Fate/Meltout -Epic:Last Twilight-   作:けっぺん

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バレンタインイベントまでにメルトが実装される可能性は限りなくゼロに近い。


第四節『王都に立つ影』

 

 

「光の御子、その者たちは?」

「うちの新入りだとよ。カルナが連れてきた」

 少年――ラーマとクー・フーリンはどうやら既知の間柄らしい。

 年齢は二十に届かないくらいだが、決して彼は未熟な英霊などではない。

 そも、英霊とは基本的にその全盛期の姿で召喚されるもの。

 あの姿でも、並みの英霊など及びもつかない力を持っていよう。

「では、名乗るとしようか。余はラーマ。コサラの王、ラーマである。今は我らは力を合わせる時、共に戦おうぞ、勇者よ」

「――ああ。紫藤 白斗だ」

「メルトリリスよ。……にしても、今回は王様が妙に多いわね」

 ラーマはインドに伝わる大英雄だ。

 彼が主として描かれるのは、カルナやアルジュナの登場するマハーバーラタと並ぶ叙事詩ラーマーヤナ。

 ヴィシュヌ神の化身(アヴァターラ)として顕現した彼は、猿の軍勢を率いて魔王ラーヴァナを相手に十年以上の長い戦いに身を投じた。

 彼の英雄譚は広く親しまれている。インド最大の英雄と名高いのがこのラーマだ。

 その戦闘能力は、超級の英霊であるカルナにも匹敵するかもしれない。

 先のバシュムとの戦いで見せた苛烈さは、そのほんの一旦だろう。

「うむ。太陽王が遣わしたということは、相当の強者であろう。英霊ではないようだが……?」

「英霊じゃなくとも、メルトは強い。サーヴァントと戦ったことも、一度や二度じゃあない。問題はないよ」

「ハクは私のマスターよ。場数なら誰にも負けないし、私にはない火力がある。問題ないわ」

「……う、うむ。何故己ではなく互いの強みを述べ合うのだ……? まあ、よい。信頼し合う善き関係であることは伝わった」

 ラーマは呆れたように笑う。

 ……確かに場数は踏んでいるが、それは基本的に一対一サーヴァント戦の話だ。

 軍勢との戦いは素人にも等しい。メルトの評価はやや不適切と言える。

「さ、歓談はここまでだ。兵士どもばかりに任せる訳にもいかねえからな」

「そうだな。バシュムまで現れたとなると、これからもっと厄介な者まで出てくるかもしれん。中心地から兵を下げさせねば」

 ではな、と残し、ラーマは足早に去っていく。

 中心地――もしや、バシュムのような強大な魔獣が多くいるのだろうか。

 いや、それよりも、まずは聞いておかねばならないことがある。

 兵たちの指揮に向かうクー・フーリンに続きながらも、彼の背中に向けて問う。

「クー・フーリン。この魔獣たちを止める方法は、何かないのか?」

「さてな。魔獣どもの親玉なり何なり、奴らを無尽蔵に生み出してる要因はあるんだろうよ。だが、悪いがオレは掴めてねえ。そういうのは戦士ではなく学者の仕事だ――っと!」

