とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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ドラゴンボール超12:不屈の三連星

 破壊。その言葉に私たちの間に緊張が走る。

 

 

 

 破壊神たるビルス様が現れた……。それもおそらく幼少期に面識のあるベジータ以外誰も彼と知り合いではないこの状況で現れたとなれば、当然やる事と言えばひとつだろう。その言葉通り、ビルス様はこの星を破壊するためにやってきたのだ。

 

 しかもどういうわけか世界の捻じれとか言っている所を見るに、ある程度事情を把握している様子。これはまずい……非常によろしくない……! だってそうなると、世界を破滅させる原因となりうる捻じれの中心に居る悟空、ベジータ、トランクスの3人を破壊する理由としては十分だ。

 ビルス様の性格的に面倒事を生み出す危険性をはらんだ地球を一緒に破壊しようとしても何らおかしくはないし……っていうか、もうすでに私たち時間移動という最大級のタブーを犯している。そんなもの生み出す人間が居る星なんて余裕で破壊対象だろう。更に言うと多分こっちのビルス様もこっちの界王神様ともども今まで死んでいただろうし……そうなると、別人とはいえその原因ともいえるザマスさんも破壊対象だろうか。

 

 ヤッベ。これヤッベ。この場で生かされる可能性があるのって界王神様だけじゃねーか! せっかく合体ザマスを封印したってのに破壊エンドとか冗談じゃない!!

 

 

 

 最近悟空を筆頭に馴染んでたし、美味しいものに釣られすぎな姿を見て忘れがちだったけど……ビルス様は本来絶対に触れてはならない神様なのだ。

 

 

 

 

 私とブルマは未来世界のビルス様の台詞を聞くと、一瞬のうちにアイコンタクトを交わした。そして他の誰かが余計な一言を言う前に、”場”を整えるべく動く。

 

 

 

 

 

 まず私が洗練された流れるような動作で大地に身を投げだし跪く!!

 

「お初にお目にかかります破壊神ビルス様。わたくしめは惑星ベジータの元王女ハーベストと申します。以後、お見知りおきを。まさかこのような場で至高なる御身に拝謁叶いますとは、思いがけない奇跡に身が震えるほどの感動を覚えております。聞けば破壊神たるお役目を遂行するおつもりのようですが、どうかその前に矮小で愚昧なる我らに貴方様をもてなす栄誉にあずからせては頂けないでしょうか。冥府への手土産に、是非ともご慈悲を賜りたく存じます」

 

 そしてビルス様が口を開く前にブルマがホイポイカプセルを投げる!! 現れたのはブルマが物資の少ない未来世界の人々に提供しようと持ってきた御馳走の数々だ。

 

「そうですわビルス様! ほら、こ~んなに御馳走がありますのよ! 是非食べて行ってくださいな!」

 

 極めつけに後からやって来たブウ子が周囲の岩に魔法をかけて、センスのいい照明と家具を用意し一気にパーティー会場のような華やかな空間を作り出す!!!

 

「ビルス様~! 話を聞くだけ聞いてさっさと行ってしまうだなんて酷いじゃありませんか。わたくしだってこんなにビルス様をお持て成ししたい気持ちで一杯なのに! さあさ、お座りになってくださいませ。飲み物は何になさいます? 珈琲、紅茶、お酒にフレッシュフルーツジュース、何でもご用意いたしますわぁ。よろしければカクテルなんかもお作りしましょうか? あま~いホットチョコレートでもクリーミーなシェイクでもさっぱりとしたラッシーでも、お好きなものをお申し付けくださいな!」

 

 ついでに一瞬だけ高速移動してベジータのケツを蹴り飛ばす。どっちのベジータかよく分からなかったけどどっちでもいいや。お前も何かしろ!!

 

「! そ、そうですビルス様! ほ、ほら……覚えてらっしゃいませんか? 幼少の頃一度お会いしたことがございます。惑星ベジータの王子ベジータです。ビルス様に再びお会い出来た日のために磨き上げたダンスを披露いたしますので、よければ座興をお楽しみください! ブルマァ! ビンゴの時の曲を準備しろぉ!!」

 

 

 

 

 

「…………………………必死だねぇ、君たち」

 

 

 

 

 

 私たちの咄嗟の連携に未来世界のビルス様は呆れたようにつぶやいた。なんとでもおっしゃってください。こちらの浅い思惑が見透かされてる事なんて百も承知なんですよ! でもこちらにはあなた様が美味しいものに目が無いという情報しか縋るものが無いんです!! じゃなきゃ初対面のビルス様相手にどうしろってんだよ!

 戦うなんて以ての外だ。勝てる可能性がほぼ無い上に、手加減なしのビルス様と悟空たちが全力戦闘したら地球が先にご臨終する。ベジータの頭髪を賭けてもいい。確実に地球と、下手したら銀河ごと滅ぶ。ザマス戦に耐えてくれた地球先輩にこれ以上負担をかけてたまるか! ここは何としてもビルス様に矛を納めてもらわなければ……!

