レベルを上げて力を振るう問題児   作:ヒューミッド

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今後の展開を考えたり、ヒロイン誰にしようと悩んだりしていたら遅くなりました。
今回は前回と比べて短め。
この小説はノリと勢いで出来ています。
あと、数学。
ちなみに作者は専門が情報通信なので、数学あんまり分からない(ぉぃ


人生は大体上手くいかない

黒ウサギのゲームをクリアした俺は、黒ウサギのコミュニティに移動するはずだった。

そう……はずだったのだ。

じゃあ、今何してるの?

 

「おえーーー」

 

絶賛嘔吐中です。

俺には無理だ、あんなロケットコースターは。

 

「だらしないな」

「俺は乗り物弱いんだよ!」

 

何があったか簡単に説明しよう。

ゲームをクリアした俺たちは黒ウサギのコミュニティへと移動する途中、突然十六夜が

 

「世界の果てを見に行ってくるわ。お前もついてこい、一」

「え?」

 

そうして俺は十六夜に抱えられ、ロケット以上の速度で突き進みつつ多少の上下運動がプラスされた。

ただでさえ乗り物に弱い俺が、こんな風にされたら吐くに決まってるだろ!

何だよ!第三宇宙速度って!!

第三宇宙速度って言ったら約 16.7 km/sだろ?

生身の人間なら内臓が破裂して死ぬわ!

仮に死ななかったとしても、ものすごい衝撃波が発生して周りに大迷惑だわ!!

しかも、飛鳥や耀たちといれば、ガル……ガル……なんだっけ?

アニメは随分と前だし忘れたわ。

ガル何とかさんとのゲームに参加できないじゃん!

チクショウメー!!!

そんな俺の内なる怒りを察することなく

 

「しかし絶景だな、この滝景色は。こりゃ来たかいあったわ」

「知るか」

 

なんとも自分勝手である。

俺もあんまり人のこと言えないかもしれんけど。

 

「あー、だいぶ楽になった」

「そりゃ何より。ん?」

 

すると滝壺の中から物凄く大きな白いヘビが出てきた。

そういや、あったな。こんなイベント。

吐いててすっかり忘れてたわ。

でも、十六夜がなんとかしてくれるはず。

 

「何のようだ?人間」

 

生で見ると随分と大きい。

が、それだけだ。

俺は巨大数が好きで大学生時代に独学していたが、こいつには数学的面白さが欠片もない。

そもそも生物に数学的面白さを求めるなと言われるかもしれないが、生物の中にも数学的面白さがあるため文句は言えるはず。

カタツムリの殻とか、フィボナッチ数列で表せて面白いじゃん。

ちなみにフィボナッチ数列は次のように定義されている。

 

n番目のフィボナッチ数をF_nで表すと、F_nは

F_0 = 0

F_1 = 1

F_(n+2) = F_n + F_(n+1)

 

「何だと?人間ごときが生意気な!!」

 

あれ?

こっち向いて怒ってるんだけど。

何でだ?

声に出てたのか?

 

「ふん。神格が低いとはいえ、神であることに代わりはない。読心術くらいできるわ!」

 

プライバシーの侵害だ!!

だけど、待てよ。

良いところを探そう。

そうすれば少しは怒りが収まるはず。

 

「ほら、ヘビの体って三角関数(sin,cos,tan)で表せそうじゃん?

三角関数が使えるからフーリエ級数展開(積分を含む式)やフーリエ変換(積分を含む式)が輝くだろ?

電気回路を微分方程式で解くときにだって、三角関数を使うことがあるじゃろ?

微分方程式ならラプラス変換(積分の一種)で解けるやん?

ほら、やっぱり微積分って役に立つじゃん!」

 

「途中から主旨が変わってるし、訳の分からんこと言うな!!」

 

知 っ て た。

正直自分でも何言ってんだ、こいつ?状態だったし。

というか、どうするんだこれ?

死ねるんですけど、これ。

 

「ヘルプ、十六夜!」

「何言ってるんだ?これはお前が売って、アイツが買ったケンカだろ。それに俺が手を出すのは野暮ってもんだろ」

 

お前こそ何を言っているんだ?

そんなこと言ってる場合じゃないの。

俺はコンティニューやニューゲーム出来ないんだよ!

 

「死ねええぇぇぇ!」

「死ぬうううぅぅ!」

 

蛇神の口から放たれた多量の水を横っ飛びでかわす。

あの水ジャイロ回転して、地面がえぐれてるんですけど!?

