とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

26 / 135
VSフリーザ!絶望の始まり

 ナッパというサイヤ人に殺された俺と天津飯、ピッコロは神様の計らいで死後界王様のもとで修業をした。俺たちを生き返らせようと、はるばる別の星までドラゴンボールを探しに行ってくれている仲間に報いるために必死で鍛えたさ。

 そしてついにナメック星のドラゴンボールで生き返り、その修業の成果を生かせる時が来た。だが、目の前で行われている戦いを前に俺と天津飯は情けなくもただ見ることしか出来なかった。

 

「でぁァ!!」

「ぐあッ!?」

 

 ピッコロの鋭い突きがフリーザっていうやつの腹にめり込み、すかさず体をひねったピッコロの踵がそいつの頭部に振り下ろされた。フリーザは成すすべもなく、垂直に地面へと叩き付けられる。まるで子供と大人のような力の差だ。

 

 

 界王星からことのあらましを把握していた俺たちは、ドラゴンボールのおかげでナメック星に蘇った。界王様に見せてもらっていたが、ナメック星の神龍(ポルンガというらしい)はでかかったな。

 蘇ったらすぐに餃子が迎えに来てくれて、他の場所で生き返ったらしい天津飯やピッコロとはすぐに合流することが出来た。そして、俺たちを蘇らせてくれたブルマやナメック星人の生き残りの人達とも。

 泣きながら抱き着いてきたブルマの体温を感じて、ああ、本当に生き返ったんだなと実感した。正直修業で強くなれたのは嬉しいが、あんな体験は出来ればもうしたくない。死の恐怖以上に、自分が死んで悲しんでくれる人がいる事実に余計にその思いが強くなった。心配かけて悪かったな、ブルマ。

 

 そして最長老様というお方に俺たちは潜在能力を引き出してもらい、さらなる力を手に入れた。

 ピッコロの奴が最長老様と合体? しちまったのには驚いたがな。でも合体を終えたあいつには、見た目は変わらなかったもののどこかトゲトゲしさが抜けた印象を覚えた。いや、なんというか落ち着いたっていうのかな? 一緒に修業しているときも天下一武道会から比べてかなり変わったと思っていたが、今はそれ以上に一皮も二皮も剥けた感じだ。もとはピッコロ大魔王だといってもあいつ自身はまだ子供と言ってもいい年齢だったな、成長が早かったり吸収が早いのはあたりまえかと界王星で考えたこともある。だが、今回のはそれはまったくの別物だ。

 

 例えるなら大海のごとく膨大な質量を湛えておきながら、水面は波一つ、波紋一つ広がらない……そんな、静謐さの中に底知れない力を感じさせる気だ。どことなくだが、その性質が以前修業を見てもらった神様に近づいたような気がする。これも最長老様の影響か? ピッコロであることに変わりはないが、別人のようでもある。これがナメック星人の同化という物ならば、凄い力だ。

 

 ピッコロは同化がすむと、すぐに近くで戦っているでかい気のもとへ向かった。クリリンと悟飯は悟空たちの加勢に行ったようだし、俺は天津飯と目配せして頷くとまずピッコロと同じ場所に行くことにした。

 最長老様の話を聞けば、どうやらナメック星人の戦士がたった独りで敵の親玉相手に奮闘しているようだしな。今のピッコロがどうするか分からないが、助けるならどっちにしろ敵の親玉を前に下手な動きは出来ない。怪我をしたそいつを運んでやる奴が必要だろうと思ったのだ。今のピッコロがそうそうに負ける気はしないが、それをしてから戦況を見てピッコロ側と悟空たち側に戦力を分けるつもりだ。

 俺たちが行こうとすると、ちっちゃいピッコロみたいなナメック星人の子供が慌てて声をかけてきた。

 

「ま、待ってください! どうか、ボクも連れていって!」

「いや、君はここでブルマと一緒に残っていてくれ。危険だ」

「でも、ネイルさんが怪我しているかもしれない! ぼ、ボクは怪我を治すことが出来るんです。お願いです、一緒に行かせてください!」

 

 怪我を治す? それが本当なら心強いな……。なにしろ俺たちは今仙豆を持ち合わせていない。もしもの事があれば、確実にまた誰か死んでしまうだろう。

 

「連れてってあげなさいよ」

「ブルマ」

「この子だって、自分に出来ることがしたいのよ。それに凄く強くなったんでしょ? 守ってあげるなんて簡単じゃない!」

 

 か、簡単に言ってくれるぜ。でも、おかげで迷いが晴れた。

 

