Fate/Meltout -Epic:Last Twilight-   作:けっぺん

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第七特異点 絶対魔獣戦線バビロニアが配信されました。
かつてないスケールの戦い、存分に楽しむことが出来ました。
残るは今年中に開始されるらしい最終決戦イベント。準備は着々と進めています。

さて本編、どうぞ。
タイトルは「わたしとわたし」と読みます。


第十五節『騎士王(わたし)黒竜王(わたし)

 

 視界が移り変わる。

 それまで目の前にいた騎士たちが消え、代わりに広がっているのは無数のエネミーが跋扈する景色。

 ワイバーン、竜牙兵、キメラ、ゴーレム。

 それだけではない。ワイバーンの数倍はあろうかという巨竜も見える。

 軍の背後に出現した僕とメルト、そしてランスロット。

 性能を度外視して量産された人形騎士の二割ほどもまた、近場に転移している。

 竜牙兵の一体が気付く。金切り声を上げて敵襲を知らせるが、先手は既に打った。

「人形騎士! サーヴァントには近付くな! 他の敵たちの相手に専念してくれ!」

『――――――――ッ!』

 弓兵騎士による遠距離攻撃が、厄介なワイバーンを射抜いていく。

 剣や槍を持つ騎士は適宜、得物の届く範囲の敵を粉砕する。

 性能は以前のものより劣っているとはいえ、敵もまた数を重視した軍勢だ。

 竜牙兵など百同時に襲われなければ撃破可能だろう。

 問題だろうと思われたキメラも、急所である獅子の頭部を的確に貫くことで消耗を最小限に抑えた対処が出来ている。

『気を付けて! 騎士タイプもいるよ!』

 黒竜王の町にいた騎士も、少数ながら見られる。

 エネミーの軍勢を指揮する騎士だろう。優先して討つべきだと、指示を出す。

 後は――

「――そこまでだ!」

 騎士たちの上に立つ、サーヴァントたちの対処。

 煌めく紫槍を、メルトが弾く。赤と黄の閃光を、ランスロットが冷静に受け止める。

 金髪を靡かせる美貌の騎士。泣き黒子を持つ双槍の騎士。

 フィン・マックールとディルムッド・オディナ。

 ケルト神話にその名を残す卓越した英霊だ。

 フェニアン時代(サイクル)にてエリン――アイルランドを守護した栄光のフィオナ騎士団の長と、その一番槍。

「いやはや、見事。まさかこうも単調な奇襲とは。我らサーヴァントの各個撃破が目的か。これは予想の外だったなあ」

「王よ、油断なさらぬよう。不覚を取りかねない強敵です」

 三本の槍が向けられる。

 サーヴァントの数は二体。戦力上は互角だ。

 だが周囲には無数のエネミーがいる。人形騎士たちが相手をしているとは言え、油断は出来まい。

「まさか君もいるとはなあ、ランスロット。どうも君は女にうつつを抜かせば裏切らずにはいられないと見える」

「相変わらず笑えないジョークだ、フィン・マックール。女性がらみの話は互いに控えるべきではないかね?」

「そうだな、何せ長くなる。こういうのは酒の席でこそだ。物言わぬ狂戦士であった君とは結局、機会がなかった。ようやく理性を取り戻せば寝返っていると来た。ままならぬものだ」

 油断なく得物を構えるランスロットの素っ気ない返答に、フィンは肩を竦める。

 その隣でディルムッドが至極複雑な表情をしているが、まったく気づく気配がない。

「そして――早い再会だね、勇士たち。結局、我らは相容れなかったか」

「――ああ。この時代を守るために、僕は黒竜王とは敵対しなければならない」

「ええ、貴方たちがそちらにつく限りはね。此方に下ってくれるなら、手間が省けるのだけど」

 最初から期待をしていないメルトの提案に、やはり、フィンは首を縦に振らない。

「それは無理だな。私たちがそちらにつく理由がない。ランスロットはこの時代の騎士王を重く見たのだろう。だが私たちが重視するのはあくまで召喚者たる騎士王――いやさ黒竜王だ。たとえ世界を手に掛ける側になろうともな」

