とある姉サイヤ人の日記 《本編完結》   作:丸焼きどらごん

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ドラゴンボール超9:神の御業

 スーパードラゴンボールが失われ、ナメック星のドラゴンボールも無くなってしまったと知った私たちはすぐに地球への帰還を優先させた。

 どうせ私も居ないし、どうせ私も居ないし(何故か二回言わなければならない気がした)ザマスとブラックはもう片付けてるだろう。だったら一度過去へ戻って、もう一度世界の捻じれを元に戻すために策を練らないと……。あまり気は進まないが、場合によってはビルス様たちを頼らなければならないかもしれない。色々知恵を貸してもらわないとなぁ……。その時は界王神様に頑張ってもらって、平行世界の3人が破壊されないことを願うばかりである。

 

 

 

 しかし界王神様の星間移動で戻った地球の惨状に、私たちは絶句するはめになった。

 

 

 

「おい、なんだよあのキャラ物のトイレットペーパーみたいな空は。売れなくて在庫セール必至だろうがあんなもん。早く処分しちまえよ」

 

 とりあえず空を覆うザマスの顔、顔、顔という意味が分からない現状によく分からないツッコミを入れると、まず私たちに気づいたのは近くにいた悟空だった。

 

「あ、姉ちゃん」

「おばさん! それにブルマさんと界王神様も!」

「何? チィッ、なんてタイミングで戻ってきやがる!!」

 

 本当にな! 知るかよ! こっちだってこんなことになってるとか思わねーよ!!

 

「ちょっと、何なのよあれ!? 誰か説明してちょうだい!」

「し、知らん! 俺たちだって現状を把握できていないんだ!」

「はああ!?」

「いや、正直どうしてこうなったのか我々も本当に分からんのだ。まあ少なくとも、最悪の事態であることには変わりあるまい。そら、来るぞ」

 

 セルの言葉に全員はっとなって空を見れば、おそらくザマスが変異した姿であろう空から赤と黒の光が入り混じった禍々しい光線が降り注いできた。とりあえず直撃してはまずいと、各々が自分の技でもって迎撃する。しかし問題は私たち以外の場所だった。

 光線は一つ一つが被害を及ぼす範囲が広い上に、その数は無数。正直自分たちの居る範囲を守るのがやっとで、他の場所は成すすべなく抉られていく。

 そんな光景にショックを隠し切れないのはトランクスだ。それもそうだろう……この世界には、彼を含めた数少ない生き残りが必死になって生きている。それをこの光線は容赦なく刈り取っていくだろうことが容易に想像できた。

 

「! マイ、みんな!」

「トランクス!」

 

 仲間を助けに行こうとしたのだろう。トランクスがある方向に飛び出そうとした。その時だ。

 トランクスの目の先に……おそらく、この異常事態に気づいて様子を見に出てきたのだろう人影を確認した。帽子をかぶった長い黒髪の女性を先頭に、銃で武装した人間が数人。トランクスはそれを見るなり、無数の光線が降り注ぐ中無我夢中で彼女たちのもとへ向かった。あちらも現状に驚きつつも、トランクスが放つスーパーサイヤ人の光に気づいたのか彼に視線を向けた。

 

 そして女性が口を開いた、正にその瞬間だった。

 

 

 

 

「トランッ」

 

 

 

 

 不思議と破壊音の嵐が吹き荒れる中、女性の声がやけに響く。その声は私たちの耳にも届いたが……彼女が叫ぼうとした、トランクスの名前が最後まで呼ばれることはなかった。

 

 

 

 

「マイィィィィィィィィィィィィーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

 

 

 トランクスの目の前で……その女性たちは無情にもザマスの光線に飲み込まれ跡形もなく消えてしまったのだ。

 

 すると、ふいに降り注いでいた光線がやんだ。不思議に思って空を見上げると、薄っぺらかった無数のザマスの顔が質量をもって浮き出てきた。簡単に言うと、こうなる前の生身だったザマスの顔がまんま浮き出てきたのだ。控えめに言って気持ち悪い。っていうかおぞましい。