「よし! お前の覚悟しっかりと受け取ったぞ。俺はヤムチャだ。お前は?」

「で、デンデです」

「俺は天津飯だ。よろしくなデンデ」

「はい! よろしくお願いします」

 

 これで方針は決まった。

 ちなみに餃子だが、天津飯があいつの表面上は見えない消耗を見抜いてしばらくここで休むように言っていた。流石、兄弟弟子だな。正直俺には平気なように見えていたが、やはりテレポーテーションなんてすごい技を連続で使うのは疲れるんだろう。しかし餃子も凄く強くなったのだったら分かるぞ!こいつになら、ここに残されるブルマを任せることが出来る。後顧の憂いも無くなったな。

 

 そして俺たちは今度こそ、戦いの舞台へと足を踏み入れたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、結果は情けないことに観戦だ。というか、割り込める気がしない。

 

 戦闘の行われている場に着くと、まず俺たちは片腕を無くしたピッコロにそっくりなナメック星人を救出した。デンデが回復の術を施して体力が回復し他の傷が治ると、彼は自分で腕を再生していた。す、凄いな……ナメック星人って。

 そして肝心の戦闘だったが、それは一方的なものだった。相手の親玉、フリーザってやつはなんとか持ちこたえてはいるが圧倒的にピッコロの方が実力が上である。これは俺たちの出番なんてなさそうだ。そう言って悟空たちを助けに行こうと提案しようとしたのだが、それに対して天津飯とネイルという戦士は難色を示した。

 

「あれを見ろよ。どう見たって一方的に押しているぞ? 俺たちが居たんじゃ、逆に邪魔になるんじゃないか?」

「いや……そうなんだが、何か胸騒ぎを感じるんだ」

「君もか……私も同意見だ。なんと言えばいいか分からないが、あのフリーザという者がこれで終わるとはどうしても思えない」

 

 この2人、天津飯とネイルはどことなく似た雰囲気を持っている。勘が鋭い天津飯に加えて似た雰囲気のネイルがそう言うならば無下にも出来ない。俺たちは順調にいけばあと少しで決着がつくであろう戦いをそのまま見守ることにした。

 

 

 

 

 そして、その勘は当たってしまったのだ。それも横やりによる最悪のきっかけが原因で。

 

 

 

 

「馬鹿な、この、このフリーザ様がナメック星人ごときにぃぃ!!」

「無様だな。せめて最後は潔く死ね」

 

 ついには膝をつき、立つこともままならなくなったフリーザを前にピッコロは額に気を集め始めた。あれはあいつの必殺技、魔貫光殺砲! たしか気をためるのに時間が必要な技だが、合体の影響か気の流れが恐ろしく滑らかだ。まもなく放てるだろう。

 しかし、そのピッコロが一瞬苦しそうにうめいた。

 

「がっ!?」

 

 ほんの、一瞬だった。

 

「フリーザ様、今です!」

「でかしましたよ、グルドさん!」

 

 次の瞬間、ピッコロの胸を紅の光線が打ち抜いていた。

 

「ピッコロ!?」

 

 ピッコロは貫かれた胸を押さえて膝をついた。そこにさらに別方向から追撃が迫る。

 

「クラッシャーボール!!」

「がぁ!?」

 

 しかもたった今怪我した場所を狙いやがった!!

 見れば、岩陰からこちらに両手を突き出している緑のチビと気弾を放ったポーズの赤いやつが居た。あいつらか!

 

「天津飯、行くぞ!」

「ああ!」

 

 すぐに俺たちは飛び出し、フリーザの前に無防備な姿をさらしたピッコロを救出した。しかしフリーザはそんなものには目もくれないといったように、不気味な高笑いをしはじめた。

 

 

「初めてですよぉ! ここまで私をコケにしてくれたお馬鹿さんは!! 唯では死なせません。たっぷりと恐怖を味わわせて、死後もこのフリーザの恐怖を忘れないように体に! 魂に! 全てに刻み付けて差し上げましょう!!」

 

 

 そこからは悪夢の始まりだ。

 フリーザは不気味に体を震わせると、その身を変化させ始めた。初めはその身の丈を伸ばし筋肉が発達した形態へ、次は身の大きさこそ小さくなったが、頭部が不気味に長いエイリアンみたいな形態へ。そして

 

 

 

「これが、ボクの最終形態です」

 

 

 

 潜在能力を引き出してもらったことで、強くなった俺たちにはわかってしまった。

 こいつには絶対に敵わないということを。

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。