救えなかった苗木の逆行物語   作:超高校級の切望

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新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編②

 それにしてもこの学園は、何故階段の位置が疎らなのだろうか?

 階を進む度に階段を探すというのはかなり面倒くさい。

 

「複雑にすることでテロに備えているんじゃないですか?希望ヶ峰学園は大きな組織ですし」

 

 声には出してないはずだが……。

 

「エスパーですから」

「……………」

 

 最近の舞園は勘の良さが上がっている気がする。

 苗木の心情全て読みとれるまで鋭くならなければいいが……。

 

「いやですね。私如きが苗木君の思考を理解しきる筈がありませんよ」

 

 ケラケラ笑う舞園に、苗木は引き攣った笑みを浮かべた。

 

「苗木、早く行こ?」

「あ、うん………」

 

 江ノ島に催促され、苗木達は希望ヶ峰学園の三階に上がった。

 最初に入ったのは娯楽室。そこには先客のセレスがいた。

 

「学生達の休憩所のような場所みたいですわね…」

「こんな部屋があるんですね」

「普通の学校では考えられませんね。オセロに将棋…ダーツやビリヤードまで…」

 

 舞園の相槌にセレスは説明するように、娯楽室に置かれているモノを指差していく。

 苗木も何度もやらされたそのゲームを目で追っていく。

 

「それに、見てください……雑誌類も充実しているようですわよ」

 

 苗木はそれらの中から一冊を手に取る。

 アイドルの特集らしく、舞園の写真が載っていた。

 

「退屈しのぎには事欠きませんわね」

「ピロリロリーン!『補足』があるニョロよ!」

「………あれ?私、こんな写真撮ってませんよ?」

「お、お~い、無視しないでよ」

「なに、モノクマ……?」

 

 セレスの言葉にモノクマが現れたが、舞園が苗木の開いたページを見て呟いた言葉に江ノ島とセレスが反応して写真を覗き込んだ為、モノクマと話す者は居なかった。

 1人、苗木だけがモノクマに向き直る。

 

「うんうん実はね、ここの雑誌は追加されないんだよね。ボクがそうしたくても、雑誌そのものが……おっとっと!何でもないよ~!補足はそれだけだからバイバイッ!!」

 

 結構ヒントを残してくれていたんだな。

 意外と親切?

 いや、絶望なら、正体が露見した時の絶望を味わうため敢えて……という可能性もあるのか。

 

「ですから、私はこの衣装を着たことは神や仏や苗木君に誓ってありえません」

「………同列なんですね、その三名」

「苗木君1人でも良いですよ」

「ん、呼んだ?」

 

 不意に名前が呼ばれたので、振り返ったら三人の少女が苗木を見ていた。

 

「ど、どうしたの?」

「舞園さんが、雑誌に載っている衣装を着たことがないと言っているんです。どうせ忘れただけでしょうに」

「ですから、単なるライブならともかく、雑誌のインタビューで着る服を忘れたりしません!」

 

 ……なるほど、雑誌に載るタイプの才能を持った生き残りが居たら、もう少し早めに気づけたのか。

 

「『忘れてる』……か、確かにね」

「え?」

「こっちの話。それより次の場所に移動しようか?」

「はい」

「OK」

 

 苗木が歩き出すと江ノ島と舞園が後に続く。

 苗木は三階の廊下を歩きながら考える。この先、硬直状態が続けばどうなるのか……と。

 本来口火を切るはずの事件を止め、継いで起こるはずの事件も止めた。起こりそうになっている時点で硬直状態とは判断されなかったためか、今は何も起きていない。

 だが、いずれ仕掛けてくるだろう。

 

「………と、ここは美術室だね」

 

 考え事をしながら移動していると、興奮している山田とピカソの再来の絵を描いている桑田が居た。

 

「おお苗木誠殿!見てください、この充実した設備!アート精神をくすぐられますぞ!」

「あ、そ……」

 

 苗木は興味なさげに言って、思い出したようにポケットからガチャガチャのカプセルを取り出した。

 

「じゃあこれ上げる。せいぜい絵の題材にしてね」

「こ、これはぁ!ぶー子のフィギュア!?何故に!?」

「モノモノマシーンで引いたんだけど、いらないから上げるね」

「うひょーーー!」

 

 奇声を上げる山田と別れて、苗木は美術倉庫に入る。

 監視している黒幕が奇声を上げてる山田に注意を奪われていれば良いのだが。

 

「あったあった」

 

 苗木は床に落ちている〝写真〟を拾う。

 それに写っているのは大和田と桑田、そして不二咲の三人。鉄板がない窓の教室で笑顔で写る三人。苗木はそれを、舞園達に見つからないうちにポケットに仕舞う。

 モノクマは……現れない。

 

「だからね!変な声上げられたら迷惑なんだよ。せめて寄宿舎で叫んでよね!」

「も、申し訳ないでござる」

 

 美術室に戻るとモノクマに叱られ縮こまっている山田が居た。

 お気の毒様だ。

 

 

 

 最後にやってきたのは物理室。巨大な機械が置かれている。

 確かこれは……

 

「タイムマシーンなのです!」

「………本当は?」

「ただの空気清浄機だよ。火星にも住むことが出来るよ」

 

 ただの、ではないだろう。

 しかし火星、か……何故かじょうじと鳴く、黒人もビックリな真っ黒マッチョの姿が思い浮かんだ。

 

「苗木君、見てください。デジカメがあります」

「これは………〝イタカメ〟?」

 

 舞園が見つけてきたアニメのキャラクターが描かれたデジカメを見て苗木は考える。

 これはどうするべきか、また悪用されてはたまったものではない。とはいえ隠して持っていることを前回のように動機として使われる可能性もある……。

 

「あの、そろそろ戻りませんか?」

「そうだね、だいたい見て回ったし」

 

 舞園の提案に苗木も頷き一階の食堂に向かう。

 

 

 

「あれ?朝日奈さん、腹痛は大丈夫ですか?」

 

 食堂に戻ると、大神が腹痛で休んでいると言っていた朝日奈が居た。

 

「朝日奈ッ!?」

「あれ?体調悪いんじゃなかった?」

「…もう大丈夫なのか?」

「う、うん……ドーナツ食べたら元気になってきた」

 

 本当に好きだなドーナツ。

 プールに放置していた浮き輪ドーナツも数日で無くなってたし。 

 

「とりあえず、調査の報告会をしよう!休んでいた朝日奈くんの為にも、各々見つけたことを報告するように!」


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