 答えながらも、襲ってくる魔獣の群れを見逃さず、クー・フーリンは周囲に素早くルーンを張った。

 僕やメルトが迎撃できる距離まで近付くより先に、ルーンの炎は魔獣を焼く。

 本来、これはクー・フーリンの戦いではないだろう。

 彼の戦いは、戦車による蹂躙や、心臓を必ず貫く魔槍によるものが真骨頂だ。

 ルーン魔術を主体として戦うのは慣れていないだろうに、それでも魔獣は相手にすらなっていない。

 流石はアイルランドの大英雄。アルスターの光の御子と言ったところか。

『紫藤さん、ラーマさんが向かっていった中心地……聖杯に極めて近い反応があります』

「え……?」

『昨日から解析していて、たった今結果が出ました。特異点の原因である聖杯とは違いますが、魔獣発生の原因かもしれません』

 聖杯……特異点の原因たる、悪意の願望器。

 それに類似する反応――この時代に、聖杯がある可能性はゼロではない。

 その出典は此度の事件のものとは違うのだろうが、魔力の塊という点は共通しているのだろう。

「今のは通信の魔術か? 坊主、何つーかあれだ。お前随分な数の女に粉かけてそうだな」

「なっ、そんなこと――!」

『わ、私と紫藤さんはそんな関係じゃないです!』

「おーおー、青い青い。嬢ちゃん、苦労するだろ?」

「……もう諦めてるわよ」

 自覚はない――というと、更に始末が悪い。そうメルトに恨みがましく睨まれながら告げられたのは、いつのことだったか。

 確かに、サクラは魅力的な女性だ。サクラだけではない。僕の知る女性は皆、素敵な人物だった。

 彼女たちを好ましくは思っている。

 しかし、それはメルトへの感情とは違うものだ。違うものなのだ。

 そう説明したら彼女は不貞腐れ、もっと厄介なことになってしまったのを覚えている。

 ……やはり僕が悪いのだろうか。直せとあらば、そうなるよう努めるのだが……。

「坊主、女との付き合いは考えろよ。厄介だと思えているうちはまだ幸運だぜ?」

「……それは、経験則か?」

「おうよ。オレの時代じゃあ男はそれが当然で、それが原因で死ぬのが定めみたいなモンだったが、今は違うんだろ? 一人の女を決めたんなら、他に粉かけるのはやめとけよ」

「粉をかけてるつもりはないんだけど……」

「オレがそう考えてた女が原因で、オレは死ぬことになった……と聞けば、少しはその朴念仁ぶりも見直すか?」

「ッ……」

 冗談を言っているような口ぶりだが、その時向けられた瞳は本気であった。

 クー・フーリンの死因――コナハト国の女王メイヴとの確執だったか。

 自身の愛に応えなかったことを激怒したメイヴが立てた幾重にも連なる謀略により、誓約(ゲッシュ)を破り半身不随となったクー・フーリンは無数の兵に襲われその伝説を終えることとなる。

 彼の忠告は真摯に受け止めておこう。冗談と取るには、現実味を帯びすぎたものがあった。

メイヴ(アイツ)も人間の敵じゃあないんだが……今後会うようなことあれば覚悟しとけよ。厄日確定だ」

「……出来れば、実現してほしくない忠告だな」

「まあ、お前はメイヴの好みからは外れてるし、狙われ沙汰にはならないだろうがな」

 メイヴもまた、英霊として召喚される可能性はあるだろう。

 神話に語られる女王の性質からして、ムーンセルから召喚されるとは思えないが……あまり会いたくはないと思った。

『ッ、皆さん! 中心部に巨大な反応が発生しました! サーヴァント反応に類似しています!』

 クー・フーリンの忠告の最中、サクラからの通信が入った。

「お? なんだ、サーヴァント? 同業者か?」

『いえ、反応は似ていますが、明らかに別物です。もっと邪悪で、希薄で……弱々しくとも、強いものです』

 サーヴァントであって……サーヴァントではない何か。

 黒竜王とは違うものだろうが、一体何なのか……。

「ただの魔性ならともかく……サーヴァントとなると、ラーマの奴も手こずるかもな。おう、坊主、嬢ちゃん。行って恩でも売ってやれ」

「……そう、だな。その存在も気になる。確かめておいた方がいいか」

 ラーマほどの大英雄ならば、問題は少ないだろう。

 だが、その反応の詳細は確認しておくべきだ。

 聖杯に近しい何かについても気になる。もしかすると、事態の解決に繋がるかもしれない。

「メルト、行こう。サクラ、案内を」

「ええ。ハク、魔獣もまだ大量にいるわ。気を付けて。サクラも、周囲への注意を頼むわよ」

『了解しました!』

「んじゃ、一旦別行動だな。精々死なねえように気を付けな」

 言葉もそこそこ、前方に展開したルーンで魔獣の群れを吹き飛ばすと、クー・フーリンは足早に去っていく。

 僕たちも向かおう。この戦場の中心地たる場所へ。

 

 

