とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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13ページ目 ナメック星~ずっと胡麻すりのターン!

▽月Б日

 

 

 フリーザ様の宇宙船なう。

 空調きいてて応接間のソファー超気持ちいい。

 

 

 暇だから日記を書き始めてしまったので、どうせだからここまでの経緯も書いておこう。

 

 原作知識も実力も曖昧なままナメック星に到着する前、私はこれからの行動について考えていた。

 そしてとりあえずスーパーサイヤ人悟空のために見殺しにするであろうクリリンくんに美味しいものを出来るだけいっぱい食べさせておいた。気分は死刑前日の囚人にごちそうを振る舞う看守である。いや、クリリンくん悪者どころかすっごいいい人なんだけどね? 本当に申し訳ないが、ここは仕方がないと割り切る私はたいがいクズである。知ってた。悟空を無駄死にさせた時から知ってた。

 

 それでうんうん唸って考え付いたのが、前回の教訓を生かそうというものだ。

 前回、というのは私がなりゆきで関わる羽目になったラディッツ~ベジータ達襲来編である。あの時ほんのわずかに私がかかわったばかりにラディッツが生き残り、その結果おそらく色々と変わった部分があるはずだ。生死で言えば、餃子師範。おぼろげな原作知識の中でもさよなら天さんのインパクトは忘れがたいが、それが起きなかった。そしてサイバイマンたちも、これは自分で利用したんだけど別の生き方を得て今は元気に畑仕事をしている。

 私が何もしなかった部分は、悟空の冒険などあとから聞けば漫画とそう差異はなさそうだった。

 

 

 つまり何が言いたいかって、下手に何かしようとしないで何もしないことこそ大正義!ということである。

 

 

 前回の教訓とはシンプルに「関わるとろくなことにならん」というものである。

 下手に私が流れを弄ろうとすれば、各パワーアップイベントがおじゃんになり、敵だらけの中ぽつんと地球側が孤軍奮闘、フリーザ様の綺麗な花火ですよ! でナメック星爆発くらいのことありそうだもの。

 なのでナメック星につく前から「私は占いでドラゴンボールを探すから、別行動にしよう。そっちの方が効率がいいし、いざとなったら餃子師範のテレポーテーションで合流すればいい」と提案した。あ、ちなみにそういうわけで餃子師範も今一緒に居る。凄く落ち着かなそうにしている。

 

 これでイレギュラー要素である私と餃子師範が居ないから、まあおそらく原作の通りに向こうは進むだろう。多分きっとおそらく。悟飯ちゃんにクリリンくん、ナメック星で思いっきりパワーアップしてきたまえ。

 ふっふっふ、気分は千尋の谷から子を突き落とす獅子……………………ヤベェ、後で悟飯ちゃん達に早々に私が離れたことを言わないように口止めしとかないとチチさんに殺される。まかせてくれって言っちゃったもん。悟飯ちゃんのキューティクルは守ったけど本体から離れちゃったもん。

 

 

 

 

 さて、しかしながらそれだけではナメック星まではるばると来た意味がない。ドラゴンボールで願い事を叶えるために来たんだから。願いの調整については餃子師範のテレポーテーションがあれば叶える現場にすぐに行けるし、あとはその場その場で臨機応変に柔軟に対応しよう!

 というわけで、私は最も効率よくドラゴンボールだけ手に入れて私の株が急上昇するナイスな作戦に出たわけだ。

 

 要約すると「フリーザ様が集めたドラゴンボールを借りパクする」というものである。

 

 ちなみに借りパクとは借りたまま自分のものにして返さないことだ。ゲームソフトとか名前書いといてもやられるから。これ豆な。つっても私はパクる側だったけど……以前マークとマジックで書かれたソフトが掃除してたら出てきて気まずい思いをしたのを覚えている。

 

 そういうわけで、餃子師範を「占いの結果」というごり押しで説得してフリーザ様の宇宙船までやって来たのだ。ここで悠々とドラゴンボールが集まるのを待って美味しいところだけ持っていこうという腹積もりである。我ながらなんてスマートなんだ。自分の天才ぶりに痺れちゃうね! まあ原作でもベジータが同じようなことしてた気がするが、奪うのがあいつの手柄なので微塵も罪悪感を覚えない。むしろ地球でボコられた恨みがあるためざまあみろである。

 

 で、何故宇宙船内でくつろいでいるかといえば昔のコネとしか言いようがない。ちなみに美味しい飲み物まで出していただいて、現在2杯目である。色がおどろおどろしいが、フルーツジュースみたいで美味しい。

 

 

 本当はドラゴンボールが集まるまで隠れてて、集まったタイミングで宇宙船に忍び込んでパクっていこうと思っていた。しかしここでフリーザ様ならびにザーボンさんドドリアさんともお別れかと思うと、挨拶くらいしとかないといかんかなと思ったわけで。いや、何気に小さい頃お世話になってんだよね……極力ゴマを擦るためとはいえ、惑星ベジータにフリーザ様が来たときは宇宙船に入り浸ってたから。

