救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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オール・オール・アポロジーズ(非)日常編①

 舞園が桑田に殺され、江ノ島がモノクマに殺され、桑田が処刑され、不二咲が大和田に殺され、大和田が処刑され、石丸が山田に殺され、山田がセレスに殺され、セレスが処刑され……その過去全てを無かったことにした今、苗木はこの先を考える。

 すでに歴史は大きく変化している。

 さて、どうなるか……。

 

「よし!今日は四階の探索と行こう!」

 

 石丸の提案に全員が面倒そうに、しかし新しい情報を得られる可能性を信じ四階に向かう。苗木も、学園長室以外は散策してないのを思い出し、四階に向かった。

 

 

 

「江ノ島さん、モノクマとお話ししてて。舞園さんは付いて来て………セレスさんはどうする?」

 

 苗木は何時もの如く付いてきている2人に行動を命じ、何故か付いてきているセレスの扱いに困っていた。

 

「………わたくしには命令しませんのね」

「…じゃ、付いて来ていいよ」

「あら、そんな下手に出ていて言う事を聞いてもらえるとでも?」

「………今日のセレスさん、なんかウザイな」

「はぅ!」

 

 苗木が呆れたように言うと、セレスは突然ビクビクと痙攣する。そして恍惚とした表情で、うっとり苗木を見つめてくる。

 

「それで、結局どうする気ですか?」

「……付いて来て」

「はい!」

 

 苗木の命令にセレスは嬉しそうに付いてくる。なんか、すごく不気味である。

 そして苗木達がやってきたのは、机の上に花が置かれた異様な雰囲気の職員室である。

 そして苗木は花にも目をくれず、床に落ちていた〝写真〟を拾うと舞園達に渡す。

 

「これは……!」

「え?」

 

 セレスと舞園はその写真を見て、驚きの声を上げる。

 その写真には舞園とセレス……あとついでに山田が写っていた。

 

「私とセレスさん、ですよね…?あとついでに山田君も……」

「わたくし達が写ってますわね……ついでに山田君も……」

「山田クンに何か恨みでもあるの?」

 

 二人の言いように、苗木は呆れながら苦笑する。

 

「これは、モノクマさんの合成ですかね?」

「………わたくしはそう言うのに詳しいですが、その視点から言わせてもらえば、これが合成なら作ったのはそれこそ超高校級の合成加工師と名乗る者でもおかしくないですわ」

 

 つまり合成の確率はほぼ少ないと言う事だろう。

 実際、この写真は合成ではない。

 

「んじゃ、次行こうか」

 

 苗木がそう言って職員室から出て指笛を吹くと、三秒もしない内に江ノ島が走ってきた。廊下を削りそうな勢いで踏ん張り、苗木の前で止まる。

 

「それじゃあ次の場所に行こっか」

「あ、あの……苗木君……私頑張って、モノクマと話してた……んだけど」

「うん。お疲れ様」

「あ………えへへ……」

 

 苗木が江ノ島の頭を撫でると、彼女は頬を染め嬉しそうな顔をした。最近は素が出てきている。

 そして次は近いと言う事から、《学園長室》がどうなっているか見てみた。

 

「………うわぁ」

 

 そこには沢山のモノクマが踊っていた。クネクネと、人間の女がやっていれば色っぽい動きで。

 

「何ですか、あれ……?」

「誰かが学園長室の鍵を壊したのでしょう。全く誰がやったのやら」

「………そんなに学園長室に入れたくないんだね」

 

 学園長であるモノクマに攻撃できない以上、学園長室に入ることが出来ないと言うわけだ。

 

「……踏むのはアリですかね?」

「江ノ島さんの件を忘れましたの?」

「………ッチ」

 

 苗木は舌打ちしてその場から去る。次に向かったのは音楽室。ここにはおそらく彼女が居るだろう。

 

「ちょっと待っててね……」

「?はい……」

「……うん」

「?」

 

 舞園とセレスは不思議そうに、江ノ島は気配で気づいたのか不満そうな顔をしていた。

 

「苗木君……」

「やあ、霧切さん」

 

 音楽室の中にいたのはやはり霧切。

 彼女は苗木に気づくと苗木の後ろを見る。

 

「ボク一人だよ」

「………そう……ところで苗木君、何か私に隠していることはないかしら?」

「学園長室に昨夜侵入したのはボクだよ」

「そうでしょうね。……それじゃあ、あなたは何を見つけたの?」

「う~ん、まだ教えるわけには行かないんだよなぁ……」

「……なら私は二階──」

「二階の《隠し部屋》なら知ってるから、交換にならないよ」

 

 苗木の言葉に霧切は眉を顰めた。苗木が話す気がないと理解したのだろう。

 

「……私のこと、信じてるって、裏切らないって言ったくせに」

 

 霧切はそう言って不満そうな顔をする。怒っているのがヒシヒシと伝わってくる。

 

「……あなたは嘘つきね……もういいわ、さようなら……」

 

 突き放したような言葉を残して、霧切は去っていった。

 罪悪感を感じながら、苗木も音楽室から出ようとすると。

 

「やーい!やーい!フられてやんの」

 

 モノクマがからかうように現れた。まあからかうようにと言うか、からかってきているのだが。

 

「別にフられるも何も、ボクは霧切さんに恋愛感情なんて抱いてないよ……ボク、既に別に『好きな人』が居るし」

「え?マジで?ちぇ、家族だけじゃなくそっちも人質にすれば良かった」

「キミには無理だよ。『彼女』を人質にするのは、キミだけは絶対出来ないよ?」

「え?その人、クマを見ると直ぐに逃げちゃうようなクマ嫌いなの?」

「………さあね」

 

 苗木は薄く笑い、モノクマに背を向けた。

 次に来たのは化学室だ。とても薬臭い。

 

「あ、苗木!舞園ちゃん!江ノ島ちゃん!セレスちゃん!聞いて聞いて!いったん深呼吸して落ち着いてから聞いてね!」

「まずはあなたから落ち着いてくださいな」

「保健室や倉庫にもなかったサプリメントが勢ぞろいなの!ビタミン、ミネラル、アミノ酸、クレアチン……な、な、なんと!あのプロドルメンXまで!」

「プロドルメンX!?海外製の超高級プロテインですか!?」

「………何で知ってんの舞園さん?」

「エスパーですから」

 

 ようするに勘か。

 

「すごいよ!宝の山だね!感謝通り越して拝んじゃうよ。幸あれ、幸あれ……」

「毒もあるけど」

「……ふえ?」

「何か役に立ちそうな薬はないかなぁ……ん?……忌村静子特製、記憶力倍増薬?」


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