「……黒竜王が、召喚者?」

 黒竜王も、黒竜王の円卓に座した英霊も、その先にいる黒幕たる存在が召喚していると思っていた。

 何故ならば、黒竜王は英霊だ。

 どれだけ規格が大きくとも、どれだけ常軌を逸した霊基を所有していようとも、一人の英霊だ。

 サーヴァントを召喚することは出来ない。そんなことが可能なのは、神代の域にある魔術師(キャスター)くらいだろう。

 黒竜王はそれに該当していいない。なのに――。

「そう。私とディルムッド、ガウェイン、シャルルマーニュ、クリームヒルト、そして離反したランスロットとアグラヴェイン。途中で参戦したベオウルフ以外は皆、黒竜王に召喚されたのさ」

「一体、どうやって……」

「知りたくば、黒竜王へ至れ。私たちを突破するがいい。出来れば、の話だがね」

 その秘密はフィンもディルムッドも、話すつもりはないらしい。

 であれば、最早戦うだけか。

「――」

「……何よ」

 ――しかし、メルトを見つめるフィンの瞳は、どうも敵に向けるものではない。

 どうにも、嫌な予感が……

「……やはり、美しいな。生前のどの妻とも違う。線の細い少女もまた良いものだ」

「は……?」

「いや何。ただ戦うというのも面白味がない。これも一つの運命――要するに、君を気に入った」

 その嫌な予感は、すぐさま現実となった。

「より端的に言おう! 私が君に勝ったら、君を妻にする!」

「ハク、シラハ。あの男は何を言っているのかしら」

「……」

 魔術回路を励起させる。

 決して本来悪に属する英霊ではないのだろう。

 だが、間違いなく、このフィン・マックールとは相容れない。

『……あれだね。求婚されたんだよ。大丈夫白斗君? 生きてる?』

「……」

「は、ハク?」

 いや、大丈夫。生きているし、冷静だ。

 僕たちが今やるべきことは一つ。この時代を破壊せんとする黒竜王、その騎士たる二人を倒すこと。

「――よし。倒そう。やるよメルト。ランスロット、ディルムッドを頼む」

「え? えぇ……」

「……承知しました。迅速に決着を付けると致しましょう」

 そこに、一つの確固たる意志を含めるだけ。

 メルトは渡さない。そのためにも、決して負ける訳にはいかない。

 万全たる補助をもって、この戦闘に勝利する――!

「はははははは! その意気やよし! ゆくぞディルムッド!」

「は、はっ! ……まったく、困った方だ。ともあれ、ランスロット殿。一切手は抜きません、どうか覚悟してもらいたい!」

 二人の騎士が迫る。

 クラスは共にランサー。ステータスは敏捷に秀でているが、それはメルトも同じこと。

 ランスロットは狂気を失ったことでステータスが下がり、敏捷は一歩劣っているが、それだけで後れを取るようなサーヴァントではない。

 激突。今の内に術式の用意をする。

 これが、この二人の騎士との最初で最後の戦いだ。

 

 

 +

 

 

