Fate/Meltout -Epic:Last Twilight-   作:けっぺん

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 EXTRA編:NORMAL 一章適正レベル10
 進行に合わせて敵が強くなります。
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 CCC編:HARD 一章適正レベル20
 全体的に敵のレベルが上がっています。
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>GO編:EXPERT 一章適正レベル99
 死ぬがよい。


第二節『再会の王城』

 

 

「マーリンに……アルトリア」

 英霊ではなく、真としてこの時代に生きる生者。

 後の時代に在る僕たちから見れば、英霊となることを確約されている者たち。

 あり得ざる形とはいえ、そんな彼女たちと出会えたことは感動があった。

 アーサー王が女性であったことには驚愕だが、長い人類史を見てみればそういうこともあるのだろう。

「はい! それから――」

「――まったく、お前は。何度も言っているだろう。直感だけで動くんじゃない。未熟を補うのは結構だが馬鹿の一つ覚えみたくそれだけに頼っては犬死にも早いぞ」

 アルトリアが駆けてきた先……彼女を追うように歩いてくる騎士。

 ローブと一体化した鎧にフードを目深に被った、奇妙な姿だった。

 騎士でもありながら、魔術師でもあることを外見だけで示すような異装。

 彼もまた、英霊ではない。紛れもなく人間だ。

「彼がケイ。私の義兄(あに)です!」

 地の底から響くような低い声の説教を気に掛けた様子もなく、アルトリアは騎士を紹介してきた。

 そのローブの下、鋭い眼差しが此方に向けられる。

「……また他所の世界からの客人共か。理解できん、なんでわざわざこんな何もないような辺境を地獄に変えようと言うのか」

「え――?」

「なんでもない。ブーディカが連れてきたならお前たちは味方なのだろう。ならどれほどの間抜けだろうと強く当たりはしない」

 当たり前だが……どうやら、歓迎はされていないらしい。

 その騎士からは、機嫌の悪さが如実に伝わってくる。

「ケイだ。お前たちは名乗らなくてもいい。俺としては心底から関わりたくないのでな」

「ケイ兄さん、礼に欠けてますよ」

「お前たちのように歓迎するのがまず間違っている。何処の誰とも知れん輩は悉く追い払うべき状況だ」

 ケイ……そう名乗る、此方に敵意を隠さない騎士はそう言うと、城壁に背を預けて此方から目線を外した。

 彼はアーサー王の義兄にして、円卓の騎士の一人として有名だ。

 火竜すら呆れて飛び去る毒舌家。巨人でさえ口先一つで仕留める騎士。

 その武勲には他の騎士ほど目立ったものはないにせよ、アーサー王を傍で支え続けた騎士だ。

「……まあ、歓迎されるとは思っていなかったけど。それで? 異常ってのは?」

 急かすメルトに、ブーディカは苦笑する。

 確かに、一刻も早く聞いておかなければなるまい。それが解決の糸口になる可能性は高いのだ。

「そうね。教えてあげないと」

 ブーディカがマーリンに目を向けると、彼も頷く。

「……この時代は本来、そこのアルトリアが統治するべき時代。君たちも知ってるでしょ?」

「その正しい時代が崩された。今のこのブリテンは在る筈のない王が統治している」

「え――?」

 騎士王――アーサーが王として選ばれたのには、運命的な出来事が関係している。

 それが、選定の剣を抜いたこと。

 引き抜いた者こそが王となるという伝説に因んだ、揺らぐことのない王位の筈だ。

『……まさか、選定の剣が誰かに?』

「いえ……選定の剣は、私が確かに引き抜きました。今もこの城に存在しています」

「それは当然、皆に知れ渡っている。だというのに、突然現れた王が瞬く間に諸侯を纏め上げてしまった」

「それで、残っているのはこのキャメロットだけ。外は全部、敵であるブリテン領さ」

 そうか……その、新たな王となった何者かの存在によって、『アーサー王が統治していたブリテン』という正しい歴史が歪んでしまったのか。

 誤った歴史が生まれたことで、この時代そのものが不確定になり、ムーンセルの観測も不可能になった。

 ならば、その新たな王を討つことが、異常を払う最短の道になるか。

「その王っていうのは……」

「さて。私の千里眼でも見えない何者か、さ。一体何なんだか」

 マーリンはこの時代において、最高位であろう魔術師だ。

 そんな彼の千里眼をして、見通せないほどの敵……?