 中心地では蠢く魔獣の種類も変化し、蛇のような姿のものが主体となっていた。

 既に兵たちは退避させられており、人の姿はない。

 唯一、赤い姿が一つ、魔獣の群れを相手に圧倒的な強さを見せていた。

 だが、魔獣たちを切り伏せる傍ら、彼は何かと応戦している。

 黒い靄のようで、しかし確かに形を成している何か。

 霊基はサーヴァントのものとは程遠いが、その魔力は並みのサーヴァントを凌駕するだろう。

「ッ――援護だ、メルト!」

「ええ――!」

 跳躍一つで靄へと接近し、メルトが脚を振るう。

 靄はそれを腕のような細いもので防いだ。

 頭部らしきものから伸び、無数に蠢いているのは……腕ではなく、髪?

 それは人型のようでありながら、人ではあり得ない造形をした怪物の影に見えた。

「お前たち! 良いところへ!」

「援護する、ラーマ! shock(弾丸)――!」

 怪物に向けて、弾丸を射出する。

 メルトが一旦距離を取り、斬撃を飛ばす。

 そして、その二つに合わせ、ラーマが剣を突き出す。

 その三つの攻撃全てを――――怪物は受け止めた。

「なっ……!」

「この触手のようなものが厄介でな! 周囲の魔獣どももこやつが来てから動きが変わった、攻めあぐねていたの――だっ!」

 剣を絡めとった触手を力任せに切り裂いて振り払いつつ、ラーマも距離を置く。

「あれは……?」

「英霊のなりそこない、英霊の影よ。魔獣どもに紛れて出てきたのだろう。あの形状、まともな英霊ではなさそうだがな」

「反英霊の類かもしれないわね。その力の大半は使えないみたいだけど」

 本来のものであろう人の形を大きく崩した異形。

 蠢く触手の先端は、蛇の頭のようにも見える。

 真名があるにしても、英霊としての形と同じには見えないほどに変化しているだろう。

 そして、そのクラスは――

「■■■■■■■■■■――――ッ!」

 理性を捨てた、バーサーカー。

 咆哮を周囲に響かせながら、影は突っ込んでくる。

「はっ――!」

 本来速度を重視する英霊が、半端に力任せになり、かえってバランスを崩している。

 触手による無軌道な攻撃を考慮しても、真正面からメルトが十分に対応できている。

 だが、あの影一人ならば、ラーマも手こずってはいないだろう。

 同時に問題となってくるのは、周囲の魔獣だ。

 襲い来る魔獣に弾丸を撃ち込む。多少動きを鈍らせるくらいだが、メルトとラーマにとってはそれで十分だ。

 影に応戦するのが二人になったことで、周囲の魔獣に意識を向ける余裕も生まれている。

「二人とも、サポートする!」

 筋力強化を二人に掛ける。敏捷で勝っている以上、補うべきは力だ。

 特にメルトは、筋力においては平均より遥かに劣る。そして速度は神速の英霊にも匹敵する。

 ゆえに攻撃力を補えば、特殊能力(id_es)を抜きにしても大英雄を凌駕する――!

