我は竜王、誇り高き竜族の王   作:傾国の次郎

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第一章~はじまりの国編
第一話


 

照りつける太陽が瞼を焼き、その眩しさに目を開ける。

 

「…ん?…ここどこ?」

 

右を見れば山、左を見れば海からの風が顔いっぱいにふきつける。

先ほどまで自宅の物置小屋で掃除をしていたはずなのに、瞬きひとつで見知らぬ地に1人で立っていた。

 

「これは…もしや…聞いたものと随分違うけど、転生ってやつ?」

 

いきなり見ず知らずの場所に放り込まれたのにどこか冷静な自分がいた。

 

「神様とか、なんかそれっぽい言葉も啓示も覚えがないけど…その時の記憶は消されたってっていうパターンかな?」

 

どこまでも暢気な妄想を口に出していた、誰かこの場に人がいれば、通報されていたかもしれない。

 

「…いや…しかし…ん?」

 

妙に目線が低い、というより身体が縮んだように小さい、違和感があり下を向くと

 

「て…手が青い…!!…それに、なんだこの服?」

 

頭には変な形の頭巾、紫のローブに首からかけたネックレスのようなもの、そして、

 

「この杖は…」

 

自身が先ほどから握っていた杖は、どこかで見たことのある形をしていた。

 

「この姿形…ドラゴンクエストのりゅうおう?」

 

先ほどまで物置小屋にて掃除をしていた筈の男は、一瞬にして、見ず知らずの場所にドラクエの最初のボスであるりゅうおうの姿で立っていた。

 

「ちょっとまだ考えが追いつかないけど、ほんとのほんとに転生したんだ…」

 

男はその場に蹲り、全身を震わせた。

 

恐怖や不安からではない、内心では、狂喜乱舞していた。

 

(よくわからないけど、転生したってことはここは日本じゃない、異世界ってやつだ!もう税金も年金も月々のローンも払わなくていいんだ!…しゃぁぁぁぁ!!)

 

異世界に転生したかもしれないことがわかったすぐ後の発想がこれである。

普通のって、なにを普通とするのかは知らないが、転生した人間の思考とは少しばかりズレていた。

 

(りゅうおうに転生?…憑依転生ってやつか?というのはわかったが、ここはドラクエの世界なのかはたまた全然違う世界にきたのか、ドラクエの世界だったとしても、ナンバリングは?それとも全くの未知の世界か?…まずは、ここがどこなのか誰か教えてほしいな…)

 

男はテンプレの神様ガイドやチュートリアルがないことに不便を感じながら、これからのことを考える。

 

(とにかくまずはこの世界のことを知らねば…どこか人のいそうな場所、街や村をさがそう!……っ!?)

 

男の思考が突如遮られる。

 

はるか上空を巨大な鳥が飛んでいった。否、姿は見えず地にうつる影のみがその存在を知らせていた。

 

(あれは……影しか…ということは、この世界は…!)

 

男はいましがた目の当たりにした影の後を追いかけ走り出す、しばらくして小高い丘の上にでた男はやはり自分の読みは当たっていたとほくそ笑む。

 

見下ろす大地には湖や森、街道が見えその先には城門が見えた。

 

「レティスに感謝だな」

 

ここはサザンビーク地方と呼ばれる地。

 

男は、りゅうおうの姿でドラクエⅧの世界へ来ていた。


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