Fate/Meltout -Epic:Last Twilight-   作:けっぺん

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FGOでは聖杯転臨が実装されましたね。
聖杯と引き換えにサーヴァントのレベル上限を上げられる機能だそうです。
皆さんはどんな使い方をしましたか? 性能重視も良し、愛重視も良しですね。
私は最初にメルトに使いたいので当分使用禁止となります。
それなりに仕度してるんですよ。

・召喚のために石貯蓄、追加投資の準備
・星5一体レベルマ分の種火貯蓄(プレゼントに受け取り期限が出来て計画崩壊の危機)
・速攻スキルマしたいので素材も完備(他鯖スキル上げに支障あり)
・QPも完備(聖杯の登場で計画に支障)
・スキルマ縛り(メルトを最初にしたい)
・聖杯縛り(メルトを最初に(ry)

(ヘンタイ)と呼べ。



AD.0517 絢爛虚像円卓 キャメロット
第一節『今は白き騎士の王』


「マーリン! マーリンはいますか!」

 ドタバタと、厳かなる絢爛の城に相応しからぬ音が響く。

 城内を走る少女は、目的の人物を見つけると花のような笑顔を咲かせた。

「マーリン!」

「どうしたんだい、騒がしい。一体何を――」

「感じ取りました! 外です! 異邦人が来たみたいですよ!」

「ああ――気付いてたか」

 少女が探していた対象であったらしい男性は、さして少女の言葉に驚かない。

「キミの直感は大したものだな、アルトリア。では見に行こうか。ケイを連れて行こう。どうせ面倒ごとだろうからね」

「はい!」

 最後の部分だけは聞かなかったように、満面の笑みで少女は頷く。

 ケイ、と呼ばれた人物を探すべく、またしても足を速める少女を見届けて、男は笑う。

「やれやれ。暇人もいたものだ。どうせアレを回収しに来たんだろう? この時代にあってはいけない、悪辣な善意に満ちた願いの杯を」

 

 

『栄光の騎士王

 AD.0517 絢爛虚像円卓 キャメロット

 人理定礎値:C』

 

 