「そんな訳で、この城――キャメロットは真実、正しいこの国の最後の砦ということだ」

 この城は歪んだ世界の、正に最後の希望なのか。

 敵が何者であるにせよ、アルトリアやマーリン、ケイ、ブーディカはそれを良しとしていない。

 在るべき正しい歴史を守ろうとしている。

 どんな過程、どんな結果だろうとも見届けるのが僕たちの本来の役目。

 だが、今回だけは例外なのだ。異常の中の異常。僕たちは、それを阻止するために来た。

「――メルト」

「ええ。味方が増えるなら、それに越したことはないわ」

「決まりだ。僕たちも手を貸したい。アルトリア、マーリン、ケイ……そして、改めてブーディカ。構わないかな」

 このブリテンを、彼女たちの正しい国に戻す。

 それが、最初に踏みしめたこの大地で、僕たちがやるべき行いだ。

「是非! 異邦の味方もこれで四人! きっと救世の、一騎当千の戦士です!」

「それはどうだか。しかし、確かに手は足りなくてね。君たちの助力はありがたい」

「……信用ならん。俺には関わろうとするな。それから、妹にも極力な」

 三者三様の反応をする、当世の人間たち。

 そして、唯一の英霊、ブーディカは。

「うん! あたしの目利きは正しかったね。思い切りのいい子たち! お姉さんは大好きだ!」

「うわ……!」

「ちょっ……!」

 僕とメルトの頭に手を乗せ、当然のように撫でてきた。

 あまりに敵意が無い行動で、メルトでさえ、反応したのは既に手が乗せられた後。

「やめ――」

「おや、照れてる? もしかして、こういう経験ない?」

「いや……まあ……」

「……うん、よし! 深くは聞かない。今までの分、あたしに甘えなさい!」

「ッ――――!!」

 別に話しにくい、後ろめたい過去がある訳ではないが、ブーディカはそれを聞くまいとしてくる。

 どころか、頭に置いていた手を首の後ろに回し――気付けば、頭はその胸元へ――

「ハク! ちょっと、貴女、ハクを離しなさい!」

「む。おやおや。そういう関係だった? ごめんね、あたし、こういう性格でさ」

「――――、――――!」

 圧倒的なまでの弾力は、引き放されることなくその圧を向けてくる。

 母性の塊は有無を言わさず、包み込んでくる。

 至福という感覚は確かにある。

 だがそれ以上に、息苦しさがあった。

 月の世界とはまた違う、適応化された体が酸素を求めて脳髄から警鐘を鳴らす。

『うっわー。久しぶり。相変わらずだねー白斗君』

 白羽のやけに冷たい温度の声。良いから早く助け――

 

「――ええ、本当に。偽りの学校生活でも、こんなことがありましたね、ハクトさん」

 

「――――ッ、え……?」

 その、此方を知っている。知り過ぎているような声に、暫し思考が固まった。

 ブーディカから顔を離す。半ば茫然と、その声のした方向に目を向けた。

「貴方……」

 メルトも、驚愕を隠さない。

 いや。期待はあったのだ。もしかすると彼ならば、力を貸してくれるかもしれないという期待が。

 とは言え、“ここ”にいるという情報もなかった。確証なんて一片たりとも存在しなかった。

 しかしその声は、確かに聞こえていて。

 声質はあの頃とは違っていても、面影の残ったそれを聞き違えよう筈がない。

『え……? あ……このマスター情報、もしかして……』

「今の声はミス黄崎ですか? どうやら予想は当たってましたか。元気そうですね」

 ブラウンのコートを着込んだ、青年だった。

 既に僕の身長を超え、その容姿はあの頃のそれにより磨きを掛けている。

 エメラルドグリーンの瞳と、ブロンドの髪は、彼が“その人物”であることを何よりも如実に証明している。

「……レオ?」

「はい。久しぶり……ええ。本当に久しぶりです。何せ十年ですからね、ハクトさん、メルトさん」

 そう、十年前。

 聖杯戦争の一回戦の頃に知り合い、決勝戦で最強の敵として立ちはだかった好敵手。

 それでいて、もう一つの事件で力を借りた、西欧財閥のマスター。

 ――レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイその人だった。

 