「ふっ、的確な補助だ!」

「行くわよ、良い嬌声を上げなさい!」

 まずはラーマが周囲の魔獣を力強く薙ぎ払う。

 そして影の英霊へと走る一筋の流星は、触手すら追いつけずにその懐へと突き刺さった。

「■■■■――ッ、■■■■■■――――!」

 棘を抜き、反撃が来る前にメルトは影の背後へと移動していた。

 一撃。直後にはまた、跳躍して重力に従い、踵を叩き込む。

 攻撃に影が気付いた時には既に、そこにはいない。

 英雄でさえ対処は困難である連撃。一撃ごとに攻撃性は増し、より勢いの増した次撃へと繋がる。

「さあ――さあ――さあ、さあ、さあ!」

 その口から漏れる吐息には興奮と喜悦が混じり、()()()霊核を外した痛撃は更に苛烈になる。

 加虐体質。メルトのスキルでもある趣味嗜好に、ラーマも困惑していた。

「お、おい……? ハクト、あの者に何が起きたのだ!?」

「……あー。まあ、メルトの戦いはいつもああだから」

「■■■■■■、■■■■――!」

「いいわ! 久しぶりね! やっぱり蹂躙はこうでなくちゃ!」

 理性を失ったバーサーカーでさえ悲鳴を隠さない、痛覚の刺激に重きを置いた戦いは、メルトが最も好むところだ。

 ただ痛めつけるだけではない。その一撃一撃に込めるのは、動きを鈍らせる麻痺毒。

 それにより、被害者は抵抗すら出来ず、悲鳴を上げるだけの人形と化していく。

「あはは、はははははは――!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――――――ッ!」

 困惑しつつも剣を振るっていたラーマも、やがてメルトの変貌を前に唖然となり、手を下ろしていた。

「お……恐ろしいな。下手をすればローマの狂将より苛烈ではないか――っと、女子がこれほど活躍しているのだ。余も止まっている訳にはいかぬな!」

 ラーマは剣を持たない左手に新たな武器を出現させる。

 戦輪(チャクラ)。敵を捕捉することなく、彼はそれを上空に放り投げる。

 高速回転しながら戦輪は展開、ラーマの手にあった時の数倍の大きさにまで広がり、光を纏う。

「あれは――」

 たった一つ。そして、小さいものではあるが、あの円、あの光は、間違いなく……!