 ――――まず初めに感じたものは、眩暈だった。

 感覚的には特に変化はない筈なのに、突然空気が変わったような錯覚が襲う。

 それは或いは、普段生きているセカイとの差を大きいものだと思っているがゆえの一種の自己暗示なのかもしれない。

 身体全てが、あらゆる活動に新鮮さを覚え、必要以上の満足感を生んでいく。

 例えばそれは酩酊のようで。

 良い状態とは言えないが、良い感覚。

 しかし、その感覚に身を任せている訳にもいかない。

 ひどくふわふわとした思考に喝を入れる。気付けば倒れそうになっていた身体に力を込める。

 目を開くとそこには――

「――――――――」

 造られたものでない、本当の世界が広がっていた。

「……ぁ」

 草原に立っていた。

 心地よい風が吹いている。それに従って草は靡き、芸術的な波を形作る。

 たったそれだけ。それだけなのに、あまりにも感動は大きかった。

 空気を吸っている。土の上に立っている。この、地上の。

 悲願の達成は何処か呆気なく、しかし多幸感に満ちていた。

「……そう。これが地上」

 感慨深げに呟いたメルトの口元には、笑みが浮かんでいる。

 僕程に積極的ではなかったにせよ、メルトにも少なからず地上への憧れはあった。

 この微笑みは、その発露なのだろう。

『あー、あー……テス、テス。聞こえてる? 白斗君、メルトちゃん』

 新鮮な感覚に浸っていると、すぐ傍から声が聞こえてきた。

 白羽だ。此方の存在の観測と同時に、声くらいなら干渉が出来るようだ。

「聞こえているよ、白羽」

『よし、オーケーだね。観測者である二人がその時代に行ったことで、ある程度情報は分かったよ』

 不可視となった三十の時代。観測者たるマスターが立てば、情報を照らし合わせて時代も逆算出来る。

 どの時代、どの国、何があった瞬間に立っているか。それを確認するのはこのオーダーで何より重要だ。

 起きている異常の発見に直結する情報。これが無ければ、解決まで何倍と時間が掛かるだろう。

「それで……此処は一体?」

『西暦517年。場所はブリテン……だから、イギリス、だよね?』

 ――ブリテン。

 なるほど、であれば尋常ならざる大気中の魔力にも納得がいく。

 月による身体の最適化をせずに訪れていれば、降り立った瞬間に大変なことになっていた。

 西暦を数えて未だ神秘の根強く残る島国。此処が、旅の始まりの舞台か。

 そして、この時代。

「517年……アーサー王の時代か」

 かつてブリテンを統治した、伝説的な騎士の王、アーサー・ペンドラゴン。

 彼の活躍した全盛期と言える時代よりも少し前ではあるが、この国にいるということは間違いない。

 この時代に何かしらの異常が起きているならば――アーサー王が何かを掴んでいる可能性はあるか。

「どんな異常か、は分からないのよね。シラハ」

『うん。だけど……なんだろう。判別不明の反応がある』

「判別不明……? 月の機能を使っても?」

『勿論観測機能は十全に動いてるよ。多分これ、ムーンセル全体を見ても前例のないモノなんじゃないかな』

 あらゆる並行世界を見ても、前例のない何か……それがこの時代の異常になっているのだろうか。

 しかし、ムーンセルが知らない存在、ということが既に信じがたい。

 この事件が如何に未曾有の異変なのだとしても、この瞬間にだけ存在する何かなどありえようか。

『今二人がいる場所から西に暫く行った場所にその反応はあるけど……流石に、そこまで離れたところだと観測できな……』

「……白羽?」

「ッ――ハク」

 唐突に言葉を止めた白羽。

 その理由は、次点でメルトが気付いたものだろう。

 ――誰かが近づいてきている。

「……この時代の人、かな?」

「いえ……ハク。アレ、サーヴァントよ」

 まだ遠目にしか見えなくとも、メルトは察したようだ。

 サーヴァント。まさか、こんなにも早く会うことになるとは。

 月のシステムであるサクラ・ノートを使った召喚でも、この観測不可能な時代にいる以上その詳細は月には伝わってこない。

