我は竜王、誇り高き竜族の王   作:傾国の次郎

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思っていたよりも多くの方に読んで頂いているようで恐縮です。


第五話

夜の海。よせてはかえすしらなみの、さわぐいそべのすみっこに、りゅうおうは立っていた。

 

ここはサザンビーク城より東の海辺、りゅうおうは1人夜空を見上げていた。

 

(これからどうしよう。)

 

りゅうおうは自身の今後を思案していた。

 

(原作はどこまで進んでいるんだろう?それともまだ始まってないのかな?レティスがまだ影の状態なんだから、レティシアまでは進んでないだろうけど……確かめようにもトロデーン城まで行く術がないしな…。あれからレティスも見ないし…困ったな…。)

 

この世界に来た直後遭遇したレティス。この世界

がドラクエⅧの世界だと教えてくれた存在。りゅうおうはこの問題に関して手詰まりだった。

 

(真の姿……竜王になれば飛んで行けるんだろうけど、どうやって変化するのかもわかんないし…はぁ不便…神様…いるのならどうか…この哀れな子羊に道標をお示しください…。)

 

りゅうおうは天に向かって手を組み合わせ祈るが、誰も応えてはくれない。

 

(…こうなったらサザンビーク城に襲撃をかけて王さまを人質に船を要求してやろうか…大丈夫、りゅうおうを倒せるのは勇者だけ!ただの人間が多少群がっても蹴散らしてくれるわ!!)

 

りゅうおうはいい加減イラついていた。なぜ誰も何も説明してくれる存在がいないのか。原作などもはや知らぬ!全てぶち壊してくれん!と、少しばかり彼の思考が飛躍した時。

 

(……ん?…あれなんだ?)

 

海岸から少し離れた海のうえを不思議な三角頭が進んでいた。三角頭はゆっくりとこちらに向かって来ているようだった。

 

(な、なんだあれ…?…大王イカか?)

 

りゅうおうは近づく謎の三角頭を大王イカだと推定するが、その時謎の三角頭は近づくのをやめ海に潜っていった。

 

(なんだったんだ?…………うわぁっ…!!?)

 

りゅうおうが海に向かって一歩足を踏み出したとき、海中からイカの足のような触手がりゅうおう目掛けて飛んできた。

 

りゅうおうは内心の驚きとは裏腹に身体を捻り触手をかわすが体勢の崩れたところに二本目の触手が向かってくる。

 

(…くっ……!。)

 

「…舐めるなぁっ!!、俺はりゅうおう!…この程度の攻撃などっ…!!」

 

りゅうおうは崩れた体勢のまま無理矢理杖で触手を払い落とし迎撃。そして海中に右手を向け、一言。

 

「イオナズン!」

 

直後海面が大きくうねり数瞬のちに巨大な水柱があがる。その周囲では波が盛り上がり、津波の如く浜辺に押し寄せ大地を飲み込んで行く。りゅうおうに自制の文字はない。いや、まだ自身の力をコントロールできていないだけだ。きっとそうだ。

 

海岸の地形を一部変えるような呪文を放った本人は目の前の謎の敵対生物を前にいっぱいいっぱいで、そんなことを考える余裕はなかった。

 

「……やったか…?」

 

……フラグである。

 

ザパァァァ!

 

浜辺に三角頭がうちあがる。三角頭は先ほどのりゅうおうの呪文でノックアウトされたようだ。よかった、よかった。

 

「…でかっ!なんだこいつ?大王イカってこんなにでかいのか?」

 

浜辺に横たわる三角頭。その姿を少し離れたところから警戒しながらりゅうおうは眺める。

 

「……ん?…こいつ、オセアーノンじゃね?」

 

謎の三角頭、その正体は原作で港町ポルトリンクから次の地方へ渡る途中の海峡で出てくる中ボスオセアーノンだった。

 

「なんでこんなとこにいるんだ、こいつ?」

 

ここはサザンビーク領の近く、原作ではポルトリンクと船着き場の間にいたはずだ、それがなぜここに?りゅうおうは疑問に思いながらもあることに気づく。

 

(こいつ…死んでない、まだ生きてる…!)

 

今日の朝サザンビーク地方の森林を焼き払った時、巻き添えを食らった魔物は全て消し炭になっていたのであるが、オセアーノンは瀕死の状態ではあるもののまだ生きていた。腐っても中ボスなのであろう。

 

(生きてるなら、まだなんとかなる。貴重な情報を得るチャンスだ!こいつを回復して、締め上げてやろう。)

 

りゅうおうは立っていた岩場を飛び降り駆け足でオセアーノンへと近づく。

 

(さっき上から見たときも思ったけど…でけぇなこいつ…。)

 

至近距離まで近づくとより大きさがわかる。船より大きなからだ、そしてかすかな呼吸音と確かな脈動。ここまで巨大な生物は日本では見たことがなかった。

 

(…はぁ~……っと感心してる場合じゃない、早く回復しないと。)

 

「ベホマ」

 

……………………………。

 

「………あれ?………呪文がでない……。」

 

確かに呪文を唱えた。しかし呪文は発動しない。

 

「ベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマ…………ふっ、ベホマズン!!……。」

 

某ヘタレ神官の真似をしてみるが反応なし。ほかにも回復呪文を唱えたが、同様の結果だった。

 

(………も……もしかして……回復呪文使えない感じ……?)

 

「Oh……☆」

 

りゅうおうは本日二回目の後悔をする。

 

(…け、検証って……やっぱ大事ぃいぃぃぃぃぃ!!)

 

サザンビークの夜空にりゅうおうの心の絶叫がこだました。





どうするりゅうおう!どうなるオセアーノン!!
どうなるのよ!?

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