 冷静になって考えてみれば、当然のことだったのかもしれない。

 他の騎士ならばともかく、彼には後悔があった。

 それを払拭するには、そのことを知るアーサー王に仕えるしかなかったのだから。

 次があれば今度こそ。彼がそういう思いを抱いていたことは理解していた。

 彼の忠義は、彼を知らぬアーサー王に行くことはない。だから決して、心は動かなかった。

 太陽の騎士ガウェイン。彼はようやく、今一度王に仕える機会を得たのだ。

 それは、喜ぶべきことなのだろう。

 かつての僕もガウェインについて考えた時、そう思ったこともあった。

 だが、ああ――なんて間の悪いことか。

 こういう形で叶ってしまった。

 此度目覚めたアーサー王は時代の破壊を齎す者だった。それでも、ガウェインは何も言わずに従っている。

 それが、ガウェインの騎士としての在り方なのだ。

 ほんの数ヶ月とはいえ、彼を後ろで見ていた身だ。彼はそういう人格の英霊だと、十分に理解している。

「ガウェイン。以前の失言、謝罪しましょう。貴方は真実、忠義の騎士だ。僕はそれに敬意を表し――故に、完全な勝利をいただきます」

「くっ――」

 不定の軌道を描く剣光に即座に対応しきれている辺り、流石はガウェインだ。

 彼の技量はセイバークラス有数といえるものだろう。

 だが、それは此度契約したセイバー――アルテラもまた、同じことだ。

「ふっ!」

 しなる斬撃が通らぬならば、霊核を狙った刺突。

 三つの光を束ねた剣は、ガウェインの聖剣と互角以上に渡り合っている。

「何故――これは、一体どういうことだ!」

 一瞬、セイバーの攻撃が止んだ時、ガウェインが踏み込んだ。

 セイバーを弾き、距離を取る。

 その間にセイバーの僅かな傷を回復しつつ、ガウェインの出方を窺う。

「……私は黒竜王に願望(ギフト)の成立を願った。不夜たれと。私の価値を、存分に使われよと!」

 ……そういうことか。

 ようやくわかった。黒竜王の城に赴いた際、あの城下町が夕刻であるにも関わらず太陽が輝いていた理由が。

 黒竜王が何らかの手段でガウェインに力を与えたのだ。彼の空に、常に太陽あれと。

「絶対なる我が聖者の数字を、如何にして破ったのです!」

「知れたこと。貴方の中天に太陽が在るならば、その光を断てばいい。貴方と戦うのであれば、その凄まじい体質への対策を講じるのが確実でしょう」

 ハクトさんの戦いは、それが敗因に繋がった。

 聖者の数字の弱点を突かれたこと――その手段を、彼らが持っていたことが決定的だった。

 だが、それを受けたからこそ、如実に理解しているのだ。

 これがガウェインの弱点。“究極の騎士”を、“強大な騎士”にまで失墜させる、太陽光の遮断。

「……そのような術式、私と知り合ってからこれまでの時間で用意したというのですか」

「そう、ですね。ええ……()()と出会ってから、作った術式です。己の道を正しいと思いながらも、月への想いを持ち続けた僕の、大きな未練ですよ」

 このガウェインには、さっぱり理解出来ない事柄だろう。

 それでも、彼に話しておかなければならないと思った。

「結界術式『月照らすは理想の王聖(ロード・キングアーサー)』。月を映し出す夜の帳。さあ――暦は新たな時を刻んだ。貴方の時間は終わりました、ガウェイン」

「何を――!」

「勝機は貴女にある、決めなさいセイバー」

「受けたぞ、マスター――!」

 鞭の如く振るわれる三条の光。

 剣のリーチから離れていようとも、セイバーの得物には関係がない。

「この距離でも……ならば!」

 セイバーの剣に対応するガウェインの聖剣が、突如として膨大な火炎を放出する。

 近距離で戦っていれば、その余波で焼け焦げてしまってもおかしくない。

 その熱量はよく知っている。

 ガウェインの持つ聖剣の最大解放。その炎熱は聖者の数字の加護下になくとも、数多の英霊を灰燼へと変えるだろう。

「陽はまだ沈まない。我が王に誓って、その虚像の夜ごと焼き払いましょう!」

 それを真正面から受けて、誰が防ぐことが出来よう。

「この剣は太陽の現身。我が手に宿るは焔の顕現――――!」

 その一振りは、セイバーを呑み込み、僕を焼き尽くし、夜を切り裂いて尚余りあるだろう。

 贔屓目を捨てても、あの聖剣は恐ろしい。

 ガウェインは強い。聖剣も強い。

 だから、ガウェインを封じるために自己満足の術式(プラネタリウム)を持ち出した。

 だから――万に一つをも無くすため、自身が此度契約したサーヴァントの能力を幾度も確認した。

 問題はない。早いのは此方だ。

「宝具の展開確認。事前命令を行使――死ぬなよ」

 ガウェインの宝具は広範囲に及ぶ切り払い。

 防ぐ手段がないならば、呑まれる前に飛び込めばいい。

転輪する(エクス)――――――――ッッ!!」

 線ではなく点。相手より早く、速く、迅く、貫くだけ――!