 ただ一つ分かることは、あのサーヴァントは世界全てに関わる事件の解決を願う者であること。

 とにかく、向かってくるというならば、待ち構える。

 この事件で出会う、最初のサーヴァントを。

「――女、ね」

 鮮明になった姿は、まさしく女王といった風貌だった。

 赤い長髪のてっぺんに輝く王冠。埃の一つすら付いていない、純白のマント。

 右手には過度に飾らぬ剣を握り込み、左腕を守るように、金に赤で彩られた盾を持っている。

「アンタたち。この国の人間って訳じゃなさそうだけど……何者?」

 開口一番、女性から発された言葉には、強い警戒が込められていた。

 その答え如何によっては、今すぐにでも切り掛かる、そんな確信がある。

 答えに迷うこともない。相手がサーヴァントであれば、事情は理解していよう。それを話すまでだ。

「……この時代の異常を取り除きに来た。君も、そうじゃないのか?」

 女性はその返答で、少しだけ警戒を解く。それでも未だ怪訝な表情は変わらない。

「……ふうん。アイツらの敵かな。まあ、そういうことよ。それで、『この時代』ってのは? まるで別の時代からやってきたような口ぶりだけど」

「アイツら……?」

「はいはい。先に質問に答えること。ちゃんと私も知っていることくらいは教えてあげるから」

 少なくとも、女性は敵意は持っていないようだ。

 何やら、この時代の異常についても、情報を掴んでいるとみられる。

 僕たちについて、隠すこともない。召喚された英霊とあれば、尚更だ。

 ――この時代から、およそ千五百年後の時代から来たこと。

 ――ムーンセルのこと。

 ――各時代の異常を感知し、それを対処すべく英霊たちを喚んだこと。

 ――僕たち。そして、協力を依頼した魔術師たちが各時代に飛び、異常の正体を確かめていること。

「……そう」

 ざっと説明を終えて十秒ほど。

 理解できたのは精々五割、と言った微妙な表情で女性は頷いた。

「まるで理解できない部分はあるけど……ま、悪い子たちでないことは分かったわ。けど、今までの警戒は仕方ないものだと思って」

 剣が収められる。どうやら、完全に警戒を解いてくれたようだった。

「じゃ、あたしを喚んだのは君たちって訳だ。確かに間違いない。あたしはこの国を護るために召喚に応じたサーヴァントだよ」

「そうか……なら」

「うん。協力しよう。君たちが悪い子でないなら問題なし。今は少しでも戦力が欲しいしね」

 言いながら、女性は笑顔を見せてくる。

「……戦力が要るほどの何かが起きているってことよね?」

「そ。この時代の異常ってんなら多分それ。頼りになる味方もいるけど、きっと足りないと思う」

「その異常っていうのは?」

「先に移動するよ。拠点があるの。その味方も含めて紹介するから」

「……構わないかしら、ハク?」

「ああ。この時代の勝手も分からないし、誰かに頼った方が良い。君……えっと、真名かクラスを教えてもらっていいかな?」

 この異変は、聖杯戦争とは違う。

 協力関係である以上、真名やクラス、宝具などの情報を隠匿する必要性はない。

「うん。いいよ」

 女性は、疑うこともなく許諾してくれた。

 地上に降りて、初めて出会ったサーヴァント。

 その真名は――

「あたしはブーディカ」

 ――このブリテンの異変に降り立つに相応しいもの。

「勝利の女王、なんて大層に呼ばれてる、ただの敗北者さ」

 この時代より四百五十年ほど前、一世紀の古代ブリタニアの女王。

 王であった夫の死によって平穏を崩され、ローマ帝国の侵略に対抗した、ブリタニアの守護者。

 勝利(ヴィクトリー)の語源となった者とは到底思えない、救いもなき凄惨な最期を迎えたことを知っていれば、否が応にも想像してしまう。

「クラスは――」

 据えられし、そのクラスの名。

 ムーンセルのログを整理していた際、かつての聖杯戦争での召喚履歴を見たことから名前だけ知っていたとあるクラスを。

「――――復讐者(アヴェンジャー)

 

 