 

 

「本当に……レオなのか?」

「ええ。間違いなく、レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイですよ。証拠は幾らでもお見せできますが……これが最たるものになるでしょうか」

 そう言って、彼は右手の甲を見せてきた。

 そこに刻まれた、三画の文様。

 サーヴァントに対する、三回限りの絶対的命令権――令呪。

 それも、月の聖杯戦争の時とまったく同じ形状。

 令呪は他者と同じ形のものが発現することはない。確かに、彼をレオたらしめる何よりの証拠だ。

「にしても、そんなに意外でしたか? てっきり此方の状況も把握しているものかと……」

『あー……この時代のマスターの情報までは入ってきてるけど、白斗君を中心に観測してるから曖昧なままだった。反省点かな……』

「ミス黄崎は相変わらず、何処か抜けているようで。まあ、今まで支障はありませんでしたから、意味消失等はないのでしょうが」

『他の時代のオペレーターたちはこんなことなさそうだけど。んん……この時代、あと一人マスターがいるね。月の聖杯戦争への参加経験はない、新しいマスター』

「そうか……名前は?」

『わからない……召喚したサーヴァントの能力かな。故意に隠蔽が掛かってるみたい』

 隠蔽……何か理由があるのか。

 一応、そのマスターに策があるなら、その邪魔をする気はないが……

「あの……レオと三人は知り合いなのですか?」

「昔の友人です。そして、同じくこの時代の異常を払いに来たマスターですよ」

「ふうん。レオもハクトたちと同じだったんだ。ありがとね。この状況、別の視点で見てる味方がいるのは心強いよ」

 レオの心強さは、誰よりも知っている。

 彼がいるだけでどのような戦いでさえ、勝利を掴むことができる。

 そんな確信さえ持てるほどに、強力なマスターだ。

「はい。貴方たちがいれば、きっとブリテンを取り戻せる――お二方……お三方ですか? ともかく、ハクトたちも歓迎します。ようこそキャメロットへ!」

 背中を押しながら、アルトリアは僕たちを城内に誘う。

 思わず、苦笑が漏れた。失礼だが、まるで村娘のような快活さの彼女が、後に円卓を統べ、ブリテンに栄華を齎すことになる騎士王だとは思えない。

 恐らくは、成長段階の姿。

 完成される前の騎士王の時代に、僕たちは降り立ったのだ。

 そんなことを考えているうちに、城の内部に入っていた。

 白亜の城は、外面だけを取り繕ったものではなく、城内も完全だった。

 瑕も穢れも、この城にはない。

 芸術品のように細部まで一切抜かりなく建てられた王城――

「……ところで王様。貴方のサーヴァントはどうしたのかしら」

「その呼び名も久しぶりですね。玉座の間に待機させています。飛び出していった騎士王とサー・ケイを追ってきただけですから」

 メルトが切り出した話に、レオはああ、と思い出したように答える。

 協力を請け負ってくれたマスターには全員に、サーヴァントの召喚術式が渡されている。

 当然彼も、サーヴァントを喚んだのだろう。

「少し、期待しました。またガウェインに会えるのではと。しかし、流石にそう上手くもいかなかった」

「……それって」

「ああ、不満な訳ではありませんよ。ガウェインに負けず劣らず、強力な英霊です。少々気難しいところはありますが……」

 相性の良い英霊を召喚できるように、設定は行った。

 しかし、あの時と同じ英霊を喚べる確率は低い。

 時代を、神話を担ってきた英霊たちは数多く、マスターたちと相性の良い英霊は決して一騎ではない。

 レオは聖杯戦争の時とは違う、新たな可能性を呼び寄せたのだろう。

「さあ、ここです!」

 アルトリアが、城内で見てきた中でも、最も大きな扉を開く。

 神聖なる玉座の間。

 眩しいほどに光の差し込む空間には、王の帰還を待つように三人が立っていた。

「王。戻られたのですね。何か良いことは……問うまでもないですか」

「はい! また二人、力を貸してくれる方が現れました!」

 一人。白銀の騎士。

 右腕の肩から先が無い、ブロンドの髪を後ろで結った男性。

