救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑤

「プ、プレゼントですと?………今度は一体、何を企んでいるのですか?」

「きっと、また動機ね……」

 

 山田の疑問に霧切が呟くと、周囲の空気がピリピリしたものに変わる。

 

「また?…やだよ…もう行きたくないよぉ……」

「で、でもよ!まだ〝殺人〟は起きてないし大丈夫だべ!」

「「「ッ!」」」

 

 葉隠のその発言に顔を顰める大和田、何時の間にか起きた石丸、そして不二咲。

 舞園も髪を弄っている所から考えるに動揺しているようだ。

 

「今はアルターエゴが手がかりを探してくれているんだもの、耐えましょう。何があっても……」

 

 霧切はそう言って歩きだし、苗木達も体育館に向かった。

 他の面々も渋々と、苗木達の後を追った。

 

 

 

 体育館にはすでに2人の先客がいた。

 

「お前等に待たされるとはな……銃器の使用が認められていたら迷わず撃っていたぞ」

「十神クン、早かったね?」

「お前等が遅れたのは、二足歩行を忘れたからか?いいか、右足と左足を交互に出して進むんだぞ」

 

 先に来ていた十神は相変わらず傲慢にこちらを見下してくる。それに引き替え、もう一人の先客である腐川はジェノサイダーから元に戻り大人しくなっていた。

 

「全員揃ったね」

「…じゃあ、そろそろね」

 

 霧切が呟いたのと同時に、何時ものようにモノクマが壇上からビヨーン!と飛び出てくる。

 

「オマエラ、全員集まったみたいだね!じゃあ、さっそく始めようか!!」

「さっさと言え。次はどんな動機を用意したんだ?」

「何をされようとも、我らは屈せぬぞ」

「そうだよ…!絶対負けないんだから…!」

「そーだそーだ!アホアホアホアホッ!」

「うぷぷ…そんなに構えなくたっていいって…」

 

 モノクマは身構える生徒達を見て、馬鹿にしたように笑う。

 

「今回はね、趣向を変えてみたのです。今までオマエラを追い詰めるような、北風ピューピューばかりだったけど……たまには、暖かい太陽も必要だと思った次第です!アーッハッハッハ!!」

 

 モノクマは何が可笑しいのか、爆笑しながら両手を広げる。

 

「そんなこんなで、今回ボクが用意したのは……コレでーすッ!!」

 

 そして、大量の札束が壇上の上にドサドサ積み重なっていく。

 

「ひゃっくおくえーん!!もし卒業生が出た場合のプレゼントにします!どう?100億円だよ?ひゃっくおくえーん!!もうウッハウッハでしょ!?」

 

 つまりは『金』、モノクマの用意した動機。

 

「…少なすぎるな」

 

 十神は100億円を見てふん、と下らなそうに鼻を鳴らす。まあ超高校級の御曹司からすれば100億など端金か。

 

「お金…確かに動機としては定番中の定番ね。ミステリー世界でも、現実世界でも…」

「だ、だけどさ…今更、お金なんかの為に仲間を殺したりしないよッ!!」

「…人の命は、金では買えぬのだからな」

「その通りだ!人の命は尊いのだぞ!」

「つーか、100億円なんて額……リアルな話、実感沸かねーし……」

「んなもんの為に人を殺せるかってんだ」

「えっとぉ……五年もあれば集められるかなぁ」

「すげーな不二咲……」

 

 各々が感想を言う中、苗木はジッと札束の山を眺める。

 今の世界で金が使える所など限られてるだろうに。そして学園から出てまだ文明の残っている場所に向かうのに、あんな荷物を持ってたら間違いなく野垂れ死ぬか殺される。

 つまりあれはただの紙以下の価値しかない。ぶっちゃけゴミだ。

 

「……苗木君もお金が欲しいんですの?」

「え?─あんな〝ゴミ〟いらないけど?」

「………ゴミ?」

「ゴミだよ。いや、人の命を奪って手に入れたお金なんてゴミにも劣る」

「どんな手段で手に入れようと、お金は使える以上お金ですわ」

 

 否定はしない。ゴミにも劣る紙クズでも金は金。もっとも苗木なら、誰かを助けるため以外にそんな金は使わないが。

 

「うぷぷ。さっそく険悪な空気ができて何よりだよ。ま、せいぜい清く正しい共同生活を心掛けるんだねー!」

 

 モノクマはその不穏な言葉と札束を残して去っていった。

 

「だ、大丈夫だよね…?お金なんかの為に仲間を殺す人なんて…いないよね…?」

「俺に言わせれば端金だが、他の奴らはどうだろうな……」

「だ、誰か…いるんじゃないの…?お金に困ってる人が…ッ!!」

「わたくしはギャンブルで10億以上稼いだ身です。生活には不自由していませんわ」

「や、山田は…?山田はどうなのよッ!?」

「僕は売れっ子同人作家様ですぞ!コミックやDVD買う金には困っとらんわ!」

「じゃ、じゃ、じゃあ…ッ!!」

 

 腐川は誰も彼も疑ってかかっているようだ。ほんと、ネガティブな奴だ。

 

「よせ。金なんかの為に疑心暗鬼になるなど、醜い事この上ない…」

「み、み、み、醜い!?」

「心配など無用だ。どちらにせよ、起きる時はあっさり起きるもんだ。それが…このゲームなんだからな」

「起こさせないよ。絶対にね……」

 

 とその時、夜時間を知らせる放送が流れる。

 

「もう……そんな時間なんだ……」

「解散する前に、もう一度言っておくけど…今晩から、私と苗木君の部屋は開けっ放しにしておくわ。アルターエゴに異変があった時の為にね…だけど、ドアが開いてるからって、無闇に私の部屋に近付かない方がいいわよ。私は返り討ちにしちゃいそうだし、苗木君の部屋には………」

 

 霧切はチラリと舞園を見る。どうやらいろいろ知られているようだ。

 

「…とにかく、今日のところは部屋に帰んべ!いいか!金の事なんか考えんじゃねーぞ!わかったら、解散だべ!!」

「うむ!では解散!」


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