閃光の機竜   作:叶絵

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自分たちの立場

「はぁ、はぁ…」

 

息切れが聞こえるのは城塞都市から数百mel離れた荒野。1人の少女が多くの仲間を守りながら、さらには竜声を使って戦況を読みながら戦っていた。その少女と戦っている幻獣神は少なくなってはいるが、そう易々と倒れない。それに、旧帝国の近衛騎士団達も弱ったところで狙おうと伺っている。

 

『シャリス!ティルファー!早く撤退しろ!私がここで抑える!』

 

『しかし、姫!あなた一人でこの状況を何とかするのは…』

 

『そのために、お前たちは一度学園に戻り教官に出撃するように言ってくれ!』

 

『くっ!わかった。頼むぞ姫!』

 

シャリスが悔しそうにしながらも素直にリーシャの指示に従う。ここで助太刀するとかえってリーシャの迷惑になることぐらい分かりきっていた。仲間を抱えながらシャリスとティルファーは撤退していく。

 

「やっぱり、神装機竜ほどの性能でなければ姫の足手纏いになるのがオチか…」

 

「そうだよね…私たちの力じゃ、まだリーシャ様の足下にも及ばないというか…」

 

「今は何を言っても仕方がない、早く学園に戻って教官へ報せなければな!」

 

「あぁ!」

 

「どうしたティルファー?」

 

「ルクっちとライラに頼むのはどうかな?ライラはどうかわからないけど、ルクっちには雑用ということでやってもらおうよ。ルクっちは汎用機竜でリーシャ様と互角だし、ライラは神装機竜を持っているし!」

 

「そうか!でもこんな危険なことをルクス君に雑用して依頼するのは…」

 

ティルファーとシャリスが打開策を考え始めていると、学園側から3つの機竜がやってきた。1つは神装機竜、残りの2つは汎用機竜だ。シャリス達は目を凝らすと、さっき話題に出てきたルクスとライラがやって来ているのがわかった。

 

「シャリスさん、ティルファーさん大丈夫ですか?」

 

「あぁ、ライラなんともない。だが姫が…」

 

「リーシャ様がどうしたんですか?」

 

ルクスが不思議そうに問いかける。

 

「リーシャ様が戦場に一人残って未だに戦っている!」

 

ティルファーが焦っている。早く助けてあげてと言いたいぐらいに。それを聞いた瞬間にルクスがライラに向いてアイコンタクトを送る。

 

(先に行ってくれないか?)

 

(了解)

 

それを受けたライラはクルルシファーに向けて真剣な面持ちで提案をする。

 

「クルルシファーさん、私からお願いです。生徒たちを安全に学園へ運んでください。」

 

「提案っていうことは見返りもあるわよね?」

 

クルルシファーも真剣に答える

 

「えぇ、私からは『閃光の妖精』についての情報を知る限り教えます」

 

「わかったわ」

 

そう言って、ライラは機竜を解除する。ライラの汎用機竜は飛翔型のため普通は空中で解除したら危ない。

 

「ちょっと!ライラさん、あぶな…」

 

そう言おうとクルルシファーがライラが死なないように地面へ降下するが、ライラと地面がぶつかる前に消えていた。

 

「ら…ライラさんはどこに!?」

 

「それじゃ、クルルシファーさんは生徒たちをお願いします。後で戦場へ来てください。ちゃんと『黒き英雄』と『閃光の妖精』について僕たちから教えますので」

 

「え…えぇ…わかったわ」

 

ルクスはそういうと、リーシャがまだ残ってる戦場へ向かって行く。クルルシファーは何が起こったんだろうと疑問に思いながらも生徒たちを安全に学園へ運びにいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!そろそろ限界か…!?」

 

「ふっ、残念だったな雌犬」

 

大方の幻獣神は片付いたが、片付いたが瞬間に旧帝国近衛騎士団団長ベルベットの攻撃があり、2人の一騎打ちの形で戦っていた。リーシャは尻餅を地につけており、限界の声が聞こえたベルベットは機竜を停止する。その時を待っていましたと言わんばかりに予備の機攻殻剣をいつでも抜けるように手を添える。

 

「残念だったのは貴様の方だ!」

 

そう言って刃先をベルベットに向け投げる。が、ベルベットは読んでいたかのように避ける。

 

「私にそんな程度の小賢しい真似が通じると思うか?」

 

「くっ!」

 

完全に手はない。神装機竜を投げることは決してできない。自分が王族であるための絶対的証拠として死ぬまで持っていなければならない。そう思っているとベルベットは既にリーシャの前に立ち不敵な笑みを浮かべている。

 

「なぁ、お前はまだ気づかないのか?」

 

そういい、機竜の手でリーシャの装衣の腹部を引っ張る。そしてリーシャが一番気にしている烙印が露わになる。

 

「この烙印を押したのは俺様だってことをな!」

 

リーシャの頭の中は真っ白になる。本当に王女の地位にいていいのか、次期女王にこの烙印があったら国民が見たらどうなるのか。その恐怖心が蘇ってくる。

 

「はっはっは!あまりにショックすぎて言葉も出ないようだな!」

 

「…貴様の…せいか」

 

「あぁ?」

 

「貴様のせいだったのかぁぁ!」

 

「のわっ!」

 

その怒りを声に出した瞬間、ベルベットはリーシャの前からいなくなっていた。いや、リーシャの前にはベルベットのかわりに少女が立っていた。橙色の神装機竜を纏っている少女が。

 

「リーシャ様、お待たせしました」

 

「ライラ…?」

 

「もう、1人で戦うなんて無茶をしないでくださいよ?」

 

リーシャは暖かいライラの言葉に涙を落としそうになる。

 

「あぁ…ありがとう…」

 

「ゆっくり休んでください。後少しでルクスも来ると思いますから」

 

そして振り返り、旧帝国の騎士団に向けて言い放つ。

 

「さて、乙女の装衣を無理やり剥がしたのは誰?」

 

殺意と同時に

 


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