とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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★22ページ目 未来への課題~愛へと変わる7変化

 

◎月◇日

 

 

 いや、まいった。なんというかまいった。

 

 あの後悟空に言われた言葉で、息子との約束を守るには彼を産まないといけない=ラディッツと子作りというミッションがあることに気づいた私は頭が真っ白になった。いや子作りって……子作りって……。

 

 

 とりあえず、未来で出産が原因で死ぬなんて事実で余計な心配をさせないために悟空と聞き耳立ててただろうピッコロさんには口止めしといた。

 何で息子が私を拉致ったかは当然聞かれたが、そこは苦し紛れの口八丁でごまかした。でも察するに、ブルマとか天津飯とか餃子師範とかは後で絶対何か聞いてきそうだな……目が「後で話せよ」って語ってるもの。逃げたい。

 

 皆の所に戻る前、悟空が「姉ちゃん、死んだらもう生き返れないってことだよな? オラ、ヤダぞそんなの。チチにも言っとくから、何かあったら言ってくれな。みんなにも必要なら相談すんだぞ」と気遣ってくれたのが嬉しかった。

 くぅ……! かつて悟飯おじいちゃんにまかせて山に放置していこうとした弟がこんなに立派になって……! 今さらながらあの時の自分に罪悪感を覚えるが、本当にこの子が居てくれてよかったと思う。子供の前だと平静を装っていたが、内心かなり動揺していた私はこの言葉でかなり救われた。

 

 ちなみに遠目にミーハー心で見るだけで、ほぼ話したことのないピッコロさんであるが…………まさかの出産アドバイスを頂き心底驚いた件。いやマジで。

 だけどよく考えたら彼も卵生とはいえ出産経験者だった。いや、正確には彼のお父さんであるピッコロ大魔王の方だけど……あと、ピッコロさんと合体した最長老様もそういえば現ナメック星の住人のほとんどを産んだビッグママであるからして、それを考えると大先輩である。

 何でも「ナメック星人と比べても参考にならんかもしれんが、死なれても何かしら面倒そうだからな。一応教えておいてやる」「俺の父のように自分のうつし身として子供を産む場合、健常な状態でやればまず間違いなく自殺行為だ。自分の全てを子供に与えるからな」「最長老の知識だが、ナメック星で子供を産める存在が少ないのもタイプの他にその調整に起因する部分がある。産むときに調整を間違えると親が死ぬのだ」「貴様の無駄に高い潜在能力を考えると、それが全て子供に受け継がれ……別の言い方をすれば吸い取られた結果、お前が弱体化した可能性もある」とかかんとか。寡黙なイメージのあるピッコロさんがぶっきらぼうながら懇切丁寧に語ってくれた内容は、目から鱗だった。

 そうか、吸い取られる……つまり私の中の無駄にハイソな血が全部息子に集約すると。その結果残りかすの私は死ぬと。

 

 本当にそうか分からないけど、参考までに覚えておこう。

 

 

 さて、とりあえず子……子作りのことは置いておいて、他に今出来る対策から考えるか。これからしばらく、また忙しくなりそうだ。

 

 ちなみにラディッツとは目が合わせられなかった。クソ……同じ家に帰るっていうのに、これからどうすりゃいいんだ。

 

 

 

▽月×日

 

 

 今日も今日が始まった。一晩寝て昨日よりはまだ頭の整理がついているが、依然としてこんがらがっている事には変わりない。

 

 まず困った時のドラゴンボールであるが、現在使用不可能だ。何故かと言えば、前回から1年経った時にナメック星の人たちを生き返らせるために使用しているからだ。次に使えるようになるまでにはまだ時間がかかる。ので、それまで神龍頼みは出来ない。

 ちなみに悟空の方だが、こちらはトランクスが持ってきてくれた心臓病の薬を飲めばまったく問題ないので神龍頼みはしなくてもよさそうだ。薬は口酸っぱくして必ず飲むように言っておいた。本当にな、未来で物資が少ないだろう中で用意してくれた薬を飲まないで発症とか馬鹿以外の何者でもないからな。絶対に飲めよ。

 

 とりあえず当面の問題を書き出してみよう。

 

 

 

・子作り。

 逃げられない問題。でも息子を見る限り、私の遺伝子大勝利な感じなのでラディッツ以外が相手でも生まれる可能性有り? 息子から聞くに結構立派な父親やってたラディッツという父を彼から奪う形になるが、こればかりは私の気持ちの問題もある。それに純粋なサイヤ人としてでなく、地球人とのハーフなら伝説っちゃう可能性が低下するかもしれない。でもサイヤハーフはもれなく純正より才能があるので、逆に強化される可能性もあり。頭の痛い問題である。

