「ひ…卑怯だぞ!」
そんな言葉が響いたのはライラとルクスが反乱軍を全て討伐した後だ。ライラとルクスはベルベットの言葉に疑問を持つ
「き…貴様ら2人と私1人で戦うなんて卑怯だぞ」
「ねぇ、ルクス、何を言っているのかなあの人は…」
「確かに。もともとは僕たちが不利だったんだけどね」
今、敵との比率は2:1、10分前までは2:250での対立だった。ベルベットは自分が不利になると言い訳というものを始めた。
「くっ、せめて一対一の勝負をしろ!」
「はぁ…なんか、実力がわかったから、ルクスがやっていいよ」
「えっ!?僕がやるの?なんで!?」
「私じゃ、ああいうタイプの相手に手加減なんてできないから殺っちゃうよ?」
ライラは笑顔で言う。ルクスは反乱軍にはきちんと罪を償ってほしい。償わずにして死ぬっていうのは極力避けてほしい。そういう思惑があるため、殺してしまうと言えばルクスが自ずと戦ってくれる。実際、ライラは冷静でいられたら峰打ちをするが、苦手な人たちには力加減ができず、殺してしまうこともある。
「はぁ…わかったよ」
「それじゃ、お願いね♪」
ルクスはため息をつきながら、ベルベットの前へ行く。
「あ…あなたは旧帝国の皇子、ルクス・アーカディアじゃないですか。なぜ、そのような機竜を…まさか…『黒き英雄』の正体が」
「旧帝国近衛騎士団団長ベルベット。お前のいう通り、一対一で決闘しようか」
「ま…まさかあの要求を飲むとは…旧帝国が墜ちた理由がわかったわ!」
「…」
ルクスは黙ったまま集中をする。途切れないように、雑念を振り払う。ベルベットも同様、集中をし、出方を伺っている。先に動いたのはベルベットだった。
「あの世で皇帝陛下に詫びろ!裏切り者め!」
ベルベットはブレードでルクスを切ろうと振りかぶる。スピードは通常ではありえない速さ。『神速制御』による一撃。普通、機竜には肉体制御と精神制御があり、どちらかで動かすことができる。『神速制御』はそのどちらも利用して高速の一撃を放つことができる。
「俺はこの五年でこれを修得したんだ!くらえ!」
ベルベットはルクスに向けて斬る。斬った。斬ったはずなのに斬った感触がない。おかしい、と自分のブレード見る。ブレードはあったが、機竜が壊れていた。
「なっ!なにぃぃぃ!」
「ど、どうしてだ!何故私の『神速制御』が敗れることが!」
ベルベットの中で一番自信のある技で敗れたことを驚愕する。
「あなた、技を開発した人にその技で勝てるわけないでしょ?」
「なっ!き…貴様、その時ははまだ、十二じゃ…」
「さようなら、ベルベット。僕は皇族として、あなたを裁くことができませんけど」
ルクスは落ちて行くベルベットを見ながら言い続ける。
「僕は戦うよ。帝国のためにではなく、僕を認めてほしいと思う彼女たちのために…」
「この!裏切り者が!」
「結局、殺っちゃったの?」
戦闘で疲労し、神装機竜を解除したルクスにベルベットの安否を問う。
「わからない」
「えっ?」
「多分、協力者がいたんじゃないかな?それほど大きな音が出なかったから」
「それじゃ、またやって来ると?」
「出来れば来てほしくないな〜」
「同感。でも次は私が殺っちゃうかも」
「あははは。ねぇライラ、1つ頼みごとをしてもいい?」
ライラはお姫様抱っこでルクスと話している。いいよ、と優しい声色で返事をすると
「しばらく寝かせて」
そういって眠りについたルクスを抱き寄せ、しょうがないな、とため息をつき、リーシャと一緒に学園へ戻っていった