宇宙人ジョーンズ︰幻想郷調査結果報告書《完結》   作:ココナッツ・アナコンダ

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宇宙人ジョーンズ︰見習い神主


調査記録︰守矢神社

 

 

 ──この惑星の『(やしろ)』と呼ばれる場所では、『神』と呼ばれる万象の創造主を奉っている。

 

 

 

「神奈子様、諏訪子様──私も鬼ではありません。正直に話してくれましたら、お説教は少なめにしておいてさしあげます」

 

「……それは本当?」

 

「本当ですよ諏訪子様。風祝は嘘をつきません」

 

「それより足を崩していいかい? ずっと正座じゃ足が痺れちまうよ」

 

「神奈子様……いえ、構いませんよ。限りなく黒に近いですが、まだ犯人と確定したわけではありませんから」

 

 

 

 ──神とは不思議なものだ。たった一柱を指すのかと思えば、『八百万(やおよろず)』と称されるほどに数が多いこともある。

 

 

 

「で──どうする神奈子?」

 

「知らぬ存ぜぬを貫き通せ。常習犯の私たちへの説教だぞ? 少なく見積もっても2, 3時間は確実に拘束される」

 

「でも……」

 

「それによく見ろ。早苗のあの能面のような静かな顔を──間違いなくブチ切れてる」

 

「ジョーンズの助けは?」

 

「立ち位置を見ろ諏訪子。あいつは早苗の後ろに立っているだろ? 言わずもがな敵だ」

 

「何をコソコソ話しているんですか?」

 

「「いえ、何も」」

 

「……そうですか。まぁ、いいでしょう。では、お聞きしますねお二方。明日の祭礼に使う御神酒用のお酒──飲みましたか?」

 

「「いえ、我らは何も存じておりません」」

 

「その言葉に偽りはありませんか?」

 

「「神の名に誓って」」

 

「……分かりました。私はその言葉を信じます」

 

 

 

 ──火、水、風に月、太陽、絵画、文字、果てにはトイレの神までいるという。

 

 

 

「ではジョーンズさん、調査をお願いします」

 

「ワカリマシタ」

 

「え……今、信じるって言わなかった?」

 

「なのに調査なんてするのかい?」

 

「言いましたよ? だから、私がお二方の無実を信じ、それを証明するための調査です」

 

「そ、そっか……ちょっと神奈子どうする!?」

 

「露骨にこっちを見るな諏訪子。大丈夫だ、いくらジョーンズでも完全に証拠を隠滅した今、過去でも映さない限りバレやしないさ!」

 

「そ、そうだよね!」

 

 

 

 ──また、神は物理的事象のみならず、『ご利益』と呼ばれる近未来的願望に基づいた恩恵も司るとされている。

 

 

 

「ジョーンズさん、始めてください」

 

「解析カイシ」

 

「目が……光って……?」

 

「これは……ホログラムか?」

 

『見ろ諏訪子! 蔵の中から美味そうな酒を見つけたぞ!』

 

『本当!? 見せて見せて!』

 

「……へぇ」

 

「うわぁ……スゲーやこれ」

 

「感心してる場合かっ!? 諏訪子これは──」

 

『あーうー! これ知ってる! 巷で美味いって評判のヤツだよ!』

 

『本当か!? うっひょ〜い! 早苗も博麗んとこに行ってていないし、ジョーンズも天狗んとこに駆り出されてる──と、くれば今夜はこれで晩酌だぁ!!』

 

『最近、禁酒令が出ててご無沙汰だったもんね〜! きっと極上の味がするんだろうなぁ〜」

 

『っしゃあ! レッツパーリィー!!』

 

『イエ〜イ!』

 

「……ジョーンズさん、もう結構です」

 

 

 

 ──この惑星の中で、神が関与していないものなど存在しないのではないだろうか?

 

 

 

「さて──私の納得のいく弁解があれば今聞きましょうか?」

 

「い、いや……これは、だな、その……な──」

 

「ごめんなさい私たちが飲みました」

 

「諏訪子!?」

 

「いやだってこれ無理だよ! 今の見たでしょ? アレ昨日のやり取りまんまだったじゃん!」

 

「ジョーンズさんの不思議パワーの一つです。過去の投影──私も初めて見たときは驚きました」

 

「投影……そんなことできたのかい?」

 

「ハイ」

 

「そっかぁ……ジョーンズがいた時点で私たちの負けは決まってたんだねぇ」

 

「そういうことです。では、お二方……もう一度正座に直してください」

 

「「……はい」」

 

 

 

 

 

 ──ただ…。

 

 

 

 

 

「さっき私が御神酒のことを聞いたとき……何とおっしゃってましたっけ?」

 

「わ、私たちは……」

 

「何も存じて……おりません、と……」

 

「そうですね、私もそのように記憶しております。ではその時、その言葉を何に誓いましたっけ?」

 

「神の名に……」

 

「……誓いました」

 

「そうですね。神の名に──ですよね?」

 

「「は、はい」」

 

「その点を含めて、言わなければならないことはたーっくさんあります。夜も長いことですし……今日という今日は、じっくりとお話ししましょうか?」

 

「「……はい」」

 

 

 

 

 

 ──万象の創造主といわれる神といえど……。

 

 

 

 

 

「で──マジで夜通しぶっ続けでお説教されて、挙句に夕飯も朝食も抜き……か」

 

「3食抜きって言ってたから、昼食もないね〜」

 

「……腹減ったな」

 

「……お腹空いたね」

 

「自業自得とはいえきついなぁ……」

 

「そうだねぇ……」

 

「「はぁ〜……」」

 

「仕方ない。これで誤魔化そう──ほれ、諏訪子」

 

「ん〜? これ、缶コーヒー……ってことはジョーンズからもらったの?」

 

「ああ。さっきすれ違ったときにこっそりな……」

 

「そっか。こういうところがあるから逆恨みもしづらいんだよね、ジョーンズって」

 

「まったくだ────ふぅ、優しさが染みるなぁ」

 

「……だねぇ」

 

「……また、禁酒令か」

 

「……一ヶ月ってさ……長いよねぇ」

 

「長いよなぁ……」

 

「……お酒、飲みたいね」

 

「……飲みたいなぁ」

 

「──昨日の今日で、まだそんなこと言いますか」

 

「「あっ」」

 

 

 

 

 

 ──世の中上手く、思い通りにはできないようだ。

 

 

 

 

 

 




更新再開〜(ノ・ω・)ノ


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