 

『トランクスぅぅぅ、ははははは、憎いか? 私を呪うか? だが、この事態を招いた原因はお前自身なのだ……。ははははは!』

「何……だと? ふざけるなぁぁぁ!!」

 

 激高したトランクスが涙を流しながら空に向けてエネルギー波を放ったが、それを受けたところでザマスは平然としている。そして数百、数千のザマスの声がトランクスに向けて降り注いだ。

 

『お前が過去を変えようと、タイムマシンを使い過去へ向かったのがそもそもの間違いだ。いったい何度、過去と未来を行き来した? 神ですら禁忌とするその愚行を、人の身でありながら何度犯した!! 時の指輪を新たに生み出してしまったお前の罪は計り知れない。お前が孫悟空を心臓の病から救い生かさなければ、私が孫悟空を知ることも、孫悟空の体を求めることもなかった。そこから始まった私の計画も、始まりすらしなかっただろう。未来の私が不満を抱えながらも、粛々とゴワスに仕え界王神見習いをしていた所を見るにそれは明らかだ。だがそれを歪めたのはお前。歴史を歪めたのもお前。……お前の愚かなる行いが、私の正義に火をつけた。トランクス……お前は大罪人なのだ。その結果が、この世界の有様。己の罪を見るがいい!! タイムマシンなどという驕りが招いた、お前の罪で出来たこの世界を!!』

「な……」

「聞くな、トランクス!」

 

 真っ先にトランクスを気遣ったのは平行世界のベジータだった。そしてブルマはといえば、あまりにも身勝手な発言に息子を守るため空に向けてありったけの声を張り上げる。

 

「はあああああ!? ふざっけんじゃないわよ! トランクスが何か悪い事したっての!? 指輪が一個増えたからって何よ! 別にいいじゃないのケチー!! あの子はねぇ、どうしようもなく希望が無くなってしまった世界をどうにかしたくて、助けたくて行動したの! 未来の私だってそうよ! 孫君が死んでたら、私たちの世界だって滅んでいたかもしれない。それをあの子は救ったの! そして自分の世界も救ったの!! たとえ神様が否定したって、私は絶対にトランクスを肯定する! 誰かを、何かを救うのが罪だって言うなら……そんな正義こっちから願い下げよ! 馬鹿ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「母さん……」

「フッ、良く言った。それでこそ俺の妻だ」

「おい、このブルマは俺の妻だぞ」

 

 ブルマ渾身の叫びにトランクスが目に覇気を取り戻す。そして満足そうに頷く平行世界のベジータに弟のベジータが突っ込んでいた。おい、こんな場所で惚気てる場合か。……まあ気持ちは分かるけど。今のブルマ、格好良かったもんな。

 しかしザマスはそんな言葉を気にも留めず、悠々と語り続ける。

 

『ふん、どうせ人間には、このザマスの正義を理解できまい。……私はもうじき、自分の意識すら捨てて宇宙に、世界そのものとなる。フフッ、私の肉体を破壊してくれたことに礼を言おう。最初からこうすればよかったのだ……。こうなることで、私はやっと思うがままに己の正義を体現した世界を構築できる。嗚呼、なんと素晴らしい……! 見るがいい。我が姿こそ正義。我が姿こそ世界。……美しいだろう? さあ、崇めよ、讃えよ!! 永遠なる不死の魂を得た神、ザマスを!! 愚かなる人間を作ってしまった神々の罪と共に、私は永遠に美しき世界を保ち続けるのだ……。それこそが神の務め、神の御業!! さあ、今こそ人間の罪から世界を救おうではないか!!』

 

 しまいにはなんか感極まったのか泣き始めた。単体で見るならちょっと行きすぎちゃった可哀想な子に見えなくもないが、無数に点在する顔が同時に泣き始めるとかホラーでしかない。過去のザマスを知るだけに、神様でも人間でも一歩道を間違えるととんでもないことになるって見本みたいでゾッとした。そうか……あの真面目を絵にかいたみたいな神様がこじらせるとこうなるのか……。

 