 

・体を鍛える。

 現在進行形でベジータにシバかれつつ鍛えているが、それは子供が出来るまで別の世界線の私も同じようだったのでこれだけでは足りなさそう。妊娠してから鍛えるっていう選択肢は無い。間違って流産でもしたら目も当てられないからだ。しかしこのままでは別の世界の私の二の舞である……一時的に体を強化するすべを妊娠前に身に着けておく必要がある。例えば界王拳とか。後で悟空に教えてもらえないか頼んでみよう。

 ちなみにスーパーサイヤ人化も考えたが、まずなれる気がしないので技として確立してる界王拳のがベターだろう。バーゲンセールには入れる気がしないわ……。

 

・死後の魂について。

 これに関してはすぐに占いババ様に相談した。ババ様ならあの世に行けるから、閻魔大王様に私の魂について聞くことが出来るからだ。無茶を承知で事情を話して相談したら、なんとそのまますぐにあの世へ行って聞いてきてくれた。偉大なるお師匠様に感謝である。

 そして聞くところによると、予想はしていたがなんと閻魔帳には私の名前が載っていないらしい。つまり善行も悪行も記載されていない、存在そのものがこの世界に……少なくともこの地球には存在しない人間として扱われているのだ。これには閻魔様もビックリしたらしい。いやビックリするのはこっちだけどな!

 聞くところによると、たまにそんな魂が存在するとのこと。つまり、異世界からの迷子は私だけではないのだろう。一応まれに観測されるため記録には残っているが、詳細がわからないためあの世7不思議(他の6つが気になる)に数えられているらしい。

 死んだあとあの世に行くことは出来ないのかとババ様が聞いてくれたようだが、そういう魂は体から離れた時点で何処とも知れない場所に消えてしまうんだとか。彷徨うわけでもないので、回収は難しい……それがあの世の回答だった。

 つまり、やはり私は1回でも死ねばそのままデッドエンドらしい。いよいよもって死ねなくなった。いや、もとから死ぬ気ないけど……!

 

 

 とりあえず、細かいことは除いてこんなところか。

 

 とりあえず、あれだ。

 自分の人生が予想を上回ってハードモードで泣けた。

 

 

 マジ泣きしてたらラディッツがココアをいれて置いておいてくれた。

 なんだよ、優しいじゃねーか。いきなり泣き出して不気味だったんだろうけど。

 

 

 

 

 

 

■月Ё日

 

 

 色々問題があるはずなのに、集中できなくて困っている。原因は全部未来の私のせいだ。というか、未来の私の日記のせいだ。

 

 あの数十ページにわたる惚気が頭から離れない。正確に言うとそこに書かれていた、ラディッツの好きなところラインナップだ。

 ついつい思い出しては、気づけばラディッツを観察している自分が居る。見過ぎていたためか、嫌そうな顔で「何だ」と聞かれたのでとりあえずケツを蹴っておいた。うっせ、聞くな。

 

 

 

△月Ф日

 

 

 最近妙にラディッツの視線が気になるようになってきた。いや、多分私が気にしいなだけなんだけど。

 

 家では楽な格好、好きな格好でだらけることを譲らない私のルームスタイルは主にタンクトップにホットパンツである。あと締め付けが気持ち悪いので、家では絶対ブラはつけない。

 今までそれで気にならなかったのに、最近妙にそわそわして落ち着かなくなった。ので、しかたがなくロンTとあまり締め付けないワイヤーなしのスポーツブラを買ってきた。何だろう。自分の家だっていうのにこのちょっと気を遣う感じは。モヤモヤする。

 

 

 

●月∴日

 

 

 未来の私の日記の内容をもとにラディッツを観察してみた結果、認めたくないがある事実に行きついた。

 

 

 いい男じゃねーかチクショウ!!(机を拳でたたいてマホガニーの机がぶっ壊れた。グッバイ40万ゼニー)

 

 

 家事は文句も言わず分担してくれるし、料理も最近腕が上がってきた。私がわがまま言っても大体の事は許してくれるし聞いてくれる。でも私がだらしないことしてれば、聞き入れられることはほぼ無いというのに毎回ちゃんと注意してくれる。ガタイはいいし人相悪いけど顔のパーツも悪くないので、正直ちゃんとした格好してる時は格好いい。手の形も何気に好みだった。

 最近知った事実なんだけど、昼間はなんとベジータと強くなるための特訓をしているらしい。ブルマが「黙ってるように言われたんだけどね~。ナイショよ?」とこっそり教えてくれたのだ。なんと、尻尾の弱点も克服したらしい。……私にワンパンで沈められていたラディッツが段々と強くなっているという事実に驚きを隠せない。

