とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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3ページ目 原作開始~占いババ様に弟子入りした

◎月▽日

 

 

 月日の流れが早くてやばい。畑で肥料まいてたらブルマ来ちゃったよ、ちょ、待って心の準備。やべーそっか悟空もう12歳か。ってことは私19……え、マジで?

 久しぶりに悟空以外の人間と会話したらほぼ会話出来なくて焦った。あかん、人に会わなさ過ぎてコミュ障になっとるやないか。

 

 とりあえずこの世界は本当に漫画の流れで進むのだなぁと思いつつ、弟をよろしくとお願いして旅立つ悟空とブルマを見送った。摩訶不思議アドベンチャーしてくるとよい。つっかもうぜっ!ドラゴンぼーぉるッ!

 

 さて、スローライフに身を任せすぎていた私としてはこれを転機に私自身も外の世界へ出ていきたい。それと同時にこの世界でどう生きたいか何を避けるかそのために何をしなければならないか……今まで面倒くさくて考えなかったからなぁ……。

 

 とりあえず箇条書きにでもしてみるか。

 

・痛いのヤダ。死ぬのも嫌だ。生き返るとしても断固として拒否する。

・楽しく生きたい。出来れば楽して楽しく生きたい。

 

 マジか。箇条書きですら二行ですんじゃったんだけど。どんだけ浅瀬にあるんだよ私の思考は。もっと深く潜って考えろよ。

 

 しかしこの2つのことに焦点を絞って考えること数時間。私は天啓を得たかのようにひらめいた。

 

 

 そうだ、占いババに弟子入りしよう。

 

 

 

□月δ日

 

 ドラゴンボールには様々な個性を持ったキャラクターが居るが、中でも初期に登場する占いババ様は別格なのだ。なんたって百発百中の失せ物探しに加え、あの世とこの世を行き来できるというスーパー技能を有している!! 地球全体単位で死亡する事態が数回あるドラゴンボールという作品の中で、一回も死ななかったお方!! 勝ったな。運命って奴によぉ。

 

 

 

△月ψ日

 

 世間なめてた。私、戸籍ねぇわ……。社会的信用も0だわ……。

 とりあえず飛んで人里まで行ったはいいけどコミュ障に加えてこの地球においての一般常識の欠落がイタイ。占いババ様の居場所を探す以前の問題な件。こんなん弟子入り志願しても門前払い確実ですね分かります。

 まずはパオズ山の自宅を拠点に世間とのコミュニケーションをとっていこうと思う。

 

 

 

●月ζ日

 

 来た。占いババ様のとこ来た!

 パオズ山から近くの人里でアルバイトしつつ生活を続けてついにここまで来た……! 我慢が利かない性格だからとりあえず一定の常識内には収まっただろうと早々に自分に合格点を出して来てしまったけど、今さらながら大丈夫だろうか。

 

弟子入り志願したら、案の定断られた。しかし想定内である。いいって言ってもらうまでしつこく通う。

 

 

 

 

γ月△日

 

 あんまりにもしつこくするもんだから、1人で占いババ様の戦士を5人倒したら考えてやると言われた。やったこれで勝つる! そう思った時期が私にもありました……。

 

 ミイラくんの所でフルボッコにされた。

 

 おい。嘘だろ……嘘だろおい……。幼少期とはいえベジータフルボッコにしたことのある私が……負ける可能性があるとしてもアックマンのアクマイト光線くらいだと思っていたのに嘘だろ……。

 

 どうやら私は物凄い勘違いをしていたらしい。

 戦闘力とは一度上がれば多少増減してもドラクエのレベルのように下がらないものだと思っていたけど、それがそもそもの間違いだったのだ。一流の戦士は大なり小なりずっと体を鍛えることもしくは戦うことを日常としているはず。セルを倒した全盛期、ブウと互角に戦えてアルティメットなどともてはやされ作中最強レベルと言われた時期のある悟飯ちゃんが弱体化した例を忘れていた。パワーアップしたフリーザ様ならともかく、フリーザ様の部下に後れをとるレベルになってたよなたしか。10何年ぶりに復活した続編で。たしかに体ほっそくなってんなーと視聴時思ってたけど。

 いや、それにしても弱体化しすぎだけどな私!

 惑星ベジータ脱出前は12000前後あったんだけど戦闘力。え、ミイラくんとか100以下とちゃうん? え?

