宇宙人ジョーンズ︰幻想郷調査結果報告書《完結》   作:ココナッツ・アナコンダ

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宇宙人ジョーンズ︰新米執事


調査記録︰紅魔館

 

 

「今日からウチで働いてくれるジョーンズさんよ。みんな、仲良くね」

 

「男の人?」

 

「なんかね、レミリア様が直々に連れてきたんだって」

 

「へぇ〜。やっぱり仕事はメイド長の咲夜さんが教えるのかな?」

 

「はいはい、無駄口はそこまで──」

 

 

 

 ──この惑星の住人は、やたらと自己の存在を誇張して見栄を張りたがる。

 

 

 

「咲夜! カリスマたるもの、いつ如何なる時にも威厳と風格を携えていなければならないわ!!」

 

「流石でございますお嬢様」

 

「いい? 生きとし生ける生命体の頂点に君臨する私には、それ相応の──ぷぎゃ!?」

 

「だ……大丈夫でございますか?」

 

「うぅ〜……転んじゃった〜」

 

「擦りむいておられますね……傷の手当をしましょう。こちらへ」

 

「……アレある?」

 

「お花の絆創膏でございますね? ご用意は出来ております」

 

「ワァーイ!!」

 

 

 

 ──身の丈に合わない態度、言動を取り、そして自分の首を締めていく。

 

 

 

「ねぇ、パチェ? なんかこう……カリスマッ!! って感じの魔法とか無いかしら?」

 

「また無茶な注文を……パチュリー様、そんなのありました?」

 

「さぁ? 探せばあるんじゃないかしら?」

 

「……一考の価値はありそうね。ジョーンズ、何冊か見繕ってきなさい」

 

「ワカリマシタ」

 

「アシスタントに小悪魔をつけ……うぉ!? 目がなんか光ってる!?」

 

「コレトコレト……アト、コレデス」

 

「へ? ──え、ああ……ありがとう」

 

「へぇ……便利そうな奴ね、レミィには勿体無いわ。どう? 図書館の司書にならない? あなたとこあの二人がいれば捗るんだけど」

 

「執事ノ仕事がアリマスノデ」

 

「そう……残念ね」

 

「……あの、お嬢様? この方──」

 

「新米執事のジョーンズよ。中々の掘り出し物だと思うわ」

 

「いえ、そういうことではなくて……あ、やっぱりイイデス」

 

 

 

 ──偽り、取り繕わなければならない仮面に、なんの価値があるというのだろうか?

 

 

 

「ぎゃお〜!! 食〜べちゃ〜うぞ〜!!」

 

「きゃあー! お姉様怖ーい!!」

 

「待ちなさ〜い、フラ〜ン!」

 

「お嬢様、妹様、お食事のご用意が出来ました」

 

「あら、早かったわね」

 

「ジョーンズのおかげでございます」

 

「今日はな〜に?」

 

「ハンバーグデス」

 

「お嬢様の計らいで、今日は妹様の好物にするようにと」

 

「本当!? お姉様だーいすきー!」

 

「フフッ、可愛い妹のためだもの。それくらい当然のことよ」

 

「さぁ、冷めてしまいますので広間へ向かうと致しましょう」

 

「うん! お姉様、早く行きましょう!」

 

「フランったら……もう、仕方ない子ね」

 

 

 

 

 

 ──ただ…。

 

 

 

 

 

「お嬢様の見栄っ張りにも困ったものだわ。けれど、何ていうのかしら……放っておけないっていうの? まぁ、手のかかる妹みたいな印象が強いわね」

 

 

「レミィは魔法を何でも出来る万能マシンと勘違いしている節があるのよね。だからいつも変な注文ばかりしてくるし……でも、あんなに瞳を輝かせて期待されると、ついつい応えたくなるから厄介だわ」

 

「なんだかんだ言っても、ちゃんと話は聞いてあげていますしね」

 

「うるさいわよ、こあ」

 

 

「私さぁ、もうあんな『ぎゃおー!』とかで喜ぶ歳じゃないんだよねぇ。それに、確かにハンバーグは好きだけど、そればっかだと流石に飽きるっていうか? でもさ〜、かと言って下手なこと言うとお姉様泣いちゃうじゃん? もうヤんなっちゃうんだよね〜。ホントどうにかならないものかしら……ちょっとジョーンズ、お姉様にそこはかとなく進言してみてくれない?」

 

 

 

 

 

 ──この惑星の見栄っ張りは、優しさによって生かされている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうでしたか紅魔館は?」

 

「……オ前カ」

 

「いい所でしょう?」

 

「中々、面倒ナ所ダ」

 

「面倒もお嬢様のワガママくらいでしょうに……あの人もあの人なりに良い所があるんですよ?」

 

「……大分コノ惑星ニ染マッテルナ」

 

「貴方に言われるとは思いませんでしたよ。調査は終わりそうですか?」

 

「イヤ、マダダ」

 

「知れば知るほど奥がありますからね〜。この惑星の住人は」

 

「……フン」

 

「あっ、缶コーヒーですか? そう言えばハマったって言ってましたね。お一つ貰っても?」

 

「……受ケ取レ」

 

「ありがとうございます──う〜ん、やっぱり咲夜さんが淹れてくれたものの方が美味しいですね」

 

「オ前ハ変ワランナ」

 

「流されやすいのは自覚してますよ。でもこれが私なんです」

 

「殲滅ガ決マッタラドウスルツモリダ?」

 

「さぁ? 多分、門番としての役目を全うするだけじゃないですか?」

 

「……」

 

「貴方も気をつけておいた方がいいですよ? 貴方と私はよく似ていますから、下手するとどっぷり浸かってたなんてことになりかねません」

 

「肝ニ銘ジテオコウ」

 

「まぁ、それでも後悔することはないと思いますけどね」

 

「……オ前ハ変ワランナ」

 

「さっきも言ったでしょう? これが私ですよ」

 

 

 





宇宙人スカーレット(地球名,紅美鈴)︰門番


あの独特の世界観に、地の文は邪魔なだけだった。

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