 ブーディカに付いて暫く歩き、始め居た場所から随分と離れた。

 此方の名前は既に告げており、オペレーターである白羽の存在も彼女に知られている。

「そっか。英霊と関わるのは初めてじゃないんだ。聖杯戦争、ね……同じブリタニアの英雄とは戦いたくないな」

『そうだよね……ただでさえ死ぬのも殺すのも嫌なのに……』

「優しいねえ。でもまあ、そういうこと。ブリタニアの英雄なら、絶対仲良くしたいもの」

 過去にあった始まりの戦いの話をしつつ、ここまで来た。

 ブーディカの話を聞いたならば、次は此方の番、ということだ。

 どうやらブーディカは、アヴェンジャーのクラスに据えられながらも大きな復讐心は持っていないらしい。

 アヴェンジャー――復讐者。

 該当する英霊は数少なく、それら全てが無比の復讐心を宿しているエクストラクラス。

 ながらここまで彼女が温厚なのは、どうやら今目の前にローマの人がいないから、とのこと。

 復讐する対象がいないならば、復讐心などどうとでもなる。今は特に役に立たないクラススキルを持っただけの、ただのおねーさんだ――とは彼女自身の弁。

 自らと、愛する娘を蹂躙したローマ帝国。

 もし、それに縁のある英霊がいれば――なんて想像したくない。

 少し話しただけでも、彼女が心優しい、慈愛を持った性質であることは分かった。

 そんな彼女を堕としてしまった存在を良く知っている以上、どうにも複雑な気持ちはあるが……それは決して、表に出してはならないことだ。

「もしうちの旦那さんと戦うことになってたらそれこそ最悪。今回のとどっちがマシって訳でもないけど」

 英霊であるブーディカにとっても、聖杯戦争の知識は新鮮らしい。

 いざ召喚されれば知識は得られるだろうが、今回はそれとは話が違う。

 人類史を救う戦いに、聖杯戦争は関係ないのだ。

「さ、着いたよ」

「……え?」

 唐突に立ち止まるブーディカ。

 周囲には何もない。これまで通りの、風の心地よい草原である。

「何もないけれど?」

「そういう結界。外から見えてちゃ何があるか分かったものじゃないって」

 説明を聞きながら、もう一歩踏み出すと――

「――やあ。戻ってきたねブーディカ。無事で良かった」

 ――たった今まで、そこになかった景色が広がっていた。

「ただいま、魔術師さん。連れてきたよ。協力してくれる良い子たちだった」

「それは何より。流石に私たちではどうにもならないからね。アレを倒し得る強者は一人でも多い方が良い」

 瑕を知らない、白亜の城壁。

 穢れなきその城は、突然に現れた。

「……随分と大層な結界ね……そこの魔術師かしら」

『一応、観測は出来るから、外からのアクセス一切を遮断している訳じゃないと思うけど……』

 幻惑……これだけの範囲の景色を騙せるほどの、強大な魔術。

 その技術にメルトも驚愕し、使い手と見られる存在に目を向けている。

 城塞に背中を預けて、魔術師は此方を見ていた。

「その通り。私が張ったし、流石にそんな異質な干渉への対策はない。ようこそ、遥か理想の城へ。ようこそ、崩れかけの時代へ。歓迎するよ、異邦の客人」

 虹色に輝く長髪に、純白のローブ。

 奇妙な形の杖を携えて、どっしりと、しかし軽く座り込む青年魔術師。

 僕が良く知る時代に存在する魔術師(ウィザード)とは違う、この世界で神秘を紡ぐ生粋の魔術師(メイガス)

 それも、この規模の魔術を使用しながらも平然としていられる、最上位の使い手。

「……貴方は?」

「名乗る程の者じゃない……なんて、客人への言葉でもないか。私は――」

「マーリン! また異邦人ですか!」

 薄々勘付いていた。この青年は、この時代、アーサー王の治世において、最も名を知られているであろう魔術師なのかもしれないと。

 快活な声に遮られ、苦笑する青年。

 彼こそが、世に名高き花の魔術師マーリン。数多くの神話や伝承に名を遺す、有数の王を育てる者(キングメイカー)

「やあ、アルトリア。本当にキミは耳……いや、勘が早い。その分だとまたケイを置いてきただろう?」

 城の内部から青年――マーリンを呼んで、駆けてきたのは少女だった。

 えへへ……と彼の言葉に答えないながらも否定もしない少女は、十五歳前後に見える。

「初めまして! お二方! えっと……お名前は?」

 金髪を後ろで束ねた、純白のドレスを着こなす少女。

「僕は紫藤 白斗。そして……」

「メルトリリスよ。それからオペレーターの――」

『黄崎 白羽だよ。声だけしか干渉できないけど。貴女たちは――』

 少女は白羽の声に少しの間驚愕していたが、やがてニッコリと笑い、

「私は、アルトリア――アルトリア・ペンドラゴン。以後、お見知りおきを! ハクト! メルトリリス! それからシラハ!」

「他己紹介になってしまったね。改めて、私はマーリン。此方の若き王のお付きを務める魔術師さ」

 マーリンと共に、名前を告げてくる。

 ブーディカとは違う。英霊ではない、真としてこの世界に生きる者。

 そして、この世界に異常が起きているのであれば、誰よりもキーパーソンになりうる人物。

 その名と、マーリンの言葉から、否が応にも結論付いてしまう。

 マーリンの「此方」が指しているのはその少女であり。

 マーリンが補佐をする王など、この時代においてたった一人。

 選定の剣を引き抜き、円卓を率いてブリテンを治めた英雄。

 ――――騎士王、アーサー・ペンドラゴン。

 目の前の少女こそ、騎士道の誉れも名高い王なのか。

 

 

 +

 

 

「……王よ」

 声が、聞こえる。

「王よ」

 目を開けば、そこにいるのは信ずる者たち。

 皆が、言葉を待っているように見える。

 嗚呼――どうやら、泡沫の眠りについていたらしい。

「……――――」

 口を小さく、開いてみる。

 問題ない。言葉は出る。くだらない。一体何を、私は確かめているのか。

「……私は、在るべき王ではない。故に、新たなる王である」

 昨日も、一昨日も、同じ出だしだった。

「貴公らは、それを理解している。故に、我が騎士である」

 再確認するまでもない。

 これは、私も、彼らも、弁えていることである。

「……先、この時代に降り立った者は、如何となった」

「……向こう側に付いたようです。何とも愚かな……状況すら知らぬのでしょうが」

 そうか。であれば、仕方なし。

 否。これは僥倖というものか。

 敵対する存在は、可能な限り多い方が良い。

「ふん。ならば私たちが出向こうか。時代を超えるとは正に神業。なに、神霊殺しは既に経験済みだ」

「落ち着け。今はその時ではない。アイルランドの騎士――フィン・マックール。そしてディルムッド・オディナよ。貴公らが我が円卓に座したことは光栄である。故に、斥候などに使い潰すつもりはない」