 

・地球に来てから10分の1の重力下の中でろくに修業してない。農作業ばっかりやってた。

・考えて戦う相手との戦闘が久しぶり。(今まで悟空が大猿化した時転ばすだけという簡単なお仕事しかしてなかった)

・久しぶりすぎて、力を抑え損ねたら占いババ様の宮殿破壊しちゃうかもと、力を抑えて舐めプしてた。

・頭のイメージと体のイメージがかみ合わなくて自爆してた面多々。(運動会に張り切って自滅するお父さん状態)

・最近太った気がする。

 

 負けた原因はこんなところか。うん、弱くなる要素しか見つけられない。

 ヤバい。さすがにヤバい。原作は積極的にスルーしていく心づもりだけど、さすがに自分の身も守れなくなってちゃヤバい。くそ、サイヤ人編やナメック星でパワーインフレ始まるまでは余裕だと思ってたのに。万が一ピッコロ大魔王に目をつけられたりしても鼻くそほじりながら倒せちゃうぜとか思ってたのに。むしろ鼻くそほじりながら殺されるわ。

 弟子入りの件もまだまだしつこく食い下がるつもりだし、明日からちゃんと修業しようと思う。都会におりてきてから山では手に入らないスイーツ類に目がくらんで食べ過ぎてたし、それも自重しよう。最近わき腹とあごのラインヤバいもんな……。

 

 えっと、出禁になってないスイーツバイキングのお店ってあと何処だっけ?

 

 

 

ω月×日

 

 ついに弟子入りが認められた。雑用からのスタートだし、占いはほぼ才能の領域で身に着けられる保証はないと言われたけどしつこくした甲斐があった。部活漫画を参考に、一夜で宮殿の外観をピカピカに磨いたのもよかったのかもしれない。透明人間のスケさんに「必死すぎて怖い」と言われたけどある意味文字通りだよ必死だよ。何もしなければ必ず死ぬんだから。絶対あの世に逃げる力をゲットするぞ!

 

 ちなみにミイラくん改めミイラ先輩には毎日ご指導賜っている。

 サイヤ人時代にある程度戦い方は覚えているけど、なんかこうしっくりこないんだよね。そこでおそらく長年生きて……生きて? いや、もう死んでるから動いて?(この人たちは妖怪のカテゴリーでいいんだよね?)きたであろうミイラ先輩に私にはどんな戦い方が向いているのか相談に乗ってもらっているのだ。そしたらまず初めに「何を目的に戦うのか」を決めておいた方が良いと言われた。「相手を叩きのめし」たいのか「相手を殺し」たいのか「純粋に己を磨き上げたい」のか、それとも「己の身を守りたい」のか。まあ考えるまでもなく最後ですけどね! そう言ったら「防御」や「受け流す」ことを主体にした動きを身に着けるといいとのこと。

 結果だけこうして書いてみると、私の性格や目的に沿っていないのだから「守り」より「攻め」に特化したサイヤ人の戦闘スタイルがしっくりこないのも頷ける。けどこういうのって人に言われないと気づけないもんだなぁと不思議な気分を味わった。いや、ミイラ先輩話してみると意外と面倒みよくていい人だわ。もう一回戦ってくださいと言ったら凄い拒否られたけど、その分とても親身になってアドバイスをしてくれた。

 

 そういえばこっそりアックマン先輩にアクマイト光線を教えてくれと土下座したが断られた。数日ねちっこく食い下がったら「種族的な技だから無理」と再度断られた。無念。

 

 

 

 

□月β日

 

 

 宮殿の掃除や洗濯などの雑務にもだいぶ慣れた。痩せっ……鍛えるために亀仙流に倣って心ばかりの重りを背負い動いているが、市販のものではコンパクトに重いもので手ごろな品がなかなか無いのが悩みどころ。せめて惑星ベジータの重力並みの負荷がないと前のようには戻れない気がする。特注で作るお金もないし、とりあえず今は保留。

 そういえば占いババ様には宮殿の雑務を終わらせてからでないと修業は見ないと言われていたが、そのために早く終わらせようとしていたら何気にいい修業になった。早く終わらせようと身体能力をフルに使うと初めのうちは物を壊したり仕事が雑になったりで怒られて散々だったけど、神経を張って速さはそのままに、一挙手一投足をコントロールできるように意識したらずいぶんと体の動きが変わった気がする。なんというか、大ざっぱにふるっていた力に繊細さが出てきた的な。身体的にも精神的にもすごく疲れるけど、疲れてこそ修業になるんだろうし。

 占いを習う時間も確保できるようになったし、家事スキルが上がって修業にもなるしで一石三鳥である。

 

 ……!

