とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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究極体細胞神

 僕たちが新たな脅威、セルの存在を知ってから色んな事があった。まず何を置いても強くなる必要があるということで、神様の神殿の”精神と時の部屋”という不思議な部屋で修業することになったんだ。

 

 セルの事を聞いたラディッツおじさんは、このタイミングで姿を消した空梨おばさんと従兄弟の空龍を心配して凄く取り乱していた。でも、無理もないと思う。だって空梨おばさんの占いのお師匠様……占いババ様が、緑色の化け物に殺されたというんだから!

 僕だってもちろん心配でたまらなかった。いろいろ変なところも多いけど昔からよく遊んでくれた大好きなおばさんと、弟みたいに可愛い空龍が……もしかしたら、もうその化け物の犠牲になってしまっているかもしれないんだから。

 

 でも、思いもしなかったところから2人の無事は知らされた。知らせてくれたのは、なんと僕の家の畑に住むカエルさんとサイバイマン! 彼らは何故かナッパくんだけ欠いた状態で、ボロボロになりながらも僕たちに空梨おばさんからの手紙を届けてくれたんだ。その内容に、僕たちはまたもや驚かされることになる。

 けど、とにかく今は強くならないといけない。それだけは変わらず、僕たちは手紙の通り空梨おばさんたちが無事であることを信じて修業することにした。中でも奥さんと子供が無事ながらも危機的状況にあるとわかったラディッツおじさんの気迫は凄まじかった。力だけなら僕の方が強いのに、見ていて怖いくらいに。

 それを見て居た未来の空龍さんの、泣きそうだけど嬉しそうな顔が印象的だった。

 

 

 

 

 定員が2人までの精神と時の部屋へは、まずベジータさんとトランクスさんが入った。

 

 その間にピッコロさんが人造人間と戦うことになったんだけど、その気を察知して例のセルがその場に来てしまったんだ! 今の実力では何も出来ないからと、僕たちは歯がゆくも精神と時の部屋の前でベジータさんたちのパワーアップを待った。……だけどその間にピッコロさんがやられてしまい、17号が吸収された。すると、セルの気は今までとは比べる間もなくパワーアップしたんだ! そこでお父さんが瞬間移動でピッコロさんと、ピッコロさんを助けに向かった天津飯さん、ヤムチャさんを救うために向かった。

 すでに餃子さんがひん死で海に落ちていたピッコロさんを回収してくれていたので、お父さんは「1日待ってろ! 必ずおめぇをコテンパンに倒してみせる!」とセルに宣言してすぐに神殿に帰ってくることが出来た。みんな無事で、本当に良かったと思う。

 ベジータさんとトランクスさんが部屋から出てくると、ベジータさんは自信満々に自分が倒してしまうから修業してもお前たちに出番はない! と言って、ブルマさんが持ってきてくれた新品の戦闘服に着替えるとすぐにセルを倒しに向かってしまった。もしそうなら、それはとてもいいことだと思う。でもなんだか不安に思ったのは僕だけかな……?

 僕と同じく不安に思ったのか、何もしないまま更に1日も待てないからと空龍さんがベジータさんと、その姿を追ったトランクスさんの更に後を追った。それを見たラディッツさんもみんなに止められながらも「息子が行くというのに俺だけ情けなく待っていろというのか!!」と振り切って行ってしまった。

 それで更に不安な気持ちは増してしまったけど、次は僕とお父さんの番。この修業が無駄になることを祈りつつ、僕たちは精神と時の部屋に入った。

 

 

 

 それからの出来事も目まぐるしい。

 

 

 

 精神と時の部屋でなんとか僕もスーパーサイヤ人になることが出来たけど、出て来たら事態は急変していた。なんと、セルが完全体になってしまっていたんだ! しかも、武道大会を開くからそれまでにせいぜい強くなれだなんて……か、完全に遊んでるんだ、あいつは。僕たちで。

 

 どうしてセルが完全体になってしまったのか聞こうとしたら、トランクスさんにはさっと目をそらされた。ラディッツおじさんはベジータさんを睨みつけていた。空龍さんはベジータさんを指さしながら「ベジータおじさんがやりました悟飯さん」と素直に教えてくれた。直後に「空龍貴様!」と怒られていたけど、空龍さんは「だってそうじゃないですか! おじさんの馬鹿! 自信過剰! おたんこなす!」と、もっと怒っていた。もっと言ってやればいいと思った。

