我は竜王、誇り高き竜族の王   作:傾国の次郎

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平日は毎日投稿していくつもりです。
不慣れなため、お目汚しなことも多いとは思いますが温かく見守ってくだされば幸いです。


第二話

 

先ほどまでいた丘を下りつつ、男だったりゅうおうは考える。

 

(ここはドラクエⅧの世界…それはたぶん間違いない…けど…)

 

迷っていた。道にではない。

 

(このまま街に入ってもこの姿じゃあ騒ぎになる、かといって指をくわえて外から眺めていてもしょうがないしなぁ…)

 

この世界はドラクエⅧの世界だと思われるが、よく似た平行世界のひとつでしたみたいなオチかもしれない。真に確かめるには、実際に自分で見聞きして確かめるしかない。しかし、自分は魔物、竜神の末裔でも或はずなのだか、竜神王のような存在と比べると禍々しく、人間より魔物に近い外見である。

 

(こうなったら、少し?顔色が悪くて背の低い怪しい魔法使いでございとごり押ししてやろうか……)

 

半ば以上自棄な発想を実行に移そうとしたとき、背後の草むらから殺気が迸る。

 

「…っ!!?」

 

平和な現代日本人では、反応できなかったであろう。

殺気なんてものを飛ばされたこともなければ見たこともない。せいぜい漫画の世界の表現のひとつだろうと思われているほどであるから。

 

しかし、殺気というものは確かに在る。身近に命の危険のない日本人にはわからないが、戦場などではそれを察知できるか否かで生死を分けることもあるほどだ。

 

恐らく察知できたのはりゅうおうの高いスペックのおかげだろう。現に殺気を感じてから自分でも驚くほど自然に流れるような、正にそんな動きで背後から距離をとり、襲撃に身構えていた。

 

(すごい…考えるまもなく身体が勝手に動く…!)

 

しかし、未だ自分がどれほどの強さなのかなにもわからない。いまの動きを考察する限り、弱くはないと思う。だが、未知数で在るがゆえに不安も大きかった。

 

(くそっ…こんなことなら丘の上にいるときにある程度の検証をしておくべきだった…)

 

そんなことを思うも後の祭り。今は己の、りゅうおうの力を信じるのみ。

 

(そうだ…俺はりゅうおう、中身は日本人でもこの身体はかつてひとつの世界に覇を唱えた、誇り高き竜族の王…!なら、そんじょそこらの野良モンスターに遅れはとらないはず!!)

 

覚悟は決まった。前方の草むらからは依然殺気が流れてくるが、もう関係ない。

 

先手必勝。その言葉が頭を過った。

 

脳裏に自然と浮かんできた言葉を叫ぶように唱えた。

 

「ベギラゴン!!」

 

呪文を唱えた瞬間、自身の周りにゲームで見たときのような魔方陣が二条交差するように浮かんだ。

 

翳した両の手から閃光系上級呪文が前方の視界一面に炸裂する。

 

目も眩む光に一瞬目を閉じる。再び目を開けたとき、つい先ほどまで眼下に広がっていた広大な森は、そのほとんどが見るも無惨な焼け跡へと変化していた。


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