また、もう一度   作:フリムン

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四人の方から希望があったので(ありがとうございます)、とりあえず手元に原作が無くても書けるオリジナル部分を様子見で投下してみる。

ちなみにシリアル。


日常の一幕

 

 お線香の煙が鼻をつく。

 

 閉じていた目と合わせていた手を下ろせば、仏壇に立てられた彼の写真が目に入る。

 

 写真の中にいる彼の笑顔は無邪気で、楽しそうで、その朗らかさでまた胸が苦しくなる。

 

 今日は彼の三年目の命日で、私たちはみんなで善吾の家を訪れていた。

 善吾のご両親は、今でこそ立ち直っているけど、最初の年は酷かった。

 

 何も喉を通らず、睡眠も取らず、みるみる内に衰弱していって、私たちの説得や一護のお父さんの助けが無かったら、あのまま善吾の後を追っていたかもしれない。

 

 かくいう私も、同じような状態だったらしいけど。

 

 

 善吾。

 三年前に死んだ、私たちの幼馴染み。

 いつも笑顔でお馬鹿で、イタズラばっかりやっていた、私たちのムードメーカー。

 

 そして、私の大好きな人。

 

 最初に会ったのは小学校の低学年の頃、空手の道場に彼が見学に来ていた時だった。

 その頃には既に白帯から上がっていた私は、少し得意気に色々と思い出せた物だ。

 

 まぁ結局、彼は空手をやらなかったんだけど。

 

 

 それからは、色々縁があった。

 小学校のクラスでは同じクラスになったし、有沢と漆山で席も近かったからなにかと良く話をした。

 彼に引き合わされた一護とも仲良くなったし、男勝りな私のヤンチャにもよく付き合ってくれた。

 

 

 いつから、っていうのは覚えていない。

 

 いつから彼を好きだったのか。なんて、そんなもの気が付いたらとしか言いようが無かった。

 彼が試合を見に来てくれれば、なんだか凄く頑張れたし、応援の声が聞こえたら体に力がみなぎった。

 

 

 上がった中学も一緒で、これからも一緒で、そしていつか、多分私から告白するんだろうなぁ、ってそんなことも考えてもいた。

 

 でも、そんなことは無かった。

 そんな未来は無くなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 死んだのだ。善吾が。

 暴走した車から、私と一護を庇って、私たちの目の前で、善吾は死んだのだ。

 

 理解できなかった。理解したくなかった。

 

 今でも夢に思い出す。

 善吾が吐き出した血の生暖かさも、鉄臭い臭いも、彼の最期の謝罪も、何もかも。

 

 皆が泣いていた。

 私も、織姫も、遊子ちゃんも、夏梨ちゃんも。

 普段泣かない一護やチャドだって泣いていた。

 

 私は、あの車の運転手達が憎い。憎くて憎くて、どうにかなってしまいそうなほどに。

 車の運転手たちは懲役が課せられたけど、そんなものでは物足りない。

 彼らが牢獄に入ったところで善吾は戻ってこないのだ。彼らは牢獄から戻ってこれるけど、善吾は戻ってこないのだ。

 

 初めの一年は、一護に頼んでアイツの霊を探して貰った。

 きっと善吾の事だから、幽霊になっても地縛霊とかじゃなくて、落ち着きなくあっちこっち動き回ってイタズラしてるんじゃないかって。

 

 だけど、善吾はいなかった。

 この空座町のどこにも善吾の霊はいなくて、一護はアイツが成仏したんだって言ってた。

 

 そう聞かされた時、不思議とそっか、って思えた。

 何と無く、そんな気がしてた。

 

 

 

 

 

 ねぇ、善吾。

 

 私は元気だよ?

 

 アンタがいなくなって、私たちの心にはポッカリ穴が空いちゃったけど、それはきっと時間が埋めてくれるんだと思う。

 でも、アンタの事は忘れない。

 

 ねぇ、天国(そこ)から私は見えてる? 見えてるなら、応援してて。

 私、頑張るから。善吾が生ききれなかった分まで人生楽しむからさ、だから見てて。

 

 

 

 

 

 ―――――大好きだよ、善吾。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶぇらっくしょい!!」 

 

 野太いくしゃみの音が瀞霊廷に響き渡る。

 

「………誰かが超絶イケメンなオレの噂をしている気がする!」

「ねぇよ」

「あ、まゆg……恋次パイセンちっす」

 

 オレの完璧な自己分析を否定したのは、元ヤクザもとい元十一番隊だったと言う六番隊副隊長の阿散井恋次センパイだった。

 

 そう、あの不可思議な刺青眉毛と信じて送り出した幼馴染みがイケメンに惚れてしまうと言うこのままNTRに目覚めるんじゃね? と思われてしまっていたあの阿散井恋次である。

 

 我ながら酷い言いようである。

 

「ちっすじゃねぇよ、おら集中しろ。お前は斬魄刀の中でも飛びきりに珍しいんだからな」

「うぃーす」

 

 言われて刀禅を再開する。

 

 くっくっく、センパイは知るまいよ。

 このオレが既に具現化の一歩手前まで来ていることに!

 このオレの斬魄刀に、不満など一つ位しかなぁい!

 

 一つあるのかよって?

 

 あるよ!

 

 だって、うちの子………

 

「ああ、旦那様(ますたぁ)がこんなにも近くに来てくれるなんて、嗚呼なんて幸福なのでしょう。でも旦那様(ますたぁ)? 行けませんよ、他の女に現を抜かしては。旦那様(ますたぁ)にはわたくしがいるのですから。もし他の女に言ってしまってはこの【灼火鉄閃(しゃっかてっせん)】、嫉妬のあまり旦那様(ますたぁ)の腹に風穴を開けたあと灼き尽くしてしまいますわぁ」

 

 重い。スッゴい重い!

 

 これは、アレだ、良くアニメとか漫画では可愛いとか言われるけど現実にいたらくそ面倒くさいと有名なアレだ。

 

 そう、ヤンデレだ。

 しかも束縛系の。

 

 具現化一歩手前でオレが止まってる理由? そんなん、これ見たら分かるだろ!?

 やべえよ! 具現化した瞬間オレの貞操が危ういわ!

 

 いや、見た目は好みだよ? 白髪に黒の着物と、スリットから見えるニーソを掃いた柔らかそうな足とか! でもダメだって! やだよ、初体験が斬魄刀とか!

 

 斬魄刀の人格ってオレの魂って話だし、初体験が自分の魂とかどんだけ倒錯的プレイなんだよ!

 

 オレの斬魄刀は強い、確かに強いよ。

 炎熱系では最速の斬魄刀って言われるくらいには強いけどさ!

 

 

 

 卍解、したいけどさぁ……具現化、したくねぇなぁ……………

 

 

 

 

 

 

 

 助けてタツキちゃーん。

 

 

「あらあら、もうダメですよ旦那様(ますたぁ)? 私といるのに他の女の事を考えては。

 ――――――お仕置き、しますね?」

 

「ひぃっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 その後、刀禅をしたまま気絶した彼を、恋次が大慌てで救護棟に運ぶ姿が見られたそうな。

 

 

 

 




え? 【灼火鉄閃】のモデル? まんま清姫です。ええ、まんま。キャラデザもあんな感じだと想像してくれれば。

清姫可愛いよね! っていうのとヤンデレのキャラクターがアレ以外に思い浮かばなかったのでやっちゃいました。てへぺろ(死)





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