我は竜王、誇り高き竜族の王   作:傾国の次郎

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第十三話

 

きらびやかな玉座は瓦礫に埋もれ、栄光は地に落ちたサザンビーク。

りゅうおうはいま城跡に設置された幕舎の中で紅茶を飲んでいた。

 

「なんでこうなった…。」

 

チャゴスとりゅうおうの激突後、瓦礫の中で大臣に呼び止められたりゅうおう。

大臣の懇願によってこの場に引き留められていた。

大臣からすればりゅうおうは命の恩人であり、また国の恩人でもあった。

もしあの場にりゅうおうがいなければ、大臣は殺され荒ぶるチャゴスの矛先は自国の民に向いていたかもしれない。

 

「お待たせして申し訳ありません、もう暫くお待ちください。」

 

「いや、かまわないんだが…」

 

護衛兼監視の兵士に紅茶のおかわりを求めた所で幕舎に大臣が入ってきた。

 

「お待たせして申し訳ありません魔術師どの!謁見の準備が整いましたので、わたしについてきてください!」

 

大臣に言われるがままついていった先は臨時の野戦病院のような場所だった。

片腕がないものや、下半身が凍傷になってしまい歩けなくなってしまった者達の呻き声の間をすり抜けて奥へと進んでいると、一際豪華なベッドに横たわる人物の前で止まった。

 

「魔術師どの…この方がサザンビーク国王、クラビウス陛下です。」

 

りゅうおうの目の前に横たわるクラビウス王は、全身を包帯で包まれ右腕と左足は欠損していたが、片目をしっかりと開けてりゅうおうを見つめていた。

 

「……ご…っ…まお…は……」

 

口を頻りに動かしてこちらに言葉を伝えようとしてくるが喉をやられているのか空気が漏れてしまい、全く聞き取れない。

 

「王子の呪文でこのような姿に……。」

 

大臣の話では呪文を受けた直後は完全に死亡しており、蘇生魔法によって生き返ったという。

視力も失っており眼を開いてはいるものの、回復する可能性は絶望的だと大臣は語った。

 

「…魔術師どののお力をお借りしたく…王の傷を癒してほしいのですが…」

 

大臣はすがるように見つめてくるが

 

(いや、無理だろ。俺回復魔法つかえないし…)

 

りゅうおうは大臣に対して無言で首を横に振る。すると大臣は見るからにガッカリしたように肩を落とす。

 

「…そうですか…もしやと思ったのですが……。」

 

どうやら俺は王の怪我を直すために呼ばれたらしいが、全くもって役に立たないようだ。

 

「…わざわざご足労いただきありがとうございました…後程我々を救って頂いた報酬をお渡しいたしますので、先程の幕舎でもう暫くお待ちください。」

 

大臣にそう言われ幕舎にひとり戻るりゅうおう。

 

「…報酬か…。」

 

りゅうおうは当初の目的通り、この世界について尋ねるつもりである。

だがチャゴスは見るからに別人でしかも行方不明、クラビウス王は虫の息で、いつ死ぬかもわからない。

原作が始まっているかはわからないが、太陽の鏡も瓦礫の下に埋まっているので、主人公達がサザンビークに来ても闇の遺跡の結界を解く手段がなくなってしまった。


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