 空龍さんはそうとう怒っていたらしく、僕たちの次にすぐに精神と時の部屋に入ろうとしたベジータさんを足払いで転がしたすきにラディッツおじさんを引っ張って部屋に入ってそのまま閉じこもってしまった。ベジータさんの怒鳴り声が煩かった。

 なんだろう。今まであんまり似ていると思ってなかったけれど、ああいうところ空梨おばさんにすごく似てるなぁ空龍さん……。

 

 

 僕とお父さんはお父さんの提案でもう精神と時の部屋を使わなくなったので、そのまま外で修業することになった。セルには勝てなさそうと言いながらも、どこか余裕そうなお父さんの内心が理解できずに僕はもやもやとした気持ちを抱えながら、セルゲームと題された武道大会まで残りの時間を過ごすことになる。

 でも嬉しいこともあった。なんと、デンデが新しい地球の神様として新ナメック星からやってきてくれたんだ! お父さんに連れられてデンデと、そしてデンデの護衛として新最長老様が一緒に来させてくれたネイルさんに再会できたのは本当に嬉しかった。

 デンデのおかげでピッコロさんが神様と同化したことで使えなくなっていた地球のドラゴンボールも復活した。その優秀さにピッコロさんとネイルさんが満足そうにデンデを見ていたけど、2人は本当によく似ているから兄弟みたいでなんだか面白かった。

 

 

 

 そして迎えた武道大会当日。

 

 

 

 様々な戦いを経て、僕はお父さんが期待していた怒りによる覚醒でスーパーサイヤ人を超えた存在になった。それまでに、本当にいろいろあったけど……それでも、これでセルを倒せると思った。けど、僕は覚醒による影響か酷く慢心しきっていた。

 もっと、もっとあいつを追い詰めていたぶってから倒してやりたい。今思えば、これが空龍さんがずっと制御しようとしていたサイヤ人としての凶暴性の表れだったんだろう。僕はあんなに苦労して、スーパーサイヤ人状態を文字通り血を吐きながら制御に至った空龍さんを見ていたのに……力に溺れてしまった。

 

 

 その結果、僕はセルを追い詰めすぎた。奴は最後の手段として、地球ごと爆発する手段に出たんだ!

 

 そして……そして、それを阻止しようとお父さんがセルごと瞬間移動して……死んでしまった。遠く離れたどこかで、お父さんの大きくて温かかった……気が消えた。

 

 

 けどそれを嘆く間もなく、再びセルは現れた。しかも18号を欠いたというのに、完全体となった状態で。

 死の淵から蘇れば強くなるというサイヤ人の特性と、ピッコロさんの再生能力を併せ持った細胞がそれをさせてしまったんだ。今度は僕でも歯が立たず、こちらが完全に追い詰められてしまった。

 

 空梨おばさんが手紙で教えてくれた最終手段も、お父さんが居なくなってしまった今……たとえ以前拒否したベジータさんが手を貸してくれたとしても不可能だ。さっきセルが復活した時に放たれた一撃でトランクスさんもやられてしまったし、苦肉の策として赤ちゃんトランクスを連れてこようにも、数も時間も間に合わないだろう。

 それにもともと成功するかも分からない。おばさんも「サイヤ人の古文書に書かれていた」と手紙に書いていたし、実際見たことは無いんだと思う。そんな方法を、この土壇場で試せなかった。

 

 でも諦めるわけにはいかない。死んだお父さんや、トランクスさんのためにも!

 

 必死で僕を守ろうと空龍さんやラディッツおじさん、ピッコロさん達もセルにとびかかってくれたけど、容易く一蹴されてしまった。このままでは、みんな殺される。駄目でも、無理でも、僕がやるしかないんだ!!

 そんな時、どこからか「そうだ、諦めるな悟飯!」とお父さんの声が聞こえた。界王様の力を借りて、あの世から呼びかけてくれたんだ。

 

 そのお父さんの声に励まされ、セルが地球ごと滅ぼそうと放ったかめはめ波に僕も片腕ながら(もう片方はベジータさんをかばって使えなくなってしまった)かめはめ波を放って抵抗した。最初はダメかと思ったけど……あの世のお父さんが力を貸してくれたのと、ベジータさんが最後の力を振り絞って気弾でセルの注意を一瞬そらしてくれたことで、僕のかめはめ波の威力がセルに打ち勝った!!

