投稿に間が空いてしまい申し訳ありません。また、予定より早く七海を登場させてしまったためしゃくの都合上予定していた十六人の超高校級は現時点で登場しているキャラのみになってしまいました。投稿してくださった方々、誠に申し訳ありませんでした。
バスに揺られながら目指すは希望ヶ峰学園跡地。
途中、何度か絶望の残党の襲撃はあったが超高校級の格闘家や不良、初代超高校級の軍人や最後の超高校級の軍人がいる今、烏合の衆など相手にならない。
苗木は後部座席の端で人目に付かないようにガラケーを弄る。そこにはいくつかメールのやりとりがあった。
「ま、そりゃ幹部クラスにはなるよね………」
パタンと閉じポケットにしまう苗木。彼が連絡を取っていた相手は言わずとも解るだろう。絶望の残党の襲撃こそあれ全く組織化されていない稚拙な連中ばかりの理由だ。
組織化され幹部クラスに従う絶望の残党達はまず襲撃してこない。
「苗木くーん、トランプやりませんか?」
苗木が窓の外を眺めていると不意に舞園が話しかけてきた。その手にはトランプが握られている。
「修学旅行じゃないんだから……」
「でもやることもないですし」
「いや、僕にはあるよ。ちょっと連絡をね……」
苗木はそういって黒い携帯を取り出す。余り聞かれたくない話だから、ね?と小首を傾げて言うと舞園は大人しく引き下がる。苗木は十分距離があいたのを確認すると電話帳から目的の番号を選び、かける。
「あ、もしもし七希?さっき空メールがあったけど、今は周り誰もいない?」
『は、はい……先ほどの用件なのですが実は─────』
「ふぅん……」
電話の相手は七希。桜下には特別な任務が出来たと言い訳させたため、現在は此処にはいない。
「ま、ほっといても良いよ。というか、うん、その方が面白い」
苗木はニィと口で弧を描き笑った。
その日、世界中にある映像が発信された。超高校級の希望、苗木誠による新組織『希望ヶ峰』設立の放送。苗木誠が行った行為は組織の設立を発表しただけ、しただけだが、それで十分だった。
「苗木誠が未来機関を辞めたって」
「いや、新しい組織を立ち上げたんだろ?」
「でもその前は確かに未来機関に所属してたんだよな?」
「テレビでやってたしな。でもあの時未来機関に保護された、なんて言ってなかったよな?」
「言いたくなかったんじゃないか?」
「何で?」
「そりゃ──」
「また、か!本当にやってくれる……テレビに出たこと自体、コレを見越していたのか!?」
宗方は湯飲みをテレビに投げつけ叫ぶ。今、間違いなく世間では未来機関に対する疑心が生まれた。世間だけではすまない、苗木の信奉者は未来機関内部にもいる。しかも、未来機関の幾つかの支部と支部長が苗木についた。暫くは内部の平定で忙しくなる。絶望の残党狩りなど行えないほどに。
あるいは最初のテレビ、苗木が言及しないだけで未来機関に保護されているのを示す映像さえなければ末端まで混乱しなかったかもしれない。せいぜい苗木誠の保護を知る全体の数割ですんだはずだ。それがどうだ、この様だ。
「宗方、なんなら俺が──」
「余計なことはするな逆蔵!」
「──っ!」
宗方の叫びに逆蔵は握り締めていた拳を解く。逆蔵なら、苗木誠を殺すなどと言い出すのだろう。しかしそれは不可能だろう。未来機関最高戦力の日本が向こうについた。それに加え戦闘能力の高い才能を持つ大和田、大神、戦刃が向こうにはいる。
返り討ちに遭い、そのことを世間に曝されるだけで未来機関は大打撃を受ける。未来機関内部でさえ、宗方一派の肩身は狭くなるだろう。
「宗か──」
「京助、大丈夫?」
柊が何か言い掛ける前に雪染が心配するように宗方の顔を覗き見る。それだけで、宗方の顔色が幾分かましになる。その光景に約二名が歯ぎしりしていた。
絶望に破壊された世界の中で、唯一文明を保ち清浄な空気を吸える島で五人の少年少女達はすでに切り替わったテレビの前にしばし固まっていた。
「な、なあ!見てたか!?今の誠兄ちゃんだったよな!?」
「う、うん。そうだね……あ、僕チンの言葉なんて興味ないかもだけど」
「間違いありませんわ!あれは誠お兄様でしたの!」
「……未来機関を、抜けたんだ。そうだよね、あんな組織」
「………………」
赤い髪の少年、マスクを被った少年、桃色の髪の少女、青い髪の少年達は先程まで映っていた大人になる境目辺りの少年について話し合う。そんな中、緑の髪の少女は大きな目を丸くして固まっていた。
しかし直ぐに笑みを浮かべる。
「ねえねえみんなー、モナカ、面白いこと考えちゃったー」
「面白いことですの?」
「うん。モナカ達皆で子供の国を作るの!誠お兄ちゃんが誉めてくれるような国を作ってさ、誠お兄ちゃんにはそこの王様になってもらうの!」
「おお!いいなそれ!」
「誠お兄ちゃんなら、子供達のための国を作ってくれるだろうしね」
「そ、そうだね……ぼ、僕チンもキチンと嫌ってもらえるぐらいにはがんばるよ」
「具体的にはどうしますの?」
自分の一言であっさりやる気になる四人を見て少女は笑みを深くする。そして、誰にも聞こえない程度の声で呟くのだった。
「王様にはお后様もいなくちゃいけないよねー……うぷぷぷ」
鉄格子に遮られたベランダ越にビルに備え付けられた巨大ディスプレイの映像を見ていた少女はしばし固まっていた。
適当にのばした髪が風にあおられ揺らめき、少女の輪郭を崩す。そして少女はニコリと微笑んだ。
「ああ、そういえばそうだ。まだお兄ちゃんが残ってた。何で気づけなかったんだろ?
はぁ、と気怠げにため息をつく少女。が、落ち込むのをやめま、いっかとベッドで横になる。
「後4、5ヶ月ぐらいかな?それまで気長に待ちますか、ふぁ……」
少女は欠伸をして眠りにつくのだった。
希望ヶ峰学園旧校舎の屋上から地上を見下ろす苗木。今下には、希望ヶ峰に入りたいと様々な志願者が集まっていた。中には未来機関の制服を着た者達までいる。
「こっちもこっちで忙しくなりそうだな~。ま、5ヶ月後くらいにはさぼらせてもらうんだけどね」
塔和シティに繋がる長い道路を走る軽トラの荷台に乗った赤茶色の髪をした少女は空をジッと見つめる。
「いやー、流石だな。まだ若いのに大したもんだ。そう思わんか?」
「へ?あ、ごめんなさい。ボーッとしてました。何ですか?」
唐突に運転手から声をかけられ慌てる少女。運転手は聞いてないなら仕方ない、そのボーッとする癖直した方がいいよと忠告する。
「いや、さっき英雄が自分の組織を立ち上げたってあってね。ま、向こうの島じゃ何故か彼を英雄扱いすると睨まれるんだが」
「そうなんですか?」
「あの島は未来機関とも折り合いが悪くてね、実は絶望共と繋がってるんじゃないかって噂だ……」
「へー」
「………なあお嬢ちゃん世間知らずすぎねー?なのに何だってあんな島に行きたいんだ?」
と、運転手の質問に少女はニッコリと笑う。
「あそこにいけば何かが手に入る気がするんです!それこそ、私がこのまま何も解らずに生きていける希望の固まりのような何かが!」
「気がする、だけなのか……」
「私が私に告げている!私は私を信じてますから!」
TO BE CONTINUED