「輝け、転輪聖王(チャクラ・ヴァルティン)! 魔を屠る光を廻せ!」

 さながらそれは天空砲台だった。

 空に展開した戦輪は尚も展開しながら周囲に光の矢を降らせる。

 影の英霊を一方的に蹂躙するメルトに襲い掛からんとする魔獣を残さず貫き、それ以外にも矢は及ぶ。

 前方ではなく、全方位に対応する対軍攻撃。

 それはかつて、聖杯戦争の末に待ち受けていた最大の敵が使用した宝具。

 あの規格外のサーヴァントが使用していたほどの威力は有していない。ラーマの宝具にもあれはカウントされないだろう。

 だが、その武器がここまでの制圧力を持つとは。インド最大の英雄は、決して誇張された称号ではない。

 ラーマがその力を振るっている中、それに気付いているのかどうか――メルトは影をひたすらに嬲っていた。

「はあ――はあ――――ッ!」

 ……そろそろ、不味い気がする。

 攻撃性を増すそのスキルは優勢において強力な効果を発揮する。

 だがその甚大なデメリットは、周囲が見えなくなること。

「メルト――――!」

「ッ」

 名を叫ぶ。敵ただ一人に向けられていた意識が動き、一跳びで戻ってきた。

「ふう……やっぱり、たまらないわね。そう思わない? ハク」

「ああ……うん。そう、だね」

 未だ興奮を沈めないメルトの問いかけに、実のところ賛同はできない。

 僕には加虐の嗜好はない。というか、被害者になることの方が多いために、被害者の苦痛を如実に分かってしまうのだ。

 それがメルトの大きな個性であり、その目の前の一だけを見つめる真っ直ぐさは好ましいものなのだが。

「ふむ。マスターたる汝が手綱を握っている訳か。良い関係よ」

「手綱って……人を馬か何かみたいに言わないでもらえるかしら?」

「はは、すまぬな。だが今は前を見よ。窮地の鼠は猫さえも噛み殺すものだ」

 そう。まだ影の英霊は倒れていない。

 あのまま攻撃を続けていればいずれ霊核へも届いたかもしれない。

 だが、魔力が変質している。毒を耐え、瞬間的にそれを発露させ攻撃することも可能だっただろう。

 何か、影の英霊は奥の手を使おうとしている。あの影が持つ、最大の攻撃を。

「■■■■……ッ!」

「さて、あれを耐えるか。先に討つか。如何する?」

「勿論。反撃なんてさせないわ」

 メルトが再び体勢を低くする。

 十分にその嬌声は愉しんだ。ならば後は、一思いにその心臓を穿つまで。

 ――だが。

「――――」

 影の英霊にとどめを刺すのは、メルトではなく。

「……む?」

 かといって、ラーマでもなく。

「あら……?」

 その場にいた誰とも違う、第三者だった。

「■■■■■■■■――――!」

 膨大な魔力が表出する。

 触手が膨れ上がり、更に異形へと変貌していく。

 影の咆哮が戦場を震わせる。だが、それを超える轟音が、いとも簡単にそれを掻き消した。

 雷だ。晴天だというのに、どこからともなく発生した雷撃が怪物を襲った。

「一足遅かったか。余たちの功とすることは出来ぬようだな」

「ラーマ、この雷は……?」

「目にするのは初めてか? あれは余とも違う、世界を統べる雷よ」

 英霊を警戒しながらも、ラーマは僅か、彼方へと目を向ける。

 ――何かが、近付いてくる。

 魔獣の群れを蹴散らし、轢き潰しながら、凄まじい勢いで迫ってくる。

 雷を伴い、怪物にも等しい影へと、躊躇いもせず。

 バーサーカーの咆哮にも匹敵する鬨の声を上げながら。

 

「――――AAAALaLaLaLaLaieッ!」

 

 膨大な魔力を持った二頭の牛に牽かれる巨大な戦車。

 その騎手の声の方向に、怪物の目が移る。

 だが、その魔力を放出することは叶わず。体を蝕む毒により、逃げることすら出来ず。

 大地を砕いて走る戦車を前に何もすることなく、その影の姿は消えた。

 戦車は影を障害とも思わず駆け抜け、その先で停止する。

 朦々と立ち上る砂煙が晴れるのを待って確かめるまでもない。

 周囲に飛び散った雷でさえ魔獣を引き裂き、今やこの辺りに生きている個体はいなくなっている程だ。

 影の英霊が有していた魔力は、いとも簡単に霧散していた。

「なんだ、呆気ない。これが魔獣どもの総大将ではなかったのか」

「残念だがそうではないぞ。魔獣どもと出典は違おうが、あれらと同じくして沸いた輩であろう」

「ほう。して、コサラの王よ。その者たちは?」

「オジマンディアスの新たな将のようだ。どちらも英霊でなくとも、我らに匹敵しよう大物よ」

 戦車の主は、興味深そうに顎鬚を弄りながら見つめてきた。

 巨大な男だ。その体躯は二メートルは越えているだろう。

 あの呂布奉先と比較しうる偉丈夫だ。

 戦車という巨大な乗り物の上に立ってなお、ほんの少しも矮小には見えない。

 筋肉隆々な肉体を覆う青銅の胴鎧と分厚い緋色のマントが、その男に更なる威圧感を付加している。

 燃えるような赤い髪と顎鬚。そしてぎらりと輝く瞳には、王の風格が確かにあった。

「ふむ……その未来的でふぁっしょなぶるな衣装、英霊とは異なる魔力。カレンめの言っていたマスターか!」

「っ……カレンを知っているのか?」

「我が国の客将よ。うんむ、太陽王の将も強者揃いか」

 どこか、満足そうに微笑み、頷く大男。

 その姿からは年齢不相応な子供っぽさが垣間見えた。

「ところで、貴方は……」

「おう。そうであったな」

 大男は戦車から降り、歩み寄ってくる。

 ――でかい。

 見上げるだけで首が痛くなりそうだ。身長の差は、五十センチ近くはあるだろうか。

 設定された年齢の平均に届かない身長は、コンプレックスとまではいかないが気にしていることではあった。

 これほどの巨躯と並ぶと、その差が如実になる。

「余は征服王イスカンダル。ライダーのクラスに据えられ、故国に現界した」

 そう。彼こそが、かの大王。

 父の代より洗練された王国を継ぎ、十年足らずで膨大な版図を築いた偉人の中の偉人。

 そうだという、確信はあった。

 大英雄の多く召喚されているこの時代にあってなお、圧倒的な存在感を醸す彼は、征服王でない筈がない――と。




二章のメインとなる征服王イスカンダル、四節にして登場です。
しかし今回はラーマ回。影の英霊を相手に強さをお披露目しつつ、メルトらしい戦闘描写のリハビリも兼ねてます。
敵が格上が多いゆえ加虐体質が発揮できないのはGO編も多分変わらず。無念。

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