「この、痴れ者がぁぁぁぁぁっ」
士官学園に着いて敷地内へ入ろうとした時、そんな女の子の声が聞こえた。ライラはこの声が気になったが、おそらく覗きだろう。こんな女の園があるんだ。覗きがいても仕方がない。そう思いつつ、今頃は捕まえられたのではないかと思ったのだが、校舎内での慌てぶりからみるとまだ捕まってはいないらしい。
(本当、男ってバカなんだから、まぁそのおかげで穏便に学園長室へ行けるんだけどね。)
校舎内をうろうろしながら歩く。角を曲がろうとした際に何者かとぶつかる。
「きゃっ!?」
「うわっ」
2人はぶつかった後、尻餅をつき、痛そうにお尻をさすっている。その後に少年の声が聞こえた。
「すいません、お怪我はありませんか?」
「えぇ、大丈夫です」
そう言いつつ少年の手を取り、顔を確認すると見慣れた童顔、銀髪の容姿が見えた。この人はよく知っている。
「ルクスなんで逃げてるの?」
「それはその…えっと…」
何か後ろめたそうにしており。先ほどの女の子の叫び、そして走る状況になるには。とそう考え一つの結論に辿り着き、ルクスに言葉で攻めようと企んだが
「あぁ!あそこにいたぁ!」
そう言いながらこちらに人差し指を向けて大声を出している茶髪の女の子に邪魔された。その大声で駆けつけたのだろうか、蒼髪の女の子と黒髪の女の子がこちらへ向かってくる。
「セリス!その少年を捕まえろ!」
(私はお姉ちゃんじゃないんだけどなぁ〜、仕方がない協力を…)
ライラはお姉ちゃんと間違えられたのが不服であったが、久々にルクスを弄るのが楽しみだった。すまないという気持ちを一切なくルクスへ顔を向けるがいつの間にかいなかった。
「くっ、逃げられましたか」
そうライラはセリスの口調を真似しながら悔しがる。
「セリスでも捕まえられないとは…あの少年逃げ足が速い…」
「Yes、でもセリス先輩はなぜ学園にはいるのですか?」
「え、えっとそれは…」
(困ったな…お姉ちゃんとんでもなく有名人になってるじゃん)
5年間離れ離れになったとしてもセリスに似ていると言われるのは嬉しくもあり悲しくもある。そんなことで一喜一憂している時間はなく、この黒い髪の子に何か返さないと怪しまれると危機感を感じている。
「ノクト、それはもちろん学園長に用があるんだ。なぁ、セリス」
「えっ!?は…はい、そうです。いち早く学園長に会わなくてはなりません」
「そうか、ならティルファー、ノクト行くぞ」
「待ってください。ノクトお願いがあります。学園長室まで案内してくれませんか?」
「Yes、ですが、一人でも行けるのでは?」
「わお…ノクト、そんなことをセリス先輩に言っちゃうんだ。こういう風に聞くていうことは…」
ティルファーという女の子がノクトと呼ばれる女の子に察しろという目線を送った。おそらく、迷子になったと下級生がいる前で言えないセリスのプライドがあるのだというのを目線で知らせている。ただ、ノクトはそれが怪しいと思ったのだが少女に目を細めて
「すいません、セリス先輩聞きづらいことを言ってしまって…案内します」
「それではセリスまた後で」
「えぇ、また後で」
「待っていろ〜変態痴漢少年!今すぐに成敗してやる〜」
(ルクス、まぁ頑張れ)
二人はそんなニュアンスの言葉を発しながら走って行った。それを見ながら妙な雰囲気になってしまったノクトとライラ。何か話題がないかと探したのだが変なことを喋るとセリスにも影響が出るという歯がゆい時間となってしまった。ライラにとっても学園長室に早く行きたいという気持ちが早まりこの状況は予想できなかった。
「それでは、ノクトよろしくお願いします」
「その前に…」
「な…なんですか?」
ノクトはライラをジーと見ているバレるなバレるなと念じつつ、顔が青ざめており、汗が尋常じゃないぐらいかいている。
(早く…早く案内して!)
そう願っているとノクトから話しかけてくる。
「もういいですよ、ライラさん」
「えっ!?なんで!?」
ノクトに見破られてしまった。セリスのマネしても効果がなかったのか、何が原因なのかがわからない。でもまだ確証はないはずだからまだ通せると思い。
「何を言ってるのでしょうか?ノクト」
「いえ、あなたのことはアイリからよく聞いています。それにセリス先輩は機攻殻剣は2つも持っていません。」
アイリの友人だとおそらく自分がセリスに似ていると言いふらしていても仕方がない。それに、セリスは機攻殻剣が2つも持っていない。これから推測したのだろう。
「はぁ、負けたよ。その通り、私はアイリの保護者的な立場であるライラです。よろしくねノクトさん」
「Yes、ライラさん。アイリとは同級生でルームメイトなのでとても仲良くさせてもらっています。ですが、さんはいりません」
「そう、ならば私と同い年かな。私もライラでいいよ」
「えっ!?同い年だったのですか!?」
「なんだろう、このデジャヴ感…」
そんな話をしていると、いつの間にか学園長室の前に立っていた。一応マナーなのでノックをして入る。中からどうぞーという声が聞こえたので、中へと入る。
「いらっしゃい。あなたがライラさんですか?」
「はい、そうです。あっ、これ推薦状です」
「はい、ちゃんと女王からの推薦状を受け取りました。ライラ・ラルグリスさん」
「えっ、さっき女王って…それにラルグリスっていうのも」
(学園長さん、おちゃめ過ぎでしょ…秘密にしたかったのに)
学園長からノクトへ自分の秘密をバラきました。もうノクトには秘密を守ってもらうしか…
「ごめんなさいノクト、まだ話せるような心の準備をしていないから。後、このことは」
「Yes、誰にもいいません」
「ありがとう。準備ができたら一番にノクトに教えます。」
「ありがとうございます」
そういいながら学園長とノクトと話をしていく。学園内での規則を確認し、世間話をして盛り上がっているところでノックが聞こえた。