救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編①

「グ・リ・コ」

「チ・ョ・コ・レ・ー・ト」

 

 モノクマと苗木はタンタンと、寄宿舎の一階のタイルを踏みながら歩く。

 グリコをしていた。そして一人と一匹は、寄宿舎を抜け学園校舎に辿り着く。ちなみに苗木の勝ち。

 

「来ました、モノモノマシーン!」

「ワー!パチパチパチ!」

 

 苗木はモノモノマシーンのある購買部に到着すると、早速モノクマメダルを投入する。そして、レバーを捻り出て来たのは……。

 

「《糊付けされたバッチ》~!」 

 

 モノクマはカプセルを開け中身を掲げる。それは、○と×を重ねたようなバッチだった。一度割れてしまったのか、糊で付けられた跡がある。

 

「あ~、こりゃゴミだね」

「それを決めるのはボクだよ」

 

 苗木はそう言ってバッチを受け取り、再びレバーを回す。

 

「モノクマパーカー………モノクマパーカー!……またモノクマパーカー!」

「……五着か。最近何故かパーカーが減ってきてるし、ちょうど良いや」

「舞園さんと江ノ島さんとセレスティアさんの部屋を調べるといいよ」

「………人間は弱い生き物なんだ。現実から、目を逸らしちゃうほど…」

「ああ、知ってたのね」

 

 苗木はふっと陰のある笑みを浮かべ、モノクマが同情したようにポンと足を叩いた。

 

 

 

 そして翌日。

 苗木達は食堂ではなく、保健室に集まっていた。

 

「さくらちゃん……大丈夫?」

「ああ、すまぬ。迷惑をかけた」

 

 保健室のベッドで横になっていたのは、頭に包帯を巻いている大神だ。特例として、保健室での就寝の許可を貰って休んでいたのだ。

 

「申し訳ねえ!ほんま済まんかった!」

「わ、悪かったわね………」

 

 大神の心を傷付けた張本人である葉隠と腐川が、大神に謝罪する。大神本人は気にしてないと片手を振った。

 

「いやー良かった良かった。これで一件落着だね……ん?何かな、皆?」

「……なんか言うことないの?び、瓶の中身代えてたくせに」

「ボクは預言者や占い師じゃないんだぜ?誰が、何時、どの瓶を何のために使うかなんてわかるわけないじゃん。だから、ボクは悪くないから、ボクは謝らない」

「あ、あんたねえ!」

「……あのさ苗木」

 

 苗木がケラケラ笑っていると、朝日奈がおずおずと話しかけてくる。苗木はん?と朝日奈に顔を向ける。

 

「さくらちゃん、助けてくれてありがとね。手段はともかく……それと、ごめん」

「まあ、自分でヘイト集めてただけだし。朝日奈さんとジェノサイダーが喧嘩したときはどうなるかと思ったけどね」

「お主には世話になったな……おかげで我は、取り返しのつかぬ事をせずに済んだ」

 

 大神はそう言って〝朝日奈〟を見る。

 

「我が死んだら悲しむ者がいる。内にも外にもな」

「大神さん、外に『恋人』でもいるの?」

「な!?ち、違う!我とケンイチロウはそのような関係では…!」

「へえ、恋人と聞いて真っ先に想像するのは、そのケンイチロウって人なんだ。覚えとこー」

 

 苗木は大神の珍しい反応にケラケラ笑う。

 

「ふん。暢気なものだな。あいにくと、俺は大神を全面的に信じたわけではない」

「!あんた、まだそんな──」

「信用してほしければ、現状でお前が〝知る限り〟の情報を話せ」

「…………ツンデレ?」

「黙れ。おい、大神、さっさと話せ……」

 

 十神は苗木をギロリと睨んだ後、大神に知ってる限りを答えろと尋ねる。知る限りと言うことは、答えられなくても良いと言う譲歩だろう。

 

「………我が知っていることは2つ。一つは、この学園にいる生徒は〝15人ではない〟という事だ」

「「「!?」」」

 

 大神の発言に動揺が走る。唯一動揺しなかったのは苗木だけ。江ノ島は指を折りながら、あれ?と首を傾げている。

 

「『自分』を入れ忘れてるよ」

「あ!そっか……」

「15人じゃないって………なんだそりゃ?」

「《16人目》がいる。何者かは知らんが、おそらく黒幕と間違いなく繋がっている……あるいは、黒幕自身かもしれん」

「……黒幕は学園長ではないかもしれんのか……」

 

 大神の口述に難しい顔をする一同。ついこの間アルターエゴから、黒幕は学園長の可能性が高いと言われ、今それを否定されたのだ。完全な否定ではないが。

 

「まあ、この際それは置いておこう。……二つ目は何だ?」

「うむ。内通者として幾度となく黒幕とやりとりした結果、我はある事実を知るに至ったのだ。黒幕は、我らの体に『あること』をしている。そのあることとは……」

 

 と、そこまで言い掛けた瞬間、全員の電子生徒手帳が震える。

 

「何々?……『大神さくらは知っている情報の肯定否定は出来ても自分から教えることは禁ずる』…………つまり、ボクらが質問してこれはこうかと尋ねることは良くても、大神さんがカクカクシカジカと教えることが出来ないのか」

 

 こりゃまた抜け道だらけと校則だな、と苗木は電子生徒手帳を眺める。まあ向こうからしたら、負けても絶望が味わえるのだからどちらでも良いのだろう。

 

「うぷぷぷ。危ない危ない。あと少しでネタバレされるところだったぜ」

 

 そう言ってヒョッコリとモノクマが現れる。よく見ると何か持っていた。それは《アルターエゴ》だ。

 

「あ、アルターエゴ!?」

「僕の天使!?」

 

 それを見て制作者の不二咲とストーカーの山田が悲鳴を上げる中、モノクマはノートパソコンを床にたたきつけた。

 

「ぬぁぁぁあああああ!?」

「こんなものー!こーしてこーしてさらにあーしてやる!」

 

 モノクマは砕けたノートパソコンを何度もがんがん蹴り、止めようとタックルしてきた山田を躱しその上に立つと、一仕事終えたように額を腕でこする。

 

「ふいー、スッキリ。あのね、ノートパソコンの中のデータはボクのプレゼントだから良いけど、ネットに繋ぐのは見過ごせないよ?だから壊してやった!アーッハッハッハッハッ!」

「よくも………よくも僕の天使おぉぉぉぉ!」

「………うわぁ、キモ」

 

 このままでは山田がモノクマに攻撃を加えてしまいそうなので、慌てて大神達が押さえる。そして、モノクマは思い出したように言う。

 

「新しい階層が解放されたよ。早速頑張って探しなさいな」

 

 言いたいことを言い終えたモノクマは、そのまま消えていった。




活動報告の感想100越えてた

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