 

 

 今度こそ勝てると、そう思った。

 だけどそれは無慈悲に横殴りに押し寄せた"もうひとつのかめはめ波”によって……可能性は、無に帰した。

 

 

 呆然としながらも、その姿を目にして理解した。

 

 おばさんが手紙で教えてくれた、奴が来たんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「な!?」

「い、今のかめはめ波は……!」

 

 驚く外野を愉快に思いつつも、私は目の前にいる”もう一人の私”に尾を突き刺した。何者かの介入によって死を免れ安堵していたそいつは隙だらけで、とても簡単な作業だったさ。

 

「な、あ゛!?」

 

 ひきつった顔がこちらを振り向く。やれやれ……仕方のないことだが、自分と同じ顔が無様にひきつる様は見苦しいな。

 そいつは私の姿を見とがめると、限界まで目を見開いた。

 

「わ、わ゛だし……!?」

「ああ、そうだとも。哀れなもう一人の私よ」

「セルが、2人……!」

 

 孫悟飯らが驚いているが、思っていたよりその驚き方が少ないな。もっと派手に驚いてくれて構わんのだが? その方が私も愉快というものだ。

 自らに満たされていく完全体の私の力に高揚感を得て、私は思ったことをそのままに告げた。

 

「どうした? もっと素晴らしいリアクションを期待していたというのに、随分と控えめじゃあないか。もっと驚いてくれて構わんのだよ諸君!」

「貴様、貴様はいったい……!」

「ふむ、驚いてほしいのはお前ではないのだがね……。まあいい。今の私は気分が良いから、どうせ同化してしまう私にも親切に教えてやろう」

 

 抵抗する間もなく力を奪いつくしたのでもう一人の私はすでに残骸だが、意識だけは残っている。完全に吸収しつくす前に、同じセルとしての情けだ。種明かしをしてやろう。

 

「単純な話だ。君は私に”餌”として育てられていただけの存在ということさ。私が神の域に至るための供物。光栄だろう?」

「何を、い゛っでいる゛んだッ」

「はははっ、必死だな。もうすぐ死ぬというのに理由をちゃんと理解したいか。なあに、初めから君の生は茶番だったという事さ。初めから教えてやるが、そもそも君の"未来から来たセル"という認識自体が間違いだ。それは私に植え付けられた記憶……君は、未来からタイムマシンに乗ってきてなどいない。この時代の、本来なら未完成であるはずの”幼体セル”だ!」

 

 私のその言葉に、訳が分からないと言ったように私が……ややこしいな。幼体では今はふさわしくないし、プロトセルとでも便宜上呼ぶとしよう。こんな者でも私の原点だからな。プロトセルが言葉を失い、口をパクパクさせている。まったく、私と同じ顔でその間抜けな表情はやめたまえ。

 

「私こそが未来から来たセルなのだよ……まあ、私はこの時代に来た時点ですでに完全体だったがね」

「まざが、ぞんな゛はずば、ないッ、コンビューダーはぁっ、この時代ではわだじを完成させるごどが、でぎない、はず!!」

「だから言っただろう? 餌として育てたと。君が成体になるためのパワーを分け与えたのも私。未来の記憶を与えたのも私。つまり君は生まれた時点で私の手のひらの上で踊らされていたというわけだ。ついでに17号と18号だが、目覚める前にこちらにも私のエネルギーをわずかだが与えた。君にとっても最高の餌だったはずだが、お気に召したかね? ククク……この時代ではドクター・ゲロはさっさと殺されたようだから、親切にも起動までしてさしあげたのだから感謝してほしいくらいだ。だが、君はそんな私の苦労に報いてくれた。よく完全体まで育ってくれたな! 感謝するぞプロトセルよ。これで私は究極体になることが出来るのだ!!」

 

 おっと、ぺらぺらとしゃべりすぎたかな? 調子に乗ってしゃべりすぎるのは誰の細胞の影響か。……まあ、だいたい予想出来るが。

 

「クソッ、ぐぞぉ! こんなごど、あっでいいはずが……!」

「気は済んだだろう? そろそろ黙りたまえ……ああ、そうそう。せっかくだから最後に教えてやろう。君は自分がパーフェクトだと思っていただろう。しかし、宇宙にはさらに上がいるのだよ……正直、サイヤ人などすでに眼中にないのだ。恐るべき魔人に、破壊神。それらに相対するにふさわしい自分を、私はこれから手に入れる」

 

 言うや否や、私は一気にプロトセルを吸収した。

 その瞬間、爆発的に細胞全てが書き換わっていくのを実感する。やはり、私の考えは間違っていなかった! もう一人の完璧な私を吸収することで、力は二倍どころか二乗、いや、さらに上を行く!!!!