「な、なんか気持ち悪いですね。こっちのザマス……」

「やれやれ、とんだナルシストだ」

「ああいう自意識過剰な男ってキラ~イ。迷惑ったらないわ! だから自分しか味方が居ないボッチなのよ」

 

 あまりにもアレなザマスの発言と泣きっぷりに、怒りの感情に気を高めていた悟飯ちゃんが思わずといった感じに一歩引いた。気持ちは分かる。すごくわかる。悟空だって「ああ、気持ち悪ぃよな……」と同意している。そしてセルにまでナルシストと言われ、かつて一人で好き勝手してたブウ子にまでボッチ呼ばわりされるザマスは、もうちょっとどうにかならんかったのか。世界を私の色に染めちゃうゾ☆じゃねーよ。

 っていうかブウ子、姿が見えないと思ったらいつの間に? 見れば何故か「テヘペロ☆」とお茶目なポーズでやられたので、とりあえず原因はコイツだなと見当をつけて殴っておいた。「ひっど~い!」じゃないよ。どう見てもそのポーズ「やっちゃった! ごめんちゃい☆」じゃねーか!! どういうわけかは知らんけど、お前にこうなった原因の一端があるってのは理解できたよ!!

 

「とりあえず、どうする? このまま倒すか、一回過去に戻って対策を練るか」

 

 問いかけるが、全員の意思はその顔を見れば言わずとも分かった。

 

 

 

 

 この馬鹿な神様を、どうあってもこの場で倒す。

 

 

 

 

「子供たちが待ってるんだ。死ねんぞ」

「分かってる。けどタイムマシンを使わせてくれるほどの余裕も無さそうだし、やるしかないでしょ」

 

 ラディッツにそう答えたものの、この見渡す限りザマスザマスザマス! な光景を見るとうっかりくじけそうになる。でもこうなったら片っ端からボコボコにしてやるしかないだろう。仙豆を分けて、各自散っての持久戦だ。

 

「ザマスめ、往生際の悪い奴だ。このサイヤ人の王子、ベジータ様が塵も残さず消してやるぜ!」

「フンッ、なんだ。お前はまだ王子なのか? 俺は王になったぞ。ザマスはこの俺、スーパーキングベジータが倒す!」

「何だと? ククッ、面白い。ならば、それに恥じぬ戦いを見せてもらおうか! 王としての力を見せてみろ!」

「もちろんだ。貴様も俺として恥かしくない戦いざまを見せるんだな!」

「言われるまでもない! まあ、お前がスーパーキングベジータならば俺は今この瞬間からスーパーエンペラーベジータを名乗るがな!」

「おい、そこ変なところで張り合うなよ! 恥かしいから!!」

 

 士気を高めるのはいいが、ベジータ同士が変な事言い始めたから思わず突っ込んだ。やめろ恥かしい! っていうかエンペラーってなんだよ平行世界のベジータ。一緒じゃ嫌だからってまた妙な名前を増やすんじゃない。

 

「なあオラ、やれると思うか?」

「ま、やるしかないさ」

「だよな! おーっし! さっさと勝って、帰ってうめぇモンでも食うぞ!」

「同感だ! チチの飯が食いてぇや!」

「お父さんが居ると本当に頼もしいですね……。どんな無茶でも絶対に大丈夫な気がしてきますよ。でも僕だって負けてません! トランクスさんの世界を絶対に守ってみせます!」

 

 悟空同士のやりとりは実にシンプルで、それを聞いて士気を高めた悟飯ちゃんが今まで以上にやる気を出す。

 

「まったく、面倒くさいことになったものだ。まあこの究極神セルにとっては、楽しいお遊びの時間だがね。こういった刺激も人生、否神生のスパイスと思えば愉快なものさ」

「あら、セルちゃんったら頼もしいのね。格好いわ! ねえ、今度デート行かなーい?」

「やめろ」

 

 セルはこんな状況でも余裕を崩さないが、ブウ子の発言にちょっとやる気を削がれていた。断る時の顔が真顔だったぞ今。

 

 

 

 とにかくこの場で戦いを諦めている者は誰も居ない。

 

