽生えあたりの主人公1枚をカラーで描いていただくという驚異の贅沢三昧セットを頂きました!

【挿絵表示】
幼少期1。主人公が生意気可愛い(褒め言葉)そして注目すべきは若ナッパさんとちびっこ2人である。この3人が昔とはいえ心臓わしづかみの愛らしさなんてどういうこと!?

【挿絵表示】
幼少期2。可愛く描いてもらった主人公の愛らしさが留まるところを知らないのはもちろん、各所に本編の小ネタをたくさん散りばめてもらってあって凄く嬉しい1枚。ちゃんと日記もぽちぽちしてます。

【挿絵表示】
主人公のツンとデレの奇跡のイラスト化。え、これあの三十路?苦行に耐えてラブコメ描いてよかったと拳を握り締めました。デフォルメ主人公がまた可愛いのなんのって……!



お二方とも、本当にありがとうございました!これを励みに頑張ります。






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