体に当たれば間違いなく死ぬ。

今のも急増加関数レベルが上がってなかったら、間違いなく当たってた。

悪運は尽きていない。

 

「それがいつまで続くか見ものだな、人間」

「死にたくないし、這いつくばってでも生き延びさせてもらう」

「かぁぁぁぁ!」

「!!!」

 

紙一重でまたしてもかわす。

生きたいという執念が、火事場の馬鹿力を生み出していた。

 

人間はいくら頑張っても100%の力は出せない。

何故なら100%で力を使い続けると筋肉が壊れてしまう恐れがあるからだ。

そのため普段は脳にリミットがかかり、2~3割の力しか出せないように制御されている。

つまりこの場で普段の5倍で動き回っていることになる。

 

「3分か。意外と粘ったと誉めてやろう」

 

しかし、体力が普段以上に消耗してしまうため、直ぐに力尽きてしまうのが難点だ。

単純に5倍の体力消耗だとしたら、普段の力で15分もの間全力運動をしていたことになる。

むしろ、ここまで体力がよくもったものだと誉めてやりたいくらいだ。

 

「ふん。最期に言い残すことがあるなら、聞いといてやる」

「……大きいことは……いいことだ」

「大きさに意味なんてない」

「大きさに意味はないかもしれない。でも、数学的に意味があるものは存在するんだ!」

 

某ビール醸造(じょうぞう)会社が出版している世界一の記録本にも載ってある。

ただの大きさ以外で、数学的に意味のある数として。

その名はグラハム数。

その大きさは『十分書ける大きさの紙が存在したとして、観測可能な宇宙の原子を全て(約10^80個)インクに変えたとしても筆記不可能』な程だ。

グラハム数は式で書くと次のようになる。

 

G = G^64(4)

G(x) = 3↑^x 3

 

↑^xとは↑を何本かを表すものである。

今回の場合↑は4本である。

 

3(↑^4)3 = 3↑↑↑↑3

 

そして、↑^xを一般化すると、次のようになる。

 

a(↑^x)b = a↑^(x - 1)a↑^(x - 1)a↑^(x - 1)……

 

とaがb個出てくるまで行われる。

 

数学が苦手な方に順を追って説明しよう。

 

3↑↑2 = 3↑3 ←3(a)が2(b)個ある。↑も一本だけ減っている。

3↑↑3 = 3↑3↑3 ←3(a)が3(b)個ある。

4↑↑2 = 4↑4 ←4(a)が2(b)個ある。

4↑↑3 = 4↑4↑4 ←4(a)が3(b)個ある。

3↑↑↑2 = 3↑↑3 ←3(a)が2(b)個ある。↑も一本だけ減っている。

3↑↑↑3 = 3↑↑3↑↑3 ←3(a)が3(b)個ある。

 

お分かりいただけただろうか?

3↑3 = 3^3であり、指数は右から計算する決まりなので

 

3↑↑3 = 3↑3↑3 = 3↑27 = 約7.6兆

約7.6兆を7.6兆で近似する。

3↑↑↑3 = 3↑↑3↑↑3 = 3↑↑7.6兆 = 3↑3↑3↑

…… ←3が7.6兆個ある。

 

つまり3↑↑↑↑3はとてつもなく大きい。

しかし、これはグラハム数の一段階目である。

 

G^2(4) = G(G(4)) = 3↑^G(4) 3 = 3↑^(3↑↑↑↑3)3

 

G^3(4) = G(G(G(4))) = 3↑^{3↑^(3↑↑↑↑3)3}3

 

G^64(4)はとてつもなく大きい。

 

一応、急増加関数レベル4になれば2↑↑↑3程度の大きさで、10^80こそ越えているものの、筆記不可能かと言われると不可能ではない。

それくらいヤバい数だということだ。

余談ではあるが、某ビール醸造会社の認定委員が認定していないものの、数学的に意味ある数でグラハム数よりも大きなものは存在する。

SCG(3)やTREE(13)など。

これらはグラハム数がグラハム数個集まったとしても届かないような巨大数である。

 

「それが最期の遺言だ!死ね!!」

 

死が迫る。

もうどうすることもできない。

どうせなら、初彼女くらいは欲しかったなあ。

既に走馬灯が流れ始めていた。

しかし、運命は一を見捨ててはいなかった。

 

「何!?」

 

目の前に佇んでいたのは、この世界に来て初めて見た女性。

髪色は違えど、見間違えるはずかない。

 

「黒……うさぎ?」

「はい、黒うさぎです。大丈夫でしたか?」

「一応、大丈夫だと思う」

 

火事場の馬鹿力で筋肉痛になっているとはいえ、外的なダメージはない。

でも、筋肉痛で動けないなら大丈夫じゃないかも。

 

「箱庭の貴族とは言え、この戦いに口出しは許さんぞ」

「ええ、黒うさぎもこれがギフトゲームであれば、口出しも手出しもやりませんし、出来ません。しかし、これはギフトゲームですらない。

であれば、話は別です。仲間を救うのに理由なんていらないのですから」

 

カッケー!