 

 

「みなさん……! 本当に、ありがとうございます。俺も諦めません。絶対に負けません! ザマスよ、罪と呼ぶなら呼ぶがいい。だけど俺は自分がしてきたことから逃げないし、後悔もしない! 俺は……俺は絶対に、みんなから託された希望を未来へと繋いでみせる!」

 

 一度は失意に膝をついたトランクスだが、剣を支えに立ち上がり毅然とザマスを見上げた。その姿には悲しみはあれど、諦めは感じない。

 胸を張り凛々しく立つその姿は、ザマスなんかよりよっぽど美しかった。

 

『愚かな人間どもよ、この期に及んでまだ刃向かうのか。ならば望み通り消してやろう! 愚か者どもには死こそが唯一の恵みと知れ!』

「愚かなのは貴方です、ザマス!」

 

 再び攻撃しようというのか、空が揺らめいた。しかしそこに喝を入れたのは今まで黙っていた界王神様だ。

 

『おや、これはこれは……第7宇宙の界王神様ではありませんか。フフフッ、私が愚か? 逆ですよ。私の考えを理解しない者達こそ愚かなのです! それはあなたも同じだ……。他の神同様、この場で死ぬがいい』

「何故そのようになってしまわれたのですか……! 私の世界の貴方を、私は知っている。あのザマス殿もまた、もてあます己の感情とゴワス様の界王神としての教えに挟まれ日々悩み続けていた。ですが、話せばわかる方だった。私は貴方を愚かだと言いましたが、それ以上に哀れで仕方がない」

『憐れ? この私が? 何を憐れむことがあるのです。私は今、神としての責務を果たせることが出来て幸せだ。私は今、幸福の絶頂にいる!』

「私にはそうは思えない! 見なさい、あなたが覆ったこの暗く冷たい世界を。これはあなたの心そのものではないのですか? 他者を信じられない猜疑心が、拒絶心が、自分以外などいらないと叫んでいる。これが正義だと言うならば、貴方の……お前のそれは独りよがりの傲慢そのものだ! そこに正義などありはしない! そして、お前の幸せも……!」

『黙れ! 貴様に何がわかる!』

「分かりますよ! 何度あなたと話し合ったと思うのですか!? 本来の貴方は、人を愚かしいと嘆きながらもたしかに清い心の持ち主だった。心に描く理想は気高く美しいものだった。それが今では、己のエゴに囚われ心が塗りつぶされている。……貴方は純粋すぎたのです。だから私は悲しいし、貴方が哀れで仕方がない。ザマス……ザマス殿! 今からでも、もとのあなたに戻ることは出来ないのか!? 思い出してください。貴方が思い描く美しい世界が、本当にこんな世界なのか、考えてください! お願いします!」

『……何を言っても無駄なようだな。もう貴様と話すことなど何もない。さあ、その命を捧げ、この世界の礎となるがいい!』

 

 ザマスは界王神様の必死の言葉にも耳を傾けず、空を歪め再び破滅の光を打ち出した。

 

 

 

 

 しかし誰かが動く前に、それを弾いた者が居た。その姿に誰もが驚愕する。

 

 

 

 

「シン殿、ありがとう……。こんな風になった私にまで言葉を投げかけ憐れんでくれる貴方は、やはりお優しい方だ」

「まさか……! ザマス、殿!?」

『私だと……!?』

 

 

 

 そう。その場に現れ、ザマスの攻撃を防いだ者もまた、ザマスだった。

 

 

 

 

 

 

 

++++++++++++++

 

 

 

 

 

 

 

『お前はもしや、過去の私か?』

「ああ。お前同様、時の指輪を使いこの世界にやって来た」

 

 そう答えたザマスは、悟空ブラックがはめていた指輪と同じ銀色の指輪を身につけていた。しかしどういうわけか、その体は淡く金色に輝いている。暗い世界の中で、ザマスの姿はひときわ際立って見えた。

 

