閃光の機竜   作:叶絵

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戦の後

「兄さんと姉さんは本当に無事なんでしょうか?」

 

学園の格納庫、『騎士団』のみんなは無事に帰還をし、ホッと一息をついている。突然の幻獣神の襲来、そして旧帝国騎士たちによる裏切り。この出来事には全てを知っている人もいれば、途中までしか知らない人も。中には何がなんだかわからなく、パニックに陥った人もいる。アイリは全てのことを知っているが、最後まで戦ったルクスとライラのことを心配する。

 

「Yes、心配ならば医務室へ行けばいいんじゃないですか?」

 

「…そうですね」

 

アイリは素直にその提案を受け入れる。ノクトはその返答を聞いてニヤリと顔を変える

 

「ノクト、言っておきますけど私はライラさんが心配なんですからね」

 

「Yes、わかっています。アイリ」

 

そういって格納庫から出て行くノクトにはちょっとした笑みを浮かべていた

 

(最初は『兄さんと』ってちゃんと言っていましたよね)

 

そう言おうとしたのだが、疲れもあってか、からかう余裕も無かった。

 

「アイリは以前よりも表情が豊かになりました」

 

親友の嬉しい変化に再び笑みをこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん、姉さん、起きていますか?」

 

医務室の扉をノックし、応答を待つ。何秒か待っても返ってくるのは沈黙。まだ寝ているのだろう。そう決めつけて扉を開ける。医務室の中を入って漂うのはアルコールの臭いと静寂。2人ともぐっすり寝ているのだろうとベットの方に向く。しかし、カーテンに遮られ様子が見えない。カーテンの開ける音を抑えるようにゆっくりと開ける。

 

「「すぅ…すぅ…」」

 

2人は寝息を立てて寝ている。神装機竜を使って疲労が溜まっていたのだろう。その姿にアイリは

 

「な…なにしてるんですか!」

 

大声を出していた。疲れがたまり、ベットで寝てしまうのはわかる。が、ベットが二つあるにも関わらず、一つのベットで寝ていた。しかも、ライラはルクスを腕で抱きしめ、胸にあてている状態で。

 

「ん…んんっ…」

 

ライラが小さな声を出す。が、起きそうにもない。これにはアイリも気づいたようで

 

「姉さん、起きているんでしょ?」

 

と満面の笑みで冷たく言い放った。するとライラもバレてしまったと観念し

 

「あははは…」

 

笑って誤魔化すしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、もう…」

 

「ごめんね。アイリ」

 

ライラはアイリがノックしたことで起きてしまい、ちょっと遊んで反応を楽しもうと考え、ルクスが寝ていたベットに忍びこみ、抱きしめてしまった。と少々反省の色を見せながら謝った。

 

「姉さんは清楚で可憐で美人なんですから。それに…む…胸だって…」

 

「胸はいろんなものを好き嫌いなくして食べればアイリだって大きくなるのよ?」

 

「私だって好き嫌いなく食べています!」

 

「しっ!ダメよ大きな声を出しちゃ。ルクスが起きちゃうでしょ?」

 

「ご…ごめんなさい」

 

「アイリは好き嫌いがないっていうのはわかっているけどね?昔はあったでしょ?これでも私はアイリやルクスに料理を振舞っていたからわかるのよ」

 

「そうでした…」

 

アイリはガックリと項垂れる。

 

「ここでの評価は『騎士団』の団長に似ているからというのもあるかもね」

 

「姉さん、その事で聞きたいことがあるんですけど…」

 

「ん?なに?」

 

「姉さんは、セリスティア・ラルグリスと関係があるんですか?」

 

「どうしてそう思うのか聞いても?」

 

一瞬ビクッとなったが、ポーカーフェイスをし、冷静に対応する。

 

「姉さんとセリスティア先輩は余りにも似ています。あり得るのは双子、最悪でも姉妹でないと…」

 

「どうだろうね。そのセリスティアさんとは会ったことないし」

 

ライラは本当のことを言った。昔に会ったことはあるが、最近は会ったことがない。

 

「そう…ですか…」

 

ライラはアイリの弱々しい言葉を聞いてから立ち上がる。

 

「姉さん、大丈夫なの?」

 

「私よりも心配する人が起きてしまったからね。それに私はリーシャ様に会わないと」

 

アイリはその言葉を聞きルクスを見る。小さな呻き声をを出しながら覚醒しようとしている。その後にライラのいたところへ顔を向けるがそこにはもういなかった。

 

「に…兄さん!」

 

大きな声は医務室中に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かったの?ルクス君と話をしないで」

 

医務室から出た後に不意に声がかかる。

 

「盗み聞きとは、趣味が悪いですね。クルルシファーさん」

 

「盗み聞きはできなかったわ」

 

「しようとしていたんですか…」

 

ライラはクルルシファーと話をすると何か調子が狂ってしまう。この会話でそう確信した。

 

「あなたが『閃光の妖精』でルクス君が『黒き英雄』だったなんてね」

 

クルルシファーは誰にも聞かれないように最低限のボリュームでライラに言う。

 

「えぇ、そうです。幻滅しましたか?」

 

「いえ、ただ予想外と言うか…」

 

「伝説の類いの結果はいつも下らない事ばかりですよ」

 

そう言ってクルルシファーから遠ざかる。

 

「ふふっ、そうね」

 

クルルシファーは残念な思いの反面、少し嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーシャ様。無事ですか?」

 

「おおっ!私は無事だ。ライラ、貴様も無事だったのか?」

 

格納庫にて、リーシャの無事を知るとライラはホッとする。

 

「えぇ、私は無事ですけど…これは…」

 

見ればリーシャだけでなく『騎士団』全員が集まっていた。

 

「お前たちの功績を見た者たちだ。ライラとルクスの騎士団入りを今決定した」

 

「でも、私は…」

 

「ライラには特別に遊撃として任務についてほしい」

 

「遊撃として…ですか?」

 

「ライラはセオリー通りの一対一ではなく、ほぼセオリー無視の多対一の戦い方。私たちがいないほうがいいだろ?だから自由に戦える遊撃として『騎士団』に迎えたい」

 

確かにライラは単独がいいのだが、それだと、自分に返って負担がかかってしまう。でも、それほど出撃も多くないだろうしいいかと考える。

 

「わかりました。私の機攻殻剣に誓って、守ります」

 

その返事を聞いたリーシャは満面の笑みを浮かべた

 




次章からはライラ目線で書きます。
三人称の目線だと難しい…

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