我は竜王、誇り高き竜族の王   作:傾国の次郎

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遅れてしまい申し訳ありませんでした。


第十一話

 

城から合図が上がるのを、りゅうおうは見た。

 

「やっとか、…よし!…………ん?」

 

しかし、城から上がった合図のすぐ後に一陣の竜巻が起こるのを見て、足を止める。さらにはその少し後に巨大な光の柱が天を衝く光景が広がる。

明らかに何かおかしい。

 

「打ち合わせの内容とだいぶ違うが…、そんなに派手に呪文ぶっぱなして大丈夫なのか…?」

 

打ち合わせでは、りゅうおうが街に攻撃を加えてからチャゴスが動き出す手筈であった。りゅうおうを表向き撃退して、英雄を気取る計画であった筈だが…。

 

りゅうおうはなにかしら不測の事態に陥っていると判断し、チャゴスの救援に向かうため当初の計画を変更し、城へと急いだ。

 

一方その頃、城の内部では血みどろの惨劇が展開されていた。キレたチャゴスが城中の人間を鏖殺せんと剣を片手に手当たり次第に攻撃を加えたからである。

既に城の一階部分にいた者達は裏口から逃げた者以外は全て、ただのしかばねになっていた。返事はないようだ。

 

「これ以上進ませてはならん!王の遺骸を守るのだ!」

 

「も、もう持ちません!突破されます!」

 

「いかにチャゴス王子といえど一人の人間!数の差で押し込むのだ!」

 

二階へと上がる階段の上で即席のバリケードをつくり、兵士や魔導師たちの呪文で弾幕をはるも、チャゴスには大した壁には成り得ていなかった。

 

「ククク…どうした!貴様らは映えあるサザンビークの近衛兵であろう…!…この程度ではなにもないのと同じだぞ!」

 

チャゴスは飛んでくる呪文を剣で薙ぎ払い、集団のど真ん中に呪文を叩き込んでいく。

 

「ヒャダルコ!」

 

「ぐあーっ!」

 

「手、手が…俺の手がぁぁあぁぁ…!!」

 

「…くっ!王子のMPが切れる迄耐えるのだ!呪文さえなければなんとかなる!!」

 

とは言うものの、兵士達はみるみる後退を余儀なくされ遂には二階へとチャゴスの侵入を許してしまっていた。ここを突破されれば兵士達に後はない。

 

「フン、たとえMPが尽きたとて、貴様らごときに後れをとるほど俺様は容易くはないぞ!?」

 

しかし、MPが尽きればいままでのようにはいかなくなることは確かであり、事実感覚的にはそろそろ限界が近いことにチャゴスは気づいていた。

 

チャゴスは兵士達に攻撃を加えつつも頭では冷静に状況を分析していた。

 

(…こいつらは恐らく死んでも降伏はしないだろう…いや…命令する人間が消えれば瓦解するか…ならば兵士長を先に叩くか……。)

 

チャゴスは兵士長に狙いを定め、剣で斬りかかった。

 

キンッ!!

 

乾いた音が辺りに響きチャゴスと兵士長の闘いが始まるも勝負は瞬きの間に終わった。

チャゴスが上段から降り下ろした剣は、防ごうと間に入った兵士長の剣を両断し頭から真っ二つにする。

 

「…ひ、ひぃぃぃ!」

 

「兵士長がやられたー!」

 

「もうだめだ!逃げろー!」

 

兵士長がやられたのを目の前で見た兵士達は散り散りに逃走する。

 

「フン、所詮俺様からすれば雑魚の群れにすぎんわ…さて…残るは大臣共、貴族の連中か…。」

 

チャゴスが玉座の間の扉に手をかけた時、下から声が聞こえてきた。

 

「な、なんだこれ!…酷い…。」

 

りゅうおうが遂に城に到着したのである。

 

「…そういえばこいつがいたな、忘れておったわ。」

 

チャゴスはりゅうおうの存在を完全に忘れていたことに気づき、上から声をかけた。

 

「悪いが計画は中止だ。もう貴様に用はないゆえどこへなりと立ち去るがいい。」

 

チャゴスはそう言い放つと、獰猛な笑みを顔に貼り付けゆっくりと扉の中へと入っていった。


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