宇宙人ジョーンズ︰幻想郷調査結果報告書《完結》 作:ココナッツ・アナコンダ
宇宙人ジョーンズ︰門徒
──この惑星の『僧』と呼ばれる者たちは、日夜厳しい節制の中で生活している。
「それでは──いただきます」
「「「いただきます」」」
「イタダキマス」
「やっぱり朝は味噌汁ですねぇ。具も久々のワカメ……活力が湧き上がってきます。あっ、聖、お茶です」
「ありがとう星。ワカメは星が好んでいると言ったら、ジョーンズさんが持ってきてくれたのですよ」
「ありがたいです。しかし、幻想郷には海がないのにどうやって……?」
「秘密デス」
「非道に手を染めたのではないなら、深く詮索はしなくてもよいでしょう。彼には彼なりの交流があるものです」
「わふわふ、美味しいです!」
「こらこら響子ちゃん、そんなに慌てて食べないの。ご飯粒がお口についてますよ?」
「わふっ──ありがとうございます聖さま!」
「そういえばマミゾウさん。ぬえと一輪と水蜜はどうしたんでしょうか? ずっと姿を見かけないのですが」
「昨日、飲酒してたのが住職殿にバレておったからな。今はその折檻の最中のはずじゃ」
「……またですか?」
「ええ、住職として恥ずかしい限りで……今、雲山に見張りを任せて、仏堂で瞑想を取り組ませているところです」
「あやつらも中々に懲りんからのぉ」
「そうですねぇ〜」
「あっ、そうです! 食後に私も加わる予定なのですが、星も一緒にどうですか? 最近、集中力が乱れると言ってましたし」
「あぁ……参加したいのは山々なのですが、実はこのあとナズの所に行かなくてはならなくて──」
「私モ同行シマス」
「……お主、また宝塔を無くしたんか?」
「は、はい……」
「……またですか?」
「お主もお主で懲りんのぉ」
「面目次第もございません……」
「おかわり下さい!」
「響子ちゃんはもう少し空気を読もうかい」
「はひ?」
──肉食を禁じ、酒を禁じ、繁殖に必要な行為すらも禁じられた中で日々を過ごす。
「ナズ〜、またお願いします」
「…………はぁ……またか……」
「ぐっ……すみません……」
「まぁいいけどね、そろそろ来るとは思ってたし」
「いつもいつも助かっています」
「しかし20日か……今回は結構保った方かな」
「最長記録ですね」
「その分、厄介なところに転がりこんでないといいんだけどね──ジョーンズ、力を貸してくれ」
「ワカリマシタ」
「お二人ともよろしくお願いします」
「なに自分は関係ないみたいなこと言ってんのさ。ご主人も探すんだよ」
──煩悩を断ち、己を戒めることで、『涅槃』と呼ばれる人知を超えた境地にたどり着くのが目的なのだそうだ。
「──そろそろ昼食なのですが……」
「あ……足がぁ……!」
「あっ、ダメだこれ立てない」
「すぐには行けなさそうですね」
「う、雲山お願い……運んで?」
「なっ!? 一輪、ズルいぞ! 雲山、私も私も!」
「一輪? 水蜜? 少し大袈裟すぎやしませんか?」
「いやいや、5時間近くも正座していればこうなりますって……」
「むしろ、姐さんは何で平気なんですか?」
「コツがあるんですよ一輪、コツが」
「私たちも結構やってるはずなのに……ところで姐さん、ぬえは?」
「あそこですよ」
「あそこ──げっ!? 突っ伏して倒れてるじゃないですか!?」
「ちょっと聖! あれ大丈夫なの!?」
「足が痺れてお腹が空いただけだと言ってたので、一応大丈夫だとは思いますが……」
「そうは言っても──うわぁ、よく見たらプルプル震えてるよ……」
「……雲山、念のため」
──欲深く、自分に甘いこの惑星の住人が、その境地にたどり着くことなど出来るのだろうか?
「オーライ、オーライ……よ〜し、降ろして〜」
「ぬえ、アンタ大丈夫?」
「むりぃ……」
「う〜ん、内角高めギリギリを外してボールってところかな?」
「水蜜アンタ何言ってんのよ……」
「この前来た参拝者の人から教えてもらった」
「あぁ、そう……取り敢えず、雲山にはぬえを運んでもらいましょうか」
「えぇ〜、私たちは〜?」
「私が運びましょうか?」
「罰則の延長みたいなものですし、姐さんにさせられませんよ。雲山も『任せろ』と言ってますし」
「なら……お任せしましょうか」
「いっちり〜ん、私も〜」
「アンタはそろそろ回復したでしょう? ほら立った立った」
「えぇ〜……はぁ〜い」
──ただ…。
「あら、ジョーンズさん。今日も一日、お疲れ様でした」
「オ疲レ様デス」
「フフッ、ここでの生活もだいぶ板についてきましたね」
「アリガトゴザイマス」
「いえいえ、率直な感想を伝えただけですので──それと、これはささやかな祝品です」
「……!?」
「確かに飲み過ぎは身体に悪いと没収しましたが──飲み過ぎなければ、私からは何も言うことはありません。このまま、節制を覚えていきましょう」
「ハイ!」
「良い返事です。では、私はこれで──お休みなさい」
「オ休ミナサイ」
──我慢に我慢を重ねて飲むコーヒーの味は……。
「ぬえぬえ〜っと──あっ、ジョーンズ何飲んでるの?」
「…………缶コーヒー」
「何それ……てか、それ美味しいの? 一口ちょうだい?」
「イヤダ」
「えぇ〜いいじゃん、ケチィ! ちょっとくらいくれても!」
「イヤダ」
「いいじゃん、いいじゃん! よ〜こ〜せ〜よ〜!」
「イヤダ!」
──『グッ』とくる。
ダメダメな気しかしないこの話。
命蓮寺メンバーはキャラがうまく掴めないし、仏教も深く知らないしで散々だよ……。
今回はのんびりとした日常の1ページが伝わればいいかなぁ……って思います。