とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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★VSフリーザ!集結、誇り高きサイヤ人!

 ここ最近で俺の人生は大きく動いた。ろくなことは無かったが、それだけは確かだぜ。

 

 地球とかいう星で、様々な要因が重なった結果とはいえ俺は下級戦士であるカカロットに負けた。あの屈辱が俺のプライドに深く楔を打ち込んだことは間違いない。そしてそこからは息つく間もなく事態は進んだ。

 傷をメディカルポッドで治した俺は、通信機でドラゴンボールのことを盗み聞きしていやがったフリーザがナメック星に向かったことを知りあとを追った。横取りされてなるものか、あれは俺の物だ、そして不老不死を手に入れ奴の代わりに宇宙に君臨するのはこのサイヤ人の王子ベジータ様だ、ってな。

 プライドは傷ついたが、死の淵から生還した俺の戦闘力は上がっていた。戦闘力29000の数値を見た時は思わず笑っちまったぜ。試しに地球の奴らがやっていた戦闘力をコントロールする技術を試してみればすぐに成功した。まあ、この程度の技術の習得など俺には簡単だ。あのハーベストの奴に出来て俺に出来ない道理もない。

 そしてナメック星に到着した俺は、早々に俺を追ってきたキュイの野郎に遭遇した。何を勘違いしたのか「怪我で相当まいってるようだな。戦闘力が落ちてるぜ?」とほざきやがったキュイの相手をしているのも馬鹿らしい。すぐに殺し、俺はドラゴンボールを探し始めた。まったく、上がった戦闘力を試すには雑魚すぎて気分に水が差されたぜ。汚ねぇ花火を見ちまった。

 次にやって来たのはドドリアだ。不細工が続くが、まあフリーザ軍に見目の良さを期待しても馬鹿らしい。もとからあと少しで戦闘力も追いつけた相手、今の俺の敵ではない。適当に遊んでやってから殺してやった。…………無様に命乞いする奴から、思わぬ話を聞けたのは収穫だったがな。

 まさか惑星ベジータを破壊したのがフリーザだったとは。しかしよく考えずとも奴ならやりかねんし、それほどサイヤ人を危険視していたということはサイヤ人にはあの野郎を超える底知れぬ可能性が秘められているということ。

 今まで奴に良いように使われてきた自分にはむかっ腹は立ったが、この急激に成長している自身の力を感じれば気分もいい。やはり、トップに立つべきはこの俺なのだ! 不老不死さえ手に入れられれば奴を超すことなど簡単だ。何がなんでも手に入れてやる!

 

 しかし、そこからは今までの高揚感から一転してムカツクことばかりだったぜ。

 ザーボンの野郎と戦うことになった時、俺はこれまでの戦績に酔いしれていた。実際にザーボンにも簡単に勝てそうだったが、奴が不細工に変身した時に思いがけず深い一撃を受けてしまい、そこからは俺の実力に焦ったザーボンは反撃の隙を与えることなく攻撃してきた。チッ、俺は何をやっているんだ!! 変身後ですら今の俺と大差ない程度の奴に、油断が原因でやられるとは!! 自分のことながらその甘さに反吐が出るぜ!!

 だが奴め、俺の戦闘力を見誤ったのが仇となったな。俺が手に入れたドラゴンボールの居場所を吐かせようと、ご親切にもわざわざメディカルマシーンで俺を回復させてくれるとはな! おかげで俺はまた強くなった。ククク……誇り高き戦闘民族を舐めるからこういうことになるのだ。サイヤ人とは、死の淵から立ち直るたびに戦闘力をどんどん高めることが出来る! このままいけば、伝説と呼ばれるスーパーサイヤ人になることも時間の問題かもしれんな。

 だが、ここでまたもや俺の堪忍袋の緒を一瞬でぶち切る奴に遭遇した。ハーベストめ、地球ではいつの間にか見えなくなっていたから瓦礫に押しつぶされてくたばったかと思えば生きていやがったか! そのムカつく面を見た時思わず拳を突き出したが、奴も同じ動きで俺の顔に拳をめり込ませやがった。くッ! こいつもひん死の状態から回復したことでパワーアップしているだと!? 雑魚のくせにムカツク女だ!! しかも奇妙な超能力を覚えてやがって、この俺に、このベジータ様に危うくクソを漏れさせるという醜態を晒させようとするとはな!! あまりの怒りに普段以上のパワーが出たぜ。だが全力の俺の拳を受けて腹に穴が開かないとなると、この女のタフさにだけは感心する。なよっちい外見のわりに、その頑丈さはナッパの比ではないな。やはり腐ってもサイヤ人の王族か。

 

 俺はハーベストと一緒に居た超能力を使うガキを脅し、フリーザの宇宙船からまんまとドラゴンボールを奪うことに成功した。だが、俺はさっさと奴を始末しておくべきだったんだ。

