士官学園へ
「あなたにはクロスフィードにある士官学園に行ってもらいます」
いつものように、女王陛下へルクス達の経過報告をした後に言われた。
「へっ?」
素っ頓狂な声が出た。いきなり転勤ですみたいなことを言われたから誰でもそうなるだろう。
「理由を聞いてもいいでしょうか?」
「あなたはルクス達の監視に加えて遺跡調査や他国の政治を再起不能にさせてるでしょ?だけど、学びも大切なのよ。それにアイリちゃんとルクスくんの監視を続けるにも必要なことだし…」
「ちょっと待ってください、どうしてそこでルクスの名前が出るんですか?確か女学園でしたよね?」
「ええ、そこは女学園よ。ルクスくんはそこで機竜整備士として依頼されてるのよ」
「なんでそんなことを知っているんですか…」
「ふふっ、乙女の秘密よ」
(乙女なんかじゃない歳のくせに…)
アイリは機竜の知識をより得るために士官学園へ入学し、寮生活を送っている。時々、毒を吐くような発言で友達ができないんじゃないかと心配していたのだが、アイリからの手紙ではそんなことはないらしい。また、その手紙にはライラと同じ姿を見たというのも書いていた。多分セリスであろう。世界には2、3人は同じ顔の人がいるんだよって返信はしたのたが、アイリに自分の正体がバレるのは時間の問題だ。
「士官学園ですか…」
「確かお姉さんが通っていましたね。あなたの家で何があったのかは知らないわ。だけど、そろそろ顔を見せないといけないわ。お姉さんは王都にいるから向こうにいるときに気持ちの整理をしたらいいんじゃない?」
「お姉ちゃんこっちにいるの!?なんで!?」
「確か、軍事演習で士官学園の騎士団と合同でやっていますよ。一度見に行きますか?」
「いえ、まだ心の整理がついてないので」
「そうですか。ならば推薦書を渡しておくので、学園長に渡してくださいね」
「了解しました」
任務だからと割り切って渋々受け取る。そして、退室しようとドアに手を当てると王女が思い出したように言った。
「そうそう、報告は手紙でお願いね。あなたが再々休むことになったら他の生徒も怪しむでしょうから」
「わかりました」
「それと、向こうの学園長には明日着くと言っておいたので」
「それを先に行って欲しかった!」
そう言ってドアを開け飛び出す。今はもう日が沈む頃であり、士官学園があるクロスフィードまで時間がかかる。すぐさま家に帰り準備を済ませてから、神装機竜を纏い駆け出して行った。