 

軍神の剣(フォトン・レイ)ッ!」

 

 ――特性を熟知していたからこそ、宝具解放に際した指示を先に出していた。

 騙し討ちに近い。ガウェインを僕が知っていて、僕をガウェインが知らなかっただけの話。

 そこを突いただけの卑怯な戦法。

 後は、生前よりの戦略眼を有したセイバーにタイミングを一任するだけ。

 その全ては果たされ、此処に状況は詰みを迎えた。

「――――ッ、か……」

 本来の性質を発揮せず、セイバーの突撃はガウェインの心臓だけを的確に穿ち、動きを停止させた。

 素早く引き抜くと、その剣をガウェインの右手に当て――聖剣の駆動が収まったのを見定めると、一跳びで戻ってくる。

 その着地と同時に、ガウェインは膝を折った。

 致命傷だ。どう足掻こうと、これ以上は戦えまい。

「……見事」

 粒子となって消えていくガウェイン。

 ……まさか、もう一度、彼の消滅を見届けることになるとは思わなかった。

 今回は敵として、彼に引導を渡す側に立ったことが、口惜しかった。

「その戦い方……私という騎士を知っていようとは。よもや歴戦のマスターでしたか」

「そうですね。かつて、サーヴァントを召喚し、戦ったことがある。ガウェインという英霊も、よく知っています」

「……なるほど。私が負けるのも、道理でしたか」

 何かを察し、自嘲するようにガウェインは笑う。

「此度こそは、と思ったのだが、やはり私はそういう星に生まれたらしい。……レオ、と言いましたか。貴方が知る私は、どうでしたか?」

 その問いへの返答は、考えるまでもない。

 彼との時間は決して薄れることなく、記憶に残っている。

 王に至る過程。決勝戦での、一歩及ばなかった激戦。

 月の裏側における、最強のアルターエゴとの戦い。そして、黒幕の分体との最後の決戦。

 あの時の別れは、今のガウェインの記憶にはない。達成感も悲しみも、今は僕にしかないものだけれど。

 それを伝えるくらいは、構わないだろう。

「……完璧でした。未熟なマスターを正しく導いて、行く先を照らした。誰でもなく、ガウェイン卿にしか出来なかったことです」

 別のサーヴァントと契約していたとして、月から脱出出来たとしても、今の僕はなかっただろう。

 だから、僕はガウェインに何事とも比較できない感謝をしている。

「――よかった。幸福な私も、いたようだ。であれば、これからも、希望はありますね」

「はい。英霊であるならば、いずれまた、アーサー王と巡り合う機会もあるでしょう。その時こそは――」

「――ありがとうございます、レオ」

 今回はガウェインにとって、まさに千載一遇のチャンスだったのだ。

 再びアーサー王と共に召喚される可能性は低いだろう。

 だが、こんな言葉でも、かつての相棒の救いとなれば良いと思った。

「王よ……正義を歩まぬ貴方でも、私は良かった。思えば、己のために寡黙に徹し……しかし、此度もまた、遂げられなかった」

 戦いは終わった。

 夜の結界を解き、戦場に光が差す。

 夜明けの陽光をその身に浴びながら、ガウェインは最後に告白した。

「……この大罪。いずれ再び、正しき貴方の剣となることで、償いましょう。だからどうか、微睡みにお戻りください。王よ――」

 消えゆく夜に溶けるように、ガウェインは消滅する。

 その最後の表情は悲しげだった。

 それは王を想う、ずっと隠していたガウェインの本心だったのかもしれない。

 

 

 +

 

 

