救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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閑話⑤

「レディースアンドジェントルメン!読者の皆、元気かなぁ?絶対絶望の美少女、塔和モナカだよ~♪」

 

 マイクを片手に横ピースしながら笑顔を振りまく少女の名は、塔和モナカ。元超小学生級の学活の時間である。

 

「今日は待ちに待った《ランキング発表》!……司会は、この塔和モナカと〜!」

「…………え?ああ、適当に紹介よろしく」

「嘘予告で終わるか投稿されるかアンケートで募集中の、『こまるお姉ちゃん』で~す!……ちょっとお姉ちゃん、ちゃんとやってよ」

「どーせランキングなんてつけても意味ないじゃん。原作のゲームに影響がある訳じゃないんだし」

 

 はぁ、とやる気の感じない口調で喋るセミロングの少女、苗木こまる。

 

「もう、せっかく投票してくれた人に失礼だよ~?そんな態度取られるなんて、投票した人も絶望的だね」

「はいはいゼツボーゼツボー……そんなに絶望したいなら、あの先生呼べば良いのに」

「いやいや、そんなの良いから、ちゃんとランキング発表してよお姉ちゃん」

「ググれカス」

「ググってもわからないよ!ていうかこれ、逆じゃない!?」

 

 やる気を全く見せないこまるに、しっかりしてよー!とモナカが肩を揺すると、彼女はため息を吐き書類を取り出した。

 

「んじゃ、0票の同列11位から………まず、『ダブル冬子ちゃん』」

「ど、どうせあたしに誰も投票しないわよ………ブエックション!おいこらおかしいだろ!根暗はともかく何でアタシまで票が入ってねえんだ!」

「──出番少ないからじゃない?」

「でこまる……てか()こまる……アニメでアタシを必死に止めてくれた健気さはどこにおいて来ちまったんだ?冷たくされるとそれはそれで興奮すんだろ!」

「テレビの私とここの私は別なんで……それと安心していいよ~、この私もちゃんと冬子ちゃん止めるから……多分」

「多分!?」

「はい次々~」

 

 こまるが手元のスイッチを押すと床が開き、腐川が穴の底に消えていった。

 

「こいつら別に友達じゃないし適当でいっか」

「あ、一応特別扱いしてたんだ……」

「モロコシヘッド、変な髪型風紀委員、爆乳スイマー、かませ眼鏡……はい以上。ポチッとな」

「誰がモロコ──」

「真面目にやりた──」

「え?私呼ばれ──」

「…なん…だ──」

「うわぁ〜……」

 

 適当な紹介のまま穴の底に消えていく四人を見て、モナカは引き攣った笑みを浮かべ、めちゃくちゃドン引きしていた。

 

「次は1票の10位の皆さん……まずはお兄ちゃんの偽者、『狛枝』さん」

「ボクなんかに一票入るなんて、変わった人もいるもんだね。おかげでこうして会話が出来る。やっぱりボクはツイてるよ……」

「はいはい、未来の反面教師さんはそこの10位って書かれた席に座ってね。んじゃ次、その姿は丸い何か、『山田』さん」

「やあやあどうも。ふふふ、皆さんわかってるじゃあないですか。そう、やはり拙者は十神白夜殿にも劣らぬ……!」

「皆さんってか1票だけだけどね。何調子乗ってんだろあのセイウチは」

「モナカちゃん、セイウチに失礼だよ?あ、狛枝さんの隣に座ってください。次は、電子の妖精アルタンこと『アルターエゴ』だよ」

『えへへ、良いのかなあ?僕が10位で……』

 

 アルターエゴの登場に、トボトボ席に向かっていた山田がバッ!と振り向く。

 

「アルターエゴは10位席に座ると危険があるから、ここにきて私の代わりに司会してね」

「ダメだよ!?ちゃんとやろうって!ていうかモナカ、突っ込みキャラじゃないのに~!」

「面倒くさい、絶望的~……ええっと次は?……お前の内蔵俺の物、くz──『葉隠』さん」

「俺に投票してくれた人は明日いっぱい良いことがあるベ!俺の占いは三割当たる!」

「ねえお姉ちゃん。今〝屑〟って言いかけなかった?」

「さあて次々………ん?あれ、『私』じゃん…………え~っと、活躍する私が見たかったらアンケートに投稿してね。投票者が50越えたら作者もやる気出すから……きっとね」

「………さあ次いってみよー!同列9位のお二人だよ~」

「あ、2票で2人ってすごい偶然……」

 

 と、こまるがどうでも良いことに反応していると、大神と不二咲が現れる。

 

「見た目は大鬼、中身は女神、おそらくダンガンロンパで最も心優しいキャラ、『大神さくら』さ~ん!そして見た目は可憐、その実つくもんついてる『不二咲千尋』さ~ん!」

「…………もうモナカちゃんが司会やれば?」

「やだよ、絶望的に面倒くさい」

「…………それ私にやらせようとしてるのはどこの誰かな?」

「それじゃ、次、行ってみよー!」

 

 モナカの進行に、こまるはため息を吐きながら、次の人を呼ぶために書類を見る。

 

「次は……8位、この作品の作者にしても高校生と名乗る年齢詐称、『超高校級の切望』だよ。びーっくりだね……」

「5票も入ってるね……」

「7位8票、苦労人『霧切』さん……」

「………苦労人………」

「書くのが面倒くさく………もとい読者の皆も飽きてきただろうしどんどん行くね~。6位10票、絶望達のマスコット、『モノクマ』」

「うぷぷぷ……かませ眼鏡や原作ヒロインより人気なボクでしたー!」

「5位、11票、その包丁は何を刺す?ヤンデレアイドル『舞園』さん」

「いやですね、別に刺したりしませんよ……ところであなたって、苗木君と同じ血が流れてるんですよね?……いいなぁ」

「うわ、なんか絶望的にヤバい予感……続いて4位、19票、私の先輩にして真の超高校級の絶望、『江ノ島』さん」

「……私なんかに19票も……うれしいですね。でも、やっぱり何かの間違い………なわけねーよなぁ!てかおいモナカ、久し振りだなぁ!」

「わーい!久し振り~」

「あれが私の先代…………3位、21票の牝犬ギャンブラー、『セレスティア』……え、何これキラキラネーム?ないわ、絶望的にないわこの名前……」

「るせぇ!アンテナ小娘!」

「じゃ、続いて2位というまるでメインヒロインのような票数を集めた、残念な軍人お姉さん、略して《残姉》──『戦刃むくろ』!」

「えっと……私が2位?良いのかなぁ……あ、でも盾子ちゃんさっき私に負けて絶望的とか言ってたし、ちゃんと絶望してくれたかなぁ?」

「…はい、残姉さんでした!…じゃあ次行くよ次!この作品でモナカ達にも関わりが深く、希望の戦士の6人目!『苗木誠お兄ちゃん』!」

「お兄ちゃーん!」

「どうも、こんにち───ぐはぁ!」

 

 苗木が出てきた瞬間、さっきまで気だるげだっだ気配を一転させ、こまるは満面の笑みで兄に飛びついた。

 

「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!」

「ちょ、こまる………離れて!」

「やだやだやだやだやだやだやだやだ!お父さんも死んでお母さんも死んで……私にはお兄ちゃんしか家族がいないもん!」

「いや、〝友達〟がいるでしょ………!」

「わーい!モナカも混ざる~!」

「………えっと……苗木君は43票でぶっちぎりの1位だよ……」

 

 結局、戦刃が後を引き継いだ。


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