 

「ホホッ、愉快な方たちですねぇ。ビルス様、せっかくですしご馳走になりませんか?」

「いや、しかしだなウイス……。こいつらの仕出かした事を考えれば、すぐにでも破壊するべきじゃないか? 何より僕の気がおさまらないね」

「でもこのお料理たち、と~っても美味しそうですよ。私もビルス様が復活されるまで機能を停止していましたから、食事は久しぶりですし……。ビルス様も実は食べたいんじゃありませんか? 料理の香りにつられてお鼻がピクピクしてらっしゃいますよ」

「む……」

 

 おお……! ビルス様がぐらついてる! 頑張れウイス様! というか、もう一押しだ! 料理の香りに反応しているだと? ならばここは一気に攻めるのみ! トランクス達とか訳が分からず目を丸くしてるし、界王神様とザマスさんは真剣な表情になりつつも私たちの行動に自分達はどうすればいいのか戸惑ってオロオロしてるけど全部後だ! まずはビルス様たちを話のテーブルにつかせなければ!! あなた達は超頑張った後だから今はとりあえず私たちに任せて休んでてくれ!

 

「ブルマ、11番カプセルは!?」

「! 任せなさい、あるわよ!」

 

 キッと表情を引き締めてブルマを見れば、心得たように頷いたブルマがカプセルを放り投げる。そこからは調理器具一式が出現した。私はそこから中華鍋とお玉をつかみ取る。

 

「ブウ子、食材!」

「まっかせなさい! 料理は?」

「炒飯!!」

「オッケー!」

 

 ブウ子は出来上がっている料理をいくつか魔法で食材に戻し、それを華麗な手刀捌きで切り刻んだ。

 

「悟空、火力! 品目は炒飯!!」

「! お、おう!」

 

 キャンプに行った時よくやっている手段だが、エネルギー波を調節して炎の代わりとする。ラディッツはちゃんと炎を使って料理したいようであまりこの即席エネルギーコンロを好まないが、結構いい感じに仕上がるし火の後始末しなくて楽だから私が料理担当の時は悟空に「これも気を操る修業の一つ」とか言いくるめてよく手伝わせていた。なので悟空も手慣れたもので、炒飯を作るのに最良の温度で中華鍋の底に気を当てる。実際これにはかなり繊細な気のコントロールが必要なので、もう一人の悟空は「おお~」とか呑気に言いながらそれを眺めていた。

 

 

 

 さあ、ここからが本番だ!

 

 

 

 まず卵を悟飯ちゃんに、ボールと箸をラディッツにパスした。悟飯ちゃんは咄嗟の事ながらも普段のお手伝いの経験が光り、受け取った卵をラディッツの持つボールに華麗な動作で颯爽と割り入れた。ラディッツはそれを心得たように割りほぐす。手首のスナップが絶妙だ。

 

 その間によく熱されたフライパンにごま油をまんべんなく馴染むようにまわし入れ、香ばしいゴマの香りが立ち上る。ここでまずビルス様の鼻がピクリと動いた。

 

 続いてラディッツから返ってきた溶きタマゴ(流石だ。最良の溶き方をされている)を中華鍋に流し込むと、じゅわっと耳に心地よい音が鳴る。ビルス様の耳がぴくぴく動いた。

 

 そして卵が半熟になったところですかさず悟飯……じゃないご飯を投入!! 中華鍋を大きく振るう!! お玉使いも忘れない!! 悟空が素早い動作で中華鍋の動きに合わせて火力を調整した。ナイスだ!! そして半熟トロトロ卵がつやっつやにご飯をコーティングしたところで細かく刻んだねぎと塩コショウを入れて再び大きく振るう!! ぱらっぱらのライスが輝きを帯びたかのように美しく宙を舞った。

 

 とどめに万能調味料SYOUYUだ!! さっと鍋肌に伝わせて入れると、しょうゆの焦げが発する独特の芳しい香りが立ち上る。ふと見れば悟飯ちゃんとベジータが周囲にバリアを張って香りがあたりに散ってしまわないように工夫していた。ナイスアシストである。ビルス様の口から涎が垂れた。

 

 私はそれを巨大なお玉にまとめ上げると、ブルマが差し出した皿にカンッと小気味よい音をたてて盛った。仕上げに小口切りの九条ネギを散らして完成である。

 食材が少ない実にシンプルな一品であるが、その味には自信があった。あとはビルス様が食べてくださるかどうかだ。

 

 

 

 

「さあ! ビルス様。お召し上がりください!」

 

 

 

 

 

 沈黙があたりを支配する。

 誰かの喉がゴクリと鳴った。それは緊張のためか、それともこの炒飯の香りに釣られたか……。

 

 

 

 

 

 

 

「…………まあ、せっかくだし……。ちょっとだけいただこうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 わっと歓声が上がった。

 

 私たちはまず最初の試練に打ち勝ったのだ!! ふっふっふっ……! 真っ先に行動した女3人のファインプレイを誰でもいいから褒めたたえるがよい。でもブウ子、お前は後で「話を聞くだけ聞いて」のくだりをちゃんと説明しろよな!! 色々話したのお前だろ!!

 

 しかし即破壊というデッドエンドは回避されたが、まだ終わりではない。なんとしてもビルス様を言いくるめて説得しなければ。界王神様に期待である。超期待である。以前のようにびしっと決めちゃってください!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみにセルこの野郎。一人だけ優雅に傍観してた上に、どこで手に入れたのかスマホを使って動画撮ってやがった。この野郎。「君たちの麗しい友情の連携があまりにも見事だったから記念に撮らせてもらったよ。フフッ、タピオンとミノシアにいい土産が出来た」じゃねーよ。

 

 あのセミいつかボッコボコにしてくれよなという意味を込めて、私は無言で悟飯ちゃんの肩を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




結局まだ何も解決していない件。ちょっと前の超のED見てたら炒飯食べたくなったんだ……。

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