『ならば何故邪魔をする! 時の指輪を使えるのは界王神だけ……。ならば、お前もゴワスを殺したのだろう? 己の胸に秘めたる願いを成就させるため、この世界に来たのだろう!』

「違う! 私は、正式にゴワス様より界王神の座を引き継いだのだ!」

『何!?』 

 

 

 

 ザマスはつい先日の事を思い出す。未来に自分が起こしたであろう可能性を目の当たりにし、自分に界王神たる資格はないと断じたザマスは師であるゴワスに界王神見習いを辞退したい旨を伝えた。

 

 しかしザマスに返されたゴワスの返答は思いがけないものだったのだ。

 

 

 

 

 

『ザマスよ、私はこの時をずっと待っていた……。今の言葉を聞いて、お前に足りなかったものがようやく埋まったのだと確信できたのだよ』

『ゴワス様……?』

『今この瞬間から、第十宇宙の界王神はお前だ。ザマス』

『な、何をおっしゃっているのです! 先ほど申し上げたではありませんか! 私には恐ろしい可能性が秘められている。そんな私が界王神になるなど……!』

『ふふっ、変わったなザマスよ。お前は謙虚でありながらも、どこかで絶対の自信を持っていた。しかし今では己を見つめ、過ちを自ら正す心を手に入れている。そして、他者を思いやり慈しむ心もな。……そんなお前になら、私は界王神になってほしい。私は、この瞬間をずっとずっと待っていた。お前にその心を気づかせたのが私でないことが悔やまれるが……まあ、私もまた未熟であったという事だな。はははっ』

『ゴワス様、ですが!』

『よいかザマス。しかと聞け』

『……!』

『界王神となったお前に、この時の指輪もたくそう。どう使うかはお前次第だ。今回に限り、私は何があっても目を瞑るつもりだ。もし処罰があるのなら、私が責任を負う。…………悔いのないようにしなさい』

 

 

 

 

 

 師の好意を受け取ったザマスは、自分に何が出来るのか考えた。そして”ある行動”をした後に、タイムマシンで未来にやってきたトランクスたちと時を同じくして時の指輪を使い未来を訪れたのだ。そして今まで起きたことを全て見ていた。己の愚かしさに何度歯を食いしばったか分からない。

 

 

「ザマスよ、この世界の私よ。お前は、いずれ私が歩んでいたかもしれない未来の姿だ。だからこそ私にも責任がある。よって、お前の始末は私がつける!」

『愚かなり……! 愚かなり愚かなり愚かなりぃぃぃぃ!! 私自身が、私を否定するのか! そんなこと、あってはならない! あっていいはずが無い! 偽物め! 貴様は誰だ!?』

「いいや、私はお前だザマス! この私もまた、お前のあり得た可能性の一つ。……だが、こうなってしまったお前を変えることは、もう出来ないだろう。だからせめて、私はお前の代わりにこの世界に対して償うためにやってきた!」

「な、何を言っているのですか? ザマス殿!」

「ザマス……さん! あなたはいったい何を……」

 

 界王神とトランクスの問いかけに対し、ザマスは薄く笑む。そして淡い光をまとう己の体を見下ろした。

 

 

 

「ザマス。お前がやった事と同じだ。時の指輪を使っての、願いの前借り。お前と同じ私がやらない理由は無いな?」

『! 貴様、まさかスーパードラゴンボールを……!』

「ああ、使ったさ。”私が居た世界”から1年後のスーパードラゴンボールをな! ブラックと呼ばれるお前が存在した時点で、私の世界とお前が居た世界は別の世界へと分岐したのだ。よって、もしお前が私と同じタイミングで願いを叶えていようが私が赴いた先にお前は居ない。その結果に文句はあるまい? トランクスを罪人と断罪したが、お前自身もまた禁を犯した罪人であると知れ! もちろん私もまた禁を侵すものだが、私はこの罪から逃げはしないし後悔もしない! ……だろう? トランクス」

「ザマスさん……」

「君の言葉は力強く、励まされたよ。今まで屈せずによく頑張ってきてくれた。だからそんな君に祝福を送ろう」

 

 

 

 

 