 最後のドラゴンボールを持っていたハゲチビを追い、追い付いたところで再びザーボンと遭遇した。今度は完全に俺の方が戦闘力は上だ。すぐ始末してドラゴンボールをそろえてやろうと奴と戦い始めた俺だったが、突如背後で膨れ上がった戦闘力に背筋が粟立った。それに従い瞬時に回避した俺の横を、青白い光のエネルギー波が通り過ぎた。これは、カカロットの野郎が使っていた俺のギャリック砲と似たあの技!! そのエネルギー波はザーボンを飲み込み、数秒もがいて押し返そうとしていた奴をあえなく蒸発させた。この場でこんなことが出来るのは奴しかいない。「貴様ぁ!!」と叫んで振り返った俺だったが、そのときすでに奴らは姿を消していた。なんて逃げ足の速い奴らだ!! ドラゴンボールも消えてやがるぜクソッタレェ!!!!

 

 その後俺は下手な横やりが入らないように、戦闘力を消して行動した。側近2人が殺されてフリーザの野郎も相当頭に来てるだろうからな。しかしドラゴンボールはすでに7つ集まっている……願いはもう叶えられたかもしれない。それを思うと腹が立ち仕方が無かった。だが、空から飛来したギニュー特戦隊のことを考えると下手な行動には出れない。そのジレンマに、俺の怒りは蓄積されていった。

 そして数日経ったとき、どこからか凄まじい戦闘力が吹きあがったのを感じた。フリーザではない、ならばハーベストか! そう思うや否やその場に急行したが、そこで待っていたのは目的としていた奴ら以外にカカロット、ギニュー特戦隊、フリーザという、現状この星でトップクラスの戦闘力を持つ奴らのそろい踏みという悪夢だった。クソッタレ、やはり奴に関わるとろくなことが無いぜ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪夢だ……」

 

 思わず口をついて出た言葉に、カカロットの野郎が応える。おい、貴様に話しかけた覚えはないぞ。

 

「ああ。オラも、あんな気を前にしちゃあそんな気分になる」

 

 再度パワーアップを果たした俺は簡単に特戦隊のメンバーを倒すことが出来た。ギニュー特戦隊の半分を取り逃がしたが、再び立ちふさがっても今の俺の敵ではない。

 これならば行ける! ドラゴンボールなど無くとも、フリーザを倒せるかもしれん!! そう思っていたが、目の前にいる、恐らくはザーボンが言っていたように変身タイプの種族であるフリーザが変化したであろうツルッパゲのチビ。そいつを見ると、今までの高揚感など吹き飛んだ。

 

 フリーザの野郎は何故か生き返っていた地球で殺したはずのナメック星人と戦っていた(ナッパに殺されたはずだが、やはりドラゴンボールは使われていたか!!)。信じられないことに、この短期間でどんな裏技を使ったのかこの俺以上のパワーを感じるナメック星人……しかし、そいつもすでに死に体だった。止めを刺されるところでカカロットの野郎が助けに入って何とか生き残ったが、それでこの状況が好転するはずもない。

 遠目に逃げ延びたギニュー特戦隊の残党2人と、見覚えのないナメック星人、地球で死んだはずの地球人が戦っているのが見える。そいつらも何故かパワーがギニュー特戦隊に比肩するほど強くなっていたが、フリーザの前じゃ焼け石に水だ。

 だが、やってみなければわからん!!

 攻撃を受ける前に先手必勝で圧倒してやろうと、俺はフリーザに襲い掛かった。だがフリーザの野郎はコバエでも追い払うようにそれをあしらうと、次の瞬間には俺の腹にでかい穴が開いていた。至近距離から打ち抜かれたんだ。「ベジータ!!」と俺の名を呼ぶカカロットの声が聞こえるが、俺の心は恐怖で支配されておりそれどころではなかった。

 

 このまま、何もできないまま死ぬのか……? 

 

 生まれて初めて心の底から震えあがった。真の恐怖と決定的な挫折。それが俺の冥土の土産ってわけか……笑っちまうぜ、涙まで出てきやがった。

 

 意識が途切れる。

 そう思った瞬間、かっと体の奥が熱くなり力があふれてきた。なんだ、これは!?

 

「な!?」

「ナイスだ姉ちゃん!」

「だけどこれで仙豆はあと1粒だからね!」

「ああ!」

 

 俺の体を支えていたのはハーベストだった。奴の指が俺の口に添えられているところを見ると、先ほどのギニュー戦で俺に食わせた豆を放り込んだんだろう。そうか、それで俺は回復したのか!