 軍勢の先頭に、その王はいた。

 目の前に立つだけで、存在の圧倒的さに心が折れそうになる。

 しかし決して砕けることがないのは、きっと、傍に信ずる騎士がいて。何処かで戦う同胞たる騎士がいて。

 背負っている、無辜の民が、国があるから。

「……気をしっかり持ってください、王よ。ほんの一瞬でも油断すれば、あの殺気だけで首が飛ばされましょう」

「大丈夫、です。……何より、あれは自分なのですから」

 海の彼方からの侵略者が来た訳でもない。民の反逆があった訳でもない。

 あれは自分だ。未来の私その人だ。

 何を恐れる必要があろうか。私はただ堂々と、未来の自分の不甲斐なさに憤れば良いのだ。

「……止まれ。もう良い、ドゥン・スタリオン」

 竜の鎧を纏った王は、騎乗していた勇壮な白馬から降りる。

 ――あの馬もまた、凄まじい魔力を持っている。

 だが、これから先には必要ないとばかりに、粒子となって消えていった。

「少しばかり驚いたぞ。まだ未熟な王が、城に引き籠るでもなく敵の前に身を晒すとは」

 言葉の一つにも、圧を感じた。

 萎縮はしない。苦々しい言葉ではあるが、同時にそれは自身を奮い立たせる言葉でもある。

「貴様は戦場に出るべきではなかった。大人しく己の騎士の勝利を祈るだけに止めておけば、この時代の終焉も僅かばかり延びただろうに」

「――そんなこと、あり得ない」

「……何?」

 物怖じしていては、剣戟にさえ届くまい。

 あれは私の到達点であり、それ以上先がない成長の果てだ。

 今の私では到底及ばない相手。

 だが、決して私が出向かないという選択肢は存在しなかった。

「侮るな黒竜王! 耄碌した己を前に逃げ出す私だと思ったか! この国の、この時代の危機に立ち向かわずして、何が王だ!」

 断固として、(わたし)に告げる。

 未来の自身がこの国の災厄として現れたならば、それを討伐して見せるのは他でもない私の役目だ。

「……よく吠える。頭が痛いな。村娘が如き己の様を目にするのは」

 言いつつも、黒竜王は兜を外した。

 ――私自身だ。雰囲気は変じているが、鏡映しのように、同じだった。

 選定の剣を抜いた時点で、私の成長は停滞している。

 それは、何年経とうとも同じ。死ぬまで変わらない。

「まあ、私の前に出てきたのは僥倖だ。キャメロットにまで赴く手間も省けた」

 手に握られた剣が、此方に向けられる。

 この場で、過去の己を切り捨てるために。

「――王、ご安心を。皆が駆け付けるまで、私は何としてでも守り切ります」

「……べディヴィエールか」

 私の前に立つべディヴィエールを、当然あの自分は知っているだろう。

「そちらについていたとは、何とも卿らしい。しかし……私と戦うと?」

「ええ。私は今の貴方を看過できない。何故、この時代を破壊しようなどと……」

「それを卿に伝える理由はない。私を妨害するのであれば、卿も敵として斬るまでだ」

 私は知らなくとも、あの自分はべディヴィエールを知っている。

 だが、それでも――彼を手に掛けることを躊躇っていない。

 信じられなかった。真摯に仕えただろう騎士もまた、一外敵としか映っていないのか。

「……貴方がそうであるならば。私は、貴方を止める。どれだけ貴方との差が大きかろうとも、円卓の騎士であるが故に!」

 べディヴィエールの強い宣言にも、彼女は表情一つ動かさない。

 ……いや、違う。

 表情は変えていなくとも、べディヴィエールに向けた圧力が増した。

 対するべディヴィエールはそれに対して、剣を持つことで応える。

 昨日のランスロットとの戦いでも発露した、魔術と思われるものを利用した彼の戦闘法。

剣を摂れ(スイッチオン)風霊騎士(インビジブル・エア)。黒竜王、何するものぞ。ヴォーティガーンの名を謳うのであれば、我が風腕をもってその野望を断つ!」

 風が集い、隻腕を補う義手となる。

 剣を持つのは風の右腕。透明な腕による剣戟は、リーチを掴み切れず対人において絶大な効果を発揮する。

「良いだろう。来るがいい我が騎士、未熟なる王。この時代を守りたくば、足掻いて見せろ」

 怪物たちと、人形騎士たちが戦闘を開始する。

 黒竜王とは二対一の戦いだ。数の上では有利でも、能力の差がどれほどあるか。

 それでも、決して負けられない。

 自分の全てを懸けて、未来の自分(わたし)を打ち負かす――――!




交戦開始。そしてガウェインは退場となります。お疲れさまでした。
レオの術式は、決着術式の応用です。
とは言え周囲を夜にするだけで、他の効果はなく耐久力もありません。

一章はあと二話を予定しています。
場合によっては一話増えるかもしれませんが、まあその辺りはご容赦を。

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