 これだ。これからの私の修業に関するコンセプトは一石二鳥もしくは三鳥。

 あれだ……。私が修業だの訓練だの何が嫌いかって飽きることだよ。そもそも戦い自体が疲れるし痛いの嫌だしで嫌いだし、好きでもないものを身に着けるためのモチベーションが足りねーよ。ミイラ先輩に負けたことで危機感が出たからやってるけど、ピーク過ぎればすぐにさぼりそうだ私。未来の可能性を知ってるったって、まだまだ先だと思うと緊張感抜ける。つーか目の前の生活で手いっぱいで細かく考える余裕とか無いわー。

 でも鍛えること以外になにかお得になることを考えれば長続きするかも!

 大事。これ大事。ちゃんとメモしておこう。

 

 

 追記:毎日空を飛んで通っているので畑の手入れは欠かしていない。最近精密度が向上したおかげで畑作業も早く終わるようになってきた。占いババ様の食事にも我が家の野菜を使っているが、それなりに好評で嬉しい。これからも野菜は作り続けよう。

 

 

 

●月▼日

 

 占いに必要な素養としては感受性が肝心らしい。これを機にやり方がわからないからと投げていた"気"を感じ取る訓練をしなければならないだろうか。

 瞑想を頑張ろうと思う。

 

 

 本命はあの世とこの世の行き来だけど、これで占いパワーを身に着ければ私もババ様のように大儲けでウハウハ!

 

 とか考えてたら瞑想が乱れていると頭を叩かれた。煩悩だらけの私にとって道のりは長い。

 

 

 

 

◇月×日

 

 え、もうそんな時期? 悟空たちがドラゴンボールの在処を占ってもらいにやってきた。ヤムチャにクリリン、プーアルとウパ。こうして実際に目にすると不思議な気分。そうか、もう色々と摩訶不思議アドベンチャーしてきたのか……。いいなぁ、悟空。友達とか仲間とか出来ていいなー羨ましい。私も生活が安定するようになったら学校とか通って友達つくろっと。

 そういえばもう一回目の参戦である天下一武闘会も終わってたんだな。これも見るだけだったら行きたいから、次からはちゃんとチェックしよう。

 

 ところで、占いババ様が今回あの世から連れてきた5人目の戦士は悟飯おじいちゃんだ。悟空が戦い終わったら帰ってしまうのはわかっていたので先に挨拶しておいた。

 守れなくてごめんなさい、大猿悟空を止められなくてごめんなさい。死なせちゃってごめんなさい。色んなごめんなさいが一杯ありすぎて、言葉にならなくて結局わんわん泣いてしまった私をおじいちゃんはぽんぽんと頭を撫でてなだめてくれた。

 「あの世も結構楽しいんじゃぞ」「姉弟2人、悟空と仲良くな」と、生前と変わらない笑顔で言ってくれた悟飯おじいちゃんに、また泣いた。「こんなに泣き虫だったかのぉ?」とも笑われてしまったけど、会えて嬉しいのと別れの悲しさがない交ぜになって泣くなという方が無理だった。

 

 

 絶対あの世とこの世の行き来を身に着けよう。また、おじいちゃんと色々話したい。

 

 

 ちなみに仲良くな、と言われたものの悟空との再会は「よっす~」「あ、ねーちゃん」という軽いものだった。周りの人は「悟空の姉ちゃん!?」と驚いていたけど、悟空と私の距離感はこんなものだ。時々元気な顔見られればまあいいかなって。悟空も悟空でこれからもっと修業に夢中になるんだろうし、なんとなくこういう部分は義姉弟でも一緒に育って似た部分なのかなって思わなくもない。お互いマイペースなものである。

 

 途中でやってきたブルマと亀仙人様にもちゃんと挨拶をしたぞ! パオズ山でコミュ障だった私はもういないのだ。

 

 戦いを終え、ドラゴンボールの場所を占ってもらった悟空たちを「達者でな~」と見送った後は一回家に帰って悟飯おじいちゃんの墓参りをした。

 今日は濃い一日だったが、なんとなく元気をもらった自分がいる。明日からも頑張ろう。

 

 

 


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