「そうか。いや此方こそ栄えあることよ。異国、そして異常とはいえ騎士道の代名詞たる円卓に名を連ねるとは。何より王よ、貴女が見目麗しいことが気に入った。貴女の命ならば、騎士として応じようさ。なあディルムッド」

「は。い、いえ……召喚に応じた以上、性別に関係なく私は仕えるつもりでしたが……」

「はっはっは! ディルムッドも興味ありと見た。そうだろうな、そうだろうよ! お前の美貌に惑わされぬ女人に喚ばれたことが余程嬉しいと見える!」

「いえ、ですから……」

「双方、口論は慎め。王を前に好き放題し過ぎだ」

 ……ほんの少し、騒がしかった。

 しかしそれも、すぐに収まる。何処か、寂寥感があった。

「……しかし、対処せねばならない問題では」

 僅か、語気を荒げた騎士は、すぐに冷静を取り戻す。

「分かっている。そう急くな」

 彼らが、何を危険視しているのか、わかっている。

 諫言の主は、状況を他の誰より理解していよう。

 だからこそ、最後の障害を叩き伏せようとしているのだ。

「無断なれど外に出ている二人から、先ほどパーシヴァルを討ち取ったとの報せがあった。最早この時代に在った、“円卓に座す筈の騎士たち”はいない。今、この時代に在る円卓の騎士は、悉くが英霊である。たった二人を除いて。正しいか?」

「は。間違いなく。また、円卓の英霊たちも召喚されているでしょうが、幾人かあちら側にいることを確認しています」

「では、我が下に集った二人の武勇は知っていよう。その上で歯向かおうとも、私は幾度でも赦す。最後まで此方に来なければ、それまでだ」

 事実。この二人が在れば、他の騎士全員が向かってきても負けることはあるまい。

 そして、私が命ずれば、少なくともこの騎士は首を縦にしか振らない。

「剣を振るうのは、私が命じてからで良い」

「……は」

 不承不承といった風だが、頷いた。

 受けたものが、王命であったゆえに。

「貴公は利口者だ。生前、最後までそうであり、私に付き従ってくれた貴公を、私は此度も信頼しよう」

「幸甚の至りです。その信頼のままに、私は貴方の剣の二振り目であり続けましょう」

 そんな、何処か、遥か遠く懐かしい気のするやり取りをした次の瞬間だった。

「――――」

「……王?」

 感じ取る。感じ取ってしまう。

 昇華されし直感は、何処までも鋭く、状況を掴んでしまう。

「……新たなる英霊が降りた。数は三」

「……如何いたしますか?」

「――。外の二人を向かわせる。あの者たちと鉢合う可能性があるが、争う必要はない」

 そこで、彼らは我が騎士と相見えることになろう。

 ならば、見定めることも出来よう。

 願わくば、異邦の勇者たちが私の望む者であることを。

「ふむ。まったく、間が悪い。私たちが外に出向いていれば、この役が回ってきただろうになあ」

「しかし、かの聖域王と黒き姫君ならば、問題なく事を済ませられるのでは?」

「勿論だとも。聖域王の光剣も、姫君の涙も美しい。ならば失敗する道理がなかろうさ。美しい者は強い。私も、我らが騎士王も然り、な」

 そう言って、アイルランドの騎士は此方に目を向ける。

 否だ。今の言葉には、間違いがある。

「フィン・マックール。ディルムッド・オディナ」

「む?」

「如何されました?」

 間違いがある以上、訂正は必要だ。

 この場にいる、異郷より来た二人の騎士に向けて。

 そして、生前より忠義を誓った、二人の騎士に向けて。

「ガウェイン。ランスロット」

「はっ……」

「……――」

 一言も喋らぬ――喋ることを赦されぬ信ずる騎士にも、等しく我が言葉として。

「今の私は、騎士王にあらず。栄光も没落も私には無し。正しき時代を焼き払う邪竜にも等しき存在」

 故に。故に――

 

 

「故に、私にアルトリアの名は相応しからず。黒竜王(ヴォーティガーン)――それが今の我が真名である」




今回の特異点は六世紀ブリテン。状況としてはこんなところです。意味不明ですね。
FGO六章が円卓シナリオだったこともあり、他の騎士のキャラ確認、設定のすり合わせがあった事が、開始が遅れた一端であったりします。
まあ、最初の特異点ですし難易度は控えめということで……

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