 ドラゴンボールを手に入れ不老不死を手に入れようとしたっていうベジータの反逆の事があるから初っ端から敵対する危険もあるけど、あいつを速攻で売れば問題ない。失せ物探しの占いって便利。居場所とっとと教えたろ。

 

 それでもってフリーザ様が帰還したところを見計らって、いざという時のためにホイポイカプセルに入れて用意していた菓子折りを持参して挨拶に赴いた私である。我ながら危機感無いが、うまくいく算段はあるし、こっちの方が敵の動向をつかめてドラゴンボールを借りパクするのに楽だ。

 最初は当然ながら門前払いどころか部下の雑魚に殺されそうになったが、ちょうどザーボンさんが帰ってきたので声をかけて事なきを得た。下手にフリーザ様の部下を倒すと角が立つからラッキーである。

 ザーボンさんは私が誰だかわかると驚いていたようだが、極力丁寧なあいさつを心がけるととりあえずフリーザ様のところまで連れて行ってくれた。ちなみに少しぼろぼろになっていて、聞けば原因はベジータだとか。聞いた瞬間ザーボンさんの美貌をあらん限りの美辞麗句で褒めちぎってから謝った。この人美貌コンプレックスだからな。基本的にうまく褒めておけばわりかし対応が甘くなる。

 そういやレアな体験をした。ザーボンさんに顎クイされて「なかなか美しく育ったじゃないか」と褒めてもらっちゃったぜ。この人変身前はマジで美形なので正直ドキッとした。

 

 フリーザ様には会った瞬間いぶかしげな視線で見られたが、ここで慌ててはいけない。ビークール、be coolだ。そう心で唱えて感情の波を抑えると、「お久しぶりですフリーザ様。ご健勝そうでなによりです。そして相変わらず、いえますます洗練された佇まいに崇拝の念を否めません……再び拝謁願えました慶びに、このハーベスト感動に打ち震えております」とかなんとか、そんな感じの挨拶で片膝をついて頭を垂れた。我ながら流れるような動作である。久しぶりだったが完璧だ。

 ちなみに餃子師範はついてきてくれてるものの、ザーボンさんやフリーザ様の気にあてられて白い顔を真っ青にしていた。ご、ごめんなさい……。でも小さいおかげか目立ってないし、餃子師範にはこのまましゃべらないでマスコットになっててもらおう。

 

 

 で、どうしたかというとタイミングが良いのか悪いのかベジータがフリーザ様にガチ反逆真っ最中だったので「わたくしめの新たな力をご覧に入れましょう」とか言って占いでザーボンさんにぼこられたベジータの生死と居場所を特定して教えてあげた。サンキューベジータすごくいい手土産になったぜ! お前の事だからきっと生き残るってお姉ちゃん信じてる!

 私の事についてはフリーザ様にこう説明した。

 

・惑星ベジータを偶然脱出できてから地球という星についたが、病気を患ってしまい戦闘力が激減したのでおとなしく暮らすことにした。

・宇宙船もなくなってしまい、連絡できずに本当に申し訳ない。

・ベジータが地球にやって来て反りが合わず喧嘩してしまったがフリーザ様に逆らったつもりは無く、未だにフリーザ様への忠誠心は失っていない。

・地球で仲良くなった人が死んだので生き返らせたくてこの星まで来たが、ひょんなことでフリーザ様がナメック星に居ると知って挨拶に来た。ドラゴンボールをフリーザ様が探しているならもちろん譲るつもりである。

・フリーザ様に逆らったベジータについては姉として責任をもって始末したいが、激減した戦闘力に加えて病気で長期間戦えない体になってしまったので悔しいが無理である。しかし協力は惜しまない。

 

 ……みたいな。

 こんなを説明した。途中で持病のしゃくが! ってな感じで病気に苦しむ演技を挟みながら。超いい度胸してんな私って後々読み返して思うじゃん? でもフリーザ様たちに対しては子供のころからこんな感じで接してたから驚くほどナチュラルに嘘をつけた。やっぱり私には詐欺師の才能あるのかもしれない。

 これに対してフリーザ様は「ベジータのスカウターの通信で知ってはいましたが、生きていたとは驚きですよハーベストさん。しかも早速役に立ってくれるとは嬉しいですねぇ」と言ってザーボンさんにベジータを連れてくるように命じた。

 まあ全面的に信じてくれるなんて思っちゃいないが、とりあえず「反逆する力もなく、便利な力を持った存在」としての意義は示せただろう。占いは精神力を大きく消費するので時間をおかないと次の物を占えない、という設定にしたから回復して残りのドラゴンボールを探させるまでは命の保証はされたと思っていいはず。やっててよかった占い師。

 ちなみにさっき占って水晶玉に映し出されたドラゴンボールはここにある分が5つ。まあ、半分以上だし十分だろう。ころあいを見計らって持って逃げるか。

 

 

 

 けどジュース美味しい。まだ時間に余裕ありそうだし、もう一杯もらってから逃げよっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




考えてるつもりでほぼフィーリングで生きてる主人公。

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