黒うさぎ格好いいよ!

女性に言うべき言葉じゃないけど、ホントに格好いい。

女神や天使にも見えるね、黒うさぎは。

 

「……興が冷めたわ」

「なら、今度は俺とやろうぜ」

「な!?何を言ってるんですか、この問題児様わ!」

 

黒うさぎが来てからケンカを売るのか。

原作はどうかは分からんが、アニメではこんなことはなかった。

多分、宇居一というイレギュラーが物語を歪ませているだろうけど、これはいつか完全に本来の物語から外れる可能性もあるだろう。

 

「おい、一」

「ん?」

「黒うさぎを羽交い締めにしておけ」

 

いやいやいやいやいやいや。

それ、完全にセクハラだろ。

だけど、待てよ。

ここは少なくとも地球ではないし、日本と同じような法律があるとも限らない。

つまり、合法的にセクハラできる可能性がある?

 

「一さんがそんなことするわけないじゃないですか。貴方のような問題児とは違うのですよ」

 

ごめん、黒うさぎ。

凄い邪念な気持ちが渦巻いてた。

その信頼が心に刺さるよ。

 

「流石に羽交い締めはしないけど、ここは任せてもいいんじゃないか?」

「何を言ってるんですか!?神格持ちに人間が勝てるわけ無いじゃないですか!!」

「でもさ、黒うさぎ。いつの英雄譚も怪物を倒すのは英雄と呼ばれた人間だよ」

 

その瞬間、突然の轟音が鳴り響く。

黒うさぎの意識が完全にこっちを向いた瞬間に、十六夜が蛇神を殴り飛ばしたのだ。

 

「な!?神格を素手で殴り飛ばした!??」

「俺を試せるかどうか試してみたが、全然たいしたことないな」

 

そりゃ、星を砕く一撃を放てるならそうなるだろうよ。

完全に人間辞めてますわ。

 

「なめるな小僧!!まだ、終わってないぞ!」

「大人しく倒れてりゃ痛い目をみなくてすんだものを」

「それが貴様の遺言だ!!!」

 

水の竜巻が十六夜を襲う。

さっき、俺に撃ってたのとは格段に威力が違っていた。

蛇神も火事場の馬鹿力を発揮している。

 

「しゃらくせえぇ!」

「馬鹿な!?」

「ありえません!!」

 

十六夜は見事に水の竜巻を上に逸らしたのだ。

しかし、あれだけの量と速さの水を逸らせるのは凄いと、素直に感心してしまう。

 

「ま、なかなかだったぜ、お前」

 

パンチの3倍の威力があると言われる蹴りで、ものの見事に蛇神を吹き飛ばしたのだった。

やっぱり、十六夜は凄い。

 

「凄いですよ!十六夜さんは本当に人間なのですか!?」

「俺は純粋な地球産まれの地球育ちの真人間だぜ」

 

お前のような人間がいてたまるか!と内心突っ込んでしまったのはご愛敬。

嬉しくて跳び回る黒うさぎを見て微笑ましくなる。

すると突然、地面に影が出来る。

しかも俺のところだけ。

まさかと思い見上げると、滝のような水が降り注ぎ俺の意識を刈り取った。

解せぬ。

 




次回は白夜叉戦を予定。
今回登場したグラハム数を話題にするとき、一緒に話題にされる伝説の巨大数も紹介出来たらなあと思います。
今回名前だけ登場したSCG(3)やTREE(13)と同じく、グラハム数をグラハム数個集まったとしても届かないような巨大数です。
まあ、SCG(3)やTREE(13)と比べると0に等しくなりますが。
特にSCG(3)は巨大数の中でもかなり大きい部類。
作者の知る限り10本指には入ります。
上位の巨大数は、暇をもて余した数学者が巨大数対決をした際に作られた数だったり、それの応用や拡張だったりするのでまず太刀打ち不可能です。
また、ラプラス変換のラプラスって問題児の中にも出てきてるので、その辺の数学ネタも突っ込もうと思っています。

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