「王の満足いく成果が得られたならば最上でしょう。力ある勇者……とは一目見ただけでは判断出来ませぬが」

 一人。黒き騎士。

 鎧から髪まで黒く染まった、肌の白い男性。

「マスター。帰ったか」

「はい。紹介しましょう、セイバー。ハクトさんにメルトさん……僕の友人です」

 そして、最後の一人。

 褐色の肌。白の髪。髪から流れるように伸びる、長いヴェール。

 全てを映さないような、虚ろな瞳は、しかし確かに此方を見据えている。

 その少女はゆっくりと、強く一歩ずつ踏みしめて、近づいてきた。

「……お前たちは、レオの友か」

「……ああ」

「私は、セイバー。真名、アルテラ。レオを守る、フンヌの末裔。破壊の大王である」

 虚ろな声で少女は名乗った。

 彼女こそ、此度の事件でレオが召喚したサーヴァント。

 剣士のクラスに据えられた英霊、アルテラ。

 その名は知らない。アルテラという名の英霊は、聞き覚えがない。

 だが、そのステータスは非常に高く、C以下のステータスはない。そして、彼女の言葉にあったフンヌの末裔という情報。

「……フンヌの王、アッティラ……?」

「アルテラだ。歴史では、そう知れ渡っていようが……真名であれば、アルテラと呼んでほしい」

 間違いない。アッティラ・ザ・フン。大帝国を成した、フン族の偉大なる戦闘王。

 戦闘において膨大な武勲を立て、その統治の中で帝国の版図を大きく拡大させたという。

 神の災厄、神の鞭と称される大王が、まさか女性だったとは。

 ともあれ、呼び名を気にするとあれば対応する。英霊も元は人であった。嫌なことも当然あるだろう。

「わかった。アルテラ、よろしく」

「……お前が、レオの友であるならば、必然としてそうあることとなろう」

 言って、アルテラは霊体化してしまった。

 なるほど。確かに気難しい。初めにアッティラと呼んでしまったことが原因かもしれないが。

「貴方たちが、レオと同じく異邦より来た者たちですね」

「ああ――君たちは、英霊か」

 二人の騎士もまた、歩んできた。

「はい……我らがブリテンの危機とあれば、召喚に応じない道理はありません。私はベディヴィエール。クラスはセイバー。以後お見知りおきを」

「……同じく、セイバー、アグラヴェイン。此処に二度目の生を受け、騎士王の補佐をしている」

 ベディヴィエールに、アグラヴェイン。

 どちらもアーサー王に付き従った、円卓の騎士の一員だ。

 隻腕のベディヴィエール――彼は、武勲においては騎士の中でも、特に目立ったものはない。

 しかし、伝説ではカムランの丘の戦いで致命傷を負ったアーサー王の最期を看取ったという大きな役目を成している。

 そして、鉄のアグラヴェイン――アーサー王の文官にして秘書官。

 騎士ランスロットと王妃グィネヴィアの不義をモードレッドと共に暴いた騎士。

 それが円卓崩壊の始まりとなったことから悪として描かれやすいが、王への忠義を捨て去らなかった正しき騎士とされている。

「ハクトにメルトリリスです! ベディヴィエール、アグラヴェイン、仲良くしてくださいね!」

「へ? ……あ、はい。そうあれれば嬉しく思います」

「それが王の望みであるならば」

 彼らもまた、ブリテンの危機に呼ばれたサーヴァントなのか。

 戸惑うベディヴィエールと、眉一つ動かさず頷くアグラヴェイン。

 ベディヴィエールは感情を表に出し、対してアグラヴェインの表情は鉄そのもの。

 同じ円卓の騎士ながら、随分と真反対な性質だ。

 もう一人、僕は円卓の騎士を知っているが、彼はこの二人の中間にあるような存在だった。

 主君であるアーサー王が女性だった時点で悟るべきだったが……円卓の騎士とは、非常に色濃い組織なのかもしれない。




今回は味方キャラの紹介的な回でした。
そんな訳で、お久しぶりですレオさん、今回もよろしくお願いします。
容姿に関しては、EXマテにラフがあるのでどうぞ。

彼以外に味方はケイ、アルテラ、ベディヴィエール、アグラヴェイン。
ケイに関しては容姿が判然としないので、当たり障りのない感じに。
次回からはそれなりに話を動かせる……かなあ?

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