我は竜王、誇り高き竜族の王   作:傾国の次郎

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第十話

 

太陽が堕ちていき、月が顔を出し始める頃。

りゅうおうは城壁の上にいた。

 

チャゴスの計画に乗りサザンビークを襲撃するため、りゅうおうはひとり、合図を待っていた。

 

打ち合わせでは、太陽が完全に沈んだころに城のバルコニーから呪文でこちらにタイミングを知らせる手筈となっており、それまでの間りゅうおうは誰にも見られぬように警戒しながら城壁の上で城を見る。

 

りゅうおうは昼の間に自身が使える呪文や、大まかな身体能力を調べていた。

 

その結果だが、これまでにも使用した閃光系、爆発系は上級まで使え、右手にもつ杖で剣技を使えることもわかった。

他には火炎系と暗黒系が中級まで、上級呪文も唱えてみたが呪文が発動しなかったので使えないらしい、剣技は使えた。

故にドラクエモンスターズのシステムである、とくぎが関係しているのではないかと推察する。

ギラ&イオ、メラ&ドルマのような感じで。

 

りゅうおうはモンスターズでは一枠だったので(竜王としては二枠、しんりゅうおうは四枠)後ひとつあるはずなのだが、最後のひとつは昼間の内には遂にわからなかった。

 

りゅうおうは城壁の上から城下町を見下ろす。

既に太陽は落ちかけ城下町を暗く染め上げ、家々の窓には明かりが灯り始めていた。

 

計画の実行までもう間もなく、りゅうおうは緊張と不安で高鳴る胸の鼓動を抑え、呟く。

 

「…大丈夫、呪文の練習(威力を抑えるための)もしたし、中級呪文までしか使わなければ範囲も威力も抑えられる。……何人かは死人が出るかもしれない…いや、死人を出さないようにやるんだ!やる前から弱気になってちゃだめだよな。」

 

誰も、自分以外いない城壁の上で誰かに語るように呟くりゅうおう。アブナイ奴である。

 

「…っと、そろそろ時間だが…合図はまだかな?」

 

りゅうおうが独り言を呟くうちに、太陽は完全に沈み月明かりがサザンビークの街を照らす。

 

城壁の上に佇むりゅうおうさえも。

 

りゅうおうは城の方を見るが、まだチャゴスからの合図はない。

それもそのはず、いま城の中はとんでもないことになっていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

りゅうおうと別れて一人城へと戻ってきたチャゴスは、城の大広間に出た瞬間に大勢の兵士に十重二十重に取り囲まれ槍の穂先を向けられていた。

 

その一瞬の出来事に当のチャゴスは呆気に取られてしまった。数秒後に状況を把握したチャゴスは、包囲する兵士の中に見知った顔を見つける。それは、この国の兵士長であった。

 

「…貴様ら…、なんの真似だ…?…俺様の顔を見忘れたか?」

 

チャゴスは包囲する兵士達に問うが、返ってくるのは沈黙のみ。

 

「…ちっ…、おい!兵士長!これは一体なんだ!?…父上が知れば、貴様ら全員ただではすまんぞ!!」

 

問いかけを無視されたチャゴスは苛立ちながら、そう怒鳴るが、次に返ってきたのは予想外の言葉だった。

 

「儂が命令したのだ、此奴らに非はない。」

 

包囲の向こうに大臣やこの国の貴族、近衛兵を連れたクラビウス王が立っていた。

 

「ちっ父上!?…これは…一体どういうことですか!」

 

「黙れっ!愚か者めが!最早貴様など儂の息子ではない!気安く父上などと口にするでないわ!」

 

クラビウス王に怒鳴り返され、怯むチャゴス、しかしチャゴスには何故父がここまで怒っているのか、何故兵士達に槍を向けられているのか、皆目見当もつかなかった。

それが顔に出ていたのだろう、クラビウス王は大きな溜め息をひとつ吐くと低い声で語りだした。

 

いままでチャゴスが起こした事件や不祥事の尻拭いや揉み消した事案、恒常的に行われていた、領民に対する乱暴狼藉の数々……果てはつい数時間前に発覚した地下牢の件。

 

「もうお前を庇うことはできぬ、大人しくこの城を立ち去れ…そして二度と戻って来るな…、できれば縄などは打ちたくない、せめて最後くらい親孝行してはくれぬか?」

 

感情を一切排除した声音で、クラビウス王はいい放った。縁を切ったとはいえ、息子は息子。できれば縄などは打ちたくなかった、だが目の前の息子は最初こそ話を聞いていたが、途中から耳を抑え、必死に現実から逃れようとしていた、暫くうずくまっていた息子はやがて唐突に笑い声を上げた。

 

「……フッ…クックック、アーハッハッハ!!」

 

「………。」

 

突然の息子の豹変に思わず後ずさるクラビウス王。

 

「…お話は…それだけですか…?……父上のお考えはよおく分かりましたよ……つまり…ボクを敵にまわすのですね…?」

 

チャゴスは父であるクラビウス王の目をみながら自身の右手を、天高く翳した。

 

「……ボク…いや、俺様を敵にまわしたことを…後悔するがいい。…あの世でな!!」

 

そういい放つや、チャゴスは空に向かって火球を打ち上げる。そして、

 

その場にいた全員の目がうち上がった火球に注目した隙にチャゴスは左手を此方へ向け、呪文を唱えた。

 

「バギクロス!」

 

呪文が発動し、その場を中心に巨大な竜巻が発生する、一瞬の虚を衝かれた兵士達は竜巻に巻き込まれ、天高く巻き上げられていく。

 

「王さまっ!お逃げください!」

 

近衛兵が即座にクラビウス王を自身の背後に移動させ、チャゴスに立ち向かうが、数秒と持たずに竜巻の餌食となっていく。

 

クラビウス王は、側近や貴族達とともに近衛兵が身を挺して稼いだ時間で、城の中へと走った。

 

だが、それを黙って見ているチャゴスではなかった。

 

「父上ぇ…一体何処に行こうというのです…?……クックック……ヒャーハッハッハ!」

 

後、数歩で城の門を潜るというところで、チャゴスの呪文が発動した。

 

「…地獄の雷を喰らうがいい……ジゴスパークッ!!」

 

チャゴスが右手の人差し指と中指を上に向けた瞬間地面が地割れを起こし、天に向かって紫電が迸る。

 

天を衝く巨大な光の柱が出現し、辺りを呑み込んでいく、そしてその中心で高らかに哄笑をあげる息子を見たのがクラビウス王がこの世で見た最期の光景となった。





りゅうおうのとくぎ、最後のひとつをなににするか、募集したいと思います。

モンスターズで出てくるとくぎや、全くの新しいとくぎを考えてくださっても構いません。あまりにもチート過ぎなければ。

感想にてお待ちしています!

次は来週の月曜日投稿です。
よろしくお願いいたします!

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