我は竜王、誇り高き竜族の王   作:傾国の次郎

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第四話

焼け跡と化した森であった場所をりゅうおうは歩いていた。焼け跡からは様々な情報が手に入った。

 

(魔物が死んでもアイテムをドロップはしないと…死骸も消えずに残る…か)

 

りゅうおうの放った呪文の範囲は広大で、その内にいた魔物はもれなく全滅していた。しかしゲームのように倒した後消えたりはせず、特になんらアイテムを落としたりもしないようだった。とはいえ消えないにしても、魔王級の存在が放つ呪文の前にはそこらの雑魚など原型も残らない。黒く炭化した骨や肉をわずかに残すのみである。

 

(う~ん…アイテムを落とさないってのはちと痛いな……でも、だとするとキメラのつばさとかってどうやって作るんだろ?なんか魔法の品を作る技術的なものがあるんだろうか……)

 

りゅうおうは頭をひねる。本当にひねりはしない比喩である。どうやらこの世界はまるきりゲームのように

はできていないらしい。他にも…。

 

(レベルっていう概念がはあるんだな、なんかさっきから身体の周りが光ってるし…)

 

サザンビーク地方の環境を盛大に破壊した直後から身体の周りをキラキラとした光が包む、正直目がチカチカするのでうっとうしいのだが。同時に身体がなにやらムズムズする。欲情しているわけではない。身体の中が作り替えられているかのように、先ほどから周りの光に合わせるように違和感が続いているが、不思議と嫌悪感や痛みはない。

 

(…ってことは、ステータスもあるんだろうな。どうやって見るのかわからないけど…。)

 

レベルアップしていることに気づいてから、ステータスを開こうと試行錯誤しているのだが、さっぱりわからない。

 

「……ステータスオープン…!!…………だめか…はぁ、取説が切実にほしい、攻略本とかもあれば欲し

い…」

 

無人の荒れ地で1人ぶつぶつ呟きながら時折身体を激しく動かし両の手を天に翳すりゅうおう。どう見ても不審者である。必死に考え、試行錯誤するりゅうおうは気づかない、先ほどからずっと何者かに観られていることに…。

 

 

 

 

 

「ようやく見つけたわい。」

 

水晶玉に手を翳し1人ごちる老人、痴呆か。そうではない、ここはサザンビーク城玉座の間。老人はこの国の元宮廷魔導師であり数時間前のある事件、サザンビークの国土が焼かれるという前代未聞の事件の犯人を探し出すため王に出仕を請われ、隠居して久しい身でありながら事件解決にあたっていた。

 

「どれ…?…んん………こ、こりゃ…たまげたわい。」

 

「どうした?犯人がわかったのか!?」

 

老人の言葉に反応する王。王は水晶玉に映るものは見えないため、老人に先を促す。

 

「どういうわけか、情景がボヤけてなにもわからん。かろうじて…人の背丈ほどの存在だということしか…。」

 

「この大破壊を1人の人間が起こしたというのか!?」

 

王は老人に問いただす。とても信じられることではない。まだ魔物の仕業と考えたほうが現実味を帯びていた。しかし。

 

「誰も人間とは言うとらん!人間の形をしたナニカじゃ!…水晶越しにも漂ってくる濃密な魔力の波動…明らかに高位の魔物、もしくは…」

 

「も、もしくは…?」

 

老人の言葉におうむ返しをする大臣、彼はこの国の大臣としてこの未曾有の事件に対して陣頭指揮をとる立場にある。元凶である存在の情報はより多く知りたいがゆえ、身を乗りだし老人の言葉を待つ。

 

「……魔王……なのやも知れぬ……!!」

 

老人の言葉は予想していたうちでも最悪のもののひとつであった。玉座の間は葬式のように静まりかえり、誰も彼もが言葉を発することができないでいた。


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