 ぶっきらぼうではあるが何だかんだで優しいし、面倒見もよい。それは地球に来てから育った特性かもしれないけど、如実に表れている場面はアルバイト先である。いつの間にか置物から主戦力に昇格しており、店内でもかなり頼りにされている。厳しいながらも新人バイトの面倒も見てくれて助かると店長が言っていた。というか、冗談かもしれないけど「俺に代わって店を任せてもいいかもな」とか頑固で厳しいことに定評のある店長が言っているのを聞いてかなりビビった。ちょ、いつの間に!? 私以上に信頼されてるではないか。

 

 

 ともかく、あれだ……。今まで意識していなかったところに目を向けてずっと見ていたら……あれだ……。

 

 

 惚れたかもしれない。

 

 マジか。

 

 どうしよう。

 

 

 

 

 

 

П月Б日

 

 

 とりあえず、私がその気になっても向こうとしては今まで散々苛め抜かれてきた恐怖政治の主でしかないだろう。なので、不器用ながら好意のアピールを始めてみることにした。

 手始めにラディッツが家事をしているときに手伝いを申し出てみた。良妻アピール開始である。けど断られた。予想以上にへこんだ自分に驚いた。そして諦めずにもう一度申し出たら、今度は受け入れてくれて予想以上に嬉しくて恥ずかしさで死にたくなった。でも嬉しかった。何だこれ。

 

 あとスキンシップも増やしてみた。ボディタッチは意識させるための基本である。

 でも膝枕をしてもらったり、あいつがソファーに座っているとき背中を預けてみたりするのが思った以上に心地よくて癖になって困った。意識させるどころかこっちがどんどん深みにはまっている気がする。どうしてこうなったし。

 ラディッツも嫌そうじゃないから、つい甘えてしまう。少しでもくっついてたくて、皿を洗っていたあいつに話しかけながら気づけば服のはしを握っていた。ガキか。ガキか私。完全に無意識でそんなことしてたもんだから、悶え死にそうになった。

 

 

 

 

 

 

◇月〇日

 

 

 

 息子出来たかもしれない。

 

 いや、何なん。なんなん昨日の。何なん。

 

 

 昨日帰ってきたらラディッツが怪我の手当てをしてたから、私がやると申し出た。そしたら逆に私の怪我も見つけられて、手当てしてくれるというからお願いした。

 

 そして問題はその後だ。

 つい意識して無言になってしまったから、職場の同僚に子供が生まれる話題を出したら更に気まずくなった。あの雨の中の妙に静かな空間だったってのも頂けない。普段より気まずさが倍増だった。

 で、気分を取り直そうとリモコンを取りに立とうとしたら腕を引っ張られて抱え込まれた。かっと体が熱くなって何事かと見上げれば、その時にはもうラディッツの顔が目の前にあったわけで。キスされていたわけで……。

 

 その後抱きしめられて押し倒されて「いいか?」と聞かれて思わず頷いちゃったもんだから、そこからは坂を転げ落ちるようだった。

 

 そして私はお互いサイヤ人というその状況をなめていた。あれだ、お互いに馬鹿みたいに体力あるもんだから、あれだ。今日の昼間までがっつり食われたよねっていう……明日、占いババ様になんて言い訳しよう。

 しかも思いのほか丁寧で優しかったもんだから、もうね。「あ、これ駄目だ。抜け出せない」と確信した。

 

 

 

 ………………。

 

 未来の、別の世界の私よ。どうしてくれる。結果的には良かったとはいえ、あんたのせいでとんでもなく恥かしい思いをしてるぞ私は。

 でもどうしようもなく幸せな自分が居て、悔しいやら満たされてるやら。

 

 あんたへの腹いせは、代わりに幸せになってやることでチャラにしよう。

 

 息子もまかせてほしい。どこまで出来るかわからないけど、出来る限りのことはしてみようと思う。

 だから向こうの世界のどこにいるか分からないけど、見守ってあげててね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




砂糖大根よりは糖分控えめだよね?





かんすけさんから再びイラストゲットだぜ!フォルダが潤う今日この頃に作者は幸せです。


【挿絵表示】
両親の特性を受け継いだ長髪バージョンの息子を描いていただきました!男だけど美人という言葉がよく似合う・・・!しかも中華服という、新たなる魅力の可能性。そして長髪、中華ということで某ドラゴンの聖闘士を思い出し「脱衣癖・・・」と設定に書き足そうとした馬鹿は自分ですよっと。寸でで思いとどまった。

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