救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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注意 今回は作者の欲望を描いた完全なる本編と格別した番外編です。
   それでも読む人意外は引き返してください


閑話③

「……《絶望病》?」

「そうなんだよね~……昔、超高校級の医者が偶然作っちゃった病気で、発熱と精神の異常をきたすみたい。皆も気をつけてね?」

 

 雪染ちさの注意に苗木達はとりあえず頷いておいた。何でも担任が来ないのは、その絶望病に罹ったためらしい。その代わりとして雪染が連絡に来たわけだ。

 命の危険は無いらしいが、手洗いうがいをするように言い残し、彼女は去っていった。

 

「……精神に異常か……想像できない……ね?」

 

 苗木がそう言って不二咲に話しかけると、不二咲が床に伏しながら何かを激写してる姿が目に映った。何かというか明らかに〝女子のスカートの中〟を撮ろうとしている。

 

「……な、何してるの不二咲クン?」

「………別に、何もしていない」

 

 不二咲は鼻血を吹きながら無表情でそう言うが、おかしい。

 色々とおかしい………まさか、と思い彼のおでこに手を当てると熱かった。完璧に熱が出ている。

 

「まさか、これが《絶望病》!?」

「なるほど、普段おとなしい不二咲がこれとは……恐ろしい病だな」

「冷静に観察している場合じゃないよ十神……クン?」

「どうした?」

 

 言葉を途中で疑問系に変えた苗木を、十神は不思議そうに見る。だがあえて突っ込みたい。お前の格好の方が不思議だ!と……。

 十神は現在、目の回りに隈を作り、背には砂で出来た巨大な瓢箪を背負っている。気のせいか彼の周りにも砂が浮いている気がする。

 

「………ごめん、保健室で休んでくる」

 

 

 

 苗木は頭を抱えながら保健室に向かう。なんだあれは、あれはないだろ……。

 命に危険は無いかもしれないが黒歴史として残るだろう。別の意味で危険だ……

 

「失礼します」

「む?どうした?」

 

 保健室に入って出迎えてくれたのは一個上の学年の罪木蜜柑だったが、何かおかしい。普段はおどおどしているのに、何処か凛とした雰囲気をまとっていた。

 

「……な、なんだその目は……くっ、わかっている。保険委員のくせに病に罹るとは何事だ!と言いたいのだろう?いいさ、好きなだけ詰るがいい、さあ!」

「………………」

 

 苗木は罪木を無視して保健室のベッドで横になる。無視された罪木が興奮しているところは見なかったふりをした。

 寝よう、寝て忘れよう。寝て起きればきっといつもの皆が待っている。

 

 

「……ん、よく寝た」

 

 苗木が起き上がり時計を確認すると、すでに昼になっていた。

 

「あら、起きていたの苗木君……」

「……あ、朝日奈さん?」

 

 そして昼飯でも食いに行こうとベッドから立ち上がった瞬間、声をかけられる。見れば扉を開けた朝日奈と……腐川が居た。

 

「どうしたのかしらボーッとして。そこまで調子が悪いのに教室に来て、私に風邪を移したらどうする気?」

「姫、ここは正直に心配したと言った方が好感度があがるかと」

「別に好感度をあげたいから来たのではないもの。元気ならそれでいいのよ……」

「………あの、ごめん。二人とも熱を計らせてくれないかな?」

「それは私達に触れたいと遠回しに言ってるのかしら?セクハラね、死んだ方がいいんじゃない」

「……………」

 

 疑うまでもなく《絶望病》だ。

 心にグサグサ刺さる言葉に、苗木はさっさとこの場から去ることにした。

 

「ヘクチ!」

 

 とその時、腐川がくしゃみをして、苗木は反射的に振り返る。絶望病によってジェノサイダーはどうなっているのだろう?元々精神は異常だから何の変化もなかったり………。

 

「おや、どうした苗木?」

「あれ!?」

 

 まともになってる……だと? 

 

「ッ!!」

「え?」

 

 とその時、ジェノサイダーの瞳が緋色に光り、苗木の頬を何かが掠める。それは『鎖』だった。鎖は横にいた蜘蛛を粉砕して、壁に突き刺さった。

 

「……あ、す、すまない。蜘蛛を見るとどうも……」

「ア、ウン………キヲツケテネ」

 

 謝るジェノサイダーに背を向け、苗木は直ぐに逃げ出した。

 もう今日は帰りたい……。と、思っていると誰かにぶつかった。

 

「ッチ、気をつけろ」

「あ、すいません……気づかなくって」

「誰が気付けないほどの極チビだ!」

「いや言ってませんけど!?」

 

 ぶつかった相手は終里赤音。普段なら身長など気にしないどころか、そもそも小さくないのにヤケに突っかかってきた。

 

「漢なら身長のことなど気にするなぁぁぁ!」

「え?終里先輩は女……って、弐大先輩!?」

「お前も漢なら漢だぁぁぁ!」

 

 弐大猫丸の様子も訳が分からない。苗木はとりあえず逃げ出した。

 

 

 

「前かがみですね……」

 

 花村輝々はいつも通りだったらしい。学食を頼みにカウンターに行くと……。

 

「おう、苗木」

「大和田クン……いつも通りだ」

「あ?……何言ってんだお前。ま、いいや………おーい、大和田マヨラースペシャルくれ」

「宇治銀時丼ひとつ……うわ、そんな犬の餌食ってんのかよ」

「ああ!?………ん、苗木…どこ行くんだ?」

「見てるだけで気分悪く………」

 

 田中眼蛇夢のあんこと大和田のマヨネーズだらけの丼を見て、苗木は口を押さえた。

 

 

 

 ほんと、何なのだろうこの悪夢は……本当に夢なら早く覚めてほしい。

 

 

 

「……っは!」

 

 苗木が飛び起きると、そこは保健室だった。

 

「あ、あの~………大丈夫ですか?」

「罪木……先輩」

「ごめんなぁい!話しかけちゃって……その、魘されていたから心配で」

 

 良かった、何時もの罪木だ。

 全く変な夢を見てしまった。

 

「■■■■、■■■■、■■■■■■■■■」

「……はへ?何ですか?」

「え?ボク何か言ってました?」

「あ、あれぇ……?ごめんなさい、私の勘違いでした……」

 

 苗木は立ち上がると保健室から出て行った。

 しかし、罪木は確かに聞いた気がしたのだ、苗木が……

 

大嘘憑き(オールフィクション)』『絶望病を』『無かったことにした』

 

 と呟いていたのを。




登場キャラ

不二咲=土屋康太(バカとテストと召喚獣)
十神=我愛羅(NARUTO)
罪木=ダクネス(このすば)
朝日奈=戦場ヶ原ひたぎ(化物語)
腐川=バルゴ(FAIRY TAIL)
ジェノサイダー=クラピカ(HUNTER×HUNTER)
終里=エドワード・エルリック(鋼の錬金術師)
弐大=エルフマン(FAIRY TAIL)
花村=トリケン(甘城ブリリアントパーク)
大和田=土方十四郎(銀魂)
田中=(坂田銀時)
苗木=球磨川禊(めだかボックス)

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