 

「はーっはっは! でかしたぞクソ女!! たまには役に立つじゃないか!」

「ここにきてクソ女とか言うお前の神経にビックリだよ! つーかさっきまでべそかいてたやつが偉そうに! まだ目ぇ涙ぐんでんぞ!」

「やかましい! どけ、パワーアップした俺様の力を見せてやるぜ!」

「それが駄目だっていい加減学習しろ馬鹿! 頭冷やしてやるからよく聞けよフリーザ様の今の戦闘力多分本気出せば億とか行くからな!!」

「な!?」

 

 億、だと!? いや、しかしスカウターでそんな数値は計れない。俺自身もうだいぶ戦闘力を計っていないが、おそらくスカウターが壊れる数値だろう。

 どうせ俺を落ち着かせるためのハッタリだ。

 

「おや、ハーベストじゃないか。今のボクの実力が分かるなんて、やはり君は賢い子だね」

「は! お褒めにあずかり光栄です!」

「ね、姉ちゃん。こいつ敵だろ? 知り合いなのか?」

「小さい頃お世話になってる。もう何年も会ってなかったけどね」

「どうだい? 今からでもボクの部下に戻るのは。ザーボンやドドリアも居なくなってしまったし、今なら側近にしてあげてもいいよ」

 

 き、気の抜ける会話をしやがって。

 だが、ここでこいつが寝返ったら厄介なことになる。その前に殺すか?

 

 だが奴にも一応サイヤ人としての誇りはあったようだ。

 

「いえ、ご厚意は嬉しいのですがお断りします。私は今の暮らしが気に入っておりますので」

「そうかい、残念だよ。じゃあ死ぬといい」

 

 言うや否や、フリーザはハーベストに接近してその腹にエネルギー波を押し付けた。クソッ、雑魚でも居ないよりましだってのに1人やられるか!?

 

「界王拳!!」

「ぐ!?」

 

 しかしそれはカカロットによって阻止された。俺と戦った時と同じ、戦闘力を倍増させる技でフリーザを蹴り飛ばしたのだ。だが、駄目だ。あれでも今の俺より劣る戦闘力。奇襲は出来てもまともなダメージは与えられまい。

 

「魔閃光ーーー!!」

「気円斬!!」

「魔光線!!」

 

 蹴り飛ばされたフリーザめがけて、いつの間にか集まってやがったカカロットの仲間が攻撃を加えた。あのナメック星人、いつの間に回復を!? ちぃ、しかしこれには乗っておくか。多少ダメージを与えられるかもしれん!!

 

「ギャリック砲!!」

 

 タイミングが少々遅れたが、俺もエネルギー波を放つ。だがフリーザの野郎、全部避けやがった! なんてスピードだ!!

 

「フフッ、今のはちょっと焦ったかな? なかなか強いじゃないか。一度に浴びたら危なかったね」

 

 野郎……余裕で拍手なんかしやがって。

 さっきまでの恐怖がぶり返してくる。だが、その俺のケツを蹴り飛ばす馬鹿がいた。

 

「諦めんな馬鹿! お前が諦めたら私まで死ぬんだから最後まで粘れよ!」

「ふ、フン。ここにきてまで他人だよりか?」

「もうここまで来て後戻り出来ないんだから倒すしかないでしょ! 私嫌だからね!? お前らがフリーザ様倒すって信じてるからここまで来たってのに、負けたら死ぬか一生やりたくもない仕事やることになんだから!」

「貴様はどこまでいっても自分の事だけだな!」

「お互いさまだよ馬鹿野郎!」

「…………。君たちは相変わらず仲が良いのか悪いのか分からないねぇ」

 

 く、クソ。呆れた声を出しやがって……!

 

「ははは! なんだ、おめーら仲いいじゃねぇか。なんかオラ、勝てそうな気がしてきたぞ」

「どこをどう受け取ったらそうなる!」

「クソッタレ! とりあえず仕切り直しだ! 仕切り直し! フリーザ様が余裕こいて会話許してくれてるけど今死んだら相当間抜けだからな!!」

 

 ハーベストの声を受けて、忌々しいが構え直す。

 奇しくもこの場に生き残りのサイヤ人が集まったってわけか……。奇妙なもんだぜ。

 

 

 

 

 

「覚悟しろフリーザ。誇り高きサイヤ人の力を見せてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ベジータ視点の今までの色々+フリーザ様戦中盤。あれ、終わらない……。

サイヤ人の誇り「なんか一匹変なのが混じっているが無視してくれて構わんよ」


カミヤマクロさんから素晴らしき挿絵を頂きました!!(8/27追加)

【挿絵表示】
しかも漫画です、漫画なのですよ!!作中のワンシーンを素晴らしきアレンジを加えて漫画に仕上げていただくというミラクル!!
ベジータのドヤ顔、可愛く描いてもらった主人公、悟飯と悟空の困惑顔、真顔イケメンなフリーザ様と最強の一枚である。そして個人的に最後の駒のベジータ乱心を書いてもらったのが凄く嬉しい。ご、悟空ーーー!!

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