 ザマスは龍の神に願った。一度だけでいい……そのどんな願いでも叶える力を、自分に宿してほしいと。

 別の世界のザマスが己のため何もかもを奪うために願ったのに対し、ザマスは他者に分け与えるために願いを使おうと決めたのだ。

 

 

 

 

「わが身に宿りし龍の神の力よ、その力でもって……この世界を、悟空ブラックと呼ばれる神、ザマスが現れる前の状態へと蘇らせたまえ!!!!」

 

 

 

 

 ザマスが言葉を発した途端、その体を中心に黄金の光が弾けた。その光は宇宙ザマスを突破し、地球から宇宙全体に拡散してゆく。

 

『馬鹿な!? そんな願い、叶うはずか……!』

 

 しかし空に浮かぶザマスの思惑とは裏腹に、世界に変化が現れる。

 

「な、何!? 町が……!」

「戻っていく! 周りの景色が変化していくぞ!?」

 

 まるで記録媒体の逆再生のように、破壊された町がもとに戻っていった。そして地球の……否、宇宙の各所で奇跡は続く。

 

 

 

 

「あれ? 俺、死んだはずじゃあ……」

 

「私、生きてる!」

 

「お、おおお! み、みんな……! 戻って来てくれたのか? 蘇ってくれたのか!? あああ! なんということだ……! 私たちは、再び孤独にならずにすむのだな!」

 

「奇跡だ……! この黄金の光のお陰か? 破壊された景色が、命が全てもとに戻ってゆく!」

 

 

 

 ザマスに奪われた景色が、命が、全てが元に戻ってゆく。

 それに気づいた誰かが呆然とつぶやいた。

 

「スケールが違う……。これが、本来のスーパードラゴンボールの力……?」

 

 

 そして地球のある場所で倒れ伏していた青い髪の女性が、起き上がり己の左右の手を確認するように握る。

 

 

「あれ? わたし、ブラックに殺されたはずじゃあ……」

 

 

 

 

 

 誰かが言った。

 

 

 

「これぞまさに、神の御業」

 

 

 

 

 

 

 

 この日、世界は過去より訪れた神の力により再誕した。

 

 

 

 

 

 

 

 

+++++++++++++++++

 

 

 

 

 

 

 

 ザマスもザマスさんもどっちも驚くことばっかやってくれるな! けどザマスさんはグッジョブ! っていうかグッジョブどころじゃねぇ! ちょ、今心の底からザマスさんを崇め讃えたい気分なんだけど! 諦めるつもりは無かったけど、正直どうしようかと思ってたんだよね……!

 とりあえずブルマ、ブウ子と一緒にハイタッチをした。よくわからないけど、今はとにかく喜んでおこう。

 

 

 スーパードラゴンボールの願いの前借りによって世界を以前の状態に戻すという、神業としか言いようがないナイスプレイをかましてくれたザマスさん。どうやらスーパードラゴンボールを直接持って来ることが出来なかったためか、願いを叶える力を自分に宿してきたようだ。そのためザマスさんから発せられた光が世界を修復していったように見えたので、もうこれ見たら崇めるしかないだろ。宇宙ザマス? そんなゴミは知らんな。っていうか、その宇宙ザマスも「世界を以前の状態に」という願いのためか、世界そのものになりかけていた奴まで影響を受けてその魂を再び神の器へとおさめられていた。

 肩で息をしながら青ざめて居る元・宇宙ザマスはブラックとザマスがポタラで合体した姿なのか初めて見る容姿をしていたが(セルに聞けば案の定ポタラ合体してから例の宇宙ザマスになったらしい)、まあ凄い力を持ってそうだけど見た目的には増毛しただけザマスって感じである。

 

 

「まさか、こんなことが……!?」

 

 よほど信じられないのか、奴は目を見開いて酷く動揺している。そして追い打ちをかけるように、その眼前に緑色の肌の神様が立ちふさがった。

 

 

 

 

 

「さあ、私よ。決着をつけようか」

 

 

 

 

 




番外編だし、主人公が主人公してなくてもいいと思うんだ(開き直り

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