 

 

 

「はーっははははははははははははははは!!!! やったぞ! 私は無敵の力を手に入れたのだーーー!!」

 

 

 

「あ、悪夢だ……! 今までだって勝てなかったのに、何だよあの気は!?」

「終わったのか……地球は……」

 

 そうだ、その顔が見たかった。絶望に引きつり、諦観で染まり切ったその顔が!

 私は膝をつく戦士たちを見て愉快な気持ちでいっぱいになった。

 

「この神にも等しき究極の生命体の誕生に居合わせたこと、光栄に思うがいい。そうだな。ここはひとつ、すぐにスーパーだなんだと名前をつけたがるお前たちのセンスに合わせて私も一つ名乗ろうか」

 

 私は心なしか神秘的とすらいえるオーラをまとった体を見下ろし、その名を決めた。

 

 

 

 

「神に等しき究極の細胞生命体……アルティメットセルゴッド、ってところかな?」

 

 

 

 

 

「黙れ!」

「む?」

 

 

 気持ちよく口上を述べたというのに、無粋にも黙れと言われた。それを発したのは満身創痍極まりないあの女の息子、孫空龍だ。

 

「貴様の考えなど、こっちはとうに知っているんだ! 結局もう一人のセルを倒すのは間に合わなかったが……!」

「なんだと?」

 

 思いがけぬ言葉に私は気分に水を差され、不快感で顔をゆがませる。私の計画が知られていた? たしかに失踪した空梨の居場所を探されると面倒なので占い師のババアを殺すなど多少暗躍はしたが、私の計画を話した唯一の相手である当の空梨は終始こちらの手の中。先ほどまで一緒にいたのだから、ばれるはずが……ああ、そういえば。

 

「そういえば、妙な生物とカエルが忍び込んでいたな。まさかあれかね? 目障りだったから掃除したつもりだったが、生きていたのか。それ以前に奴らにそんな知能があったとは驚きだ」

「黙れ! 彼らは、命がけで僕たちにお母さんのことを伝えてくれたんだ! そして、貴様を倒す算段はすでに整っている!」

「倒す、だと? 聞き間違いかな……とても面白い事を言っているように聞こえるが」

「違う……聞き間違いなんかじゃない!」

 

 今度は孫悟飯か。孫一家は往生際が悪いな。

 

「ベジータさん、今度は協力しないなんていいませんよね? やりますよ、例の奴を!」

「ぐ……! だが、人数が足りんぞ」

「やらないよりましです!」

「そうだ。このままでは終われん!!」

 

 なにやらサイヤ人たちが集まってきたな。いったい何をするつもりだ? こんなことは”あの日記”には書かれていなかったはずだが……。

 

 

「まあいい、これも余興だ。何でもいいからやってみせてくれたまえ」

「言ってろ!」

「ベースは悟飯だ。文句は言わせんぞベジータ。トランクスの仇をうつんだろう!?」

「……チッ」

 

 奴らは手をつなぐと、孫悟飯の背中に手を当てエネルギーを与え始めた。なんだ、私の真似事か、それとも楽しい楽しいお遊戯か?

 

 

 

 

 

「見せてやる……お前みたいなまがい物じゃない。サイヤ人の神の力を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




完全体の次は究極体だぜ!(デジモン脳)とか思ってたら、感想欄ですでに予測されていた方が居たでござる(´・ω・`)当たった方にはコングラッチレーションの言葉を贈りましょう!でも悔しいので神まで盛りました(安直
※勝手に予想される前に書けるかなぁとタイムトライアル気分なだけだったので、冗談交じりの負け惜しみです。感想欄での展開予想とかも凄く嬉しいので、よければまた書いてやってください。


次はようやく日記に戻れそうです。セル編の総まとめ回になればいいなぁ。
頂いたイラストも次で掲載させていただく予定です。

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